自宅を残す・売る・貸す|終活で考えたい3つの選択肢

この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。

おひとりさまの終活では、持ち家を「残す」「売る」「貸す」のどれにするかで迷うことがあります。

長く暮らした家を簡単に手放したくない一方で、自分が住まなくなった後に空き家となり、親族へ管理や処分の負担を残すことも避けたいところです。

大切なのは、家への思いだけで決めるのではなく、今後どこで暮らすのか、誰が管理するのか、費用を負担できるのか、亡くなった後に誰が引き継ぐのかまで含めて考えることです。

この記事では、自宅を残す・売る・貸す場合の違いと、それぞれが向いているケースを解説します。

残す・売る・貸すの違いを先に確認

自宅の将来を考えるときは、次のように整理できます。

選択肢向いているケース主な注意点
残す自分が住み続けたい、引き継ぎたい人がいる管理する人、相続先、維持費を決める
売る管理負担を減らしたい、生活資金へ替えたい次の住まい、売却時期、荷物の整理が必要
貸す賃貸需要があり、管理を任せられる修繕、空室、賃貸管理、死後の引継ぎが必要

どの方法にもメリットと負担があります。

「売りたくないから残す」「収入になりそうだから貸す」と決めるのではなく、実際に管理できる人と費用があるかを確認することが重要です。

自宅を残す場合|誰が管理し、誰が引き継ぐかを決める

現在の自宅にできるだけ長く住み続けたい場合は、すぐに売却する必要はありません。

住み慣れた環境を維持できることや、将来、自宅を親族や世話になった人へ引き継げることが、自宅を残すメリットです。

ただし、自宅を残す場合は、「自分が住んでいる間」と「住まなくなった後」を分けて考える必要があります。

入院や施設入所後の管理

長期入院や施設入所によって自宅へ戻らなくなった場合でも、家の管理は続きます。

定期的な換気、郵便物の確認、庭木の手入れ、台風や大雨の後の確認などを、誰が行うか決めておきます。

固定資産税、火災保険、マンション管理費などの支払いも必要です。

亡くなった後の相続先

遺言書がなければ、法律上の相続人が自宅を含む財産について話し合うことになります。

おひとりさまの場合、疎遠な兄弟姉妹や甥、姪が相続人になることもあります。

自宅を特定の人へ引き継いでもらいたい場合は、遺言書の作成を検討します。

ただし、本人が残したいと思っていても、相手が家を欲しいとは限りません。

古い家、遠方の家、修繕が必要な家は、引き継いだ人にとって管理や処分の負担になる可能性があります。

自宅を残す場合に確認したいこと

  • 自分が住まなくなった後に管理する人
  • 固定資産税や修繕費の支払方法
  • 自宅を引き継いでほしい人
  • 引き継ぐ本人の意思
  • 家財や鍵をどう渡すか
  • 遺言書や遺言執行者が必要か

自宅を残すことは、何もしないことではありません。

残した後に困る人が出ないよう、管理と相続まで決めて初めて「残す」という選択が成立します。

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自宅を売却すると、固定資産税、修繕、庭の管理など、持ち家を維持する負担を減らせます。

