
この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。
おひとりさまの中には、親族よりも、長年付き合いのある友人や内縁の相手、身近で生活を支えてくれた人へ財産を残したいと考える方もいます。
しかし、どれほど親しい関係であっても、親族以外の人が自動的に相続人になるわけではありません。
親族以外の人へ自宅や預金を残すには、原則として法律上有効な遺言書を作り、財産を渡す相手と内容を具体的に決めておく必要があります。
遺言書には、単に「世話になった人へ財産を渡す」と書くのではなく、誰に、どの財産を、どのように渡し、誰が手続きを進めるのかまで整理することが重要です。
この記事では、親族以外の人へ自宅や財産を残す場合の遺言書作成上の注意点を解説します。
親族以外の人へ財産を残すには遺言書で「遺贈」する
法律上の相続人になる可能性があるのは、配偶者、子どもや孫、両親や祖父母、兄弟姉妹、一定の場合の甥や姪です。
友人、知人、近所の方、内縁の相手などは、原則として法定相続人にはなりません。
そのため、親族以外の人へ財産を残したい場合は、遺言書によって財産を渡す「遺贈」を利用します。
財産を受け取る人は、相続人ではなく受遺者と呼ばれます。
遺言書では、一般的に次のような形で内容を整理します。
- 自宅と土地を特定の人へ遺贈する
- 特定の預金口座を遺贈する
- 預金のうち一定額を遺贈する
- 全財産または財産の一定割合を遺贈する
- 残った財産を別の人や団体へ遺贈する
- 遺言内容を実行する遺言執行者を指定する
遺言者は、遺留分に関する制限などを除き、遺言によって財産の全部または一部を処分できます(民法第964条)。
ただし、終活ノートや通常のメモへ希望を書いただけでは、遺言書としての法律上の方式を満たさない可能性があります。
親族以外の人へ確実に財産を残したい場合は、自筆証書遺言または公正証書遺言など、法律で定められた方式で作成する必要があります(民法第960条、第968条、第969条)。
遺言書を作る前に確認したい5つのこと
親族以外の人へ財産を残す場合は、文章を書き始める前に、次の5点を確認します。
1.財産を受け取る相手を特定できるか
遺言書には、受遺者の氏名だけでなく、住所や生年月日など、本人を特定できる情報を記載します。
同姓同名の人がいる場合や、遺言書作成後に相手が転居する可能性もあるため、氏名だけでは不十分な場合があります。
通称や呼び名ではなく、戸籍や住民票で確認できる正式な氏名を使用します。
2.相手に財産を受け取る意思があるか
本人にとって価値のある財産でも、相手が受け取りたいとは限りません。
特に自宅や土地を残す場合は、次の負担が生じることがあります。
- 固定資産税
- マンション管理費や修繕積立金
- 建物の修繕
- 庭木や雑草の管理
- 家財の片付け
- 所有権移転登記
- 将来の売却や賃貸
- 税金や手続費用
遺贈は、遺言書へ相手の名前を書けば必ず受け取ってもらえるものではありません。
受遺者が本人より先に亡くなった場合、原則としてその人への遺贈は効力を生じません(民法第994条)。
また、本人が亡くなった後に、受遺者が遺贈を放棄する可能性もあります。
自宅やまとまった財産を残す場合は、事前に相手へ説明し、受け取る意思を確認しておくことが大切です。
3.法律上の相続人と遺留分を確認したか
親族以外の人へ全財産を残す遺言書を作っても、一定の相続人には遺留分が認められる場合があります。
遺留分とは、配偶者、子ども、両親など一定の相続人に保障された最低限の取り分です(民法第1042条)。
遺留分を持つ相続人がいる場合、その相続人から受遺者へ金銭の支払いを求められる可能性があります。
一方、兄弟姉妹や甥・姪には、原則として遺留分がありません。
そのため、兄弟姉妹や甥・姪だけが相続人になる場合は、遺言書によって親族以外の人へ財産を残しやすいケースといえます。
ただし、自分では兄弟姉妹だけが相続人だと思っていても、戸籍上の子どもや養子、存命の親がいる可能性もあります。
遺言書を作る前に、必要に応じて戸籍を収集し、相続人を確認します。
