この記事は、いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令・公的機関の情報を確認して作成しています。
河川区域内の土地で、
「地面を掘りたい」
「土を入れて高さを上げたい」
「法面を切って平らにしたい」
という工事をするとき、河川法第27条の許可が関係することがあります。
結論からいうと、河川区域内で、
掘削
盛土
切土
その他土地の形状を変更する行為
をする場合は、原則として河川法27条の許可を確認します。
ただし、
河川区域で土を動かす=すべて27条
ではありません。
特に重要なのが、
その掘削・盛土・切土を何のために行うのか
です。
工作物を設置するための工事なのか。
土地そのものを造成する工事なのか。
ここで26条と27条の扱いが変わります。
河川法27条は「土地そのものを変える」許可
河川法27条は、河川区域内の土地について、
土地の掘削
盛土
切土
その他の土地の形状変更
などを規制する条文です。
たとえば、
河川敷を掘り下げる。
土地を盛って高くする。
法面を削る。
平場を造成する。
といった行為です。
さらに竹木の植栽・伐採も27条の対象に含まれます。
河川区域では、こうした土地の変更が、
流水の方向や速度を変える。
河川管理施設へ影響する。
洪水時の流れを妨げる。
といった可能性があるため、河川管理者が事前に確認します。
自分の土地でも27条は必要になる
ここは河川法で特に勘違いしやすいところです。
「自分の土地だから自由に盛土できる」
とは限りません。
土地の所有権と、
河川区域として受ける規制
は別です。
河川区域に入っている土地なら、民有地であっても、掘削・盛土・切土などについて27条許可が必要になることがあります。
つまり、
土地の名義が自分。
固定資産税も払っている。
というだけでは河川法の確認は終わりません。
最初に確認するのは、
その土地が河川区域内かどうか
です。
河川保全区域の55条とは基準が違う
前の記事で扱った河川法55条は、
河川区域の外側に指定された河川保全区域
での土地形状変更や工作物設置を規制する条文です。
一方、27条は、
河川区域そのもの
が対象です。
ここで注意したいのが、許可不要となる行為の違いです。
河川保全区域の55条では、一定条件のもと、
河川管理施設から5mを超えた場所での一定規模の盛土・掘削など
に許可不要となる基準があります。
しかし、その数字を、
河川区域内の27条へそのまま当てはめることはできません。
27条には別の許可不要規定があります。
「盛土3m以内なら不要」は27条には使わない
たとえば、
「盛土は2mだから許可不要ですよね?」
という考え方です。
これは河川保全区域の55条で出てくる基準と混同している可能性があります。
河川区域内の27条では、
一般的な盛土について、
3m以内だから一律許可不要
という規定にはなっていません。
そのため、
河川区域内で50cmだけ盛る。
1mだけ削る。
という小規模な工事でも、
「小さいから27条不要」
と自己判断しない方がよいでしょう。
27条で許可不要となる「軽易な行為」はかなり限定されている
河川法施行令では、27条の許可を要しない軽易な行為が定められています。
代表的なのは、
河川管理施設から一定距離以上離れた土地での耕耘。
許可を受けた取水口・排水口付近にたまった土砂の除去。
一定区域外での竹木伐採。
河川管理者が治水・利水への影響が少ないと指定した行為。
などです。
つまり、
一般的な造成について、
「少しだけなら軽易な行為」
と広く除外しているわけではありません。
駐車場造成や土地のかさ上げなどは、個別に確認した方がよいでしょう。
工作物をつくるための掘削なら27条を別に取らないことがある
ここが27条で最も重要なところです。
河川区域内で工作物を、
新築
改築
除却
する場合には、河川法26条の許可が関係します。
たとえば、
排水管を設置する。
橋を設置する。
護岸に階段を設ける。
