この記事は、いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令・公的機関の情報を確認して作成しています。
盛土規制法の許可が必要だと分かったとき、
「自分で申請できる?」
「行政書士に頼まないと申請できない?」
「造成会社が図面を作ってくれるなら、自分で提出できる?」
と迷うことがあります。
結論からいうと、盛土規制法の許可申請は、必ず行政書士へ依頼しなければならない手続ではありません。
愛知県では、許可申請を行う者は「工事主」とされています。
そのため、工事主本人が必要な資料をそろえ、行政と調整しながら申請することはできます。
ただし、盛土規制法の申請では、
申請書を書けるか
だけで考えない方がよいでしょう。
実際には、
- 許可要否の整理
- 事前相談
- 造成図面
- 擁壁・排水施設の設計
- 土地所有者等の同意
- 周辺住民への周知
- 工事主の資力・信用
- 工事施行者の能力
- 許可後の変更・検査・報告
まで関係します。
さらに工事内容によっては、法律上、一定の資格を持つ設計者が必要です。
そのため、
行政手続は誰が行うのか
と
技術設計は誰が行うのか
を分けて考えることが重要です。
盛土規制法の許可申請は本人でもできる
盛土規制法では、工事主が許可申請を行います。
つまり、
「行政書士へ依頼しなければ受付してもらえない」
という制度ではありません。
自分で、
計画地を確認し、
必要書類をそろえ、
行政窓口と相談し、
申請書を作成して提出することもできます。
愛知県も、許可要否についてはチェックシートや手引を使い、まず自分で確認できる仕組みを用意しています。
したがって、
本人申請できるか
という質問だけなら、
できます。
問題はその次です。
難しいのは申請書より「申請に使える造成計画をそろえること」
盛土規制法の申請様式を見ると、
許可申請書
資金計画書
などがあります。
しかし、これだけ記入すれば申請できるわけではありません。
造成工事の場合には、
土地の範囲
盛土・切土の位置
現況地盤高
計画地盤高
崖
擁壁
排水施設
などが分かる図面や資料をそろえる必要があります。
さらに、
土地所有者等の同意
住民周知
工事主の資力・信用
工事施行者の能力
に関する資料も関係します。
つまり、
書式へ文字を入力する作業より、申請内容を成立させるための資料をそろえる作業の方が大きい
ということです。
造成図面が全部そろっているなら自分で進めやすくなる
たとえば、
造成会社や設計者がすでに決まっている。
造成平面図がある。
造成前後の断面図がある。
擁壁図・排水図もある。
盛土・切土面積も求積されている。
という状態なら、自分で申請する難易度は下がります。
残る主な作業は、
行政との事前相談
必要書類の整理
申請書の作成
同意・住民周知関係
提出・補正対応
などです。
このあたりまで自分で進められるなら、本人申請を検討できます。
土地と「こうしたい」だけなら、申請書を作る段階ではない
反対に、
土地は決まった。
駐車場にしたい。
でも、
どこまで盛土するか分からない。
造成高さが決まっていない。
排水計画もない。
擁壁が必要かも分からない。
という段階では、許可申請書を作り始めても進みにくくなります。
この場合は、
申請代行を誰に頼むか
より前に、
造成計画を誰が設計するか
を決める必要があります。
盛土規制法の許可は、計画が技術基準に適合していることを確認する手続だからです。
行政書士に頼めば造成設計まで全部できる?
ここは分けて考えます。
行政書士は、官公署へ提出する許認可申請書類の作成、提出手続の代理、その相談を業務としています。
愛知県行政書士会も、
- 盛土規制法に係る申請
- 開発許可
- 雨水浸透阻害行為
- 農地転用
- 道路・水路関係
などを土地開発関連業務として挙げています。
そのため、盛土規制法の許可申請を行政書士へ依頼することはできます。
ただし、
行政書士資格があれば、あらゆる造成・擁壁・排水施設の技術設計まで単独でできる
という意味ではありません。
一定規模の工事では法律上の設計資格が必要
愛知県では、次の工事について設計者の資格確認が必要です。
高さ5mを超える擁壁を設置する場合
または、
盛土・切土をする土地の面積が1,500㎡を超える土地に排水施設を設置する場合
です。
この場合、法令上の資格要件を満たす設計者が必要になります。
資格の例として、
一級建築士
一定部門の技術士
土木・建築関係の学歴と実務経験を満たす者
などがあります。
したがって、この規模の案件では、
行政書士へ頼むか、自分で申請するか
だけでは完結しません。
技術設計を担当する有資格者との連携が必要です。
行政書士と設計者は「どちらか一人」ではない
たとえば大きな造成で、
設計者
