この記事は、いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令・公的機関の情報を確認して作成しています。
土地の高さを下げて造成するとき、
「盛土はしないから盛土規制法は関係ない?」
「山側を削るだけでも許可が必要?」
「500㎡未満なら切土はいくらしても大丈夫?」
と迷うことがあります。
結論からいうと、盛土を一切しなくても、切土だけで盛土規制法の許可対象になることがあります。
盛土規制法は、名前に「盛土」と付いていますが、一定規模以上の、
盛土
切土
盛土と切土を同時に行う造成
土石の一時的な堆積
などを対象にしています。
そのため、
「土を持ち込まない」
「今ある土地を削るだけ」
という理由だけでは、許可不要とは判断できません。
切土の場合は特に、
切土によってできる崖の高さ
切土する土地の面積
どの規制区域にある土地か
を確認します。
「盛土規制法なのに切土も対象?」という理解から始める
盛土規制法の正式名称は、
宅地造成及び特定盛土等規制法
です。
規制の目的は、危険な盛土だけを取り締まることではありません。
造成によって崖崩れや土砂流出などの災害が発生することを防ぐため、一定規模以上の土地の形質変更を規制します。
そのため、
地面を高くする盛土
だけではなく、
地面を削って低くする切土
も対象になります。
たとえば斜面を削って平らな駐車場を作る場合でも、切土の規模によっては許可を確認する必要があります。
切土だけなら「何m削るか」だけを見ない
切土の許可要否で重要なのは、
削った深さ=そのまま許可基準
ではないことです。
確認するのは、切土によって、
どのような崖が生じるか
です。
たとえば宅地造成等工事規制区域では、一定条件のもと、
切土で高さ2mを超える崖を生じるもの
が許可対象になります。
一方、特定盛土等規制区域では許可対象規模が異なります。
したがって、
「2m削ったから必ず許可」
「1.9mなら必ず不要」
と数字だけで判断するのではなく、
どこからどこまでを切土し、どの位置にどの高さの崖ができるのか
を図面で確認します。
切土しても崖ができなければ許可不要?
ここが一段下げて確認したいところです。
たとえば広い土地を、
全体的に30cm、50cm程度削って平らにする場合です。
高い崖ができないなら、
「崖の高さ基準には当たらない」
可能性があります。
しかし、それだけで終わりではありません。
盛土規制法では、
盛土または切土をする土地の面積
による基準もあります。
つまり、
高い崖はできない
↓
だから許可不要
とは限りません。
切土面積が大きければ、別の面積基準で許可対象になることがあります。
宅地造成等工事規制区域では500㎡超の切土も確認する
宅地造成等工事規制区域では、崖の高さなど他の基準に該当しない場合でも、
盛土または切土をする土地の面積が500㎡を超えるもの
が許可対象になる基準があります。
たとえば、
800㎡の土地を50cm程度切り下げる。
高い崖は作らない。
という造成でも、面積基準の確認が必要です。
したがって、
切土の高さが小さい=許可不要
ではありません。
ただし500㎡超なら必ず許可とも限らない
ここも愛知県では確認が必要です。
愛知県は、一定の工事について「災害の発生のおそれがないと認められる工事」として、許可不要となる取扱いを示しています。
たとえば、
高さ2m以下
かつ
面積500㎡超
の盛土・切土でも、施工前後の地盤面の標高差が一定範囲内に収まる場合があります。
愛知県では、前後の地盤面の標高差が30cmを超える部分の面積を使って許可要否を確認する取扱いがあります。
つまり、
土地全体800㎡
↓
800㎡全部を20cm切土
という工事と、
土地全体800㎡
↓
600㎡を80cm切土
では、同じ800㎡の土地でも扱いが変わる可能性があります。
土地面積ではなく、実際にどこをどれだけ形質変更するか
を見る必要があります。
「敷地500㎡」と「切土面積500㎡」は同じではない
たとえば敷地が1,000㎡あっても、
実際に切土する部分が300㎡
なら、面積基準を見るときは1,000㎡そのものではありません。
反対に、
複数箇所を切土し、合計すると500㎡を超える
という場合もあります。
そのため、
登記簿上の土地面積だけで許可要否を判断しません。
造成平面図で、
切土する範囲
を明確にします。
斜面を削って駐車場にする場合は崖の高さを見る
典型的なのが、
道路より土地が高い
↓
道路の高さまで削る
↓
駐車場を作る
という計画です。
この場合、
道路側だけを見ると平坦な駐車場になります。
しかし敷地奥側では、元の地盤との間に大きな高低差ができることがあります。
その高低差によって、
切土による崖
が生じる可能性があります。
つまり、
完成後が平らな駐車場だから安全
ではなく、
周囲との境界部分にどんな崖ができるか
を見る必要があります。
切土後に擁壁を作れば盛土規制法は関係なくなる?
