おひとりさまが寄付をしたい場合の遺言書|団体や施設に財産を残す方法を解説

この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。

おひとりさま終活では、「自分の財産を誰に残すか」を考える場面があります。

独身で子どもがいない方の場合、親が亡くなっていれば、兄弟姉妹や甥姪が相続人になることがあります。

しかし、親族と疎遠な方や、社会貢献をしたい方の中には、財産を親族ではなく、団体や施設に寄付したいと考える方もいます。

「お世話になった施設に財産を残したい」
「動物保護団体や福祉団体に寄付したい」
「親族ではなく、社会の役に立つ形で財産を使ってほしい」
「遺言書に書けば寄付できるのか知りたい」

このような場合は、遺言書による寄付、いわゆる遺贈寄付を検討します。

ただし、寄付をしたい場合は、ただ遺言書に団体名を書けばよいわけではありません。

寄付先が受け入れてくれるか、現金で寄付するのか、不動産も含めるのか、遺言執行者を誰にするのかなどを、生前に整理しておくことが大切です。

この記事では、おひとりさまが団体や施設に財産を残す方法と、遺言書を作成するときの注意点をわかりやすく解説します。

おひとりさまが寄付をしたい場合は遺言書が重要

おひとりさまが亡くなった後、遺言書がなければ、原則として法律で決まった相続人が財産を引き継ぎます。

独身で子どもがいない方の場合、親、兄弟姉妹、甥姪などが相続人になることがあります。

普段付き合いがない親族であっても、戸籍上の相続関係があれば相続人になることがあります。

そのため、団体や施設に財産を寄付したい場合は、遺言書でその意思を明確にしておく必要があります。

遺言書によって、相続人ではない団体や施設に財産を渡すことを、一般に遺贈といいます。

寄付を目的とした遺贈は、遺贈寄付と呼ばれることがあります。

たとえば、次のような寄付先が考えられます。

・福祉団体
・医療機関や福祉施設
・動物保護団体
・NPO法人
・公益法人
・学校法人
・自治体
・宗教法人
・研究機関
・社会貢献活動を行う団体

ただし、寄付先によって、遺贈の受け入れ方針や必要な手続きは異なります。

「寄付したい」という気持ちを実現するには、遺言書の作成だけでなく、寄付先の確認も重要です。

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寄付先を決める前に確認したいこと

遺言書で寄付をしたい場合、最初に考えるべきことは「どこに寄付したいか」だけではありません。

その団体や施設が、遺贈寄付を受け入れているかを確認することが大切です。

寄付先が遺贈を受け入れているか

団体や施設によっては、遺贈寄付を積極的に受け入れているところもあります。

一方で、遺贈の受け入れ体制が整っていない場合や、不動産など一部の財産は受け入れが難しい場合もあります。

特に小規模な団体や施設では、遺言書による寄付の手続きに慣れていないこともあります。

そのため、遺言書を作る前に、寄付先へ次の点を確認しておくと安心です。

・遺贈寄付を受け入れているか
・正式名称と所在地
・寄付を受け入れる窓口
・現金以外の財産を受け入れられるか
・不動産や車などの寄付に対応できるか
・使途を指定できるか
・遺言書にどう記載すればよいか
・遺言執行者からの連絡方法

