既存の擁壁をやり替えたい|盛土規制法の許可が必要になる?

この記事は、いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令・公的機関の情報を確認して作成しています。

古くなった擁壁をやり替えたいとき、

「同じ場所に新しく作るだけでも盛土規制法の許可が必要?」

「擁壁を壊して造り直すなら造成扱いになる?」

「今より少し位置を変えたい場合は?」

と迷うことがあります。

結論からいうと、既存擁壁をやり替えるだけで、必ず盛土規制法の許可が必要になるわけではありません。

愛知県では、

既存擁壁と位置・勾配が変わらない改修

で、新たな崖を生じない場合は、盛土規制法の許可は不要としています。

一方、

  • 擁壁の位置を前後に動かす
  • 勾配を変える
  • 高さを変える
  • 擁壁前後の地盤高を変える
  • やり替えに伴って盛土や切土が新たに生じる

といった場合は、

単なる改修ではなく、新たな土地の形質変更として許可要否を確認

する必要があります。

つまり、

「古い擁壁を新しくするか」ではなく、「やり替え前後で土地の形が変わるか」

が境目です。

同じ位置・同じ勾配なら盛土規制法の許可は不要になりやすい

愛知県のFAQでは、

既存擁壁の改修について、

既存擁壁と位置及び勾配が変化しない場合は、新たな崖を生じるものではないため許可不要

としています。

たとえば、

古いコンクリート擁壁
↓
同じ位置に新しい擁壁

で、

擁壁の前面位置も変わらず、

擁壁の傾きも変わらず、

造成前後の地盤高も基本的に変わらない。

という工事です。

この場合は、

土地を新しく盛ったり削ったりして崖を作る工事ではなく、既存擁壁の改修

として扱える可能性が高くなります。

「同じ高さ」だけでは足りない

ここが重要です。

たとえば、

既存擁壁2m
新設擁壁2m

なら、

「高さが同じだから許可不要」

と思いたくなります。

しかし、高さだけでは判断できません。

同じ2mでも、

擁壁を50cm前へ出す。

擁壁を後ろへ下げる。

傾いた擁壁から垂直に近いL型擁壁へ変える。

となると、

やり替え前後で地盤の形が変わります。

その結果、

新たな盛土や切土が発生する可能性があります。

つまり、

高さが同じでも、

位置・勾配・地盤面まで同じか

を見る必要があります。

擁壁を前へ出すと「盛土」が生じることがある

たとえば既存擁壁が斜めの練積み擁壁で、

それを道路側へ張り出すようにL型擁壁へやり替えるとします。

擁壁の前面位置が変われば、

既存擁壁と新設擁壁の間に新たに土を入れる部分ができることがあります。

この部分は、

盛土

として扱われる可能性があります。

他自治体の審査基準でも、

既存擁壁からL型擁壁へ変更し、

擁壁角度の違いによって新たな盛土が生じるケースは、

盛土規制法の許可対象になり得る例として示されています。

つまり、

擁壁の構造形式を変更するときは、壁そのものだけでなく、その裏側に新しく土が入るか

を確認します。

逆に擁壁を後ろへ下げれば「切土」が生じることがある

反対に、

既存擁壁より新しい擁壁を敷地側へ下げるとします。

すると、

既存の地盤を削って新しい擁壁を作る形になることがあります。

この場合は、

切土

として盛土規制法の基準を確認します。

つまり、

擁壁やり替えでも、

前へ出す
→ 盛土

後ろへ下げる
→ 切土

という違いが出ることがあります。

「擁壁工事だから擁壁だけ確認」

では不十分です。

L型擁壁へ変える場合は特に断面を見る

擁壁のやり替えでは、

間知ブロック擁壁
↓
L型擁壁

など、構造形式を変えることがあります。

このとき、

見た目としては、

「古い擁壁を新しい擁壁へ交換」

に見えます。

しかし断面を見ると、

既存擁壁と新設擁壁で壁面の位置や勾配が違い、

盛土や切土が発生していることがあります。

そのため、

構造形式を変えるなら、平面図だけでなく断面図で確認

することが重要です。

擁壁の高さを変えるなら新たな崖として確認する

たとえば、

既存擁壁1.5m
↓
新設擁壁2.5m

にする場合です。

これは単純な改修ではなく、

やり替えによって新しい高さの崖を作ることになります。

この場合は、

新たに生じる崖が盛土規制法の許可対象規模に当たるか

を確認します。

反対に、

既存2.5m
↓
新設1.5m

へ下げる場合でも、

地盤を削ることで切土が生じる可能性があります。

つまり、

高さを変える工事は、

「低くするから安全」

とも限りません。

擁壁前後の地盤高を変える場合も別

擁壁の位置と高さが同じでも、

擁壁の後ろ側をさらに30cm、50cmかさ上げする。

前面の地盤を掘り下げる。

という場合は、

擁壁そのものが同じでも土地の形状は変わっています。

愛知県の盛土規制法では、

土地の形質変更として一定規模以上の盛土・切土を規制します。

そのため、

擁壁だけ同じ形で造り直したとしても、前後の地盤高を変えるなら別途許可要否を確認

します。

擁壁を壊すための掘削は全部「切土」になる?

擁壁を造り直すには、

既存擁壁を撤去し、

基礎を施工するために一時的に掘削します。

ここで、

「掘ったから切土許可が必要?」

と思うことがあります。

愛知県FAQでは、

工作物の基礎等を築造するために原地盤を掘削し、

その後、

原地盤の高さまで埋め戻す工事

については許可不要としています。

そのため、

擁壁を設置するための必要最小限の床掘り・埋戻しまで、

すべて新たな切土・盛土として扱うわけではありません。

ただし、

元の地盤以上に盛る。

大きく地盤を削ったまま仕上げる。

となれば別です。

「同じ位置に戻すつもり」でも施工中に大きく掘る場合は相談した方がよい

最終形だけ見れば同じ位置・同じ高さでも、

施工方法によっては、

大きく地山を掘削する。

仮設土留めが必要。

隣地との高低差が大きい。

といったケースがあります。

盛土規制法の許可対象かとは別に、

施工中の安全性や技術基準の確認が必要になる場合があります。

そのため、

高い擁壁や隣地に近い擁壁をやり替える場合は、工事前に自治体へ事前相談

した方が安全です。

古いブロック擁壁をRC擁壁へ変えるだけなら?

