運送業許可が取れない原因まとめ|現地確認・補正指示への対応も解説

この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。

「車庫を契約したのに、許可要件を満たさないと言われた」

「補正指示が出たら、もう許可を取れないのか」

「図面や写真と現地が違うと不許可になるのか」

一般貨物自動車運送事業の許可は、書類の誤記だけで直ちに不許可になるわけではありません。修正書類や追加資料を提出することで、審査を継続できることもあります。

一方、車庫の広さや前面道路、用途地域、使用権原、必要な人員、自己資金など、事業計画そのものが許可基準を満たしていない場合は、書類を書き直すだけでは解決できません。

大切なのは、指摘された内容が「資料を直せばよい不備」なのか、「物件・人員・資金計画から変更しなければならない問題」なのかを分けることです。

結論|補正で直る不備と、計画変更が必要な問題を分ける

運送業許可が取れない原因は、大きく次の4段階に分けられます。

問題の種類具体例基本的な対応
書類上の不備記載漏れ、住所の不一致、写真不足、計算間違い補正書類・追加資料を提出する
証明不足使用権原や資格、車両確保を証明できない契約書・資格者証・承諾書などを追加する
事業計画の不適合車庫が狭い、前面道路を通れない、管理者がいない物件・車両・人員などの計画を変更する
法的に解消できない問題欠格事由、法令試験の再試験不合格取下げ・却下後の再申請時期を検討する

例えば、車庫の図面に寸法が書かれていないだけなら、測り直して求積図を補正できる可能性があります。

しかし、実際の車庫に5台を配置すると車両間の間隔を確保できない場合は、図面の書き方を変えても解決しません。車両計画または車庫自体の見直しが必要です。

補正指示が出たときは、すぐに申請書全体を書き直すのではなく、まず指摘事項をこの4段階に分類します。

運送業許可が取れない主な原因

中部運輸局は、一般貨物自動車運送事業の許可申請について、営業所、車庫、車両、人員、資金、法令遵守、損害賠償能力などを審査します。

特に止まりやすいのは、次の項目です。

審査項目取れない・審査が止まる主な原因
営業所使用できない用途、関係法令への抵触、申請者に使用権原がない
車庫面積不足、車両間隔不足、営業所から遠い、前面道路の幅員不足
休憩睡眠施設必要な広さがない、営業所・車庫との位置関係が不適切
車両原則5台を確保できない、契約書がない、車種が輸送内容に合わない
運転者必要数を確保できない、労働時間計画が改善基準告示に合わない
運行管理者有資格者を常勤で確保できない、勤務体制が成立しない
整備管理者資格・実務経験・研修要件を満たす人を確保できない
資金所要資金以上の自己資金がない、許可まで資金を維持できない
法令試験初回・再試験とも合格基準に達しない
法令遵守行政処分歴、欠格事由、社会保険等の加入計画に問題がある
損害賠償能力必要な任意保険の加入計画を説明できない

以下では、特に申請後の手戻りが大きくなる原因を整理します。

営業所・車庫が関係法令に抵触する

営業所、車庫、休憩睡眠施設は、都市計画法、建築基準法、消防法、農地法などに抵触しないことが必要です。

中部運輸局のチェックシートでは、特に市街化調整区域に該当する場合、事前に管轄する市役所などへ相談するよう案内されています。

賃貸広告に「事務所利用可」「大型車駐車可」と書かれていても、運送業の営業所・車庫として使用できるとは限りません。

関係法令上使用できない物件は、貸主の承諾書を追加するだけでは解決しないため、契約前の確認が必要です。

車庫の面積・前面道路が基準を満たさない

中部運輸局管内では、車庫は原則として営業所に併設し、併設できない場合は営業所から直線距離10キロメートル以内であることが求められます。

また、車両相互間と車両から車庫境界まで、それぞれ50センチメートル以上の間隔を確保し、計画するすべての車両を収容できなければなりません。

次のような車庫は見直しが必要です。

  • 車両を置くと50センチメートル以上の間隔を確保できない
  • 自家用車や資材置場の部分まで車庫面積に含めている
  • 区画線や境界が不明確
  • 出入口が狭く、計画車両が安全に出入りできない
  • 前面道路が車両制限令上の幅員条件を満たさない
  • 営業所との直線距離が10キロメートルを超えている

道路幅員証明書は、道路管理者となる県や市町村などへ申請します。発行の可否や必要期間は道路管理者によって異なるため、許可申請直前ではなく車庫候補を決めた段階で確認します。

