この記事は、いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令・公的機関の情報を確認して作成しています。
川の近くの土地に、
「家を建てたい」
「擁壁をつくりたい」
「敷地を造成して建物を建てたい」
というとき、河川法第55条の許可が関係することがあります。
特に土地を調べて、
「河川保全区域」
と分かった場合、
「区域内なら建物は全部許可?」
「木造住宅でも必要?」
「擁壁だけでも河川法にかかる?」
と迷いやすいところです。
結論からいうと、河川保全区域内だから、すべての建物・工作物に必ず55条許可が必要になるわけではありません。
河川法第55条では、
- 土地の掘削・盛土・切土など
- 工作物の新築・改築
が原則として許可対象です。
一方、河川法施行令第34条には、一定条件を満たせば許可を要しない行為も定められています。
そのため、最初から、
河川保全区域=許可
と決めるのではなく、
どこに、何を、どのような構造でつくるのか
まで確認します。
まず「川の近く」ではなく河川保全区域か確認する
河川保全区域は、川沿いの土地すべてを一律に指すものではありません。
河川管理者が、河岸や堤防などの河川管理施設を保全するために必要な区域として指定します。
河川法上、区域は河川区域に隣接して指定されます。
したがって、
「川から20mくらいだから河川保全区域」
「川が敷地の裏にあるから55条」
とは判断できません。
まず、
河川名
河川管理者
河川区域界
河川保全区域の指定有無・幅
を確認します。
愛知県でも河川によって指定状況は異なります。
たとえば知立建設事務所が管理する境川・逢妻川では、両岸の河川区域界から18m以内が河川保全区域です。
西三河建設事務所が管理する乙川でも、一定区間について河川区域から18mが河川保全区域に指定されています。
つまり、河川ごと・区間ごとの確認が先です。
河川区域と河川保全区域は別
ここも混同しやすいところです。
河川区域内で工作物を設置する場合には、
河川法第24条
河川法第26条
河川法第27条
などが関係します。
一方、その外側に指定された河川保全区域で、
土地の形状変更や工作物の新築・改築を行う場合に問題になるのが、
河川法第55条
です。
そのため、計画位置が河川区域内まで入っているなら、
「55条だけ申請」
では足りない可能性があります。
まず図面上で、
河川区域線
と
河川保全区域線
を確認します。
河川法55条では何が許可対象になる?
河川法第55条第1項では、河川保全区域内の次の行為を原則として許可対象としています。
土地の形状変更
掘削
盛土
切土
その他土地の形を変える行為
です。
そしてもう一つが、
工作物の新築・改築
です。
建物だけではありません。
擁壁
塀
水路
井戸
水槽
なども、内容によって工作物として確認します。
つまり、
「建物を建てなければ55条は関係ない」
とは限りません。
ただし一定の行為は許可不要
河川法施行令第34条には例外があります。
まず耕耘は許可不要です。
さらに、河川管理施設の敷地から5mを超える土地では、一定の軽微な行為について許可不要となるものがあります。
代表的なのは、
- 一定範囲の盛土
- 一定範囲の掘削・切土
- 一定の工作物の新築・改築
です。
ここからが、建物や擁壁を計画するときに重要になります。
「河川から5m」ではなく基準となる位置を確認する
5mという数字だけを見ると、
「水際から5m?」
「堤防の端から5m?」
と迷います。
法令上は、
河川管理施設の敷地からの距離
が基準です。
実際の申請資料では、河川区域界や堤防との位置関係を図面上で示します。
そのため、
現地で川の水面からメジャーを当てて、
「5m以上あるから不要」
とは判断しません。
境界や河川管理施設との位置関係を、河川管理者へ確認します。
建物を建てる場合は構造で答えが変わる
建物については、
河川保全区域内=全部55条許可
ではありません。
河川管理施設から一定距離を超えており、施行令34条の条件を満たす工作物なら、許可不要となる場合があります。
木造・軽量鉄骨だから必ず許可不要ではない
愛知県の案内では、河川管理施設から5mを超える場所における工作物について、
木造
軽量鉄骨造
などの「堅固でない工作物」は、一定条件を満たせば許可不要となる例が示されています。
一方、
コンクリート造
石造
れんが造
重量鉄骨造
などの堅固な工作物は、許可不要となる工作物の範囲から外れます。
