この記事は、いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令・公的機関の情報を確認して作成しています。
運送会社の点呼は、点呼記録簿へ記入すれば終わる業務ではありません。
業務前には、運転者の酒気帯び、疾病、疲労、睡眠不足、日常点検の状況などを確認し、安全に運行できるか判断します。
業務後には、酒気帯びの有無や車両・道路・運行の状況などを確認します。
点呼そのものをしていない場合だけでなく、
- 対面で行うべき場面を日常的に電話で済ませている
- 必要な確認事項が抜けている
- 点呼をした人と記録上の実施者が違う
- IT機器を使っているが制度上の要件を満たしていない
- 運転日報や勤怠記録と点呼時刻が合っていない
といった状態も見直しが必要です。
巡回指導前に点呼を確認するなら、記録簿だけでなく「誰が・いつ・どの方法で・何を確認したか」まで見ます。
点呼が不十分だとどうなる?
点呼は、貨物自動車運送事業輸送安全規則に基づく運行管理の基本業務です。
監査で点呼の未実施、記録の不備、不実記載などが確認されれば、違反内容や他の違反状況に応じて行政処分の対象になることがあります。
実際に国土交通省が公表している行政処分事例でも、
- 点呼の実施義務違反
- 点呼記録義務違反
- 点呼記録の記載事項不備
- 点呼記録の不実記載
などが違反として挙げられています。
ただし、巡回指導で点呼の記載漏れを一つ指摘されたから、直ちに営業停止になるという意味ではありません。
まず確認したいのは、不備の種類です。
| 状況 | 見直すポイント |
|---|---|
| 点呼を実施していない | 点呼を実施できる勤務体制になっているか |
| 点呼はしたが記録がない | 他の記録から実施状況を確認できるか |
| 記載事項が不足している | 点呼方法・記録方法を見直す |
| 電話点呼が常態化している | 本当に運行上やむを得ない場合だったか |
| 記録と実態が違う | 点呼簿・運転日報・勤怠を照合する |
| IT点呼等を利用している | 制度・機器・届出等の要件を確認する |
「空欄を埋めれば終わり」と考えず、現在の点呼体制そのものに問題がないか確認します。
対面点呼で見直すポイント
業務前・業務後の点呼は、対面または対面と同等の効果を有すると国土交通大臣が定める方法によって行うのが基本です。
通常の対面点呼では、単に運転者と顔を合わせるだけではありません。
業務前には、主に次の事項を確認します。
- 酒気帯びの有無
- 疾病の状況
- 疲労の状況
- 睡眠不足の状況
- 日常点検の実施結果
- 安全に運行するために必要な事項
必要に応じて運行上の指示も行います。
点呼時刻と出庫時刻が逆になっていないか
巡回指導前に確認したいのが、点呼記録簿と実際の運行時刻です。
たとえば、
- 運転日報では午前5時出庫
- 点呼記録簿では午前5時20分に業務前点呼
となっていれば、記録上は出庫後に業務前点呼をしたことになります。
同じ日の、
- 点呼記録簿
- 運転日報
- デジタコ
- 勤怠記録
を並べてみると、単独の帳票では見えなかった食い違いが分かることがあります。
点呼実施者がその時間に勤務していたか
点呼記録簿に運行管理者の氏名が記載されていても、その人が実際には休みだったという状態では説明がつきません。
運行管理者や補助者の勤務表と点呼記録を照合します。
特に、
- 早朝
- 深夜
- 日曜・祝日
- 運行管理者の休日
の点呼を誰が担当しているか確認します。
電話点呼はいつでも使えるわけではない
電話その他の方法による点呼は、運行上やむを得ず対面による点呼ができない場合に認められる方法です。
国土交通省の解釈・運用では、「その他の方法」は携帯電話や業務無線など、運転者と直接対話できる方法とされています。
メールやFAXなど、一方的な連絡だけでは該当しません。
また、電話点呼を運行中に行うこともできません。
「早朝だから電話」は理由にならない
注意したいのは、会社側の勤務体制の都合です。
たとえば、
- 朝が早く運行管理者が来ていない
