
この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。
墓じまいの改葬許可を申請するとき、
「墓の名義は父だけど、子である自分が申請してもいい?」
「遠方に住む母の代わりに申請したい」
「墓地使用者と申請者が違う場合は委任状だけでいい?」
と迷うことがあります。
結論からいうと、墓地使用者と改葬許可の申請者が違っていても、改葬許可を申請できる場合があります。
ただし、墓地、埋葬等に関する法律施行規則では、申請者が墓地使用者等本人ではない場合、原則として、
墓地使用者等の改葬についての承諾書
を添付することとされています。
つまり、
墓地使用者:父
改葬申請者:子
墓地使用者:母
改葬申請者:長男
といったケースでは、単に親族だから自由に申請できるのではなく、墓地使用者本人が改葬に同意していることを確認する必要があります。
この記事では、墓地使用者と改葬申請者が違う場合に、どのようなケースで承諾書が必要になるのか、委任状との違い、名義人が亡くなっている場合との違いまで整理します。
墓地使用者と改葬申請者は同じ人が基本
改葬許可申請では、通常、現在遺骨が納められている墓地・納骨堂の使用者が申請者になります。
墓地、埋葬等に関する法律施行規則でも、改葬許可申請書には、
- 申請者の住所
- 氏名
- 死亡者との続柄
- 墓地使用者等との関係
を記載することとされています。
つまり、申請書の段階で、
「申請者」と「墓地使用者等」が同一人物なのか、別人なのか
を確認する仕組みになっています。
墓地使用者本人が申請する場合は、この点について承諾書を追加する必要はありません。
一方、墓地使用者とは別の人が申請する場合には、原則として墓地使用者の承諾を確認する必要があります。
公式資料
墓地使用者と申請者が違う場合は原則として承諾書が必要
墓地、埋葬等に関する法律施行規則第2条では、改葬許可申請について、
墓地使用者等以外の者が申請する場合は、墓地使用者等の改葬についての承諾書
を添付することとされています。
例えば、
墓地使用者:父
申請者:子
という場合です。
この場合、父が、
「この遺骨を改葬することについて承諾します」
という意思を示す書類を提出します。
親子だから不要、兄弟だから不要という規定ではありません。
判断基準は、
親族かどうかではなく、申請者が現在の墓地使用者等本人かどうか
です。
公式資料
どんなケースで承諾書が必要になる?
代表的には次のようなケースです。
父名義のお墓を子が手続きする
墓地使用者:父
申請者:子
父が存命で、墓地使用者も父のままであれば、子が改葬許可を申請する際には父の承諾書を確認します。
母名義のお墓を長男が手続きする
墓地使用者:母
申請者:長男
母本人ではなく長男が申請するのであれば、同様に承諾書が関係します。
遠方に住む名義人の代わりに親族が申請する
墓地使用者本人は遠方に住んでおり、
「手続きは近くに住む兄弟に任せたい」
という場合です。
この場合も、申請者と墓地使用者が異なるため、承諾書を確認します。
岡崎市でも2026年現在、
「墓地使用者と改葬許可の申請者が異なる場合」
に使用する承諾書を公開しています。
豊田市でも同様に、
「改葬承諾書(墓地使用者と申請者が異なる場合のみ)」
という専用様式を公開しています。
公式資料
承諾書には何を書く?
承諾書の様式は自治体によって異なります。
例えば岡崎市の承諾書では、
- 墓地使用者の住所
- 墓地使用者の氏名
- 電話番号
- 改葬する死亡者
- 改葬許可申請者の住所
- 氏名
- 電話番号
- 墓地使用者等との関係
などを記載します。
墓地使用者本人が、
「この死亡者の改葬を行うこと」
そして
「この人に改葬許可申請等を行わせること」
について承諾する形式です。
豊田市でも、
- 墓地使用者
- 改葬を行う者
- 両者の関係
- 改葬する死亡者
- 現在の墓地
- 改葬先
などを記載する様式になっています。
そのため、インターネットで見つけた一般的な承諾書を自己流で作成するより、申請先自治体が様式を公開している場合は、その様式を使う方が分かりやすいでしょう。
公式資料
承諾書と委任状は同じではない
ここは混同しやすいポイントです。
承諾書
墓地使用者が、
「この改葬そのものに同意している」
ことを示す書類です。
委任状
申請者本人が、
「この人に提出などの手続きを任せる」
ことを示す書類です。
例えば、
墓地使用者:父
改葬申請者:子
市役所へ提出する人:行政書士
という場合、
父 → 子の改葬申請について承諾
子 → 行政書士へ提出等を委任
というように、承諾書と委任状が別々に関係することがあります。
実際、豊田市では、
「申請者以外の方が申請書を提出される場合は、委任状が必要」
と案内しています。
同時に、墓地使用者と申請者が異なる場合は改葬承諾書を求めています。
つまり、
承諾書があるから委任状はいらない
または
委任状があるから承諾書はいらない
とは限りません。
公式資料
具体例|父名義のお墓を子が墓じまいする場合
例えば、
墓地使用者:父
父:存命
申請者:長男
改葬する遺骨:祖父母
というケースです。
父自身は高齢で手続きをすることが難しく、長男が墓じまいを進めるとします。
この場合は、
- 父が墓じまい・改葬に同意する
- 新しい納骨先を決める
- 墓地管理者から埋蔵・収蔵証明を受ける
- 父から改葬についての承諾書を受ける
- 長男が改葬許可を申請する
- 改葬許可証を受け取る
- 遺骨を移す
という流れが考えられます。
ポイントは、
父が墓地使用者として残っている以上、長男が親族だからという理由だけで父の意思確認を飛ばさないこと
です。
具体例|墓地使用者本人が申請し、子が窓口へ持っていく場合
次は、
墓地使用者:母
改葬申請者:母
窓口へ提出する人:娘
というケースです。
この場合、墓地使用者と改葬申請者は同じ母なので、
「墓地使用者と申請者が違うための承諾書」
という問題ではありません。
ただし、娘が母に代わって窓口へ提出する場合には、自治体によって委任状が必要になることがあります。
つまり、
誰が改葬の申請者なのか
と
誰が書類を窓口へ持っていくのか
は別です。
この2つを分けて確認してください。
公式資料
墓地使用者が亡くなっている場合は「承諾書」の問題とは別
墓地使用者がすでに亡くなっている場合は、
「亡くなった名義人から承諾書をもらう」
ことはできません。
この場合は、
墓地使用者:死亡
申請者:子
という状態をそのまま、
「申請者が違うから承諾書」
だけで処理するとは限りません。
まず、
- 墓地使用権を誰が承継するか
- 墓地の名義変更が必要か
- 承継と墓地返還を同時にできるか
などを墓地管理者へ確認します。
そのうえで、現在の墓地使用者として誰を扱うのかを整理し、改葬許可申請へ進みます。
つまり、
名義人が存命で申請者が違う
→ 承諾書が中心
名義人が死亡している
→ まず墓地使用権の承継を確認
と分けると分かりやすくなります。
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墓地使用者が認知症などで意思確認が難しい場合は?