→ 造成・擁壁・排水計画、構造計算等
行政書士
→ 行政との事前相談、申請書類、同意・周知関係、提出手続
という分担ができます。
施工会社が設計部門を持っている場合には、
施工会社・設計者
+
行政書士
という形もあります。
つまり、
行政書士か設計者か
を選ぶのではなく、
それぞれの役割を分けます。
自分で申請しやすいのは「技術資料がすでに完成しているケース」
本人申請に向きやすいのは、
- 許可対象であることがすでに明確
- 造成設計が完成している
- 必要図面がそろっている
- 構造計算等も必要に応じて用意されている
- 土地所有者等との関係が単純
- 住民周知へ自分で対応できる
- 行政からの補正連絡へ自分で対応できる
というケースです。
この状態なら、
行政手続部分を自分で行えるか
が主な判断になります。
行政書士へ依頼する価値が高くなるのは「書類が多いから」だけではない
行政書士へ依頼する理由を、
「面倒だから」
だけで考える必要はありません。
盛土規制法では、
手続の順番
を間違えると工事工程へ影響します。
たとえば許可申請前には住民周知が必要です。
申請には土地所有者等の同意関係資料もあります。
許可後、工事内容を変更するなら変更許可や届出を確認します。
工事内容・規模によっては中間検査や定期報告も必要になります。
そして工事完了後には完了検査があります。
つまり、
許可証を取るところだけではなく、工事開始から完成まで行政手続を管理する必要がある
ということです。
住民周知を自分で行う負担もある
盛土規制法の許可申請では、事前に周辺住民へ工事内容を周知します。
愛知県では、
説明会
書面配布
掲示とインターネット
など、一定の方法による周知が定められています。
周知する内容には、
工事主
所在地
工事施行者
着手・完了予定
盛土・切土の高さ
面積
土量
などがあります。
そのため、
「申請書が完成したから提出」
ではなく、
住民周知ができる程度まで工事計画を固めてから申請
する必要があります。
土地所有者が複数いる案件は手続整理の負担が増える
造成する土地を工事主本人がすべて所有しているとは限りません。
借地。
共有地。
複数筆。
進入路だけ別所有者。
というケースがあります。
盛土規制法では、工事をする土地の所有者等の同意を確認する手続があります。
土地関係が複雑になるほど、
誰の同意が必要か。
どの土地が工事区域に入るか。
図面上の区域と同意資料が一致しているか。
といった整理が必要になります。
このような案件では行政書士へ依頼する価値が高くなります。
開発許可が関係するなら盛土規制法だけ申請しない
建物を建てるための造成などでは、都市計画法の開発許可も関係する場合があります。
愛知県では、盛土規制法の許可対象工事でも、都市計画法の開発許可を受けることで、盛土規制法上の許可を受けたものとみなされるケースがあります。
つまり、
「盛土規制法にかかる」
↓
「盛土規制法の申請を自分で作ろう」
と進める前に、
開発許可との関係を確認した方がよいケース
があります。
ここは複数の許認可をまとめて確認できる行政書士へ相談する意味が出るところです。
駐車場造成なら雨水浸透阻害行為も関係することがある
たとえば、
田畑を造成し、
アスファルト駐車場にする。
というケースです。
盛土規制法では、
盛土・切土の高さや面積。
雨水浸透阻害行為では、
舗装等によって雨水流出量が増えるか。
を確認します。
許可制度は別です。
そのため、
盛土規制法の申請だけ自分で終わらせても、
別の手続が残っている可能性
があります。
土地利用の変更を伴う案件では、周辺制度まで確認してから申請を組んだ方がよいでしょう。
農地を造成するなら農地転用も別
畑や田を、
駐車場
資材置場
住宅敷地
などにする場合は、農地転用が関係することがあります。
この場合、
農地転用
盛土規制法
雨水浸透阻害行為
開発許可
などが重なる可能性があります。
一つずつ別々に申請を考えるより、
どの許認可をどの順番で進めるか
を先に整理します。
行政書士へ依頼する意味は、このような手続横断にもあります。
行政書士へ依頼しても、測量や構造設計が別になるケースはある
盛土規制法の申請では、
土地の境界・面積。
造成前後の地盤高。
擁壁。
排水施設。
など技術資料が必要になります。
案件によっては、
測量
構造計算
造成設計
地盤関係の検討
を、測量・土木・建築等の専門家が担当する必要があります。
そのため行政書士へ相談するときは、
どこまで行政書士が対応し、どこから設計者等が担当するのか
を確認します。
行政書士に依頼する意味は、
すべてを一人で作ることではなく、
行政手続側を整理し、必要な技術資料を設計者等とつないで申請へまとめること
にもあります。
すでに造成会社がいるなら行政書士は不要?
