巡回指導で指摘されたらどうなる?改善報告・監査につながるケース

この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。

巡回指導で指摘を受けても、その場で直ちに行政処分を受けるわけではありません。

まず必要になるのは、指摘された原因を確認し、実際の運用と帳票を直したうえで、改善状況を確認できる書類を添えて報告することです。

愛知県では、改善報告の提出期限は巡回指導実施日から3か月以内とされています。

ただし、改善結果報告書を提出しない、指摘事項がまったく改善されない、D・E評価を繰り返すといった場合には、愛知県貨物自動車運送適正化事業実施機関から運輸支局へ報告され、監査につながる可能性があります。

「指摘を受けたこと」よりも、「指摘後に改善せず、報告もしないこと」のほうが問題を大きくします。

巡回指導で指摘されやすい項目とは?

巡回指導では、営業所における法令遵守と安全管理の状況が確認されます。

指摘されやすいのは、書類そのものがない場合だけではありません。帳票はそろっていても、実際の運行と記録が食い違っていれば改善対象になります。

主な確認項目は次のとおりです。

  • 事業計画どおりに営業所、車庫、車両を使用しているか
  • 役員、運行管理者、整備管理者などの変更届を提出しているか
  • 点呼を適切な方法で実施し、必要事項を記録しているか
  • 乗務時間や休息期間が基準に適合しているか
  • 運転日報、運行指示書、乗務員台帳を作成・保存しているか
  • 運転者への指導・監督を計画的に実施しているか
  • 初任運転者などに必要な特別な指導と適性診断を実施しているか
  • 健康診断を期限内に実施し、結果を確認しているか
  • アルコール検知器を備え、正常に作動する状態で管理しているか
  • 社会保険や労働保険へ適切に加入しているか

書類の記載漏れであれば、その場で説明や記載方法の指導を受けることもあります。

一方、点呼を実施していない、必要な教育を行っていない、無届で車庫や車両を変更しているなど、実際の運用に問題がある場合は、帳票を後から埋めるだけでは改善になりません。

巡回指導で改善報告が必要になった場合の対応

愛知県貨物自動車運送適正化事業実施機関から改善事項の通知を受けた場合は、巡回指導実施日から3か月以内に改善結果報告書を提出します。

期限の最終日が土曜日、日曜日または祝日に当たる場合は、その直前の平日までとされています。

改善結果報告書は、指摘項目ごとに次の内容を整理して作成します。

記載・添付する内容具体例
指摘された事項点呼記録簿の記載不足、初任教育の未実施など
原因担当者交代時の引継ぎ不足、期限管理表がなかったなど
実施した改善様式変更、社内教育、届出、診断予約など
改善した日新しい運用を始めた日、届出日、教育実施日など
再発防止策月次点検、複数人での確認、期限一覧の作成など
挙証書類改善後の帳票、届出書控え、教育記録、受診票など

改善報告では、「今後注意します」と書くだけでは足りません。

例えば点呼記録簿の不備であれば、改善後に実際に使用した記録簿を添付し、誰が、いつから、どのように確認する運用へ変えたのかを示します。

届出漏れであれば、届出書の控えや受付が確認できる書類を添えます。

未実施だった教育や診断については、過去に実施したように記録を作ってはいけません。未実施であった事実を隠さず、実施日や予約状況、今後の期限管理方法を報告します。

愛知県の改善通知では、改善できなかった事項がある場合も、改善報告書自体は提出し、できなかった理由と今後の見込みを記載する取扱いになっています。

巡回指導で評価が悪いとどうなる?