墓地使用者本人は存命でも、
- 認知症
- 重い病気
- 意思表示が難しい状態
などで、改葬について本人の承諾を確認できない場合があります。
この場合、
「子どもだから代わりに承諾書を書けばよい」
とは考えない方がよいでしょう。
厚生労働省令では、墓地使用者等以外が申請する場合に、
- 墓地使用者等の承諾書
- または、これに対抗できる一定の裁判関係書類
を求めています。
本人の意思確認ができず、誰が改葬について決定できるのか問題になる場合は、単純な書類作成だけでは解決しない可能性があります。
墓地管理者・申請先自治体へ事情を伝え、必要に応じて法律専門家へ相談してください。
公式資料
墓地使用者が承諾してくれない場合は?
例えば、
墓地使用者:兄
申請希望者:弟
で、弟は墓じまいをしたいものの、兄が反対しているケースです。
この場合、
「兄が承諾書を書いてくれないので、弟が勝手に申請する」
という進め方はできません。
厚生労働省令では、墓地使用者等以外が申請する場合は、
- 墓地使用者等の承諾書
- または承諾に対抗できる一定の裁判関係書類
が必要です。
つまり、墓地使用者本人が明確に反対している場合は、通常の改葬許可申請だけの問題ではなくなる可能性があります。
親族間で墓地使用権や祭祀について法的な争いが生じているのであれば、行政書士による申請書作成だけでは解決できません。
必要に応じて弁護士等への相談を検討します。
公式資料
「墓地管理者の証明」と「墓地使用者の承諾」も別
改葬許可では、もう一つ混同しやすいものがあります。
墓地管理者の証明
現在その遺骨が、
- 埋葬
- 埋蔵
- 収蔵
されていることを証明するものです。
寺院・霊園・墓地管理者などが証明します。
墓地使用者の承諾
申請者が墓地使用者本人ではない場合に、
「この人が改葬することに同意する」
意思を示すものです。
例えば寺院墓地で、
墓地管理者:寺院
墓地使用者:父
申請者:子
という場合、
寺院
→ 埋蔵・収蔵証明
父
→ 改葬承諾書
というように、別々の立場から書類が必要になることがあります。
公式資料
申請前に確認したい3人
墓地使用者と申請者が違う場合は、書類を集める前に「3人の立場」を整理すると分かりやすくなります。
1.墓地使用者
現在のお墓を使用する権利を持っている人です。
2.改葬許可申請者
市区町村へ改葬許可を申請する人です。
3.墓地管理者
現在の墓地・納骨堂を管理し、遺骨が納められていることを証明する人・法人等です。
例えば、
墓地使用者:父
申請者:子
墓地管理者:寺院
なら、
父から承諾
+
寺院から埋蔵証明
を確認します。
この3者を一緒にすると、必要書類を間違えやすくなります。
承諾書が必要か確認するための5項目
改葬許可を申請する前に、次の5項目を確認してください。
- 現在の正式な墓地使用者は誰か
- 改葬許可の申請者は誰か
- 墓地使用者は存命か
- 墓地使用者と申請者が違う場合、承諾を得られるか
- 申請者以外が窓口へ提出する場合、委任状が必要か
基本的には、
墓地使用者=申請者
→ 承諾書の問題なし
墓地使用者≠申請者
→ 原則として承諾書を確認
墓地使用者が死亡
→ 承諾書ではなく、まず承継手続きを確認
と整理できます。
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墓地使用者と申請者が違う場合もご相談ください
改葬許可では、
「誰が親族なのか」
だけではなく、
誰が現在の墓地使用者で、誰が改葬許可を申請するのか
を確認することが重要です。
墓地使用者本人ではない人が申請する場合は、原則として墓地使用者の承諾書が必要です。
また、
- 墓地使用者が亡くなっている
- 墓地使用者が誰か分からない
- 名義が何代も前の人のまま
- 承諾を得られない
- 誰を申請者にすればよいか分からない
という場合は、単純に承諾書を作れば済むとは限りません。
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出典
この記事は、2026年8月時点の法令・公的機関の情報をもとに作成しています。
厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」、厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律の概要」、名古屋市「改葬」、岡崎市「岡崎市内にある墳墓・納骨堂からお骨を移される方」、岡崎市「改葬承諾書 記載例」、豊田市「お墓、お骨の移転に伴う改葬許可申請」、豊田市「改葬承諾書 記載例」