正式名称を確認する

寄付先を書くときは、団体名を正確に記載する必要があります。

略称や通称だけで書くと、どの団体を指しているのか分からなくなることがあります。

たとえば、似た名前の団体が複数ある場合、遺言書の内容があいまいになり、手続きで困ることがあります。

正式名称、所在地、法人番号や代表者名など、寄付先を特定できる情報を確認しておきましょう。

個人ではなく法人・団体への寄付か確認する

「お世話になった施設に寄付したい」と考えている場合、施設そのものに寄付するのか、施設の運営法人に寄付するのかを確認する必要があります。

職員個人に感謝している場合でも、職員個人へ財産を残すのか、施設・法人へ寄付するのかでは、遺言書の書き方が変わります。

感謝の気持ちと、財産を残す相手は分けて整理しましょう。

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どの財産を寄付するかを整理する

寄付をしたい場合は、どの財産を寄付するのかを具体的に考える必要があります。

「全財産を寄付する」のか、「一部だけ寄付する」のか、「現金だけ寄付する」のかによって、遺言書の内容や手続きが変わります。

預金を寄付する場合

もっとも考えやすいのは、預金や現金を寄付する方法です。

預金であれば、寄付先にとっても受け取りやすい場合があります。

ただし、どの口座から寄付するのか、一定額を寄付するのか、残った財産の全部を寄付するのかなどを整理する必要があります。

銀行名、支店名、口座の種類、通帳の保管場所などを一覧にしておくと、遺言書の内容を考えやすくなります。

不動産を寄付する場合

不動産を寄付したい場合は、特に注意が必要です。

不動産は、受け取る側にとって管理や売却の負担になることがあります。

固定資産税、管理費、修繕、売却手続き、登記手続き、家財整理などが関係します。

そのため、寄付先によっては、不動産そのものを受け入れられない場合があります。

不動産を寄付したい場合は、事前に寄付先へ確認し、必要に応じて生前に売却して預金にしておくことも検討します。

保険金を活用する場合

生命保険の受取人をどうするかも確認したい点です。

保険金は、遺言書とは別の扱いになることがあります。

団体や施設を受取人にできるかどうかは、保険会社や契約内容によって異なります。

寄付を考える場合は、保険会社にも確認しましょう。

一部だけ寄付する場合

すべての財産を寄付するのではなく、一定額や一部の財産だけを寄付することもあります。

たとえば、「預金のうち○万円を寄付し、残りは相続人へ残す」という考え方です。

この場合、寄付する財産だけでなく、残りの財産を誰が受け取るのかも明確にしておく必要があります。

借金やローンも確認する

寄付を考えるときは、プラスの財産だけでなく、借金やローンも確認します。

借金が残っている場合、財産を寄付する内容にしても、債権者への支払いが問題になることがあります。

住宅ローン、車のローン、カードローン、クレジットカード、連帯保証などを整理しておきましょう。

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おひとりさまが借金やローンを残す場合の注意点|相続への影響を解説

遺言書に書くときの注意点

寄付を目的として遺言書を作る場合は、内容をできるだけ明確にすることが重要です。

あいまいな表現では、亡くなった後に手続きが進みにくくなることがあります。

寄付先を特定できるように書く

遺言書には、寄付先の正式名称や所在地を記載し、どの団体や施設に財産を残すのかを明確にします。

通称や略称だけでは、後で特定に困ることがあります。

特に、同じような名称の団体がある場合は注意が必要です。

寄付する財産を明確にする

「財産を寄付する」とだけ書くと、どの財産を寄付するのか分からない場合があります。

預金、不動産、車、有価証券など、財産の種類に応じて、できるだけ特定できる形で書くことが大切です。

不動産の場合は、登記上の地番や家屋番号などを確認します。

預金の場合は、銀行名や支店名などを整理しておきます。

全財産を寄付する場合は遺留分に注意する

相続人によっては、遺留分という最低限の取り分が問題になることがあります。

配偶者、子ども、親などが相続人になる場合、全財産を寄付する遺言書を作ると、後で遺留分侵害額請求が問題になる可能性があります。

一方、兄弟姉妹には遺留分がありません。

ただし、自分の場合に誰が相続人になるかによって判断が変わります。

寄付を考える場合は、相続人と遺留分を確認してから遺言書を作成しましょう。

寄付先が受け取れない場合に備える

遺言書を作成した後、年月が経つと、寄付先の名称変更、合併、解散、事業内容の変更などが起こることがあります。

また、寄付先が財産の受け取りを辞退する可能性もあります。

そのため、第一希望の寄付先が受け取れない場合に備えて、別の寄付先や残った財産の扱いを考えておくことがあります。

付言事項で想いを伝える

寄付をする理由や、財産を社会のために役立てたい気持ちは、付言事項として書くことがあります。

付言事項は、財産の処分そのものとは別に、想いを伝える文章です。

親族がいる場合、なぜ寄付を選んだのかを書いておくことで、亡くなった後の誤解を減らせることがあります。

関連記事:
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遺言書に付言事項を書く意味とは?家族への想いの残し方

