巡回指導前に記録を見直したい|事故・苦情・アルコール記録は足りている?

この記事は、いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令・公的機関の情報を確認して作成しています。

巡回指導に必要な点呼記録簿や運転日報をそろえたら、次に確認したいのが記録の中身です。

特に、

  • 過去に事故があった
  • 荷主や一般利用者から苦情・トラブルがあった
  • アルコール検知器を使っているが点呼簿の記載に自信がない

という会社は、巡回指導前に一度見直しておいたほうがよいでしょう。

ここで見るのは、帳票の枚数ではありません。

「実際に起きたことが記録に残っているか」

「点呼簿と運転日報など、別の記録を並べても内容がつながるか」

を確認します。

まず事故・苦情・アルコール確認を分けて考える

3つは同じ種類の記録ではありません。

確認するもの主な確認ポイント
事故必要な事故記録が作成・保存されているか
苦情・トラブル発生内容と会社の対応を確認できる資料が残っているか
アルコール確認点呼時に検知器を使用し、必要事項を点呼記録へ残しているか

特に事故記録とアルコール確認は、貨物自動車運送事業の安全管理上、法令に基づく確認事項があります。

一方、一般貨物自動車運送事業について、今回確認した公的資料からは、すべての苦情について一定様式の「苦情処理簿」を作成して保存するという一律の規定までは確認できませんでした。

そのため、苦情については法定帳票を作るというより、実際に問題があった場合の記録や会社の対応状況を確認します。

事故があった会社は事故記録が残っているか

事業用自動車に事故が発生した場合には、事故の記録を作成して保存します。

国土交通省の貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈・運用では、事故記録は事故発生後30日以内に作成し、事故発生後3年間保存するとされています。

愛知県トラック協会でも「事故の記録」の様式例を公開しています。

事故があった会社では、まず過去3年間について、

  • 事故が発生した日
  • 使用していた車両
  • 運転者
  • 事故発生場所
  • 当事者
  • 事故の概要
  • 事故原因
  • 再発防止のために行ったこと

などを確認できる記録が残っているかを見ます。

保険会社への事故報告だけで終わっていないか

事故が起きると、会社ではまず保険会社への連絡や相手方への対応を進めます。

そのため、

「保険会社に事故報告書を出したから記録は残っている」

と考えていることがあります。

しかし、保険会社への資料と、運送事業者として保存する事故記録は目的が同じとは限りません。

巡回指導前には、保険関係のファイルだけを見るのではなく、営業所で事故記録を確認できる状態になっているかを見ます。

事故記録と事故報告書は同じではない

事故があったからといって、すべての事故について国土交通省への事故報告書を提出するわけではありません。

一方で、一定の重大事故など、自動車事故報告規則に該当する事故については、国への報告が必要になります。

そのため事故があった場合は、

  1. 社内で保存する事故記録が必要か
  2. 国への自動車事故報告が必要な事故だったか
  3. 必要な場合に報告済みか

を分けて確認します。

「事故記録があるから事故報告も済んでいる」とは限りません。

反対に、事故報告書を提出していても、営業所で保存すべき事故記録の確認は別に行います。

過去に事故がなければ事故記録を無理に作らない

事故記録は、事故が発生した場合に作成するものです。

過去に対象となる事故がなければ、「巡回指導で見せるため」という理由で事故記録を作る必要はありません。

確認したいのは、

「本当に事故がなかったのか」

です。

会社の事故報告、保険使用履歴、運転日報、車両修理記録などを確認し、過去に事故があったのに事故記録だけ残っていない状態になっていないかを見ます。

苦情・トラブルがあった会社は社内の記録を確認する

苦情については、事故記録とは分けて考えます。

今回確認した一般貨物自動車運送事業の公式資料では、すべての事業者に対して一定様式の「苦情処理簿」を作成して一定期間保存するという規定までは確認できませんでした。

ただし、貨物自動車運送適正化事業実施機関では、引越し運送や宅配便などについて一般利用者からの苦情を受け、事業者への指導を行う業務も行っています。

そのため、実際に会社へ苦情やトラブルがあった場合は、

  • いつ発生したか
  • どの運行・車両・運転者に関するものか
  • 何を指摘されたか
  • 事実確認をしたか
  • 運転者へどのように確認したか
  • 会社としてどのように対応したか
  • 再発防止の対応をしたか