巡回指導の総合評価は、確認項目のうち「適」と判定された割合をもとに、AからEまでの5段階で判定されます。

総合評価「適」の割合
A評価90%以上
B評価80%以上90%未満
C評価70%以上80%未満
D評価60%以上70%未満
E評価60%未満

重点指導項目に「否」がある場合は、算定した評価から1段階引き下げられます。複数の重点指導項目に「否」があっても、引下げは1段階です。

D・E評価を受けたからといって、直ちに車両停止や許可取消しになるわけではありません。

ただし、2023年4月1日からD・E評価の営業所に対する巡回指導が重点化されており、前回の巡回指導から半年後を目安に、再度の巡回指導が行われます。

愛知県の改善通知では、改善報告書を提出して全部または一部を改善していても、D・E評価の場合は6か月後に再度巡回指導を行うと案内されています。

そのため、改善報告を提出して終わりではありません。

改善後の帳票が継続して使用されているか、点呼や教育が実際に行われているか、届出内容と営業所の現状が一致しているかを、再度の巡回指導まで維持する必要があります。

巡回指導前に帳票がそろっていない場合の対応

巡回指導の通知が届いた時点で帳票がそろっていなくても、過去の日付にさかのぼって実施済みのように記録することは避けてください。

まず、次の3つに分けます。

状況対応
実施済みだが記載・保管が不十分元資料を確認し、事実に基づいて不足部分を整理する
帳票の様式が法令や運行実態に合っていない現在の運行に合う様式へ変更し、使用を開始する
点呼・教育・診断・届出自体が未実施未実施の事実を整理し、速やかに是正する

運転日報、デジタルタコグラフ、配車表、点呼記録簿の時刻が食い違っている場合は、一つの書類だけを直すのではなく、どの時点で記録がずれたのかを確認します。

保存期間を過ぎる前に廃棄していた帳票は、後から完全に復元できない場合があります。その場合も架空の記録は作らず、残っている資料、改善開始日、今後の保存方法を説明できるようにします。

巡回指導当日までに改善が完了しない項目は、現在どこまで対応しているか、完了予定日はいつか、誰が担当するかを整理しておくと、その後の改善報告につなげやすくなります。

運送業の監査とは?巡回指導から監査につながるケース

巡回指導と監査は同じものではありません。

巡回指導は、都道府県トラック協会に置かれた地方貨物自動車運送適正化事業実施機関が行う指導です。

監査は、運輸局や運輸支局が法令違反の有無を確認するために行います。法令違反の疑い、事故、通報、改善状況などを端緒として実施されます。

巡回指導に関係して監査対象として運輸支局へ報告される主なケースは、次のとおりです。

  • 指摘を受けたのに、3か月以内に改善結果報告を提出しない
  • 改善結果報告を提出したが、指摘事項がすべて未改善である
  • 巡回指導の総合評価が3回連続してDまたはEである
  • 正当な理由なく巡回指導を拒否する
  • 新規巡回指導で、許可基準を逸脱する悪質な事業計画違反が疑われる
  • 社会保険や労働保険に加入していない、または保険料を納付していない

D・E評価を1回受けただけで、自動的に監査が始まるわけではありません。

一方で、死亡事故、飲酒運転や無免許運転などの悪質違反、行政機関からの通報、報告書の未提出・虚偽記載など、巡回指導とは別の事情から監査対象になる場合もあります。

監査には、重大な事故や悪質な法令違反の疑いがある場合に全般的な遵守状況を確認する特別監査と、監査の端緒に応じた重点事項を確認する一般監査などがあります。

一般監査の途中で、全般的な法令遵守状況を確認する必要があると判断されれば、特別監査へ切り替えられることがあります。

運送業の行政処分にはどんな種類がある?

巡回指導の指摘だけで行政処分が決まるわけではありません。

運輸支局などの監査で法令違反が確認され、その内容、違反回数、悪質性、過去の処分歴などを行政処分基準へ当てはめて判断されます。

貨物自動車運送事業者に対しては、主に次のような措置があります。

  • 文書警告などの行政指導
  • 輸送の安全確保命令や事業改善命令
  • 事業用自動車などの使用停止処分
  • 事業の全部または一部の停止処分
  • 許可の取消処分
  • 運行管理者資格者証の返納命令

自動車等の使用停止処分では、違反内容に応じて算定された処分日車数をもとに、対象車両数と停止期間が決められます。

同じ記載漏れでも、実際には業務を実施しており一部の記載だけが不足していた場合と、点呼や教育自体を行っていなかった場合では扱いが異なります。

そのため、巡回指導後に帳票の見た目だけを整えるのではなく、指摘の原因となった実際の運用を直すことが必要です。

運送業許可が取り消されるケースとは?

