身寄りが少ない人が相続で困りやすいこと|生前にできる対策を解説

この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。

身寄りが少ない方の相続では、「財産が多いか少ないか」だけが問題になるわけではありません。

相続人が誰になるのか分からない。
親族と疎遠で連絡先が分からない。
預金や保険、不動産の情報が整理されていない。
亡くなった後の手続きを誰がするのか決まっていない。

このような状態だと、残された親族や関係者が相続手続きで困ることがあります。

身寄りが少ない方の相続対策では、相続人・財産・死後の手続き・遺言書を生前に整理しておくことが大切です。

この記事では、身寄りが少ない人が相続で困りやすいことと、生前にできる対策をわかりやすく解説します。

身寄りが少ない人の相続で問題になりやすい理由

身寄りが少ない人の相続で問題になりやすいのは、亡くなった後に「誰が何をするのか」が分かりにくいからです。

家族や親族との関係が近ければ、通帳の場所、保険の有無、不動産の状況、葬儀の希望などを知っている人がいるかもしれません。

しかし、身寄りが少ない方や親族と疎遠な方の場合、本人の生活状況を詳しく知っている人がいないことがあります。

その結果、次のような問題が起きやすくなります。

・相続人が誰か分からない
・相続人の連絡先が分からない
・預金口座や保険契約が見つからない
・不動産や空き家の管理で困る
・借金やローンの有無が分からない
・相続放棄を検討すべきか判断できない
・遺産分割協議が進まない
・葬儀や納骨、家財整理を誰がするのか決まっていない
・スマホやサブスク、公共料金の解約が残る

相続は、亡くなった後に発生する手続きです。

そのため、本人が亡くなった後に周囲が一から調べようとしても、情報が足りずに手続きが止まることがあります。

身寄りが少ない方ほど、亡くなった後に探してもらうのではなく、生前に分かる形にしておくことが大切です。

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困りやすいこと1|相続人が誰になるか分からない

身寄りが少ない方の相続で、最初に困りやすいのが相続人の確認です。

「身寄りが少ないから相続人はいない」と思っていても、法律上の相続人が存在することがあります。

独身で子どもがいない方の場合、親が健在であれば親が相続人になることがあります。

親がすでに亡くなっている場合は、兄弟姉妹が相続人になることがあります。

兄弟姉妹が亡くなっている場合は、甥姪が相続人になることがあります。

つまり、普段付き合いがない親族であっても、戸籍をたどると相続人になることがあります。

親族と疎遠でも相続人になることがある

親族と疎遠で何十年も連絡を取っていない場合でも、法律上の相続人になることがあります。

本人が「この人には関係ない」と思っていても、遺言書がなければ、法律で決まった相続人が財産を引き継ぐことになります。

特に、兄弟姉妹や甥姪が相続人になる場合は、連絡先が分からない、遠方に住んでいる、相続に関心がない、関係が薄いということもあります。

その場合、相続手続きを進めるために戸籍を集め、相続人を探し、連絡を取る必要があります。

相続人が多くなることもある

兄弟姉妹が複数いる場合や、すでに亡くなっている兄弟姉妹に子どもがいる場合、相続人が複数になることがあります。

相続人が多いと、遺産分割協議や書類のやり取りに時間がかかります。

印鑑証明書の取得、署名押印、郵送でのやり取りなど、手続きの負担も増えます。

身寄りが少ないと思っていても、相続手続きでは意外に多くの親族が関係することがあります。

生前にできる対策

相続人の問題で困らないためには、生前に次のことを確認しておきましょう。

・自分が亡くなった場合の相続人が誰になるか
・親、兄弟姉妹、甥姪との関係
・連絡が取れる親族がいるか
・親族と疎遠な場合、遺言書が必要か
・財産を誰に残したいか
・相続人以外に財産を残したい人がいるか