ただし、
木造住宅だから55条不要
と構造だけで判断してはいけません。
建築するために、
深く基礎を掘削する。
盛土して宅地を高くする。
水槽・井戸などを設ける。
という工事があれば、それぞれ別の条件を確認します。
建物本体より基礎工事で許可が必要になることもある
たとえば木造住宅自体が許可不要となる条件を満たしていても、
基礎工事で深く掘削する場合があります。
施行令34条では、河川管理施設の敷地から5mを超える堤内地について、
地表から深さ1m以内の掘削・切土
は許可不要となる範囲に含まれます。
逆にいえば、
基礎
杭
地盤改良
地下構造物
などでこれを超える工事をする場合は、工作物の構造だけでなく土地の掘削として55条を確認します。
つまり、
建物は許可不要でも、その建物をつくる工事が許可対象
ということがあり得ます。
擁壁をつくる場合は建物より許可対象になりやすい
擁壁の場合は注意が必要です。
一般的な鉄筋コンクリート擁壁などは、
堅固な工作物
です。
そのため、河川管理施設から5mを超えているからといって、
「工作物の許可不要条件に入る」
とは限りません。
むしろ河川保全区域内でコンクリート擁壁を新築・改築する場合は、55条許可を確認することになります。
擁壁は「壁」だけでなく裏側の造成を見る
擁壁をつくる場合には、
コンクリート擁壁そのもの
だけを見るのではありません。
擁壁をつくるために、
掘削する。
地盤を切る。
裏側へ盛土する。
基礎を深く入れる。
という工事を伴います。
そのため、
工作物の新築
と
土地の形状変更
の両方から55条を確認することがあります。
「高さ1mの擁壁だから大丈夫」
「敷地境界に置くだけだから大丈夫」
とは判断できません。
河川区域界から5m以内ならさらに慎重に確認する
河川法施行令34条の許可不要規定のうち、盛土・切土・工作物等に関する例外は、
原則として河川管理施設の敷地から5mを超える土地
を前提としています。
そのため、5m以内では、
耕耘以外について許可が必要となる範囲が大きくなります。
たとえば、
浅い掘削。
低い盛土。
軽量な工作物。
だからといって、5m以内で同じ免除条件を使えるとは限りません。
川に近いほど、
行為の規模より先に位置
を確認します。
盛土は3m以内なら全部許可不要?
これも違います。
施行令34条では、5mを超える堤内地について、
地表から高さ3m以内の盛土
が一定条件のもと許可不要となります。
ただし、
堤防に沿って行う盛土で、その長さが20m以上
のものは除かれます。
また、5m以内ならこの例外をそのまま使えません。
さらに、建物や擁壁を伴うなら工作物側の確認も残ります。
したがって、
「盛土2mだから55条不要」
とは一つの数字だけで判断できません。
掘削は1m以内なら全部許可不要?
これも同じです。
5mを超える堤内地で、
地表から深さ1m以内の掘削・切土
なら許可不要となる規定があります。
ただし、
河川管理施設から5m以内。
1mを超える基礎掘削。
深い地盤改良。
地下構造物。
などがあれば別です。
建物の場合は、
完成した建物の高さより、地下へどこまで入るか
が河川保全上重要になることがあります。
「許可が必要か」と「許可されるか」は別
ここが河川法55条で特に重要です。
許可対象だと分かったからといって、
申請すれば自動的に許可されるわけではありません。
愛知県は55条許可について、
河岸または河川管理施設の保全上、支障を生じるおそれがないか
を審査するとしています。
つまり、
許可要否
↓
許可対象
となった後に、
その位置・基礎・構造で堤防等へ影響しないか
という審査があります。
河川から離れていても地下基礎が問題になることがある
建物や擁壁は、地上部分だけで判断しません。
国土交通省中部地方整備局の河川保全区域に関する資料では、
堤防との距離だけでなく、
堤脚から地下方向へ引いた2割勾配の線との位置関係
などを重要な審査の視点としています。
いわゆる「2Hルール」です。
同資料では、堤脚からの距離や工作物の深さによって、堤防へ影響する範囲を判断する考え方が示されています。
ただし、すべての河川について機械的に同じ数字を当てはめるものではありません。
地形・地質・堤防構造などによって個別判断されます。
そのため、
「河川区域から10m離れているから大丈夫」
という平面的な距離だけでは判断しません。
横断図で地下まで含めて確認する
ことが重要です。
住宅なら建築確認だけ取ればいい?