これも違います。
切土によって崖が生じ、その部分に擁壁を設置する計画だったとしても、
擁壁を作るから許可不要
になるわけではありません。
むしろ許可対象となる造成では、
崖面の保護
擁壁
排水施設
などが技術基準に適合しているか審査されます。
つまり、
許可を避けるために擁壁を作る
のではなく、
許可対象となる切土を安全に施工するために擁壁等を計画する
という関係です。
切土した土を敷地内へ移せば「切土だけ」ではなくなる
ここも実際の造成では重要です。
たとえば、
敷地の高い部分を1m削る
↓
削った土を低い部分へ移す
とします。
工事主からすると、
「外から土を持ち込んでいないから盛土ではない」
と感じるかもしれません。
しかし低い部分へ土を載せて地盤を高くするなら、
盛土も行っています。
この場合、
切土単独
ではなく、
盛土と切土を同時に行う工事
として基準を確認します。
土をどこから持ってきたかではなく、
工事後に地盤を高くした部分があるか
を見る必要があります。
切土と盛土を同時にすると判定基準が変わる
盛土規制法では、
切土単独
と、
盛土+切土
を分けて基準が設定されています。
たとえば、
上側を削り、下側へ土を移して平場を広げる造成
では、
敷地全体として見ると、
上側=切土
下側=盛土
です。
この場合、
「最大切土高だけ確認する」
のでは不十分です。
盛土と切土を同時に行った結果、生じる崖の高さなどを確認します。
残土を場外へ出す場合はどうなる?
切土によって発生した土を敷地外へ搬出する場合、
造成地側については切土として確認します。
一方、搬出先でその土を盛ったり、一時的に大量に仮置きしたりする場合は、
搬出先側でも盛土規制法の確認が必要になる可能性があります。
つまり、
造成地から土を出せば規制がなくなる
というわけではありません。
施工計画として、
どこへ搬出するのか
まで確認が必要になるケースがあります。
農地や資材置場でも切土なら対象になる?
盛土規制法は、宅地だけを対象とする制度ではありません。
規制区域内で一定規模以上の工事を行う場合は、
宅地
農地
森林
など土地用途にかかわらず対象になり得ます。
したがって、
「農地を削るだけだから宅地造成ではない」
「資材置場だから建物を建てない」
という理由だけでは除外されません。
用途ではなく、
土地の形質変更の規模
を確認します。
建物を建てなくても切土は確認する
たとえば、
建物なしの月極駐車場
建物なしの資材置場
太陽光発電用地
などです。
都市計画法上の開発許可に該当するかとは別に、
盛土規制法では切土規模を確認します。
そのため、
建物を建てない=造成許可が何もない
とは限りません。
開発許可も必要な造成なら盛土規制法との関係を確認する
たとえば、
土地を切土して住宅や店舗を建てる
場合です。
都市計画法上の開発行為に該当し、開発許可が必要になるケースがあります。
その造成が盛土規制法の許可対象規模にも該当する場合、愛知県では、開発許可を受けることによって盛土規制法上の許可を受けたものとみなされる場合があります。
そのため、
開発許可
盛土規制法
を別々に判断するだけでなく、
両方に該当した場合の手続関係
まで確認します。
ただし、盛土規制法の技術基準を見なくてよいという意味ではありません。
「切土2m」「500㎡」だけで自己判断しない方がよいケース
特に相談した方がよいのは、
- 切土高が基準付近
- 500㎡前後
- 部分ごとに切土量が違う
- 盛土も一部発生する
- 擁壁を作る
- 法面を作る
- 開発許可も関係する
といった造成です。
こうした案件では、
一つの数字だけを見ても許可要否が決まりません。
平面図と断面図を重ねて、
どこを何m削るか
どの面積を切土するか
どんな崖ができるか
を確認します。
許可要否を見るなら平面図だけでは足りない
切土の場合、特に重要なのが断面図です。
平面図だけでは、
切土範囲
は分かっても、
何m削るか
が十分に分かりません。
たとえば同じ300㎡の切土でも、
30cm削る造成
と、
3m削って崖を作る造成