相続人を確認したうえで、財産の行き先を自分で決めたい場合は、遺言書を検討します。

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困りやすいこと2|財産の場所が分からない

身寄りが少ない人の相続で次に困りやすいのが、財産の場所が分からないことです。

相続手続きでは、亡くなった方の財産を調べる必要があります。

しかし、本人以外が財産を把握していない場合、どこから調べればよいか分からなくなります。

預金口座が分からない

預金口座は、相続手続きでよく問題になります。

通帳がある銀行は分かりやすいですが、ネット銀行や長年使っていない口座は見つけにくいことがあります。

銀行名、支店名、口座の種類、通帳やキャッシュカードの保管場所を一覧にしておくと、相続手続きが進めやすくなります。

保険契約が分からない

生命保険や医療保険も、契約内容が分からないと請求が遅れることがあります。

保険会社名、保険証券の保管場所、受取人が誰かを確認しておきましょう。

昔の契約では、親や兄弟姉妹が受取人になったままのこともあります。

受取人がすでに亡くなっている場合や、今の希望と合っていない場合は、見直しが必要になることがあります。

不動産が分からない

不動産がある場合は、固定資産税の納税通知書や登記事項証明書で確認します。

自宅、土地、相続した実家、空き家、共有名義の不動産などがある場合、亡くなった後の管理や相続登記で困ることがあります。

特に、親族と疎遠な場合、不動産が遠方にあると、相続人が管理できずに困ることがあります。

借金やローンが分からない

借金やローンの有無も重要です。

相続では、預金や不動産だけでなく、借金も問題になります。

借金があるかどうかが分からないと、相続人が相続放棄を検討すべきか判断しにくくなります。

カードローン、住宅ローン、車のローン、クレジットカード、連帯保証などは、生前に整理しておきましょう。

生前にできる対策

財産の場所で困らないためには、財産一覧を作ることが有効です。

最初から金額を正確に書く必要はありません。

まずは、次のような情報をまとめましょう。

・銀行名、支店名
・保険会社名、保険証券の保管場所
・不動産の所在地
・固定資産税通知書の保管場所
・借金やローンの有無
・クレジットカードやサブスクの契約先
・ネット銀行、証券口座、電子マネー
・車や高価品の有無

財産一覧は、遺言書、任意後見契約、死後事務委任契約を検討するときの土台にもなります。

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困りやすいこと3|遺産分割協議が進まない

遺言書がない場合、相続人が複数いると、遺産分割協議が必要になることがあります。

遺産分割協議とは、相続人全員で、誰がどの財産を引き継ぐかを話し合う手続きです。

身寄りが少ない方の場合、相続人同士の関係が薄かったり、遠方に住んでいたりして、話し合いが進みにくいことがあります。

相続人全員の協力が必要になる

遺産分割協議は、原則として相続人全員で行います。

一部の相続人だけで決めることはできません。

そのため、相続人の中に連絡が取りにくい人がいると、手続きが止まりやすくなります。

また、遠方に住んでいる相続人がいる場合、書類の郵送や印鑑証明書の取得にも時間がかかります。

関係が薄い相続人同士で話し合う負担

兄弟姉妹や甥姪が相続人になる場合、相続人同士が普段から交流していないことがあります。

本人の生活状況や希望を知らないまま、急に財産の分け方を話し合うことになるため、心理的な負担も大きくなります。

「誰が手続きを進めるのか」「財産はどれだけあるのか」「不動産をどうするのか」が決まらず、時間がかかることがあります。

不動産があるとさらに難しくなる

預金だけであれば比較的分けやすい場合もありますが、不動産があると話し合いが難しくなることがあります。

誰が相続するのか、売却するのか、管理費や固定資産税をどうするのか、空き家になった場合に誰が対応するのかを決める必要があります。

相続人が遠方に住んでいる場合、管理や売却の負担が問題になりやすいです。

生前にできる対策

遺産分割協議で困らないためには、遺言書を検討します。

遺言書で財産の行き先を決めておけば、相続人全員での話し合いの負担を減らせることがあります。

特に、次のような方は遺言書を検討した方がよいです。

・相続人が兄弟姉妹や甥姪になりそう
・親族同士の関係が薄い
・不動産がある
・特定の人に財産を残したい
・親族ではない人に財産を残したい
・寄付をしたい
・相続人の負担を減らしたい

遺言書を作成する場合は、遺言執行者を誰にするかも考えておくと安心です。

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困りやすいこと4|死後の手続きと相続が混ざってしまう

身寄りが少ない人の相続では、相続手続きだけでなく、亡くなった後の生活まわりの手続きも問題になります。

ここで注意したいのは、相続手続きと死後事務は同じものではないという点です。

相続手続きとは

相続手続きは、主に財産を誰が引き継ぐかに関する手続きです。

預金の解約、不動産の名義変更、車の名義変更、株式や保険の確認などが関係します。

死後事務とは

死後事務は、亡くなった後の生活まわりの手続きです。

たとえば、次のようなものです。

・死亡後の関係者への連絡
・葬儀や火葬
・納骨や永代供養
・病院や施設への支払い
・賃貸住宅の解約
・家財整理
・公共料金の解約
・スマホやインターネットの解約
・サブスクの解約