- 夜遅くなるから担当者が帰宅している
- 車庫まで行くのが大変
- 電話のほうが楽
という理由だけで、日常的に電話点呼へ切り替えるものではありません。
営業所と車庫が離れている場合も、必要に応じて運行管理者等を車庫へ派遣して対面点呼を行うなど、対面点呼を確実に行うよう国土交通省の通達で示されています。
一方、宿泊を伴う長距離運行などで、運転者が遠隔地から乗務を開始・終了する場合には、運行上やむを得ず電話等による点呼となることがあります。
「どこにいるから対面できないのか」を説明できる状態にしておきます。
電話点呼でも確認事項は減らない
電話で行うからといって、確認項目が簡略化されるわけではありません。
酒気帯びの確認についても、運転者側でアルコール検知器を使用し、その結果を点呼実施者が確認できるようにします。
疾病、疲労、睡眠不足などについても確認します。
電話点呼を行った場合は、点呼記録から対面ではないことが分かるようにしておきます。
巡回指導前には、
- なぜ電話点呼だったのか
- 運転者はどこにいたのか
- 誰が点呼したのか
- 酒気帯びをどう確認したのか
- 点呼時刻はいつだったのか
を確認します。
毎日ほぼ同じ運転者について電話点呼が続いている場合は、本当に「運行上やむを得ない状態」が継続しているのか見直したほうがよいでしょう。
IT点呼をしているなら制度を特定する
「うちはパソコンで点呼しているからIT点呼です」
というだけでは、制度上適切に実施できているか判断できません。
現在、情報通信機器を利用する点呼には、従来からのIT点呼のほか、国土交通大臣の告示に基づく遠隔点呼、自動点呼などがあります。
2026年6月にも告示が改正されており、遠隔点呼・自動点呼の対象や機器要件などは制度改正の影響を受けます。
そのため、巡回指導前には「IT機器を使っているか」ではなく、
- どの制度で点呼しているのか
- どの営業所からどこへ点呼しているのか
- 誰が点呼しているのか
- どの機器・システムを使用しているのか
- 必要な届出・報告をしているか
まで確認します。
ビデオ通話を使えばIT点呼になるわけではない
スマートフォンやパソコンで顔を映しながら通話しただけで、当然にIT点呼や遠隔点呼として認められるわけではありません。
各制度には、実施場所、機器、運行管理体制、本人確認、酒気帯び確認、記録などの要件があります。
一般的なビデオ通話を利用しただけの状態と、制度上認められたIT点呼・遠隔点呼は分けて考えます。
IT点呼・遠隔点呼を利用している会社の確認項目
情報通信機器を使った点呼を行っている場合は、少なくとも次を確認します。
- 点呼制度の種類
- 点呼を行う営業所
- 点呼を受ける場所
- 使用する機器・システム
- 本人確認の方法
- アルコール検知結果の確認方法
- 運転者の疾病・疲労・睡眠不足等を確認する方法
- 点呼記録の保存方法
- 通信障害や機器故障時の対応
- 運転者を乗務させられない場合の対応
- 必要な届出・報告の有無
遠隔点呼については、実施前の届出が必要となる場合があります。
「以前から同じ方法でやっているから大丈夫」とせず、現在利用している制度について最新の要件を確認します。
補助者が点呼している場合も見直す
早朝・深夜の点呼を補助者に任せている会社もあります。
補助者として点呼業務を行えるのは、一定の要件を満たした人です。
たとえば、
- 運行管理者資格者証を持っている
- 国土交通大臣が認定する基礎講習を修了している
などの確認が必要です。
「社長だから」
「ベテラン配車担当だから」
という理由だけで点呼を担当できるわけではありません。
また、補助者だけに点呼業務を任せ切るのではなく、運行管理者自身が必要な割合の点呼を行うなど、運行管理者が主体となる体制が必要です。
自分で自分を点呼していないか
運行管理者自身がトラックへ乗務する会社では注意が必要です。
自分で自分の状態を確認して点呼簿へ記入することを、通常の点呼として扱うことはできません。
運行管理者が運転者として乗務する時間帯に、
「誰がこの人を点呼するのか」
