外国人ドライバーの運行管理|点呼・教育・労働時間・健康管理の注意点

この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。

外国人ドライバーを採用するときは、在留資格と運転免許を確認するだけでは足りません。

採用後は、日本人ドライバーと同じように、点呼、初任運転者教育、適性診断、労働時間、健康状態を管理する必要があります。

そのうえで、外国人ドライバーには、日本語で説明した事実だけでなく、安全に関する指示を本人が理解できているかまで確認することが欠かせません。

点呼で「大丈夫です」と答えたため出庫させたものの、体調確認の質問を正確に理解していなかった、という状態では適切な運行管理とはいえません。

外国人だけの特別ルールではなく、伝わる運行管理が必要

外国人ドライバーにも、貨物自動車運送事業の安全管理に関するルールが同じように適用されます。

管理項目会社が確認する内容外国人ドライバーへの対応
点呼酒気帯び、疾病、疲労、睡眠不足、日常点検、運行指示質問を理解して答えているか確認する
初任運転者教育法定の教育、実車を使った指導、安全運転の実技図、写真、動画、実演を組み合わせる
適性診断初任診断の対象、受診時期、診断結果結果の内容を分かる言葉で説明する
労働時間拘束時間、休息期間、連続運転時間本人が時間の意味と申告方法を理解する
健康管理雇入れ時・定期健康診断、再検査、乗務可否症状を申告できる方法を決めておく
運行中の連絡遅延、事故、故障、体調変化、経路変更緊急時の連絡文や連絡先を統一する

外国人だから教育内容を減らすのではなく、同じ安全基準を、本人に伝わる方法で実施するという考え方です。

「日本語能力試験に合格しているから問題ない」「日常会話ができるから運行指示も理解できる」と決めつけないでください。

地名、荷役用語、車両部品、点呼で使う表現、事故時の報告など、運送現場には日常会話とは異なる言葉が多く使われます。

外国人ドライバーを雇うときの初任運転者教育

外国人ドライバーも、初任運転者に該当する場合は、特別な指導と初任診断が必要です。

一般貨物自動車運送事業者が新たに雇い入れた運転者について、過去3年間に他の一般貨物自動車運送事業者などで常時選任された経験がない場合は、原則として次の教育を行います。

  • 座学・実車を使った指導を15時間以上
  • 実際に事業用自動車を運転させる安全運転の実技を20時間以上
  • 対象者に初任診断を受診させる
  • 雇入れ前の事故歴を運転記録証明書などで確認する

特別な指導と初任診断は、原則として初めて事業用自動車へ乗務させる前に行います。やむを得ない事情がある場合の取扱いもありますが、採用段階から日程へ組み込む方が安全です。

教育では、法令を日本語で読み上げるだけでは十分ではありません。

車高、死角、内輪差、制動距離、日常点検、積載・固縛などは、実際の車両を使って説明します。自社で走る経路の写真やドライブレコーダー映像を使えば、標識、狭い交差点、学校付近、待機場所なども具体的に伝えられます。

教育後は、次のような方法で理解度を確認します。

  • 本人に手順を説明してもらう
  • 実際に日常点検をしてもらう
  • 写真を見せて危険箇所を指摘してもらう
  • 事故や故障が起きた想定で連絡を実演してもらう
  • 添乗指導で安全確認の動作を確認する

「分かりましたか」と聞くだけでは、本人が遠慮して「分かりました」と答える可能性があります。説明した内容を本人の言葉や動作で示してもらう方が、理解不足を見つけやすくなります。

外国人ドライバーの点呼で注意すべきこと

点呼では、運転者と直接やり取りし、運行できる状態かを判断します。

業務前点呼では、酒気帯びの有無だけでなく、疾病、疲労、睡眠不足の状況、日常点検の実施結果などを確認し、必要な指示を与えます。

外国人ドライバーに対する点呼では、決まった質問を読み上げるだけにならないよう注意してください。

例えば「体調は大丈夫ですか」という質問だけでは、頭痛、発熱、眠気、服薬などの具体的な状況を聞き出せないことがあります。

次のように、短く具体的な質問へ分ける方法が現実的です。

  • 昨日は何時間眠りましたか
  • 強い眠気はありませんか
  • 熱、頭痛、めまいはありませんか
  • 薬を飲んでいますか
  • お酒は何時まで飲みましたか
  • 車両に異常はありませんでしたか
  • 今日の行き先と注意する場所を説明できますか

