運送業許可は自分で申請できる?行政書士に依頼するメリットと費用の目安

この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。

運送業許可は、行政書士へ依頼しなくても自分で申請できます。

ただし、申請書へ必要事項を書けば許可される手続きではありません。営業所・車庫・車両・管理者・運転者・資金計画などを先に整え、それぞれが許可基準を満たしていることを資料で示す必要があります。

自分で申請するか行政書士へ依頼するかは、書類を作れるかだけでなく、物件を契約する前に許可要件を確認できるか、補正へ対応する時間を確保できるかまで含めて判断します。

運送業許可は自分で申請できる?

一般貨物自動車運送事業の許可申請に、行政書士への依頼は義務付けられていません。

中部運輸局は申請様式を公開しているため、許可基準を確認し、必要な申請書と添付書類をそろえれば、事業者自身で申請できます。

申請先は、営業所の所在地を管轄する運輸支局です。愛知県で運送業を始める場合は、愛知運輸支局へ申請します。

ただし、申請前には少なくとも次の項目を整理しなければなりません。

確認項目主な確認内容
営業所使用権原、用途地域、建築基準法などの関係法令、営業所として使用できる設備
車庫収容能力、前面道路、営業所からの距離、使用権原、関係法令
休憩・睡眠施設必要な広さ、使用権原、営業所との位置関係
車両必要台数、車両の使用権原、事業計画との一致
運転者事業開始に必要な人数と雇用計画
運行管理者資格要件、配置人数、常勤性
整備管理者資格要件、配置の必要性、常勤性
資金計画人件費、燃料費、車両費、施設費、保険料など
法令遵守申請者や役員の法令違反歴など
損害賠償能力自動車保険の加入計画など

一つでも基準を満たさなければ、書類を作成できても許可にはつながりません。

特に営業所や車庫は、契約後に用途地域や前面道路、距離などの問題が分かると、別の物件を探し直す可能性があります。

自分で申請する場合に必要な準備

自己申請を選ぶ場合は、物件や車両を確保する前から準備を始めます。

一般的な進め方は次のとおりです。

  1. 予定する事業内容と営業区域を整理する
  2. 営業所・車庫・休憩施設の候補を探す
  3. 契約前に用途地域、前面道路、距離、使用権原などを確認する
  4. 車両、運転者、運行管理者、整備管理者を確保する
  5. 開業に必要な資金を計算する
  6. 申請書と添付資料を作成する
  7. 管轄の運輸支局へ申請する
  8. 補正や追加資料の提出に対応する
  9. 常勤役員などが法令試験を受ける
  10. 許可後に登録免許税を納付し、運輸開始の準備を進める

中部運輸局が公表する一般貨物自動車運送事業の標準処理期間は3~5か月です。

ただし、この期間には申請書の不備を補正する時間や、申請者が途中で申請内容を変更するための時間は含まれません。営業所や車庫を探す期間、必要な人員を採用する期間、許可後の車両登録なども別に必要です。

開業希望日が決まっている場合は、標準処理期間だけを見て申請日を決めず、申請前と許可後の準備期間も含めて逆算してください。

運送業許可を自分で申請する難しさ

自己申請で負担になりやすいのは、申請書の記入そのものより、複数の許可要件を同時に満たす計画を組み立てることです。

よく問題になるのは次のような場面です。

  • 営業所として借りた物件が関係法令上使用できない
  • 車庫は広いが、前面道路や営業所からの距離に問題がある
  • 賃貸借契約書から事業用に使用できることを確認できない
  • 車両費や人件費を含めた資金計画が不足している
  • 必要な運転者や管理者を事業開始までに確保できない
  • 申請書、図面、契約書、登記事項証明書の内容が一致していない
  • 補正を受けたものの、何を直せばよいか判断できない
  • 申請後に事業計画を変更し、審査が長引く

また、許可申請後には法令試験があります。

法人の場合は、許可後に申請事業へ専従する常勤役員のうち1人が受験します。行政書士が代わりに受験することはできません。

中部運輸局の法令試験は30問、試験時間50分、合格基準は8割以上です。初回で合格基準に達しなかった場合は1回に限り再試験を受けられますが、再試験でも合格できなければ申請は却下されます。

自己申請では、申請書の作成と並行して、法令試験の準備も進める必要があります。

自分で申請するか迷っている方へ

「予定している営業所や車庫で申請できるか」「自社でどこまで準備できるか」が分からない場合は、物件を契約する前に確認する方法があります。

申請手続きのすべてを依頼するか決めていない段階でも、事業計画、物件、人員、車両、資金の状況を整理すれば、自己申請で進めやすい部分と専門家へ任せた方がよい部分が見えてきます。

