
この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。
建設現場、解体工事、リフォーム工事、工場、事業所などから出る廃材や廃棄物を運ぶ場合、産業廃棄物収集運搬許可が必要になることがあります。
特に注意したいのは、トラックを持っているだけでは、他人の産業廃棄物を自由に運べるわけではないという点です。
また、運送業許可を持っている会社でも、産業廃棄物を運ぶ場合は、別に産業廃棄物収集運搬許可が必要になることがあります。
この記事では、産業廃棄物収集運搬許可とは何か、どのようなケースで必要になるのかを、初めての方にもわかりやすく解説します。
産業廃棄物収集運搬許可とは
産業廃棄物収集運搬許可とは、他人の産業廃棄物を業として集めたり、運んだりするために必要になる許可です。
産業廃棄物とは、事業活動に伴って発生する廃棄物のうち、法律で定められたものをいいます。
たとえば、次のようなものが代表例です。
・廃プラスチック類
・金属くず
・ガラスくず、コンクリートくず、陶磁器くず
・がれき類
・木くず
・紙くず
・繊維くず
・汚泥
・廃油
ただし、見た目だけで「これは産業廃棄物」「これは産業廃棄物ではない」と判断するのは危険です。
同じような物でも、どの事業から出たのか、どのような目的で扱うのかによって判断が変わることがあります。
産業廃棄物収集運搬許可で大切なのは、何を運ぶのか、誰の廃棄物を運ぶのか、どこからどこへ運ぶのかを整理することです。
許可が必要になる主なケース
産業廃棄物収集運搬許可が必要になりやすいのは、他社から依頼を受けて、他人の産業廃棄物を運ぶ場合です。
たとえば、次のようなケースです。
建設現場から廃材を運ぶ場合
建設工事、解体工事、リフォーム工事などでは、がれき類、金属くず、木くず、廃プラスチック類などが出ることがあります。
これらを元請けや他社から依頼されて処分場へ運ぶ場合、産業廃棄物収集運搬許可が必要になることがあります。
「現場から処分場まで運ぶだけだから大丈夫」と考えるのは危険です。
運搬だけでも、他人の産業廃棄物を業として運ぶのであれば、許可の確認が必要です。
工場や事業所から出る廃棄物を運ぶ場合
工場、整備工場、倉庫、事業所などから出る廃油、汚泥、金属くず、廃プラスチック類などを、他社から依頼されて運ぶ場合も注意が必要です。
通常の商品や資材ではなく、廃棄物として処理されるものを運ぶ場合は、産業廃棄物収集運搬許可の対象になる可能性があります。
処分場や中間処理施設まで運ぶ場合
産業廃棄物を処分場、中間処理施設、リサイクル施設などへ運ぶ場合も、許可の確認が必要です。
このときは、どこで積むのか、どこで降ろすのかが重要になります。
産業廃棄物収集運搬許可は、会社所在地だけで判断するのではなく、実際に積む場所と降ろす場所の都道府県を確認します。
下請業者や運送会社が廃棄物を運ぶ場合
建設現場などでは、元請け、下請け、運搬業者など複数の会社が関係します。
この場合、誰が排出事業者なのか、誰の廃棄物を誰が運ぶのかを整理しないと、許可の要否を判断しにくくなります。
「関係会社だから」「同じ現場だから」という理由だけで、許可が不要になるとは限りません。
関連記事:
産業廃棄物収集運搬許可が必要な業者とは?判断ポイントを解説
許可が不要になることがあるケース
産業廃棄物を運ぶ場合でも、必ず産業廃棄物収集運搬許可が必要になるわけではありません。
ただし、不要と考える場合でも、理由をきちんと整理しておく必要があります。
自社の産業廃棄物を自社で運ぶ場合
自社の事業活動で発生した産業廃棄物を、自社の車両で処分場へ運ぶ場合、産業廃棄物収集運搬許可が不要とされることがあります。
たとえば、自社工場から出た廃棄物を、自社で処分場へ持ち込むようなケースです。
ただし、許可が不要だからといって、何でも自由に運べるわけではありません。
廃棄物の保管、運搬方法、処分委託、マニフェストなど、別のルールが関係することがあります。
有価物として扱われる場合
金属くずなどを有価物として売却する場合、産業廃棄物ではなく資源物として扱われることがあります。
ただし、有価物か廃棄物かは、単に「お金が付くかどうか」だけで決まるものではありません。
物の状態、取引の実態、再利用の目的、処分費用の有無などを総合的に見て判断されます。
「少しでも値段が付けば産業廃棄物ではない」と単純に考えるのは危険です。
一般廃棄物の場合
家庭ごみや、事業活動から出る廃棄物でも産業廃棄物に当たらないものは、一般廃棄物として扱われることがあります。
一般廃棄物は、産業廃棄物収集運搬許可とは別の制度で考える必要があります。
産業廃棄物収集運搬許可を持っていても、一般廃棄物を自由に運べるわけではありません。
関連記事:
産業廃棄物と一般廃棄物の違いとは?収集運搬許可との関係を解説
運送業許可とは別に考える