たとえば、

古いコンクリートブロック擁壁
↓
鉄筋コンクリート擁壁

へ造り替える場合です。

重要なのは、

構造を良くするから許可不要

でも、

構造を変えるから必ず許可

でもありません。

確認するのは、

新しい擁壁の位置・高さ・勾配・前後地盤がどう変わるか

です。

構造変更によって壁厚や勾配が変わり、

盛土・切土が新たに発生するなら許可要否を確認します。

一方、

新たな崖を作らず、

位置や勾配も変わらない通常の改修なら、

愛知県では盛土規制法の許可不要とされています。

既存擁壁が適法かどうかも別に確認する

ここも実務では重要です。

既存擁壁が、

昔の開発許可で作られた。

確認済証・検査済証がある。

宅地造成許可を受けている。

というケースもあれば、

いつ作られたか分からない。

図面もない。

構造も不明。

というケースもあります。

既存擁壁を同じ形にやり替える場合でも、

既存擁壁がどういう経緯で造られたか

は確認した方がよいでしょう。

自治体によっては、

既存擁壁が適法に設置されたものか、

構造的にどの形式かによって、

やり替えの取扱いを細かく定めているところもあります。

盛土規制法の許可が不要でも建築確認等が残ることがある

ここは別制度として分けます。

盛土規制法上、

「位置・勾配が変わらないので許可不要」

となっても、

擁壁について他法令の手続まで全部不要になるとは限りません。

高さ2mを超える擁壁などでは、

建築基準法上の工作物として確認申請が関係する場合があります。

また、

開発許可を受けた造成地の擁壁を変更する場合は、

当初の開発許可との関係を確認する必要があります。

つまり、

盛土規制法が不要
=
擁壁工事の行政手続が全部不要

ではありません。

開発許可で造った擁壁なら勝手に変えない

既存擁壁が、

過去の都市計画法の開発許可に基づいて造られた擁壁

の場合は注意が必要です。

開発許可では、

造成計画
擁壁位置
擁壁構造
造成高

などを計画図面として審査しています。

そのため、

「古くなったから別の擁壁に変える」

という場合でも、

過去の許可計画との関係を確認します。

特に、

位置
高さ
構造
造成高

を変えるなら、

開発担当部署への確認が必要になることがあります。

雨水浸透阻害行為も一緒に確認するケースがある

擁壁だけのやり替えなら、通常は雨水浸透阻害行為とは別問題です。

ただし、

擁壁やり替えと同時に、

畑を駐車場へ変更する。

大規模に造成する。

舗装範囲を増やす。

といった工事をする場合は、

特定都市河川流域内で雨水浸透阻害行為の確認が必要になることがあります。

つまり、

擁壁改修だけを見るのではなく、同時に何をするか

まで確認します。

まず「同じものに交換」か「造成を変える」のか分ける

擁壁をやり替える場合は、最初に次の2つへ分けると分かりやすくなります。

A:既存擁壁の通常改修

位置
勾配
高さ
前後地盤

をほぼ変えない。

この場合は、愛知県では盛土規制法の許可不要になりやすいです。

B:擁壁をやり替えながら造成も変える

位置を動かす。
高さを変える。
勾配を変える。
裏側を盛る。
地盤を削る。

この場合は、新たな盛土・切土・崖として許可要否を確認します。

擁壁やり替えで相談前に用意したい資料

許可要否を確認するなら、