売却代金を、賃貸住宅への住み替え、施設入所費用、老後の生活費などに充てることもできます。

一方で、自宅を売った後にどこで暮らすのかを先に決めておかなければなりません。

元気なうちに売却する場合

本人が契約内容を理解し、自分で判断できるうちに売却すれば、売却価格や引渡し時期を自分で決められます。

家財整理や引っ越しも、自分の希望に沿って進めやすくなります。

ただし、売却を急ぐと、次の住まいが決まらないまま退去日を迎えたり、慌てて家財を処分したりすることがあります。

まずは売却査定だけを受け、すぐに売るのではなく、住み替え後の生活費まで確認して判断する方法もあります。

施設入所後に売却する場合

施設へ入った後に自宅を売り、その代金を施設費用へ充てる方法も考えられます。

ただし、認知症などで判断能力が低下した後は、本人が自分で売買契約を結べない可能性があります。

「施設へ入ったら売ろう」と考えていても、その時点で手続きができるとは限りません。

売却の可能性がある場合は、元気なうちに家の名義、住宅ローン、必要書類、相談先を整理しておくことが大切です。

亡くなった後に売却してもらう場合

自宅を誰にも残さず、亡くなった後に売却して代金を分けてもらいたいと考える方もいます。

しかし、「死後に売ってほしい」とメモを残しただけでは、誰が売却手続きを進めるのか決まりません。

誰に自宅を相続させるか、売却後の代金を誰へ渡すか、遺言執行者を誰にするかなどを遺言書で整理する必要があります。

自宅を売る場合は、次の費用も見込んでおきます。

  • 不動産会社への仲介手数料
  • 登記や抵当権抹消に関する費用
  • 家財の片付け費用
  • 測量や修繕が必要な場合の費用
  • 売却によって税金が生じる場合の納税資金
  • 売却までにかかる固定資産税や管理費

売却価格だけを見るのではなく、必要経費を差し引いた後にいくら残るかを確認します。

自宅を貸す場合|収入だけでなく管理と死後の引継ぎを考える

自宅を貸す方法は、家を手放さずに賃料収入を得られる可能性があります。

施設へ入所した後も自宅を所有しておきたい方や、将来戻る可能性を残したい方にとって、選択肢の一つになります。

ただし、貸すことは、自宅の管理をしなくてよくなる方法ではありません。

貸主として、建物の修繕、設備故障への対応、契約更新、家賃滞納、退去後の原状回復などに対応する必要があります。

不動産管理会社へ委託する場合でも、管理費用や修繕費はかかります。

貸す前に収支を確認する

不動産会社から提示された賃料が、そのまま手元に残るわけではありません。

次の費用を差し引いても、貸すメリットがあるか確認します。

  • 管理会社へ支払う管理料
  • 固定資産税
  • 火災保険
  • 設備の修理・交換費用
  • 入居前の清掃や改修費用
  • 入居者がいない期間の負担
  • マンションの場合の管理費や修繕積立金

古い住宅では、貸し出す前にまとまった改修費が必要になることもあります。

賃料だけでなく、修繕費と空室期間を含めて収支を考える必要があります。

自分が対応できなくなった後を考える

高齢や病気によって判断や連絡が難しくなった場合、管理会社からの確認や修繕の判断を誰が行うかが問題になります。

管理会社へ任せていても、大規模修繕や売却など、所有者本人の判断が必要になる場面があります。

認知症への備えとして、任意後見契約や財産管理の方法を検討することもあります。

亡くなった後も賃貸関係は続く

自宅を貸した状態で所有者が亡くなった場合、賃貸中の建物と貸主としての立場は、相続の対象になります。

自宅を引き継ぐ人は、単に家を受け取るだけでなく、賃貸借契約や修繕対応も引き継ぐことになります。

そのため、「貸しておけば家が無駄にならない」と考えるだけでは不十分です。

貸す場合は、次の条件がそろっているか確認します。

  • 賃貸需要が見込める
  • 修繕費を含めても収支が成り立つ
  • 管理会社へ任せられる
  • 自分が対応できない場合の管理方法がある
  • 亡くなった後に引き継ぐ人が決まっている
  • 引き継ぐ人が貸主になることを了承している

どの選択肢が合うかは4つの基準で判断する

残す・売る・貸すのどれがよいかは、次の4点から考えます。

1.今後どこで暮らすのか

自宅に住み続けたいのか、将来は住み替えるのか、施設入所を考えているのかを整理します。

住み続けたい間は残し、施設入所など具体的な時期が来たら売却を検討する方法もあります。

2.自宅に資産価値や賃貸需要があるか

売却価格や賃料は、自分の希望だけでは決まりません。

地域、築年数、建物の状態、接道状況などによっては、売却や賃貸に時間がかかることがあります。

不動産会社へ相談するときは、売却査定だけでなく、賃貸に出した場合の賃料と必要な修繕も確認します。

3.管理する人がいるか

残す場合も貸す場合も、管理する人が必要です。

親族へ頼む場合は、本人に話をせず、終活ノートへ名前を書くだけでは足りません。

引き受けられるか、どこまで対応できるかを事前に確認します。

4.自分が判断できなくなった後を考えているか

自宅の売却、賃貸借契約、大きな修繕などには、所有者の判断が必要です。

亡くなった後の遺言だけでなく、認知症や病気によって判断が難しくなった場合も考えておきます。

この4点を整理すると、次のように判断しやすくなります。

  • 住み続けたい、引継ぎ先も決まっている
    → 残す方法を中心に考える
  • 将来の管理を頼める人がいない、生活資金へ替えたい
    → 売る方法を中心に考える
  • 賃貸需要があり、管理会社と引継ぎ先が決まっている
    → 貸す方法を検討できる