必要に応じて、症状や車両異常を示す図、指差し確認表、多言語の補助資料を用意します。

ただし、翻訳アプリの表示だけで点呼を終わらせるのは避けるべきです。誤訳が起きやすい表現を事前に確認し、会社で使う質問と回答方法を統一してください。

電話による点呼を行う場合も、電子メールやチャットを送るだけではなく、直接対話できる方法が必要です。

運行指示を変更するときも、本人が行き先、経路、休憩場所、到着予定、荷役上の注意を理解したかを復唱してもらい、伝達内容を記録します。

外国人ドライバーのアルコールチェック・健康管理

アルコール検知器の使用方法は、採用時に実演させて確認します。

「数値が出なければよい」とだけ教えるのではなく、酒気帯びの有無を確認する目的、検知された場合は乗務できないこと、前日の飲酒も影響することを説明してください。

飲酒習慣やアルコールに対する認識には個人差があります。出身国の習慣だけで判断せず、一人ずつ確認します。

健康管理では、雇入れ時と定期の健康診断を実施し、結果を受け取るだけで終わらせないことが大切です。

国土交通省の健康管理マニュアルでは、定期健康診断は1年以内ごとに1回、深夜業に従事する人は6か月以内ごとに1回以上行うことが示されています。

異常所見、要再検査、要精密検査、要治療がある場合は、医師の意見を踏まえて乗務の可否や配慮事項を判断します。

点呼時にも、次の変化を確認します。

  • 顔色や受け答えが普段と違う
  • 強い眠気を訴えている
  • めまい、胸痛、頭痛などがある
  • 服薬により眠気が出る可能性がある
  • 睡眠時間が著しく短い
  • 健康診断後の再検査を受けていない

症状を伝える日本語が分からず、本人が体調不良を申告できないことも考えられます。症状の一覧表や緊急連絡用の定型文を用意し、「運転を続けられないときは、どの言葉で、誰へ連絡するか」を決めておきます。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)などは、本人が自覚していない場合もあります。いびき、日中の強い眠気、起床時の頭痛などが続く場合は、必要に応じて検査につなげます。

外国人ドライバーの労働時間管理と改善基準告示

外国人ドライバーにも、労働基準法や自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)が適用されます。

在留資格上の就労条件を守っていても、改善基準告示を超えてよいわけではありません。反対に、改善基準告示の範囲内でも、在留資格で認められた活動や雇用条件を外れる勤務はできません。

2024年4月から適用されているトラック運転者の主な基準は次のとおりです。

項目原則
1年の拘束時間3,300時間以内
1か月の拘束時間284時間以内
1日の拘束時間13時間以内
1日の最大拘束時間延長する場合でも原則15時間以内
休息期間継続11時間以上与えるよう努め、9時間を下回らない
時間外労働臨時的な特別の事情がある場合でも年960時間以内

一定の長距離貨物運送や労使協定による例外がありますが、例外だけを前提に配車を組むべきではありません。

拘束時間には、運転時間だけでなく、荷待ち、荷役、点呼、附帯作業、会社の指示による待機なども含まれます。

外国人ドライバー本人が「運転していない時間は休憩」と理解していると、荷待ち時間や荷役時間が正しく申告されない可能性があります。

採用時に、次の違いを具体例で説明してください。

  • 運転している時間
  • 荷役などをしている時間
  • 会社の指示で待っている時間
  • 自由に使える休憩時間
  • 勤務終了から次の始業までの休息期間

デジタルタコグラフの記録だけでなく、点呼時刻、運転日報、荷待ち・荷役時間、入退場時刻を照合すると、申告漏れやシフト上の無理を見つけやすくなります。

外国人ドライバー採用と運行管理者の役割

運行管理者は、外国人ドライバーへ一方的に指示を出すだけでなく、その指示が安全な運行につながっているかを確認します。

採用後の管理では、次の項目を一覧にしておくと確認漏れを防げます。

  • 在留期間と就労制限
  • 運転免許の種類と有効期限
  • 初任運転者教育の対象か
  • 初任診断やその他の適性診断の受診状況
  • 雇入れ時健康診断の結果
  • 運転者台帳への記載
  • 点呼で使用する言葉と確認方法
  • 教育に使用した資料と実施記録
  • 添乗指導の結果
  • 労働時間と休息期間
  • 事故、故障、体調不良時の連絡方法

日本語の教材へ母国語の説明を添える場合も、法定教育の項目を減らさず、何を、いつ、どの方法で教育したかを記録します。

通訳や外国人の先輩社員へ説明を任せる場合も、運行管理者が内容を把握しなければなりません。誤った説明が引き継がれないよう、会社で承認した教材と手順を使います。

安全に関する報告をしたことで本人が不利益を受けると感じれば、体調不良や運行の遅れを隠す可能性があります。「体調が悪い」「指示が分からない」「時間内に到着できない」と早めに報告できる職場のルールも必要です。

