この記事は、いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令・公的機関の情報を確認して作成しています。
一般貨物の運送会社を営業していると、
「今の営業所が手狭なので移転したい」
「仕事が増えたので2か所目の営業所を作りたい」
「本店を移転するので、運送業の営業所も一緒に変えたい」
ということがあります。
このとき、新しい事務所を借りれば、そのまま一般貨物の営業所として使えるわけではありません。
一般貨物の営業所は事業計画の一部です。
移転・新設する場合は、
- 新しい物件を営業所として使えるか
- 現在の車庫をそのまま使えるか
- 休憩・睡眠施設をどうするか
- 車両を何台配置するか
- 運転者・運行管理者・整備管理者をどう配置するか
- 変更認可と届出のどちらになるか
を確認します。
特に営業所を増やす場合は、事務所を1つ増やせば終わりではありません。
新しい営業所を実際に運送事業の拠点として動かせる体制まで作る必要があります。
新しい物件を契約する前に、移転なのか追加なのかを整理し、変更後の事業計画全体を確認してから進めます。
まず「移転」なのか「追加」なのか決める
営業所を変えるときは、最初に最終的な営業所数を確認します。
たとえば現在営業所Aがある会社で、
AをやめてBへ移る
→営業所の移転
Aを残してBを作る
→営業所の新設・追加
という違いがあります。
似ていますが、変更後の事業計画は大きく違います。
営業所を移転するだけなら、現在の車両・車庫・人員を新しい営業所へどうつなげるかを考えます。
営業所を追加するなら、新しい営業所にも車両・車庫・人員などを配置する計画が必要になります。
物件を探す前に、
「現在の営業所を残すのか」
を決めておくと、その後の確認がしやすくなります。
営業所の場所によって認可か届出かが変わる
営業所の位置変更は、すべて同じ手続きではありません。
中部運輸局では、営業所の位置変更について、指定された区域内の変更と区域外への変更で手続きを分けています。
現在公開されている手続一覧では、最小行政区域内での営業所の位置変更は届出、区域外への位置変更や営業所の新設などは変更認可として整理されています。
そのため、
「同じ愛知県内だから届出」
「同じ運輸支局管内だから届出」
とは判断しません。
新しい住所が決まったら、旧営業所と新営業所の所在地から必要な手続きを確認します。
また、営業所自体は届出で済む変更でも、同時に車庫や休憩・睡眠施設を変更するなら、それらについて別の認可が必要になることがあります。
営業所だけを見て手続きを決めないことが重要です。
新しい物件を運送業の営業所として使えるか確認する
営業所候補が見つかったら、不動産会社の「事務所利用可」だけで決めないようにします。
一般貨物の営業所では、
- 使用権原
- 都市計画法
- 建築基準法
- 消防法
- 農地法などの関係法令
- 運送事業を行うための適切な規模
などを確認します。
たとえば、会社登記ができるレンタルオフィスだからといって、一般貨物の営業所として必ず使えるとは限りません。
営業所では点呼や運行管理など、実際の運送事業を行うための拠点として使用します。
「住所を置けるか」
ではなく、
「一般貨物の営業所として実際に使えるか」
で確認します。
本店移転と運送業の営業所移転は同じではない
会社の本店所在地と、一般貨物の営業所は必ず同じ場所とは限りません。
そのため、
「法務局で本店移転登記をしたから、運送業の営業所も自動的に変わる」
というものではありません。
反対に、本店はそのままで、運送業の営業所だけ移転するケースもあります。
会社の住所を変更するときは、
- 本店を変更するのか
- 一般貨物の営業所を変更するのか
- 両方変更するのか
を分けて確認します。
登記手続きと一般貨物の事業計画変更は別に考えます。
営業所を移すなら今の車庫をそのまま使えるか確認する
営業所だけ移して、現在の車庫をそのまま使いたい会社もあります。
この場合に重要なのが、新しい営業所と現在の車庫との位置関係です。
中部運輸局管内では、車庫は原則として営業所に併設し、併設できない場合には営業所から直線10km以内であることが基準です。