これらは、遺言書だけでは対応しきれないことがあります。

遺言書は主に財産の行き先を決めるものです。

亡くなった後の葬儀、納骨、解約、家財整理を誰に頼むかは、死後事務委任契約で整理することがあります。

生前にできる対策

死後の手続きで困らないためには、次のことを整理しておきましょう。

・葬儀をするか、直葬にするか
・納骨先をどうするか
・賃貸住宅や持ち家の家財整理を誰に頼むか
・スマホ、公共料金、サブスクの解約先
・亡くなった後に連絡してほしい人
・死後事務委任契約が必要か
・死後事務に必要な費用をどう準備するか

身寄りが少ない方は、遺言書と死後事務委任契約を分けて考えることが大切です。

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生前にできる相続対策

身寄りが少ない方が生前にできる相続対策は、難しいことばかりではありません。

まずは、情報を整理し、必要な制度を検討するところから始めます。

1. 相続人を確認する

自分が亡くなった場合、誰が相続人になるのかを確認します。

独身で子どもがいない場合は、親、兄弟姉妹、甥姪が関係することがあります。

戸籍を確認しないと分からない場合もあります。

2. 財産一覧を作る

預金、保険、不動産、車、借金、ローン、ネット口座、サブスクなどを一覧にします。

財産の金額よりも、どこに何があるかを分かるようにすることが大切です。

3. 遺言書を検討する

財産の行き先を決めたい場合や、相続人の負担を減らしたい場合は、遺言書を検討します。

自筆証書遺言にするのか、公正証書遺言にするのかも考えます。

身寄りが少ない方や、親族と疎遠な方は、紛失や形式不備のリスクを避けるため、公正証書遺言を検討することもあります。

4. 遺言執行者を決める

遺言書を作る場合は、遺言執行者を指定することも考えます。

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために手続きを進める人です。

身寄りが少ない方の場合、誰が実際に手続きを進めるのかまで考えておくことが大切です。

5. 死後事務委任契約を検討する

葬儀、納骨、家財整理、公共料金やスマホの解約などを頼む人がいない場合は、死後事務委任契約を検討します。

遺言書だけでは対応しきれない部分を補うための準備です。

6. 必要に応じて専門家に相談する

相続人、財産、遺言書、死後事務を一人で整理するのが難しい場合は、専門家に相談することも選択肢です。

行政書士には、遺言書作成の準備、相続人や財産の整理、死後事務委任契約、相続関係書類の作成などについて相談できます。

ただし、不動産登記は司法書士、税金は税理士、争いがある場合は弁護士の分野です。

必要に応じて、他の専門家と連携して進めることが大切です。

よくある失敗と注意点

身寄りが少ない人の相続対策でよくある失敗を整理します。

相続人はいないと思い込んでいる

身寄りが少ないからといって、相続人がいないとは限りません。

兄弟姉妹や甥姪が相続人になることがあります。

まずは相続人を確認しましょう。

財産が少ないから対策はいらないと思っている

財産が少なくても、預金口座の解約、賃貸住宅の解約、家財整理、借金の確認などは必要になることがあります。

財産の多さではなく、手続きする人が困らないかという視点で考えましょう。

遺言書だけで全部解決できると思っている

遺言書は財産の行き先を決める書類です。

葬儀、納骨、家財整理、スマホや公共料金の解約などは、死後事務委任契約で整理することがあります。

エンディングノートだけで安心している

エンディングノートは情報整理に役立ちます。

しかし、財産の行き先を法的に決めたり、死後事務を正式に委任したりするには、遺言書や契約書が必要になることがあります。

借金やローンを書かない

借金やローンは書きにくい項目ですが、相続ではとても重要です。

相続人が相続放棄を検討するうえでも、借金の有無は大切です。

不動産の名義を確認していない

自宅や土地が自分名義だと思っていても、実際には親の名義のまま、共有名義、相続登記未了ということがあります。

不動産がある方は、早めに確認しましょう。

まとめ

身寄りが少ない人の相続では、相続人、財産、遺言書、死後事務の整理が重要になります。

特に困りやすいのは、次の点です。

・相続人が誰になるか分からない
・親族と疎遠で連絡が取りにくい
・預金、保険、不動産、借金の場所が分からない
・遺産分割協議が進みにくい
・不動産や空き家の管理で困る
・借金やローンの有無が分からない
・相続手続きと死後事務が混ざってしまう
・葬儀、納骨、家財整理、解約手続きを誰がするのか決まっていない

生前にできる対策としては、相続人の確認、財産一覧の作成、遺言書の作成、遺言執行者の指定、死後事務委任契約の検討があります。

身寄りが少ない人の相続対策は、財産を多く残すためだけのものではありません。

残された人が困らないように、そして自分の希望を形にするために、情報と手続きを整理しておくことが大切です。

まずは、相続人が誰になるのか、預金・保険・不動産・借金がどこにあるのかを確認するところから始めましょう。

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