河川保全区域内では、建築確認と河川法55条は別の手続です。
愛知県も、
通常の建築手続とは別に河川管理者の許可が必要になる場合がある
と案内しています。
つまり、
建築確認が通る予定。
建築士が設計している。
土地は自分の所有地。
ということだけでは河川法の確認は終わりません。
設計段階で河川保全区域だと分かったら、
建築確認を進める前後に、
55条許可の要否と設計条件を確認
します。
擁壁なら盛土規制法も一緒に確認する
河川保全区域で擁壁をつくる場合には、河川法だけで完結しないことがあります。
たとえば、
擁壁をつくって宅地造成する。
大きな盛土・切土を行う。
という工事なら、
盛土規制法
も別に関係する可能性があります。
河川法55条では、
河岸・堤防など河川管理施設への影響。
盛土規制法では、
盛土・切土・崖等の安全性。
を確認します。
目的が違う制度なので、
55条許可を取れば盛土規制法も終わり
ではありません。
開発許可が必要な造成でも河川法は別に確認する
土地を造成して、
住宅地
店舗
工場
倉庫
などを計画する場合、都市計画法の開発許可が関係することがあります。
この場合も、
開発許可
=
河川法55条許可
ではありません。
愛知県の河川法55条申請資料でも、他法令の許可等が関係する場合には、その許可書等や申請状況に関する資料を求めています。
つまり、
同じ造成計画を別々の行政手続から審査する
ことがあります。
河川保全区域内で建物を計画するときの確認順
「土地が河川保全区域かもしれない」という段階なら、次の順番で見ると整理しやすくなります。
まず、
河川名と河川管理者を確認
します。
次に、
河川区域界と河川保全区域を確認
します。
そのうえで、
建物や擁壁までの距離。
基礎の深さ。
盛土・切土の高さ。
工作物の構造。
を確認します。
そして、
施行令34条の許可不要行為に当たるか
を判定します。
許可対象なら、
堤防や河岸との断面上の位置関係まで含めて事前相談します。
事前相談には建物・擁壁の位置だけでなく断面が重要
愛知県の河川保全区域の事前相談では、
実測平面図
横断面図
公図
現況写真
などを用意するよう案内しています。
建物の場合は、
住宅の配置。
河川区域との距離。
基礎。
地盤改良。
地下埋設物。
なども確認材料になります。
擁壁の場合なら、
擁壁位置。
高さ。
基礎深さ。
盛土・切土。
河川との距離。
などです。
つまり、
「この地番は河川保全区域ですか?」だけでなく、「この断面でこの工作物をつくりたい」まで示す
と具体的な相談ができます。
関連記事
河川区域に工作物を設置するときの許可|河川法24条・26条とは
まとめ
河川保全区域内で建物・擁壁をつくる場合、
河川法55条の許可が必要になることがあります。
ただし、
河川保全区域内
=
何をしても必ず55条許可
ではありません。
確認するのは、
河川保全区域の指定
河川管理施設からの距離
盛土・切土・掘削の規模
工作物の構造
基礎や地下部分
堤防・河岸との位置関係
です。
特に木造・軽量鉄骨などの建物では、河川管理施設からの距離や工事内容によって許可不要となる場合があります。
一方、コンクリート擁壁などの堅固な工作物は、河川保全区域内なら55条許可を確認する必要性が高くなります。
さらに重要なのは、
許可が必要か
と
その位置・構造で許可基準を満たせるか
は別ということです。
河川からの平面的な距離だけでなく、基礎・杭・擁壁など地下部分と堤防との断面的な位置関係まで確認します。
そのため、建物や擁壁の設計を完成させてから河川法を確認するのではなく、
配置・基礎・造成計画を変更できる段階で河川管理者へ事前相談する
方が手戻りを減らしやすくなります。
三河の河川法55条・河川関係手続をご相談ください
いしかわ行政書士事務所では、碧南・西尾・高浜・安城・刈谷・岡崎を中心とした三河エリアで、河川法に関する許認可手続をサポートしています。
土地の所在地・河川管理者・計画図面を確認し、河川法55条の要否整理から行政窓口との事前相談、必要な申請書類の作成・提出まで対応します。河川区域まで工事が及ぶ場合や、盛土規制法・開発許可など別手続が関係する場合もあわせて整理します。
建物・擁壁の位置や基礎構造を固め切る前にご相談ください。
お気軽にお問い合わせください
0566-68-5511
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出典
愛知県|河川保全区域内の行為の許可, 愛知県|河川保全区域における行為の許可に関すること, 愛知県|河川保全区域内で住宅建築等を行う場合の案内, 愛知県|よくあるご質問と回答(知立建設事務所), 愛知県|西三河建設事務所 河川管理について, 国土交通省中部地方整備局|河川保全区域で許可が必要な行為, e-Gov法令検索|河川法
この記事は、2026年9月時点の河川法・愛知県・国土交通省等の公的情報をもとに作成しています。