公正証書遺言を検討した方がよいケース

寄付を目的とする遺言書では、公正証書遺言を検討した方が安心なことがあります。

公正証書遺言とは、公証役場で公証人が関与して作成する遺言書です。

自筆証書遺言より費用や手間はかかりますが、形式不備や紛失のリスクを減らしやすい方法です。

特に、次のような場合は公正証書遺言を検討した方がよいです。

・親族ではない団体や施設に財産を残したい
・全財産または大部分を寄付したい
・不動産を含む寄付を考えている
・寄付先が複数ある
・親族と疎遠である
・相続人から反対される可能性がある
・遺留分が問題になりそう
・遺言書の紛失や無効が不安
・遺言執行者を指定したい
・確実に寄付を実現したい

自筆証書遺言でも寄付の内容を書くことはできます。

しかし、寄付先や財産内容が複雑な場合、書き方の不備や保管方法の問題で、希望どおりに実現できないことがあります。

おひとりさまが団体や施設に財産を残したい場合は、早めに内容を整理し、公正証書遺言にするか検討すると安心です。

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自筆証書遺言とは?自分で書く遺言書の基本を解説
公正証書遺言とは?メリットと作成の流れを解説

遺言執行者を指定しておく

遺言書で寄付をしたい場合は、遺言執行者を指定しておくことが重要です。

遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために手続きを進める人です。

寄付先に財産を渡すためには、預金の解約、不動産の手続き、寄付先との連絡、相続人への通知などが必要になることがあります。

遺言書を書くだけでは寄付は自動で完了しない

遺言書を作成しても、亡くなった後に誰かが実際の手続きを進めなければ、寄付は実現しません。

特におひとりさまの場合、身近な親族に手続きを頼みにくいことがあります。

寄付先が相続人ではない場合、手続きの窓口が不明確だと、寄付先も対応に困ることがあります。

寄付先との連絡役が必要になる

遺言執行者は、寄付先へ連絡し、必要書類や受け取り方法を確認します。

預金を寄付する場合、不動産を換価して寄付する場合、複数の団体へ分けて寄付する場合など、内容によって手続きが変わります。

寄付を確実に実現するためには、遺言執行者を誰にするかが大切です。

専門家を検討する場合もある

親族に頼みにくい場合や、相続人と寄付先の間で調整が必要になりそうな場合は、専門家を遺言執行者にすることを検討することがあります。

ただし、専門家に依頼する場合は費用がかかります。

財産内容、寄付先、相続人との関係を整理したうえで検討しましょう。

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遺言執行者とは?指定するメリットと役割を解説
遺言書作成が不安な方へ|専門家に相談する前に知りたいこと