まで勤務体制を確認します。
業務前と業務後の両方を対面できない場合
長距離運行などで、業務前・業務後のいずれも対面点呼を行えない場合は、中間点呼が必要となるケースがあります。
さらに、運行指示書の作成・携行などが必要になる運行もあります。
したがって、
「電話で業務前点呼をした」
「帰りも電話で業務後点呼をした」
という確認だけで終わらせません。
その運行について、
- 中間点呼が必要だったか
- 運行指示書が必要だったか
- 必要な記録が残っているか
まで確認します。
巡回指導前は点呼簿だけを直さない
点呼記録に不足を見つけると、空欄を埋めたくなるかもしれません。
ただし、実際に行っていない点呼を、後から実施済みとして記録することはできません。
国土交通省が公表している行政処分事例でも、点呼の未実施だけでなく、点呼記録の不実記載が違反として確認されています。
過去分に問題を見つけた場合は、
- 点呼を実際に行っていたのか
- 行ったが記載だけが不足しているのか
- 点呼自体をしていなかったのか
を分けます。
記録漏れの場合も、記憶だけで時刻や確認事項を作るのではなく、
- 運転日報
- 勤怠記録
- デジタコ
- アルコール検知器の記録
- システム履歴
など、残っている資料を確認します。
今の点呼体制を自分で確認する
次の表で現在の点呼方法を確認できます。
| 自社の状態 | まず確認すること |
|---|---|
| 営業所で毎日対面している | 点呼時刻・確認項目・実施者 |
| 遠隔地だけ電話を使う | 運行上やむを得ない場合か |
| 毎朝電話を使っている | 対面できない理由と勤務体制 |
| IT点呼を利用している | 制度の種類・要件・届出 |
| 遠隔点呼を利用している | 現行告示・届出・機器要件 |
| 補助者が多く点呼している | 補助者要件と運行管理者の関与 |
| 社長も運転する | 自分自身を点呼していないか |
| 長距離運行がある | 中間点呼・運行指示書の要否 |
一つでも「よく分からない」があれば、点呼簿の書き方だけではなく、現在の運行管理体制から確認したほうがよいでしょう。
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まとめ
点呼が不十分かどうかは、点呼記録簿に空欄があるかだけでは判断できません。
対面点呼では、実施時刻、確認事項、点呼実施者と実際の運行が一致しているかを確認します。
電話点呼は、運行上やむを得ず対面できない場合に使用する方法です。会社の人員配置の都合だけで常態化していないか見直します。
IT点呼・遠隔点呼などを利用している場合は、ビデオ通話ができるかではなく、利用している制度、機器、実施場所、運行管理体制、届出などが現在の要件を満たしているかを確認します。
巡回指導前に不備を見つけても、過去に実施していない点呼を後から作るのではなく、現在の点呼体制を直すところから始めます。
点呼方法と運行管理体制を整理したい方へ
「電話点呼を使っているが、この運用でよいか分からない」
「IT点呼を導入したが、現在の制度に合っているか確認したい」
「運行管理者と補助者の勤務体制に不安がある」
という場合は、点呼記録簿だけでなく、実際の運行方法や勤務体制まで確認する必要があります。
いしかわ行政書士事務所では、碧南市・西尾市・高浜市・安城市・刈谷市・岡崎市を中心に、一般貨物自動車運送事業の許可後手続きに対応しています。
現在の運行管理体制を確認し、必要な届出や手続きがある場合は行政手続きの面から整理します。
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出典
国土交通省|運行管理高度化ワーキンググループ(遠隔点呼・自動点呼)
国土交通省 関東運輸局|貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について
国土交通省 四国運輸局|自動車運送事業者の各種点呼の届出(報告)について
この記事は、2026年9月時点の法令・公的機関の情報をもとに作成しています。
