運送業許可の車庫証明と運送業車庫の違いとは│10km・広さ・道路要件

この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。

「トラックの車庫証明が取れれば、運送業許可の車庫としても使える」

このように考えて駐車場を契約すると、運送業許可の申請段階で車庫を探し直すことがあります。

車庫証明の正式名称は、自動車保管場所証明書です。主に自家用車を登録するとき、警察署で取得します。

一方、運送業許可の車庫は、一般貨物自動車運送事業の事業計画に含まれる施設です。管轄する運輸支局・運輸局が、営業所との距離、収容能力、前面道路、土地関係法令などを確認します。

さらに、緑ナンバーの事業用自動車を登録するときは、原則として警察署の車庫証明を取得するのではなく、運送事業の手続き後に発行される事業用自動車等連絡書を使用します。

車庫証明と運送業の車庫は別の制度

両者の主な違いは、次のとおりです。

比較項目一般的な車庫証明運送業許可の車庫
主な目的自動車の保管場所が確保されていることの確認事業用車両を安全かつ継続的に管理できる車庫か確認
主な対象自家用の登録自動車など緑ナンバーで使用する事業用トラック
確認機関保管場所を管轄する警察署管轄運輸支局・運輸局
主な距離基準使用の本拠から原則2キロメートル以内中部運輸局管内では営業所から直線10キロメートル以内
駐車スペース車両全体を収容できること全車両を容易に収容し、車両間・境界から原則50センチメートル以上確保
前面道路車両が支障なく出入りできること出入口の前面道路が車両制限令に適合すること
土地関係法令通常は運送業許可と同じ範囲までは審査しない都市計画法、農地法などに抵触しないこと
使用権原保管場所を使用する権利を確認中部運輸局では原則としておおむね2年以上の使用権原を確認
登録時に使う書類自動車保管場所証明書事業用自動車等連絡書

一般的な車庫証明は、「その車を保管する場所があるか」を確認する手続きです。

運送業の車庫審査では、それに加えて、複数のトラックを事業として安全に運行・管理できるかが確認されます。

したがって、同じ駐車場でも、車庫証明の基準は満たすものの、運送業許可の車庫要件は満たさないことがあります。

緑ナンバーの登録に警察の車庫証明は必要か

一般貨物自動車運送事業に使用する緑ナンバー車両の登録では、原則として警察署が交付する車庫証明は必要ありません。

ただし、「車庫証明が不要だから、車庫を用意しなくてよい」という意味ではありません。

運送事業用自動車については、警察署の車庫証明手続に代わり、貨物自動車運送事業法に基づく許可や事業計画変更の手続きにおいて、営業所・車庫・配置車両が確認されます。

登録部門で緑ナンバーにするときは、事業用自動車等連絡書を使用します。

事業用自動車等連絡書は、運送事業者が輸送部門で必要な許可・認可・届出などを済ませていることを、登録部門へ連絡するための書類です。

一般的な流れは、次のようになります。

  1. 運送業の新規許可、増車、車庫変更などの手続きを行う
  2. 輸送部門で事業用自動車等連絡書の確認を受ける
  3. 登録部門へ連絡書を提出する
  4. 自動車登録とナンバープレートの変更を行う
  5. 緑ナンバー車両として配置する

車庫証明を取得してから運送業の手続きをするのではなく、先に運送事業上の車庫と車両の手続きを整える点が重要です。

自家用車として先に登録する場合は別

購入したトラックを先に白ナンバーの自家用車として登録し、その後に緑ナンバーへ変更する場合は、白ナンバーでの登録時に車庫証明が必要になることがあります。

反対に、緑ナンバー車両を事業用から外して白ナンバーへ変更する場合も、使用の本拠や地域、登録内容によって車庫証明が必要になる可能性があります。

「最終的に緑ナンバーにするから、最初から車庫証明は一切不要」とは限りません。登録時点で事業用か自家用かを確認して判断します。

運送業の車庫では何が確認されるのか

中部運輸局管内で一般貨物自動車運送事業の許可を申請する場合、車庫について主に次の内容が確認されます。

営業所との距離

車庫は原則として営業所に併設します。

営業所に併設できない場合、中部運輸局管内では、営業所から車庫までの直線距離が10キロメートル以内であることが求められます。

ここで比較しているのは、次の異なる距離基準です。

  • 一般的な車庫証明:使用の本拠から保管場所まで原則2キロメートル以内
  • 運送業の車庫:中部運輸局管内では営業所から車庫まで直線10キロメートル以内

距離の起点も、適用される制度も異なります。

運送業の車庫について「車庫証明と同じ2キロメートル以内でなければならない」と考える必要はありません。反対に、営業所から10キロメートル以内であれば、他の車庫要件を確認しなくてよいわけでもありません。