4.財産の内容を正確に把握しているか
自宅、土地、預金、車、株式など、遺贈する財産を一覧にします。
借金、住宅ローン、未払金なども一緒に確認します。
特に不動産は、本人が住んでいても、次のような問題が隠れていることがあります。
- 土地と建物の名義が違う
- 亡くなった親の名義が残っている
- 兄弟姉妹との共有名義になっている
- 建物が未登記になっている
- 住宅ローンや抵当権が残っている
- 自宅以外に農地や山林がある
自分が所有していない部分まで、遺言書によって自由に処分することはできません。
まず登記事項証明書などで、土地と建物の現在の名義を確認します。
5.税金や手続費用を確認したか
親族以外の人が財産を受け取る場合、相続人が取得する場合より税負担や登記費用が大きくなることがあります。
相続税がかかる場合、配偶者や一親等の血族以外の人には、相続税額の2割加算が適用されることがあります。
自宅や土地の遺贈では、登録免許税や不動産取得税についても確認が必要です。
税金の扱いは、財産の種類、遺贈の方法、受遺者との関係などによって異なります。
不動産やまとまった財産を残す場合は、遺言書作成前に税理士や司法書士へ確認し、受遺者が費用を負担できるかも考えておきます。
自宅・預金を遺言書へ書くときの注意点
親族以外の人へ財産を残す場合は、どの財産を渡すのかが分かるように記載します。
自宅や土地を残す場合
不動産は、普段使っている住所だけでなく、登記事項証明書の記載に沿って特定します。
一般的には、土地については所在、地番、地目、地積、建物については所在、家屋番号、種類、構造、床面積などを確認します。
「自宅を友人の○○さんへ遺贈する」とだけ書くと、自宅に隣接する土地、共有持分、物置などが含まれるのか分からない可能性があります。
土地と建物は別々の不動産であるため、それぞれ確認して記載します。
また、自宅を受け取る人へ、次の内容も伝えておきます。
- 自宅の所在地と現状
- 土地と建物の名義
- 住宅ローンや抵当権の有無
- 固定資産税や管理費
- 家財や残置物の量
- 売却または利用の希望
- 権利証などの保管場所
自宅だけを残しても、片付け費用や固定資産税を支払う資金がなければ、受遺者が負担することになります。
必要に応じて、自宅と一緒に管理・片付け費用として使用できる預金も残す方法を検討します。
預金を残す場合
預金については、金融機関名、支店名、預金の種類、口座番号などを確認します。
ただし、遺言書作成後に口座を解約したり、別の支店へ変更したりすることもあります。
特定の口座だけを遺贈する場合は、その口座がなくなったときにどうするかも考えておきます。
預金残高は変動するため、一定額を残すのか、特定口座の全額を残すのか、財産全体の一定割合を残すのかを整理します。
車や家財を残す場合
自動車を残す場合は、車名、登録番号、車台番号などで車両を特定します。
家財については、「家の中にある物をすべて」と書いても、貴金属、現金、重要書類、思い出の品などの扱いが不明確になることがあります。
価値のある物や特定の人へ渡したい物は、品名や保管場所を整理します。
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遺言執行者と受取人が先に亡くなった場合も決めておく
親族以外の人へ財産を残す遺言書では、誰が手続きを進めるのかも重要です。
遺言執行者を指定する
遺言執行者は、遺言書の内容を実現するために必要な手続きを行う人です。
遺言書によって指定できます
親族以外への遺贈では、主に次のような手続きが必要になります。
- 法律上の相続人の確認
- 相続人や受遺者への連絡
- 預金の解約や払戻し
- 不動産の名義変更
- 遺贈する財産の引渡し
- 財産目録の作成
- 必要に応じた専門家への依頼
受遺者本人へ、すべての手続きを任せることが適切とは限りません。
法律上の相続人と受遺者の関係が良好でない場合や、不動産が含まれる場合は、専門家を遺言執行者に指定する方法も検討します。
受遺者が先に亡くなった場合を決める