水路や構造物を設ける。
といった工事です。
こうした26条許可の対象となる工作物を施工するためには、
基礎を掘る。
埋め戻す。
周囲を整形する。
ことがあります。
河川法27条は、
26条許可の対象となる行為のために行う土地形状変更を対象から除いています。
つまり、
工作物を設置するために当然必要となる掘削について、
26条許可に加えて同じ工事のための27条を重ねて取る、
という扱いにはしません。
ただし工作物工事と関係ない造成まで26条に含まれるとは限らない
たとえば河川区域内へ排水管を設置するとします。
排水管の基礎を掘る。
埋め戻す。
ここは26条の工作物工事として整理できます。
一方で、その工事と一緒に、
周囲500㎡を盛土して駐車場にする。
法面を大きく削って平場を作る。
という造成まで行うなら話は別です。
その造成が、
工作物を設置するために必要な工事なのか
それとも、
独立した土地の形状変更なのか
を分けます。
後者なら27条を別に確認する必要があります。
つまり、
「26条を取るから27条は全部不要」
でもありません。
掘削の目的で26条か27条かを分ける
同じ「2m掘る」という工事でも、
何のために掘るかで変わります。
たとえば、
排水管を埋設するために掘る
→ 26条の工作物設置との関係を確認
土地そのものを低くするために掘る
→ 27条
河川敷を整地するために掘る
→ 27条
という違いです。
つまり27条の相談では、
何m掘るか
より先に、
なぜ掘るか
を明確にします。
盛土も「何のためか」で整理する
盛土でも同じです。
たとえば、
工作物設置後の必要な埋戻し。
河川敷を駐車場にするためのかさ上げ。
法面の形を変えるための盛土。
では性質が違います。
26条で許可を受ける工作物工事に付随するものなのか、
土地そのものを変更することが目的なのか。
ここを最初に分けます。
河川区域内の「整地」も確認する
「掘削や盛土はしない。少し平らにするだけ」
というケースもあります。
しかし27条は、
掘削
盛土
切土
だけでなく、
その他土地の形状を変更する行為
も対象です。
そのため、
重機で地盤をならす。
凹凸を削る。
一部へ土を寄せて平坦化する。
という工事も、内容によって土地形状変更として確認します。
「造成ではなく整地と呼んでいるから不要」
とは限りません。
砂利を取るために掘る場合は別制度との関係もある
河川区域内で砂利や土石を採取する場合には、
河川法25条や砂利採取法など、別の制度が関係することがあります。
さらに、その採取によって土地の形状も変わります。
そのため、
「掘削だから27条だけ」
とは限りません。
何を目的として掘るのかによって、
関係条文が変わります。
24条・26条・27条は役割が違う
河川区域内の工事では、
24条
26条
27条
が一緒に出てくることがあります。
大まかに整理すると、
| 条文 | 主に確認すること |
|---|---|
| 河川法24条 | 河川区域内の土地を占用する |
| 河川法26条 | 工作物を新築・改築・除却する |
| 河川法27条 | 土地を掘削・盛土・切土等する |
ただし、
「工事に3つ関係するから3申請」
とは限りません。
工作物設置のための土地形状変更は26条との関係で整理されます。
逆に、土地造成が独立していれば27条が残ります。
工事目的ごとに分けること
が重要です。
河川区域内の民有地では24条がなくても27条は残ることがある
河川区域の中には、民有地が含まれていることがあります。
河川法24条の土地占用については、土地の権原や管理状況によって対象が変わります。
そのため、
自分が権原を持つ民有地なら24条の占用許可が問題にならない場合があります。
しかし、
だから河川法の許可が全部不要になるわけではありません。
土地の形を変えるなら27条。
工作物を設置するなら26条。
という確認は別に残ります。
「24条がいらない」
=
「河川法手続なし」
ではありません。
27条では何を審査される?