これも案件によります。
造成会社が、
設計
図面
行政協議
申請書類
まで対応できる体制なら、別途行政書士へ依頼する必要性は低くなることがあります。
一方、
施工図面は作るが行政申請は依頼者側で行う。
盛土規制法以外の許認可までは確認しない。
住民周知・土地所有者等の同意書類は対応しない。
という会社もあります。
その場合は、
施工会社がどこまで担当するのか
を先に確認します。
「造成会社へ頼んだから全部やってくれる」とは限りません。
自分で申請するかは「補正に対応できるか」まで考える
行政へ申請すると、
一度提出して終わりとは限りません。
図面と申請書の数字が合っていない。
排水計画を修正してほしい。
同意書類が不足している。
周知範囲を確認したい。
といった補正が出る可能性があります。
その場合、
設計者へ図面修正を依頼。
施工会社へ確認。
行政へ回答。
修正版を再提出。
という調整が必要になります。
本人申請するなら、
申請書を提出できるかではなく、許可まで補正を回せるか
まで考えます。
工事が始まった後の手続もある
盛土規制法の手続は、許可が出たら終わりではありません。
工事内容によっては、
工程報告
中間検査
定期報告
などがあります。
また、許可内容を変更する場合には変更許可や変更届を確認します。
工事完了後は完了検査を受けます。
愛知県では、完了検査の際に工事中の施工状況を示す写真等も確認されます。
そのため、
申請時から工事会社と、施工中に何を記録しておくか共有する
ことも重要です。
自分で申請した方がよいケース
自分で進めやすいのは、次のような場合です。
造成計画・設計が完成している。
必要な技術図面を設計者が用意している。
行政との事前相談に自分で対応できる。
土地所有者等の関係が単純。
住民周知も自分で進められる。
補正が出たとき、設計者・工事会社と調整できる。
許可後の検査・報告まで自分で管理できる。
この場合は、本人申請を検討できます。
行政書士へ依頼した方がよいケース
一方、
何の手続が必要か整理できていない
盛土規制法だけでなく開発許可・農地転用・雨水等が関係しそうな場合。
行政との事前相談から任せたい
自分で図面を説明したり、行政とのやり取りをする時間を取りにくい場合。
土地所有者等が複数いる
工事区域と同意関係の整理が必要な場合。
住民周知から申請まで手続管理を任せたい
工事前に行う手続を漏らしたくない場合。
工事日程が決まっている
補正や行政調整による工程への影響をできるだけ減らしたい場合。
設計者・工事会社・行政の間を調整する必要がある
技術設計は専門家に任せながら、許可申請全体をまとめたい場合。
このような案件ほど、行政書士へ依頼する意味が大きくなります。
行政書士へ頼む境目は「申請書を書けるか」ではない
自分で申請するか迷ったら、
「役所の申請書を書けるかな」
だけで決めない方がよいでしょう。
確認したいのは、
造成計画を理解しているか
必要な技術資料がそろっているか
住民周知・同意関係を整理できるか
行政からの補正へ対応できるか
許可後の手続まで管理できるか
です。
ここまで自分で対応できるなら、本人申請の余地があります。
逆に、
申請書自体は書けても、
行政協議や図面調整が難しい。
他の許認可も関係する。
工事日程を管理しながら進める必要がある。
という場合は、行政書士へ依頼する価値が上がります。
まとめ
盛土規制法の許可申請は、行政書士へ依頼しなければできない手続ではありません。
工事主本人による申請も可能です。
ただし、
自分でできるかを、
申請書を書けるか
だけで判断するのはおすすめしません。
盛土規制法では、
造成図面
擁壁・排水施設等の技術資料
土地所有者等の同意
住民周知
工事主の資力・信用
工事施行者の能力
などをまとめて申請します。
また、一定規模の擁壁や排水施設については、法令上の資格を持つ設計者が必要です。
そのため、
行政手続を担当する人
と
技術設計を担当する人
を分けて考えることが重要です。
造成設計が完成し、必要資料もそろっていて、行政協議や補正、許可後の手続まで自分で管理できるなら、本人申請を検討できます。
一方、
複数の許認可が関係する。
行政との事前相談から任せたい。
設計者・工事会社との資料調整が必要。
工事工程に合わせて手続きを管理したい。
という場合は、行政書士へ依頼する意味が大きくなります。
つまり、
「自分で申請できるか」ではなく、「申請から工事完了までの行政手続を自分で回せるか」。
そこを境目にすると判断しやすくなります。
三河の盛土規制法の許可申請をご相談ください
いしかわ行政書士事務所では、碧南・西尾・高浜・安城・刈谷・岡崎を中心とした三河エリアで、盛土規制法の許可申請を含む造成関係の行政手続をサポートしています。
現在の造成計画・図面を確認し、行政との事前相談、必要書類の整理、申請書類の作成・提出まで対応します。開発許可・雨水浸透阻害行為・農地転用などが関係する場合も、必要な手続をあわせて整理します。
測量・構造設計など別の専門家が必要な部分は役割を切り分け、申請手続につなげます。
造成計画や工事工程を固め切る前にご相談ください。
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この記事は、2026年9月時点の愛知県・愛知県行政書士会・日本行政書士会連合会等の公的・公式情報をもとに作成しています。