現況と計画を比較できる資料

が重要です。

たとえば、

  • 所在地・地番
  • 現況写真
  • 既存擁壁の高さ
  • 既存擁壁の位置
  • 既存擁壁の構造
  • 新しい擁壁の予定位置
  • 新旧の断面図
  • 擁壁前後の地盤高
  • 過去の開発許可・宅造許可資料

などです。

特に、

新旧断面図

があると、

盛土が増えるのか
切土が増えるのか
新しい崖が生じるのか

を判断しやすくなります。

擁壁のやり替えは、工事業者へ頼む前に行政確認した方がよいことがある

擁壁工事は金額も大きくなりやすいため、

先に施工会社と契約し、

工事直前になって、

「許可が必要でした」

となると計画変更の影響が大きくなります。

特に、

2mを超える。
既存位置から動かす。
造成高を変える。
開発許可地。
市街化調整区域。
他の造成も同時に行う。

という場合は、

見積・設計段階で許可要否を確認

しておく方がよいでしょう。

既存擁壁のやり替えを整理します

既存擁壁の工事では、

「擁壁が古い」

というだけでは許可要否を判断できません。

確認するのは、

今の擁壁と新しい擁壁で、土地の形がどう変わるか

です。

「同じ場所に造り直すだけ?」

「L型擁壁へ変えたい」

「少し敷地を広げたいので道路側へ出したい」

「今より低くしたい」

という内容によって、盛土規制法の扱いが変わります。

過去の許可資料や図面がある場合は、その内容も確認します。

工事内容を決め切る前に、新旧の擁壁位置と断面を一度整理しておくことが重要です。

[擁壁・盛土規制法について相談する]

まとめ

既存擁壁をやり替える場合、

必ず盛土規制法の許可が必要になるわけではありません。

愛知県では、

既存擁壁と位置・勾配が変わらず、新たな崖を生じない通常の改修

であれば、盛土規制法の許可は不要としています。

ただし、

  • 擁壁位置を動かす
  • 高さを変える
  • 勾配を変える
  • 擁壁前後の地盤高を変える
  • 新しい盛土や切土が生じる

場合は、

新たな土地の形質変更として許可要否を確認します。

特に、

間知擁壁からL型擁壁へ変える。

擁壁を前へ出す。

擁壁を後ろへ下げる。

という工事では、

見た目は「擁壁交換」でも、

断面上は盛土や切土が生じることがあります。

だから、

擁壁の高さだけでは判断しません。

確認するのは、

位置
勾配
高さ
前後地盤
新たな盛土・切土

です。

そして、

盛土規制法の許可が不要でも、

建築基準法上の工作物確認や、過去の開発許可との関係など別の手続が残ることがあります。

既存擁壁をやり替えるなら、

「同じ擁壁に戻す工事」なのか、「造成そのものを変える工事」なのか

を最初に分ける。

そこから許可要否を確認すると整理しやすくなります。

お気軽にお問い合わせください

0566-68-5511

営業時間 9:00-21:00(土・日・祝日も対応)

出典

愛知県|盛土規制法に関するよくある質問, 愛知県|盛土規制法に係る許可申請等の手引, 愛知県|許可申請等に関する事前相談, 愛知県|開発許可申請等の手続き, 愛知県|確認申請等関係様式

この記事は、2026年9月時点の愛知県等の公的情報をもとに作成しています。

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