では意味が全く違います。
そのため、許可要否を確認するときは、
造成前の地盤高
造成後の地盤高
が分かる資料を用意します。
愛知県ではまず規制区域を確認する
切土の規模を計算する前に、
その土地が盛土規制法のどの規制区域にあるか
を確認します。
盛土規制法では、
宅地造成等工事規制区域
と
特定盛土等規制区域
があり、許可対象となる規模が異なります。
愛知県では2025年5月9日から盛土規制法による規制を開始しています。
また、名古屋市・中核市・事務処理市などは、それぞれ許可権者や窓口が異なります。
同じ愛知県内でも、所在地によって相談先が変わります。
切土だけの造成を確認するときの順番
切土を予定しているなら、
1.規制区域を確認
まず宅地造成等工事規制区域か、特定盛土等規制区域かを確認します。
2.造成前後の高さを確認
どこを何m削るのかを出します。
3.切土による崖を確認
高さ基準に該当する崖が生じるかを確認します。
4.切土する面積を確認
高さ基準に該当しなくても、面積基準を確認します。
5.実は盛土もないか確認
削った土を敷地内へ移す場合などは、盛土+切土として再確認します。
この順番で見ると、
「盛土をしないから大丈夫」
という判断を避けやすくなります。
切土をする土地の面積と工事手数料も関係する
許可対象になった場合、愛知県知事が許可権者となる区域では、
盛土または切土をする土地の面積
に応じて許可申請手数料が決まります。
たとえば愛知県の現行手数料では、
500㎡以内
500㎡超1,000㎡以内
1,000㎡超2,000㎡以内
など、面積帯ごとに金額が変わります。
つまり許可申請では、
敷地面積
ではなく、
実際に盛土・切土をする土地の面積
を正確に整理することが重要になります。
切土なら雨水浸透阻害行為は関係ない?
これも別の話です。
たとえば畑を切土し、その後アスファルト駐車場にする場合。
盛土規制法では、
切土の高さ・面積
を確認します。
一方、特定都市河川流域内で雨水が浸透しにくくなる造成なら、
雨水浸透阻害行為
も別に確認します。
つまり、
切土だから盛土規制法だけ
とも限りません。
造成後に何へ使うかまで見ます。
土地を切土して造成する前に確認します
土地を削って、
駐車場を作りたい。
資材置場にしたい。
建物を建てたい。
という場合、
盛土をしないから盛土規制法は関係ない
とは限りません。
切土による崖の高さや造成面積によっては、許可の確認が必要です。
また、造成内容によっては、
開発許可
雨水浸透阻害行為
農地転用
などが重なる場合があります。
「この切土は許可が必要?」
「どこまでを切土面積に入れる?」
「造成図を作ったが盛土規制法をまだ確認していない」
という段階から整理できます。
造成工事を始める前に、土地の場所・造成前後の高さ・切土範囲を確認しておくことが重要です。
[土地造成・盛土規制法について相談する]
まとめ
盛土規制法は、
盛土だけを規制する法律ではありません。
規制区域内で一定規模以上の切土を行う場合も、許可等の対象になります。
切土では、
切土によって生じる崖の高さ
だけでなく、
切土する土地の面積
も確認します。
さらに、
切土した土を敷地の低い部分へ移せば、
切土単独ではなく、
盛土+切土
になる可能性があります。
そのため、
「外から土を持ってこない」
「盛土はしない」
「建物も建てない」
という理由だけでは判断できません。
まず確認するのは、
規制区域
造成前後の高さ
崖
切土範囲
盛土も発生するか
です。
特に、
切土高が基準付近
500㎡前後
擁壁を作る
部分ごとに高さが違う
盛土も一部行う
という造成は、平面図だけでなく断面図を使って確認した方がよいでしょう。
盛土をするかではなく、土地の形をどの程度変えるのか。
そこから盛土規制法の許可要否を判断します。
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出典
この記事は、2026年9月時点の国土交通省・愛知県等の公的情報をもとに作成しています。