賃貸借契約や車両契約の名義・内容が合わない

営業所や車庫を賃借する場合は、賃貸借契約書などで使用権原を証明します。

中部運輸局の基準では、原則として概ね2年以上の使用権原が必要です。契約期間が2年未満でも、自動更新されることが確認できる場合は扱いが変わることがあります。

次のような契約は補正や契約変更が必要になる可能性があります。

  • 法人申請なのに借主が代表者個人になっている
  • 使用目的が「住居用」「資材置場」だけになっている
  • 契約期間が短く、自動更新の記載もない
  • 又貸しであり、所有者や貸主の承諾を確認できない
  • 車両について見積書しかなく、購入・使用の権原を証明できない
  • リース期間が満了している、または満了直前である

契約書の補足合意や使用承諾書で対応できる場合もありますが、契約当事者や使用目的そのものを変更できなければ、別の物件・車両を探す必要があります。

管理者・運転者を確保できない

申請時には、事業計画に必要な運転者、運行管理者、整備管理者を確保できる見込みが必要です。

単に候補者の氏名を書けばよいのではなく、資格、常勤性、勤務時間、休日、他の業務との兼任状況まで確認されます。

特に運行管理者が運転者を兼務する場合は、運転中に営業所の運行管理業務を誰が行うのかという問題が生じます。中部運輸局のチェックシートでも、別の運行管理者または補助者の確保予定が確認項目になっています。

採用予定者が辞退した場合や、資格要件を満たしていないことが判明した場合は、申請書の氏名だけを差し替えるのではなく、勤務体制や人件費を含めた計画の見直しが必要です。

自己資金が不足・減少している

運送業許可では、事業開始に必要な所要資金以上の自己資金を確保し、申請日から許可日まで常時維持する必要があります。

中部運輸局では、申請日時点と、申請後に指定される時点の残高証明書等によって確認されます。

申請時には足りていても、審査中に次の支払いをすると、再確認時に不足する可能性があります。

  • 車両の頭金
  • 営業所・車庫の敷金や賃料
  • 会社設立費用
  • 求人費・人件費
  • 備品・設備の購入費
  • 他事業の仕入れや借入返済

ただし、審査中は口座から一切支出できないという意味ではありません。

問題になるのは、支出後も所要資金以上の自己資金を維持できるかどうかです。申請後に予定する支払いまで含めて、資金繰りを確認しておく必要があります。

法令試験・欠格事由に問題がある

法人の場合は、許可後に運送事業へ専従する常勤役員1名が法令試験を受験します。

中部運輸局では、初回試験で不合格になった場合、翌々月に1回だけ再試験を受けられます。再試験も不合格の場合は申請が却下の対象です。

また、貨物自動車運送事業法第5条に定める欠格事由に該当する場合も許可を受けられません。

過去の許可取消し、一定の刑、法人役員の状況などで結論が変わるため、該当しそうな経歴がある場合は、申請前に処分通知書・判決内容・役員就任時期などを確認します。

現地確認では何を見られるのか

運送業許可の審査では、営業所や車庫について、案内図、見取図、平面図・求積図、現況写真などを提出します。

中部運輸局の基準上、すべての申請で必ず申請中の現地訪問が行われると一律には定められていません。まずは図面・写真・契約書などによって、施設の事実関係が確認されます。

ただし、写真や図面だけでは確認できない場合には、追加写真、車両諸元資料、寸法、契約関係などの説明を求められる可能性があります。個別の申請内容によって確認方法は変わります。

施設資料では、次の点を一致させておきます。

  • 申請書に記載した住所と実際の所在地
  • 賃貸借契約書の対象範囲と図面の範囲
  • 図面上の寸法と現地で測った寸法
  • 写真に写っている境界・出入口と配置図
  • 配置予定車両の長さ・幅と車庫の求積
  • 営業所、休憩施設、睡眠施設の区分
  • 自家用車・資材置場と事業用車庫の区分
  • 車庫から営業所までの距離と移動方法
  • 営業所と車庫が離れている場合の点呼場所

写真は、建物や土地を近くから撮るだけでは不十分です。どこから、どの方向へ撮影したかを図面上で示し、施設全体、境界、出入口、前面道路、室内設備が分かるようにします。

なお、申請中の施設確認と、運輸開始後の巡回指導は別のものです。

中部運輸局の基準では、新規事業者について、運輸開始届後1か月以降3か月以内に、地方貨物自動車適正化事業実施機関による巡回指導が行われます。

巡回指導では、営業所・車庫・車両などの現況だけでなく、点呼、運転日報、乗務員台帳、安全教育など、実際の運営状況も確認されます。

補正指示が出たときの対応手順

補正指示とは、申請内容の不明点や不足資料について、修正・追加説明を求められることです。

補正が出たことだけで、直ちに不許可が決まるわけではありません。しかし、指定された内容へ回答しないまま放置すると審査が進まず、許可予定日も後ろへずれます。

補正指示を受けたら、次の順番で対応します。

  1. 指摘内容と回答期限を記録する
  2. 書類の誤記か、証明不足か、事業計画の不適合かを分類する
  3. 申請書のどの項目へ影響するか確認する
  4. 関係者へ契約変更・資料発行の可否を確認する
  5. 補正書類だけでなく、関連する図面・資金計画も整合させる
  6. 指定された方法で提出する
  7. 補正後の内容で事業計画を実行できるか再確認する