遺言書を作成した時点では相手が元気でも、本人より先に亡くなる可能性があります。
その場合に備えて、次の受取人や財産の行き先を決めておく方法があります。
たとえば、次のように整理します。
- 第1の受遺者が先に亡くなっていた場合は、別の人へ遺贈する
- 受遺者が受取りを断った場合は、別の人へ遺贈する
- 最終的に受け取る人がいない場合は、団体へ寄付する
代わりの受取人を決めていなければ、本人の希望と異なる人へ財産が移る可能性があります。
財産を渡すことと死後の手続きを頼むことは分ける
友人へ自宅や預金を残したからといって、その人が当然に葬儀、納骨、家財整理、公共料金の解約まで行う義務を負うわけではありません。
亡くなった後の手続きを依頼したい場合は、相手の承諾を得たうえで、死後事務委任契約などを別に検討します。
財産を渡す遺言書と、死後の事務を依頼する契約書は、役割が異なります。
よくある失敗は「相手の名前を書けばよい」と考えること
親族以外の人へ財産を残す遺言書では、次のような失敗が起こりやすくなります。
受遺者を氏名だけで記載している
同姓同名の人がいる場合や、相続人がその人を知らない場合は、誰を指しているのか確認できない可能性があります。
住所、生年月日なども確認し、受遺者を特定します。
自宅を住所だけで記載している
普段使う住所と、登記上の地番や家屋番号は異なる場合があります。
土地と建物を分け、登記事項証明書の記載に沿って整理します。
相手へ何も伝えていない
遺言書によって突然自宅を遺贈されても、相手が管理費用を負担できないことがあります。
自宅の状態、税金、家財、手続費用を説明し、受け取る意思を確認します。
遺留分を確認していない
配偶者、子ども、両親など遺留分を持つ相続人がいる場合は、受遺者が遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
自分の相続人を確認したうえで、財産の配分を検討します。
遺言執行者を決めていない
受遺者が遺言書を見つけても、不動産や預金の手続きを一人で進められるとは限りません。
誰が相続人へ連絡し、財産を引き渡すのかまで決めておきます。
公正証書にしただけで内容は問題ないと思っている
公正証書遺言は、公証人が関与して作成し、原本が公証役場で保管されます。
ただし、財産の内容や相続関係、税負担、相手の意思まで自動的に整理されるわけではありません。
作成前に財産と相続人を確認し、実際に実行できる内容にする必要があります。
まとめ
親族以外の友人、知人、内縁の相手、世話になった人は、原則として法定相続人にはなりません。
自宅や預金を残すには、法律上有効な遺言書を作成し、財産を「遺贈する」必要があります。
遺言書を作る前に、次の内容を確認します。
- 財産を受け取る相手を特定できるか
- 相手に受け取る意思があるか
- 法律上の相続人と遺留分
- 自宅や預金などの財産内容
- 税金や登記費用
- 遺言執行者を誰にするか
- 受遺者が先に亡くなった場合の財産の行き先
- 死後の手続きを誰に依頼するか
特に自宅や土地を残す場合は、登記上の表示を確認し、固定資産税、修繕、家財整理などの負担も相手へ説明しておくことが大切です。
「世話になった人だから受け取ってくれるだろう」と考えるのではなく、本人の希望と受け取る人の事情を確認し、実際に財産を引き渡せる形まで準備しましょう。
おひとりさまの遺言書作成について
いしかわ行政書士事務所では、愛知県三河地域(碧南市・西尾市・高浜市・安城市・刈谷市・岡崎市・豊田市・半田市など)を中心に、親族以外の方へ自宅や財産を残したい方の遺言書作成に関するご相談に対応しています。
戸籍による相続人の確認、自宅・土地・預金などの財産整理、受遺者と遺贈内容の確認、遺言書原案の作成、公正証書遺言の作成準備などを行います。
不動産の登記、相続税、不動産取得税、相続人との争いなどが関係する場合は、司法書士、税理士、弁護士など、それぞれを担当する専門家と連携して進めます。
「友人へ自宅を残したい」「世話になった人へ預金を渡したいが、相手へ負担をかけないか不安」という段階でもご相談いただけます。