死後事務や税金もあわせて考える

寄付を目的とする遺言書を作る場合、遺言書だけでなく、死後事務や税金のことも考えておく必要があります。

遺言書と死後事務は別の問題

遺言書は、主に財産の行き先を決めるものです。

一方で、亡くなった後には次のような手続きも発生します。

・葬儀や火葬
・納骨や永代供養
・病院や施設への支払い
・賃貸住宅の解約
・家財整理
・公共料金の解約
・スマホやサブスクの解約
・関係者への連絡

これらは、遺言書だけでは対応しきれないことがあります。

団体に財産を寄付する場合でも、葬儀や家財整理をその団体が行ってくれるとは限りません。

亡くなった後の事務手続きを誰に頼むかは、死後事務委任契約として別に考えることがあります。

寄付に使う財産と死後事務費用を分けて考える

全財産を寄付する内容にすると、葬儀費用、納骨費用、家財整理費用、未払い費用などの支払いに困ることがあります。

寄付を考える場合でも、死後事務に必要な費用を確保しておくことが大切です。

寄付先に残す財産と、死後の手続きに使う費用を分けて整理しましょう。

税金の確認も必要

遺贈寄付では、寄付先の種類、財産の内容、相続人の有無、不動産の有無などによって、税金の扱いが問題になることがあります。

相続税、譲渡所得、寄付先側の税務処理などが関係する場合もあります。

税金については、税理士に確認することが大切です。

行政書士は、遺言書作成の準備、相続人や財産の整理、死後事務委任契約などをサポートできますが、具体的な税額計算や税務判断は税理士の分野です。

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よくある失敗と注意点

おひとりさまが遺言書で寄付をしたい場合、よくある失敗を整理します。

寄付先に確認しないまま遺言書を書く

寄付先が遺贈を受け入れていない場合や、不動産を受け取れない場合があります。

遺言書を作る前に、寄付先へ受け入れの可否や記載方法を確認しましょう。

団体名をあいまいに書く

通称や略称だけで書くと、どの団体へ寄付するのか分からなくなることがあります。

正式名称、所在地、法人名を確認しておきましょう。

不動産を寄付すれば喜ばれると思っている

不動産は価値がある一方で、管理や売却の負担があります。

寄付先によっては、不動産の受け入れが難しいことがあります。

不動産を寄付したい場合は、必ず事前に確認しましょう。

全財産を寄付して死後事務費用を残していない

葬儀、納骨、家財整理、未払い費用などに使うお金が残っていないと、死後の手続きが進みにくくなります。

寄付と死後事務費用は分けて考えることが大切です。

遺留分を考えていない

親や子など、遺留分のある相続人がいる場合、全財産を寄付する内容にすると、後で問題になることがあります。

自分の場合に誰が相続人になるのか確認しましょう。

遺言執行者を決めていない

遺言書を書いても、誰が寄付の手続きをするのか決まっていないと、寄付先や相続人が困ることがあります。

遺言執行者を指定しておくことを検討しましょう。

税金を確認していない

寄付先や財産内容によって、税金の扱いが問題になることがあります。

不動産や高額な財産がある場合は、税理士にも確認しましょう。

まず取り組む順番

遺言書で寄付をしたい場合は、次の順番で整理すると進めやすくなります。

1. 相続人を確認する

親、兄弟姉妹、甥姪など、自分が亡くなった場合に誰が相続人になるか確認します。

2. 財産を一覧にする

預金、不動産、保険、車、借金、ローンなどを整理します。

寄付したい財産だけでなく、死後事務に必要な費用も考えます。

3. 寄付先を決める

団体、施設、自治体、NPOなど、どこに寄付したいかを考えます。

正式名称や所在地も確認しましょう。

4. 寄付先に受け入れを確認する

遺贈寄付を受け入れているか、現金以外の財産を受け取れるか、遺言書にどう書けばよいかを確認します。

5. 遺言書の内容を決める

誰に、どの財産を、どのように残すのかを整理します。

第一希望の寄付先が受け取れない場合の扱いも検討します。

6. 遺言執行者を決める

亡くなった後に、実際に寄付の手続きを進める人を決めます。

身近に頼める人がいない場合は、専門家への相談も検討します。

7. 死後事務と税金も確認する

葬儀、納骨、家財整理、解約手続き、税金の確認もあわせて行います。

必要に応じて、行政書士、税理士、司法書士、弁護士などに相談しましょう。

まとめ

おひとりさまが団体や施設に財産を寄付したい場合は、遺言書の活用が重要です。

遺言書がなければ、本人の希望とは違って、法律上の相続人が財産を引き継ぐことがあります。

特に確認したいのは、次の点です。

・自分の相続人が誰になるか
・寄付先が遺贈寄付を受け入れているか
・寄付先の正式名称や所在地
・預金、不動産、保険、借金などの財産内容
・現金で寄付するのか、不動産も含めるのか
・全財産を寄付するのか、一部だけ寄付するのか
・遺留分が問題になる相続人がいるか
・遺言執行者を誰にするか
・死後事務費用をどう確保するか
・税金について税理士に確認する必要があるか

寄付をしたいという気持ちは、遺言書で具体的に形にしておくことが大切です。

ただし、寄付先が受け入れられるか、どの財産を寄付するか、誰が手続きを進めるかを生前に整理しておかなければ、亡くなった後に希望どおり実現できないことがあります。

まずは、相続人、財産、寄付先、死後事務費用を確認するところから始めましょう。

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「遺言書に寄付の内容をどう書けばよいか相談したい」
「寄付先や遺言執行者をどう考えればよいか分からない」
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