車両間と車庫境界の間隔

運送業の車庫では、原則として次の間隔を確保します。

  • 車両と車両の間に50センチメートル以上
  • 車両と車庫境界の間に50センチメートル以上

さらに、事業に使用する予定の全車両を容易に収容できることが必要です。

単純に車両面積の合計より土地が広いだけでは足りません。出入口、通路、切り返し、トレーラの連結・切離しなども考慮して配置図を作成します。

前面道路

車庫の出入口が接する前面道路は、使用する車両について車両制限令に適合する必要があります。

前面道路の幅員は、車両の幅、道路の種類、対面通行か一方通行かなどによって判断が変わります。

「トラックが今も通っている」「現地で測ったら広そうだった」という理由だけで判断せず、道路管理者や道路幅員証明書などで確認します。

土地関係法令

車庫として使用する土地が、都市計画法、農地法などの関係法令に抵触しないことも必要です。

現地に砂利が敷かれて駐車場のように見えても、登記地目が農地であり、必要な農地転用手続きが行われていない場合があります。

車庫証明を取得できるかという確認だけでは、運送業許可に必要な土地関係法令の確認をすべて済ませたことにはなりません。

使用権原

自己所有の場合は登記事項証明書、賃貸の場合は賃貸借契約書などにより、申請者が車庫を使用できる権利を確認します。

中部運輸局の審査基準では、原則としておおむね2年以上の使用権原が求められます。

契約期間が2年未満でも、自動更新により継続使用できると認められる場合は、要件を満たす可能性があります。

ただし、次の契約は注意が必要です。

  • 申請法人ではなく代表者個人の名義になっている
  • 運送事業用トラックの駐車が認められていない
  • 使用する区画が特定されていない
  • 転貸について所有者の承諾がない
  • 短期契約で自動更新の定めもない

車庫証明が取れても運送業車庫として使えない具体例

運送会社の設立を予定している事業者が、大型トラック5台を置ける月極駐車場を見つけたケースを考えます。

不動産会社からは、「駐車場として使用でき、車庫証明も取れる」と説明されています。

しかし、運送業の車庫として調査すると、次の問題が判明しました。

  • 営業所からの直線距離が10キロメートルを超えている
  • 5台を並べると車両間の50センチメートルを確保できない
  • 前面道路の幅員が予定する大型車に適合しない
  • 契約書では大型トラックの駐車が認められていない
  • 他の利用者の車があると切り返しができない

この場合、普通車1台の車庫証明を取得できる駐車場だったとしても、大型トラック5台を使用する運送業の車庫としては問題が残ります。

一方、営業所から8キロメートル離れていても、必要な収容能力、前面道路、使用権原、土地関係法令などをすべて満たしていれば、中部運輸局の10キロメートル基準内に収まる可能性があります。

「距離が近いか」「車庫証明が取れるか」という一つの条件だけではなく、運送業車庫の要件を組み合わせて判断する必要があります。

自社の場合はどの手続きになるか

現在の車両と目的によって、先に行う手続きが変わります。

自社の状況主に必要となる確認・手続き
新しく運送業許可を取得する車庫候補を調査し、営業所・車庫・車両を含む新規許可申請を行う
許可後に緑ナンバー車両を増やす現在の車庫に収容できるか確認し、増車手続き後に連絡書を使って登録する
増車に伴って車庫を広げる車庫変更・増車の先後関係を確認してから車両登録を行う
白ナンバー車を先に登録する登録地域などに応じて警察署の車庫証明が必要か確認する
白ナンバー車を緑ナンバーへ変更する運送事業上の増車等の手続きと事業用自動車等連絡書を確認する
緑ナンバー車を白ナンバーへ変更する減車等の事業手続きに加え、自家用登録時の車庫証明の要否を確認する
車庫だけ移転する移転先の距離・収容能力・前面道路・法令・使用権原を確認し、必要な変更手続きを行う

どのケースでも、車両登録を最初に行うのではなく、車庫と運送事業上の手続きを先に確認することが基本です。

先に車両を購入して納車日を決めてしまうと、車庫の追加や変更手続きが間に合わず、予定日に緑ナンバーで稼働できないことがあります。

契約前に確認する順番

運送業の車庫候補が見つかったら、次の順番で確認します。

  1. 車庫に配置する全車両の長さ・幅・台数を確定する
  2. 営業所から車庫までの直線距離を測る
  3. 車両間・境界から50センチメートル以上確保した配置図を作る
  4. 出入口、通路、切り返しが可能か現地確認する
  5. 前面道路の種類、管理者、正式な幅員を確認する
  6. 都市計画法、農地法などの土地関係法令を確認する
  7. 契約名義、使用目的、区画、契約期間を確認する
  8. 運送事業上必要な申請・認可・届出を確認する
  9. 要件を満たす見通しが立ってから契約する
  10. 事業用自動車等連絡書を取得して車両登録を行う

一般的な車庫証明の取得経験があっても、運送業車庫の調査は別に必要です。

車庫候補の住所、土地の資料、賃貸借契約書案、前面道路の情報、使用予定車両の車検証などをそろえると、自社で確認する場合も専門家へ相談する場合も判断が進みやすくなります。

関連記事

運送業車庫と車両登録の手続きでお困りの方へ

車庫証明と運送業車庫を混同すると、駐車場の再契約だけでなく、増車手続きや車両登録、納車日まで組み直すことがあります。

いしかわ行政書士事務所では、運送業許可、車庫変更、増車手続き、自動車登録の先後関係を確認し、必要な手続きを整理しています。

ご相談の際は、営業所と車庫候補の住所、配置予定の車両数、車検証または車両諸元、賃貸借契約書案、希望する稼働日をお知らせください。

三河地域を中心に、愛知県内で運送業許可や緑ナンバー車両の手続きをご検討の方は、いしかわ行政書士事務所へご相談ください。

お問い合わせはこちら

「運送業新規許可・許可後手続きのお問い合わせ」 ご依頼の流れや料金案内をしております。ご相談だけでも構いませんのでお気軽にお尋ねください

出典

e-Gov法令検索「自動車の保管場所の確保等に関する法律」e-Gov法令検索「自動車の保管場所の確保等に関する法律施行令」e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業法」e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業輸送安全規則」中部運輸局「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の申請事案の処理方針」国土交通省東北運輸局「自動車の登録(新規登録)」

2026年8月確認。事業用自動車等連絡書の発行方法、オンライン申請の対象、登録書類などは変更されることがあるため、手続き時点の中部運輸局、愛知運輸支局および登録窓口の案内をご確認ください。

トップへ戻る