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運送業許可を行政書士に依頼するメリット

行政書士へ依頼する主なメリットは、申請書の記入を任せられることだけではありません。

申請前から事業計画を確認し、契約や購入を進める順番を整理できる点にあります。

物件を契約する前に許可要件を確認できる

営業所や車庫は、所在地、広さ、距離、前面道路、使用権原、関係法令など複数の条件を確認します。

賃料が安い、トラックを置ける広さがあるという理由だけで契約すると、申請に使用できない場合があります。

行政書士へ早めに相談すれば、契約前に確認すべき資料や窓口を整理できます。

申請書と添付書類の食い違いを減らせる

運送業許可では、申請書、事業計画、図面、賃貸借契約書、登記事項証明書、車検証など、複数の資料を照合します。

会社の住所、営業所の所在地、面積、車両数などが一致していなければ、補正や追加説明を求められることがあります。

行政書士へ依頼すると、資料同士の食い違いを申請前に確認しやすくなります。

補正や追加資料へ対応する負担を減らせる

申請後に運輸支局から確認や補正の連絡が入ることがあります。

自分で申請した場合は、指摘内容を確認し、資料の修正や再取得を事業者自身で行います。

行政書士へ依頼していれば、業務範囲に応じて、補正内容の確認や提出書類の作成を任せられます。

社長や担当者が開業準備へ時間を使える

許可申請中にも、荷主との調整、車両の手配、運転者の採用、保険の準備などを進めなければなりません。

申請書の作成や行政窓口とのやり取りを任せることで、社長や担当者が営業や採用などの開業準備へ時間を使いやすくなります。

ただし、行政書士へ依頼しても、営業所・車庫・車両・人員・資金を行政書士が代わりに用意するわけではありません。会社側が行う準備と、行政書士へ依頼する手続きを分けて進めます。

運送業許可の申請代行費用とは?

行政書士へ支払う報酬は、法律で一律に決められているものではありません。事務所の料金設定と依頼範囲によって異なります。

見積りを比較するときは、金額だけでなく、次の業務が含まれているかを確認してください。

確認する項目内容
事前相談事業計画や許可要件の確認
物件調査営業所・車庫の用途地域、距離、前面道路などの確認
申請書作成申請書、事業計画、資金計画、図面などの作成
添付書類の確認契約書、登記事項証明書、車両関係資料などの照合
申請手続き運輸支局への提出
補正対応申請後の修正や追加資料への対応
法令試験準備試験範囲や過去問題の案内など
許可後の手続き登録免許税、運輸開始前確認、車両登録などの案内
追加料金遠方調査、複数営業所、特殊な事業計画などの扱い

「申請代行」と表示されていても、物件調査や許可後の手続きまで含まれるとは限りません。

依頼前に、見積書へ記載された業務範囲と、会社側で準備するものを確認します。

運送業許可にかかる費用の内訳

運送業許可に必要な費用は、行政書士報酬だけではありません。

自己申請を選んでも、次の費用は事業の準備に応じて発生します。

費用区分主な内容
登録免許税一般貨物自動車運送事業の新規許可は12万円
行政書士報酬要件確認、申請書作成、提出、補正対応などを依頼した場合
営業所・車庫賃料、敷金、礼金、仲介手数料、設備費など
車両購入費、頭金、リース料、登録費用など
人員運転者、運行管理者、整備管理者などの採用・人件費
保険自賠責保険、任意保険など
開業準備備品、通信設備、帳票、広告など
証明書類登記事項証明書、残高証明書などの取得費用

登録免許税12万円は、許可を受けた後に納付する公的な費用です。行政書士報酬とは別に必要になります。

また、許可審査では、開業時に実際に支払う費用だけでなく、人件費、燃料費、施設費、車両費、保険料などを含めた資金計画を作成します。

したがって、「行政書士へ依頼しなければ報酬分だけ安くなる」という比較だけでは不十分です。営業所や車庫の借り直し、申請のやり直し、開業の遅れが起きれば、別の費用や時間も必要になります。

運送業許可を安さだけで行政書士に依頼してよい?