外国人ドライバー制度の変更で確認したいこと

外国人ドライバーに関する制度は、特定技能の受入れ、運転免許、在留手続きなどが変更される可能性があります。

制度変更があったときは、在留資格だけを確認するのではなく、次の項目への影響を確認してください。

  • 雇用できる業務の範囲
  • 運転業務を始められる時期
  • 日本の運転免許の取得期限
  • 受入れ事業者に求められる要件
  • 雇用契約や支援計画
  • 初任運転者教育と適性診断
  • 運転者選任後の点呼・健康・労働時間管理
  • 在留期間更新時に確認する書類

特定技能外国人には、在留資格に関する支援と、運送事業者として行う運行管理の両方が必要です。

登録支援機関へ支援業務を委託しても、運送会社の点呼、教育、乗務可否の判断まで登録支援機関へ任せられるわけではありません。

制度が変わったときは、入管関係の手続き、雇用管理、運送業の安全管理を分けて確認することが必要です。

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よくある質問

Q
外国人ドライバーには、日本人とは別の初任運転者教育が必要ですか?
A

法定の教育内容や時間が国籍によって変わるわけではありません。ただし、日本語の説明だけでは理解が難しい場合は、図、写真、動画、実車、通訳などを使い、本人が理解できたことまで確認する必要があります。

Q
外国でトラックを運転していた人も初任運転者教育の対象ですか?
A

外国での運転経験があることだけで、日本の初任運転者教育が免除されるとは限りません。原則として、日本の一般貨物自動車運送事業者などで常時選任された経歴を基準に確認します。

Q
点呼を翻訳アプリで行ってもよいですか?
A

翻訳アプリを補助として使うことは考えられますが、表示された文章だけで点呼を終えるのは適切ではありません。誤訳の有無を確認し、運行管理者と運転者が直接やり取りして、体調や運行指示を理解できているか確認してください。

Q
アルコール検知器で数値が出なければ出庫させてよいですか?
A

アルコール検知器の結果だけで判断するものではありません。点呼では、疾病、疲労、睡眠不足、受け答えや顔色なども確認し、総合的に乗務の可否を判断します。

Q
日本語能力試験に合格していれば運行指示の理解確認は不要ですか?
A

不要にはなりません。日常会話ができても、運送現場の専門用語、地名、荷役方法、事故時の報告を正しく理解できるとは限らないためです。復唱や実演で確認してください。

Q
登録支援機関へ委託すれば、点呼や教育も任せられますか?
A

登録支援機関へ委託する支援業務と、運送会社が行う運行管理は別です。点呼、運転者教育、健康状態の確認、乗務可否の判断などは、運送会社が責任を持って実施します。

Q
外国人ドライバーにも改善基準告示が適用されますか?
A

適用されます。国籍にかかわらず、トラック運転者として働く場合は拘束時間、休息期間、連続運転時間などを管理します。在留資格上の就労条件も別に守らなければなりません。

まとめ

外国人ドライバーを採用した後は、日本人ドライバーと同じ基準で、点呼、教育、労働時間、健康状態を管理します。

会社が特に確認したいのは、次の点です。

  • 初任運転者教育と初任診断の対象を確認する
  • 日本語で説明しただけでなく、本人の理解度を確かめる
  • 点呼では体調、睡眠、酒気帯び、運行指示を具体的に確認する
  • 雇入れ時・定期健康診断の結果を乗務判断へ反映する
  • 荷待ちや荷役を含めて拘束時間を管理する
  • 事故、故障、体調不良時の連絡方法を決める
  • 在留資格の支援と運送会社の運行管理を混同しない

採用を急いで運転免許と在留カードだけを確認し、教育や点呼の方法を後回しにすると、乗務開始後に「指示が伝わらない」「必要な教育記録がない」と気づくことがあります。

採用を決めた段階で、乗務開始日から逆算して教育、診断、健康診断、運行管理の準備を進めてください。

外国人ドライバーを採用する前に必要な管理項目を整理します

外国人ドライバーの採用では、在留資格と運転免許に加え、初任運転者教育、適性診断、点呼、健康管理、勤務計画まで確認する必要があります。

いしかわ行政書士事務所では、外国人ドライバーを採用する前に、在留カード、就労可能な業務、日本の運転免許、乗務開始までに必要な運行管理上の準備を整理します。

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出典

国土交通省「事業用自動車の安全対策―運転者に対する指導・監督」国土交通省「貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」国土交通省「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」国土交通省「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示」

この記事は、2026年8月時点の公的情報をもとに作成しています。外国人材の受入制度、点呼制度、初任運転者教育、改善基準告示などは変更される可能性があるため、採用・乗務開始時点の情報を確認してください。

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