現在は、
旧営業所
→車庫まで5km
で問題なくても、
新営業所
→同じ車庫まで12km
になれば、現在の車庫をそのまま使えない可能性があります。
つまり、
「営業所だけ移したい」
と思っていても、
新しい営業所の場所によっては車庫変更まで必要になります。
物件を決める前に、新営業所と現在の車庫との距離を確認します。
現在の車庫を使えないなら物件探しが2つになる
新しい営業所から現在の車庫を使えない場合は、新しい車庫も探す必要があります。
この場合、
新営業所を契約
↓
あとから車庫を探す
という順番にすると、条件に合う車庫が見つからない可能性があります。
営業所候補が決まった時点で、
「この場所を営業所にした場合、どこに車庫を置けるか」
まで確認します。
必要なら、
営業所候補
+車庫候補
をセットで探します。
営業所の家賃や立地だけで決めず、車庫まで含めて一般貨物の事業計画を作れる場所かを見ることが重要です。
営業所を増やすなら車両を何台配置するか決める
現在の営業所を残して新しい営業所を追加する場合は、単なる事務所増設ではありません。
新しい営業所で運送事業を行うための事業計画を作ります。
まず確認したいのが車両です。
一般貨物では、原則として営業所ごとに5両以上の事業用自動車を配置する計画が必要です。
たとえば現在、
営業所A:10台
で営業している会社が、新しい営業所Bを作りたいとします。
単純に、
Aから5台をBへ移す
なら、
A:5台
B:5台
となります。
しかし現在Aが7台しかない会社が、
Aから5台をBへ移す
と、
A:2台
B:5台
になってしまいます。
既存営業所が最低車両数を下回る可能性があります。
営業所追加では、新しい営業所だけを見るのではなく、既存営業所を含めた車両配置を確認します。
車両を移すのか、新たに増車するのかで準備が変わる
新営業所へ5台配置するとしても、
現在の営業所から5台移す
のか、
新たに5台増車する
のかでは会社全体の計画が違います。
既存車を移すなら、移動元営業所の最低車両数や車庫の収容状況を確認します。
新規に車両を増やすなら、
- 新営業所の車庫
- 運転者
- 運行管理者
- 整備管理者
- 車両取得
- 増車・登録
まで準備が必要です。
「営業所をもう1つ作りたい」
という話が、実際には
営業所新設
+車庫新設
+増車
+管理者選任
という複数の変更になることがあります。
ここを物件契約前に整理します。
新しい営業所の人員体制も確認する
営業所を増やす場合は、人員も既存営業所と分けて考えます。
新しい営業所で、
- 誰が運転するか
- 誰が運行管理をするか
- 誰が整備管理をするか
- 点呼をどう行うか
を決めます。
現在の営業所の運行管理者がいるから、新営業所について何も考えなくてよいわけではありません。
営業所ごとに必要な管理体制を確認します。
特に、
「営業所だけ先に作って、管理者は後で考える」
という進め方は避けた方がよいでしょう。
物件・車両・人員の3つを並行して確認します。
休憩・睡眠施設も一緒に確認する
新しい営業所を作る場合、休憩・睡眠施設をどこに設けるかも確認します。
営業所と同じ建物に設けるのか、別の場所に設けるのかによって計画が変わります。
移転の場合も、今まで営業所内に確保していた休憩施設が、新しい物件では確保できないことがあります。
そのため営業所候補を見るときは、
「事務室として使える広さ」
だけではなく、
「必要な休憩・睡眠施設まで確保できるか」
を確認します。
今の営業所を先に解約しない
営業所を移転するときに注意したいのが、現在の物件の解約日です。
たとえば、
旧営業所を解約
↓
新営業所を契約
↓
新営業所が一般貨物に使えないことが分かる
となると、営業拠点を失います。
そのため、
新営業所候補を確認
↓
関係法令・車庫・人員を確認
↓
必要な変更認可等の見通しを確認
↓
移転日を決める
↓
旧営業所の解約
という順番で考えます。
現在の営業所と新営業所の家賃が重なる期間を減らすことも大切ですが、先に旧営業所をなくしてしまわないことの方が重要です。
新営業所も先に本契約しすぎない