行政書士報酬は比較項目の一つですが、最も安い事務所が自社に合うとは限りません。

特に確認したいのは、次の点です。

  • 運送業許可の取扱い経験があるか
  • 営業所や車庫を契約する前から相談できるか
  • 現地確認や関係行政への確認を行うか
  • 資金計画や人員計画まで確認するか
  • 補正対応が報酬に含まれているか
  • 法令試験の案内があるか
  • 許可後の運輸開始準備をどこまで確認するか
  • 追加料金が発生する条件が明確か
  • 連絡方法と進捗報告の頻度が自社に合うか

低額の見積りでも、物件調査や補正対応が別料金であれば、最終的な負担が増えることがあります。

反対に、自社で物件調査や資料収集を済ませられる場合は、必要な手続きだけ依頼する方法も考えられます。

金額だけを比べるのではなく、「どこからどこまで任せられるか」をそろえて比較してください。

自分で申請するか行政書士へ依頼するかの判断基準

次のような場合は、自己申請を検討しやすいでしょう。

  • 許可基準と申請手引きを読み込む時間がある
  • 営業所・車庫の関係法令を確認できる
  • 図面や資金計画を含む申請書類を作成できる
  • 平日に運輸支局とやり取りできる
  • 補正や追加資料へ対応する時間がある
  • 開業希望日まで十分な余裕がある

一方、次のような場合は、行政書士への依頼を検討する余地があります。

  • すでに営業所や車庫の候補があり、契約前に確認したい
  • 開業日や荷主との契約開始日が決まっている
  • 社長が営業、採用、車両手配を兼務している
  • 資金計画の作り方が分からない
  • 営業所や車庫の要件に不安がある
  • 補正による遅れをできるだけ減らしたい
  • 許可後の運輸開始準備まで見通して進めたい

行政書士へ依頼しても、必ず許可されるわけではありません。

行政書士の役割は、許可要件と現在の事業計画を照らし合わせ、申請書類を整え、手続き上の手戻りを減らすことです。許可基準を満たさない物件や計画を、そのまま許可へ変えることはできません。

よくある質問

Q
運送業許可は行政書士へ依頼しなくても申請できますか?
A

申請できます。行政書士への依頼は義務ではありません。ただし、営業所・車庫・車両・人員・資金などの許可要件を確認し、申請書と添付資料を事業者自身で作成する必要があります。

Q
自分で申請すると、どの費用を抑えられますか?
A

主に行政書士報酬を抑えられます。ただし、登録免許税、営業所・車庫、車両、人員、保険、証明書取得などの費用は自己申請でも必要です。

Q
行政書士へ依頼すれば必ず許可されますか?
A

必ず許可されるわけではありません。許可を受けるには、営業所、車庫、人員、資金などの基準を満たす必要があります。行政書士は、基準に適合する計画の整理と申請手続きを担当します。

Q
法令試験を行政書士に代わって受けてもらえますか?
A

できません。法人の場合は、許可後に申請事業へ専従する常勤役員のうち1人が受験します。行政書士は試験準備の案内はできますが、代理受験はできません。

Q
営業所や車庫を契約した後でも相談できますか?
A

相談できます。ただし、契約した物件が許可要件を満たしていない場合は、契約内容の変更や別物件への変更が必要になる可能性があります。できれば契約前に相談してください。

Q
行政書士の料金を比較するときは何を確認すればよいですか?
A

物件調査、申請書作成、提出、補正対応、法令試験準備、許可後の手続きのうち、どこまで報酬に含まれるかを確認します。追加料金が発生する条件も見積り段階で確認してください。

Q
行政書士へ依頼すれば会社設立も任せられますか?
A

定款作成などは行政書士へ相談できますが、会社設立登記は司法書士の業務です。税務は税理士、社会保険や労務の専門的な手続きは社会保険労務士の業務になる場合があります。

まとめ

運送業許可は、行政書士へ依頼せず自分で申請できます。

ただし、申請書の作成だけでなく、営業所・車庫・車両・人員・資金などを許可基準に合わせて準備し、申請後の補正と法令試験にも対応しなければなりません。

行政書士へ依頼するメリットは、書類作成を任せられることに加え、物件契約や車両購入の前に確認事項を整理し、申請の手戻りを減らせることです。

費用を比較するときは、行政書士報酬だけでなく、登録免許税、物件、車両、人員、保険などを含めて考えます。行政書士の見積りについても、金額だけでなく、物件調査や補正対応、許可後の案内まで含まれるかを確認してください。

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出典

国土交通省 中部運輸局「様式(申請・届出・報告)|貨物自動車運送事業(緑ナンバー)」
中部運輸局「一般貨物自動車運送事業等の許可・事業計画変更認可申請に係る標準処理期間」
中部運輸局「一般貨物自動車運送事業の許可等の申請に係る法令試験の実施について」
日本行政書士会連合会「運送業・自動車」

この記事は、2026年8月時点で公表されている一般貨物自動車運送事業の新規許可申請、標準処理期間、法令試験および登録免許税をもとに作成しています。制度、審査基準、公的費用などが変更された場合は、記事内容を見直してください。

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