例えば、車庫面積を修正すると、収容できる車両数や車両配置図も変わります。

車両を変更すると、車庫の配置、車両購入費、保険料、税金、必要な自己資金も変わる可能性があります。

管理者を変更すると、運行管理体制、勤務割、人件費、履歴書なども見直さなければなりません。

補正箇所だけを部分的に直すと、別の書類との不一致が生まれるため、変更の影響範囲を確認することが大切です。

具体例|月極車庫を契約した後に面積不足が分かった場合

例えば、5台で運送業を始める会社が、月極駐車場を契約したケースを考えます。

貸主から「大型トラック5台を置いてよい」と言われていたものの、申請用に配置図を作成すると、車両間と境界から50センチメートル以上の間隔を確保できないことが分かりました。

さらに、車庫の一部には代表者の自家用車と資材が置かれています。

この場合、次のように判断します。

確認結果対応
資材や自家用車を移動すれば必要面積を確保できる区画を整理し、図面・写真を作り直す
区画線の位置を貸主の承諾で変更できる契約範囲を確認し、承諾書と図面を修正する
車両の配置方向を変えれば基準を満たす実際に出入りできるか確認して配置図を補正する
何を移動しても必要な間隔を確保できない別の車庫を探す、または車両計画を見直す
前面道路を計画車両が通行できない車庫変更または使用車両の変更を検討する

図面だけを実際より広く作ることは解決になりません。申請資料と現地が一致しないため、許可後の運輸開始や巡回指導でも問題になります。

反対に、単に寸法や撮影方向が不足しているだけなら、再測量と写真の追加で補正できる可能性があります。

具体例と自社の状況が完全に同じでなくても、「実際の施設を変更すれば基準を満たせるか」で判断してください。変更しても基準を満たせない場合は、物件自体の見直しが必要です。

申請前に確認するチェックリスト

次のうち一つでも「分からない」がある場合は、契約や申請を進める前に確認が必要です。

  • 営業所・車庫を運送業に使用できることを自治体等へ確認したか
  • 市街化調整区域・農地などに該当しないか
  • 営業所と車庫の直線距離を測ったか
  • 全車両の実寸を使って配置図を作成したか
  • 車両間・境界から50センチメートル以上確保できるか
  • 前面道路を計画車両が通行できるか
  • 契約書の借主が申請者と一致しているか
  • 使用目的と契約期間が基準に合っているか
  • 車両の購入・リース・所有を証明できるか
  • 運行管理者・整備管理者・運転者を確保できるか
  • 所要資金以上の自己資金を許可まで維持できるか
  • 受験役員が法令試験の準備を始めているか
  • 法人の役員・申請者に欠格事由の可能性がないか
  • 申請書、契約書、図面、写真の内容が一致しているか

施設・人員・資金のすべてを自社で確認でき、最新の中部運輸局様式に沿って書類を作成できる場合は、自社申請も可能です。

複数の変更が連動する場合や、契約前に物件の可否を判断したい場合は、行政書士へ依頼すると、申請書だけでなく計画全体の整合性を整理できます。

まとめ|許可が取れない原因は申請前に分けて確認する

運送業許可が取れない主な原因は、次のとおりです。

  • 営業所・車庫が関係法令に抵触する
  • 車庫の面積・距離・前面道路が基準を満たさない
  • 契約名義・使用目的・契約期間が適切でない
  • 車両、運転者、運行管理者、整備管理者を確保できない
  • 自己資金が不足し、許可まで維持できない
  • 法令試験に合格できない
  • 欠格事由や法令遵守に問題がある
  • 申請書、図面、写真、契約書の内容が一致していない

書類の記載漏れや写真不足であれば、補正で解消できる可能性があります。

一方、実際の車庫が狭い、関係法令上使用できない、管理者を確保できないといった問題は、事業計画から組み直す必要があります。

物件・車両を契約してから申請書を作るのではなく、候補が決まった時点で許可基準へ当てはめることが、手戻りと開業延期を防ぐポイントです。

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ご相談の際は、次の資料をご用意ください。

  • 運輸局・運輸支局からの補正指示
  • 提出済みの申請書控え
  • 営業所・車庫の住所、図面、写真
  • 賃貸借契約書・使用承諾書
  • 使用予定車両の車検証・車両諸元
  • 管理者・運転者の予定
  • 資金計画と現在の預貯金額
  • 希望する運輸開始時期

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出典

情報確認日:2026年8月

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