反対に、新しい営業所を長期契約してから要件を調べるのも避けたいところです。
物件自体が一般貨物の営業所として使えなければ、
- 家賃
- 敷金
- 仲介手数料
- 解約費用
などが発生する可能性があります。
契約前に、
- 一般貨物の営業所として使用予定であることを貸主へ伝える
- 使用目的を確認する
- 関係法令を確認する
- 必要なら許認可を条件とした契約が可能か相談する
などを検討します。
「物件が取られてしまうから先に契約する」のではなく、少なくとも重大な条件は契約前に確認します。
営業所移転と新設の違いを整理する
営業所を変更するときは、最終状態を見ると分かりやすくなります。
| やりたいこと | 主に確認すること |
|---|---|
| A営業所をやめてBへ移る | 移転先・車庫・人員・変更手続き |
| Aを残してBを作る | 新営業所の車両・車庫・人員 |
| 同じ地域内で住所だけ移す | 届出か認可か、他施設変更の有無 |
| 遠方へ営業所を移す | 変更認可・車庫との距離 |
| 本店だけ移す | 一般貨物の営業所も変わるか確認 |
| 営業所と車庫を一緒に移す | 営業所・車庫双方の変更 |
| 新営業所へ既存車を移す | 移動元・移動先双方の車両数 |
| 新営業所用に車両を増やす | 増車・車庫・人員も確認 |
営業所変更だけを単独で考えないことがポイントです。
新しい営業所を決める前にこの順番で確認する
営業所を移す・増やす場合は、次の順番で整理すると手戻りを減らせます。
- 現在の営業所を残すのか廃止するのか決める
- 新しい営業所候補を決める
- 変更認可か届出かを確認する
- 新しい物件を営業所として使用できるか確認する
- 現在の車庫をそのまま使えるか確認する
- 必要なら新しい車庫候補も確認する
- 移転・追加後の車両台数を決める
- 既存営業所の車両数が不足しないか確認する
- 運転者・運行管理者・整備管理者を確認する
- 休憩・睡眠施設を確認する
- 必要な事業計画変更手続きを進める
- 認可等の時期に合わせて物件・人員・車両を切り替える
- 旧営業所を廃止する場合は最後に整理する
物件契約から始めるのではなく、
「変更後の運送会社がどういう形になるのか」
を先に作ります。
営業所を増やすことは「事務所を増やすこと」ではない
一般貨物の営業所を増やす場合、新しい住所に机と電話を置くだけでは営業所新設になりません。
その営業所で、
- 車両を配置する
- 運転者を配置する
- 運行管理を行う
- 車庫を確保する
- 必要な施設を確保する
ところまで考えます。
そのため、
「取引先が増えたので別地域にも事務所を置きたい」
という場合でも、その場所を一般貨物の営業所として追加する必要が本当にあるのかは一度整理してもよいでしょう。
単なる事務所機能を増やしたいのか。
一般貨物の新しい営業拠点を作りたいのか。
ここを分けることで、不要な事業計画変更を避けられる場合もあります。
物件を見る前に「変更後の配置図」を頭の中で作る
営業所の移転・追加で重要なのは、新しい建物だけを見ることではありません。
変更後に、
営業所はどこ
↓
車庫はどこ
↓
車両は何台
↓
誰が運転する
↓
誰が管理する
という形を作れるかです。
ここまで決まれば、
「この物件を借りてよいか」
も判断しやすくなります。
営業所を移す・増やす場合は、物件そのものより、変更後の事業計画全体から候補地を選びます。
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まだ新しい物件を契約していない段階でも構いません。
現在の営業所・車庫・車両・人員と、新しい営業所候補を確認し、変更後の事業計画と必要な手続きを整理します。
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出典
国土交通省 中部運輸局|貨物自動車運送事業に関する手続き一覧、国土交通省 中部運輸局|様式(申請・届出・報告)、国土交通省 中部運輸局|貨物自動車運送事業に係る申請におけるチェックシート
この記事は、2026年8月時点の法令・公的機関の情報をもとに作成しています。