許可取消しは、巡回指導で一度指摘を受けただけで行われるものではありません。

違反の内容が重大・悪質な場合や、行政処分を重ねて累積した違反点数が取消基準に達した場合などに、行政処分基準に基づいて判断されます。

事業停止命令に違反して運行を続けるなど、行政処分へ従わない場合も、さらに重い処分につながる可能性があります。

また、許可を維持するための基本的な条件を満たさず、改善命令などを受けても是正しない場合には、事業の継続へ影響します。

巡回指導後の段階で必要なことは、取消しを過度に恐れることではありません。

指摘事項を次のように分けて、期限内に対応することです。

  1. すぐに直せる記載・保管上の不備
  2. 届出や報告が必要な事項
  3. 教育、診断、点呼など実施が必要な事項
  4. 車庫、車両、管理者など事業計画に関わる事項
  5. 社会保険、労務管理など他制度にも関わる事項

処分基準は違反事項ごとに細かく定められています。個別の違反について、確認前から「警告で済む」「何日車の処分になる」と決めつけることはできません。

よくある質問

Q
巡回指導で一つでも指摘されたら、行政処分を受けますか?
A

指摘を受けただけで直ちに行政処分が決まるわけではありません。まずは指摘事項を改善し、指定された期限までに改善結果報告書と挙証書類を提出します。ただし、重大な法令違反の疑いがある場合は、運輸支局へ情報が提供される可能性があります。

Q
改善報告はいつまでに提出しますか?
A

愛知県では、巡回指導実施日から3か月以内です。期限の最終日が土日祝日の場合は、直前の平日までとされています。実際に交付された改善通知に記載された期限を必ず確認してください。

Q
3か月以内にすべて改善できない場合はどうしますか?
A

改善できた項目だけでなく、未改善の項目についても、理由と今後の見込みを記載して報告します。未提出のままにせず、予約票や届出準備資料など、現在の対応状況が分かる書類を添えてください。

Q
D・E評価になると必ず監査されますか?
A

1回のD・E評価だけで必ず監査されるわけではありません。ただし、半年後を目安に再度巡回指導が行われ、3回連続でD・E評価となった場合は、監査対象として運輸支局へ報告されます。

Q
改善後の帳票は何日分を提出すればよいですか?
A

指摘項目や改善通知の内容によって異なります。改善後の運用が確認できる期間分を準備し、改善結果報告書の案内や適正化事業実施機関の指示を確認してください。

Q
過去の点呼記録がないため、後から作成してもよいですか?
A

実施していない点呼を、実施したように記録してはいけません。残っている運転日報や配車表などから確認できる事実を整理し、未実施または記録未保存の状況、改善開始日、再発防止策を報告します。

Q
改善報告を行政書士へ依頼できますか?
A

指摘事項、既存帳票、届出状況を確認し、改善項目の整理や改善結果報告書、必要な変更届などの作成を依頼できます。ただし、点呼や運転者教育など、会社が実際に行うべき安全管理を行政書士が代わりに実施することはできません。

まとめ

巡回指導で指摘を受けても、直ちに監査や行政処分へ進むわけではありません。

愛知県では、改善結果報告書を巡回指導実施日から3か月以内に提出し、改善後の帳票や届出書控えなど、改善状況を確認できる資料を添付します。

D・E評価の営業所は半年後を目安に再度巡回指導を受けます。改善報告の未提出、指摘事項の全項目未改善、3回連続のD・E評価、巡回指導の拒否などは、監査対象として運輸支局へ報告されるケースです。

指摘を受けたときは、書類だけの不備か、実際の運用も未実施だったのかを分け、事実に基づいて改善してください。

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いしかわ行政書士事務所では、巡回指導報告書、現在使用している帳票、届出状況を確認し、改善項目、必要な挙証書類、変更届などを整理します。

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改善報告の期限が迫っている場合は、巡回指導報告書、改善事項の通知、現在の帳票一式をご用意のうえお問い合わせください。

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出典

愛知県トラック協会「貨物自動車運送事業の改善事項及び総合評価について」
愛知県トラック協会「巡回指導総合評価D・E事業者に係る巡回指導の重点化について」
愛知県トラック協会「各種帳票類ダウンロード」
国土交通省「行政処分の基準」国土交通省「事業者の行政処分情報検索」

この記事は、2026年8月時点の公的情報をもとに作成しています。巡回指導の評価方法、改善報告の提出期限、D・E評価営業所への対応、監査方針および行政処分基準が改正された場合は、記事の見直しが必要です。

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