運送会社で特に誤解しやすいのが、運送業許可があれば産業廃棄物も運べるという考え方です。
運送業許可は、他人の貨物を有償で運ぶための許可です。
一方、産業廃棄物収集運搬許可は、他人の産業廃棄物を収集・運搬するための許可です。
つまり、見ている対象が違います。
運送業許可
通常の貨物を有償で運ぶための許可です。
産業廃棄物収集運搬許可
産業廃棄物を収集・運搬するための許可です。
同じトラックを使う場合でも、運ぶものが通常の荷物なのか、産業廃棄物なのかで必要な許可が変わります。
たとえば、工場の製品を運ぶ場合と、工場から出た廃棄物を処分場へ運ぶ場合では、同じ車両でも考え方が違います。
また、産業廃棄物収集運搬許可があれば、一般貨物自動車運送事業の許可が不要になるという意味でもありません。
運ぶもの、契約内容、報酬の有無、事業の実態によって、必要な許可を分けて確認する必要があります。
関連記事:
運送業許可があれば産業廃棄物を運べる?違いをわかりやすく解説
よくある失敗と注意点
産業廃棄物収集運搬許可でよくある失敗は、現場の感覚だけで「許可はいらない」と判断してしまうことです。
特に次のようなケースは注意が必要です。
他社の廃棄物なのに自社のものとして扱ってしまう
建設現場では、元請け、下請け、協力会社などが関係します。
そのため、現場で出た廃材が誰の廃棄物なのか分かりにくくなることがあります。
自社の工事で出たものなのか、元請けの廃棄物なのか、他社から依頼されて運ぶものなのかを整理しないまま運ぶと、許可が必要だったということがあります。
運送業許可と混同してしまう
青ナンバーのトラックを持っている会社でも、産業廃棄物を運ぶには別の確認が必要です。
通常の貨物運送と同じ感覚で産業廃棄物の仕事を受けると、必要な許可を見落とす可能性があります。
許可を取る都道府県を間違える
産業廃棄物収集運搬許可は、どこで積み、どこで降ろすかが重要です。
たとえば、愛知県で積んで岐阜県の処分場へ運ぶ場合、関係する都道府県の許可を確認する必要があります。
会社所在地の許可だけで足りるとは限りません。
なお、単に通過するだけの県については、通常、積み降ろしがなければ許可の対象とは考えません。
ただし、実際の運搬内容によって確認が必要になることもあるため、事前に整理しておくと安心です。
許可品目を確認していない
産業廃棄物収集運搬許可は、許可を取ればどの産業廃棄物でも運べるというものではありません。
廃プラスチック類、金属くず、がれき類、汚泥、廃油など、運ぶ廃棄物の種類ごとに許可品目を確認する必要があります。
許可を持っていても、運ぼうとしている品目が含まれていなければ問題になります。
必要かどうか判断するときの確認ポイント
産業廃棄物収集運搬許可が必要か判断するときは、次の順番で整理すると分かりやすくなります。
1. 運ぶものは廃棄物か
まず、運ぶものが廃棄物に当たるかを確認します。
廃材、がれき、金属くず、廃プラスチック類、汚泥、廃油など、事業活動から出るものは注意が必要です。
2. 産業廃棄物に当たるか
廃棄物の中でも、産業廃棄物に当たるものか、一般廃棄物として考えるものかを確認します。
ここを間違えると、必要な許可の種類を誤る可能性があります。
3. 誰の廃棄物を運ぶのか
自社で出した廃棄物なのか、他社から依頼された廃棄物なのかを確認します。
他人の産業廃棄物を運ぶ場合は、産業廃棄物収集運搬許可が必要になる可能性が高くなります。
4. どこで積み、どこで降ろすのか
積む場所と降ろす場所の都道府県を確認します。
産業廃棄物収集運搬許可は、会社の所在地だけでなく、実際の運搬内容に合わせて確認する必要があります。
5. どの品目を運ぶのか
運ぶ産業廃棄物の種類を確認します。
許可申請では、取り扱う品目を整理する必要があります。
許可後も、許可品目に含まれていないものは運べないため、最初の確認が重要です。
まとめ
産業廃棄物収集運搬許可とは、他人の産業廃棄物を業として収集・運搬するために必要になる許可です。
建設現場、解体工事、リフォーム工事、工場、事業所などから出る廃材や廃棄物を運ぶ場合、許可が必要になることがあります。
特に注意したいのは、次の点です。
・他人の産業廃棄物を運ぶ場合は許可が必要になりやすい
・自社の廃棄物を自社で運ぶ場合は許可不要となることがある
・運送業許可があっても産業廃棄物を自由に運べるわけではない
・産業廃棄物と一般廃棄物は別に考える
・積む場所と降ろす場所の都道府県を確認する
・許可品目に含まれる廃棄物か確認する
産業廃棄物収集運搬許可は、「トラックで運ぶかどうか」ではなく、「誰の廃棄物を、どの立場で、どこからどこへ運ぶのか」で判断する手続きです。
産業廃棄物を運ぶ予定がある場合は、契約前や運搬開始前に、許可が必要かどうかを確認しておくことをおすすめします。
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