愛知県では、河川区域内の土地の掘削等について、
その工事によって、
流水の方向や流速が変わり、
河川管理施設や許可工作物を損傷するおそれがないか。
流水を著しく汚濁し、
他の河川利用を著しく阻害しないか。
などを確認します。
また、
土地を掘削等する権原。
他法令の許可。
申請者が事業を実施できる能力・信用。
など、工事の実現性も審査対象になります。
つまり、
土地をどう変えるかだけでなく、その工事が河川管理へどう影響するか
まで説明する申請です。
「許可が必要」と分かっても必ず許可されるわけではない
27条に該当した場合、
申請書を出せば必ず許可される
わけではありません。
河川法には、
掘削・盛土・切土によって、
河川管理施設や許可工作物が損傷し、
河川管理上著しい支障が生じると認められる一定区域については、
許可してはならない旨の規定もあります。
つまり、
27条に該当するか
と
その造成計画で許可を受けられるか
は別です。
河川に近い工事ほど、計画を固める前に河川管理者へ相談する意味があります。
河川区域の境界を先に確認する
27条を考えるうえで、
最初から造成図を細かく作るより先に確認したいのが、
河川区域の境界
です。
現地で、
川岸から○m。
堤防から○m。
という見た目だけでは、河川区域かどうか判断できないことがあります。
まず、
河川名。
管理者。
河川区域界。
を確認します。
工事の一部だけ河川区域に入る場合には、
区域内部分と区域外部分を分けて整理します。
河川区域と河川保全区域をまたぐ工事もある
たとえば造成範囲が広く、
一部は河川区域。
その外側は河川保全区域。
というケースがあります。
この場合、
河川区域内の土地形状変更
→ 27条
河川保全区域内の土地形状変更
→ 55条
というように、区域ごとに関係条文が変わる可能性があります。
申請図面でも、
どこが河川区域で、どこが河川保全区域なのか
を分けて示した方がよいでしょう。
造成面積だけでなく深さ・高さも整理する
27条申請では、
どの土地を何㎡変更するのか。
何m掘るのか。
何m盛るのか。
どれだけ切土するのか。
を具体的にします。
申請様式でも、
行為の種類。
掘削・切土の深さ。
盛土の高さ。
などを記載します。
そのため、
「河川敷を整地します」
だけでは不足します。
現況と計画の違いを数値で示す
必要があります。
工事前後が分かる平面図・断面図が重要
掘削・盛土の申請では、
図面上で、
施工範囲。
面積。
掘削深。
盛土高。
河川や堤防との位置関係。
を説明します。
特に高低差を変える工事では、
平面図だけでなく断面図が重要です。
造成前
↓
造成後
が分かるようにしておくと、
27条の対象部分を説明しやすくなります。
駐車場にしたい場合も27条だけとは限らない
たとえば河川区域内の土地を盛土・整地して、
駐車場として使いたい
とします。
この場合、
土地の形状変更
→ 27条
土地を継続的・排他的に使う
→ 24条の確認
車止めやフェンス等を設置する
→ 26条の確認
というように複数の条文が関係する場合があります。
したがって、
盛土だから27条だけ
とは限りません。
利用目的まで含めて河川管理者へ示します。
排水管を設置する工事なら27条の扱いが変わる
たとえば敷地から河川へ排水するため、
河川区域内を掘削して排水管を設置する
とします。
この場合、主たる工事は、
工作物である排水管の設置
です。
そのため26条許可を確認します。
排水管を設置するために必要な掘削は、27条で別に許可を取るのではなく、26条許可に係る行為として整理します。
一方、排水管設置とは関係なく、
周囲を大きく盛土する。
河川敷を造成する。
なら、その部分は27条を確認します。
この違いを押さえると、26条と27条を分けやすくなります。
土地を掘削・盛土する前の確認順
河川区域内で土地を動かしたいなら、次の順番で整理すると分かりやすくなります。
河川区域か確認
↓
工事の目的を確認
↓
工作物設置が主目的なら26条を確認
↓
土地そのものの造成なら27条を確認
↓
土地占用があるなら24条も確認
↓
河川保全区域まで工事が及ぶなら55条も確認
↓
平面図・断面図で工事全体を河川管理者へ示す
ポイントは、
最初に条文を1つ決めてから工事を当てはめないこと
です。
工事全体を見て、必要な河川法手続を分けます。
まとめ
河川区域内で土地を、
掘削
盛土
切土
その他形状変更
する場合は、原則として河川法27条の許可を確認します。
ただし、
土地を動かしたから必ず27条を単独で申請する
とは限りません。
工作物の新築・改築・除却をするために必要な掘削等なら、
河川法26条の許可に係る行為として27条の対象から除かれます。
一方、
工作物工事とは別に土地そのものを造成する。
河川敷を盛土して利用する。
法面を削って平場を作る。
という場合は、27条を確認します。
また、
河川保全区域の55条にある許可不要基準を、
河川区域内の27条へそのまま当てはめないことも重要です。
27条の軽易な行為は別に定められており、一般的な造成について、
「50cmだから不要」
「1mだから不要」
と一律には判断できません。
つまり河川法27条では、
どれだけ土を動かすかだけでなく、何のために土を動かすのか
を見る。
そこから24条・26条・27条・55条を整理すると、必要な手続を判断しやすくなります。
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出典
国土交通省中部地方整備局|河川の利用・手続きについて
愛知県|河川区域内の土地の掘削等の許可
愛知県|西三河建設事務所 河川関係様式
国土交通省中国地方整備局|河川法第27条(土地の掘削等の許可)
e-Gov法令検索|河川法
e-Gov法令検索|河川法施行令
この記事は、2026年9月時点の河川法・愛知県・国土交通省等の公的情報をもとに作成しています。