よくある失敗は方針だけ決めて実行方法を決めていないこと

自宅の終活では、次のような行き違いが起こります。

「甥に家を残す」と決めたが、本人へ話していない

甥が遠方に住んでいたり、すでに持ち家があったりすれば、引き継ぎを負担に感じる可能性があります。

自宅を残したい相手には、管理や売却の負担も説明したうえで意思を確認します。

貸せば毎月収入になると思っている

築年数が古い住宅では、貸す前の修繕や設備交換に費用がかかります。

空室期間や管理費用を考えると、売却した方が負担を減らせることもあります。

死後に売ってほしいと終活ノートへ書いただけ

終活ノートは本人の希望を伝えるためには役立ちますが、それだけで相続先や売却権限が決まるわけではありません。

死後の売却まで希望する場合は、相続人、遺言書、遺言執行者を含めて整理します。

家を複数の親族へ平等に残そうとする

複数人の共有名義になると、売却や賃貸などについて全員の意見を合わせる必要があります。

平等に残したつもりが、将来の管理や処分を難しくすることがあります。

自宅を一人に引き継ぎ、ほかの財産とのバランスを取る方法も検討します。

まだ決められない場合は売却と賃貸の両方を調べる

今すぐ残す・売る・貸すを決められなくても問題ありません。

最初に次の内容を調べるだけでも、選択肢を比べやすくなります。

  • 土地と建物の現在の名義
  • 住宅ローンや抵当権の有無
  • 固定資産税や年間の維持費
  • 売却した場合のおおよその価格
  • 貸した場合の賃料と必要な修繕
  • 自宅を引き継いでほしい人
  • 入院や施設入所後に管理できる人
  • 自宅関係の書類と鍵の保管場所

不動産会社には、売却査定だけでなく、賃貸に出せる物件かどうかも確認します。

行政書士には、自分の相続人、遺言書、任意後見契約、死後事務委任契約書など、自宅の方針を実現するために必要な書類や準備を相談できます。

司法書士による登記、不動産会社による売却や賃貸、家財整理事業者による片付けが必要な場合は、それぞれの専門家と連携して進めます。

まとめ

自宅を残す・売る・貸すのどれを選ぶかは、家への思いだけでなく、管理する人、費用、将来の住まい、相続先を含めて判断します。

自宅を残す場合は、住まなくなった後の管理と相続先を決めます。

売る場合は、売却後の住まいと生活資金を確認し、判断能力があるうちに準備を進めます。

貸す場合は、賃料だけでなく、修繕、空室、管理会社、亡くなった後の引継ぎまで考えます。

どの方法を選ぶ場合でも、方針だけをメモに残すのではなく、誰が、いつ、どのように実行するのかまで決めることが、自宅を負担として残さないための終活です。

おひとりさまの自宅・土地の終活について

いしかわ行政書士事務所では、愛知県三河地域(碧南市・西尾市・高浜市・安城市・刈谷市・岡崎市・豊田市・半田市など)を中心に、おひとりさまの自宅や土地に関する終活相談に対応しています。

自宅を誰に残すか、売却後の財産をどうするか、遺言書にどのように記載するか、判断能力が低下した場合に備えて何を準備するかなど、現在の状況と希望を整理します。

遺言書や契約書の作成を行い、不動産の売却、登記、賃貸管理、家財整理などが必要な場合は、対応する専門家や事業者と連携して進めます。

おひとりさま終活をご検討中の方や、まずは相談してみたい方は、料金やご依頼の流れなどをまとめた「おひとりさま終活のご依頼案内」もご覧ください。

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