を確認できる資料が残っているか見ておくとよいでしょう。

苦情そのものより、その後どうしたかを見る

たとえば、

「トラックの運転が危険だった」

「荷物の扱いについてクレームがあった」

という連絡が入った場合、電話を受けただけで終わっていると、後から何があったのか確認できません。

苦情の内容が事実だったかどうかも含め、

  • ドライバーへ確認した
  • ドライブレコーダーを確認した
  • 運行記録を確認した
  • 必要な指導をした

といった対応があれば、その内容を後から確認できる状態にしておきます。

苦情があったから直ちに法令違反という意味ではありません。

問題は、安全管理に関わる内容だった場合に、そのまま放置していないかです。

アルコール記録は測定値を書くことが目的ではない

一般貨物自動車運送事業者は、点呼時の酒気帯び確認でアルコール検知器を使用します。

国土交通省によると、点呼記録には、

  • アルコール検知器を使用したか
  • 酒気帯びがあったか

などを記録します。

一方、アルコール検知器に表示された「0.00」などの測定数値そのものを点呼簿へ記録することまでは求められていません。

したがって、

「毎日0.00と書いていないから記録不備」

というわけではありません。

見るべきなのは、法令上必要な確認を実際に行い、その内容が点呼記録に残っているかです。

アルコール検知器を使っただけでは終わらない

点呼では、アルコール検知器だけで酒気帯びを判断するわけではありません。

国土交通省は、運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子などを目視等で確認したうえで、アルコール検知器も使用して確認することとしています。

巡回指導前には、

  • 営業所にアルコール検知器があるか
  • 点呼時に実際に使用しているか
  • 酒気帯びの有無を確認しているか
  • 検知器使用の有無を点呼簿に記録しているか
  • 酒気帯びの有無を記録しているか
  • 遠隔地で必要な確認ができる体制になっているか

を確認します。

検知器を購入して営業所に置いてあるだけでは足りません。

日々の点呼で使用していることが前提です。

アルコール検知器の毎日の点検記録は必要?

ここは混同しやすいところです。

アルコール検知器は、故障のない状態で使用できるよう管理・保守する必要があります。

国土交通省は毎日・毎週の確認方法を示しています。

ただし、国土交通省のQ&Aでは、アルコール検知器自体の毎日・毎週の点検について、その実施状況を記録して保存することまでは求めていません。

つまり、

「アルコール検知器点検表がないから直ちに違反」

と判断するものではありません。

必要なのは、検知器を常時有効に保持し、適切に確認・管理していることです。

独自に点検表を作って管理すること自体は問題ありません。

点呼簿と別の記録を同じ日付で確認する

アルコール関係で確認したいのは、点呼簿単体だけではありません。

同じ運転者・同じ日の、

  • 点呼記録簿
  • 運転日報
  • 勤怠記録
  • 運行記録計

を並べてみます。

たとえば、

「午前5時に出庫しているのに業務前点呼が6時になっている」

「運転日報では乗務しているのに点呼記録がない」

「休みになっている運行管理者が点呼執行者として記録されている」

といった違いがないかを見ます。

毎日の記録をすべて最初から確認するより、まず何日か抽出して横断的に見ると、会社の記録方法に問題がないか把握しやすくなります。

酒気帯び反応が出た記録がある場合

アルコール検知器が反応した場合は、「測定値を書き直して0にする」という対応ではありません。

国土交通省では、飲食物、たばこ、アルコールを含む製品などの影響で検知器が反応することがあるため、うがいをする、時間を置いて再測定するなどの対応例を示しています。

しかし、最終的に酒気帯びが確認される状態であれば、そのまま運転させることはできません。

過去に反応があった場合は、

  • どのように再確認したか
  • 最終的にどう判断したか
  • 運転させたのか
  • 代替運転者へ変更したのか

など、当日の対応を確認します。

数字を後から整えるのではなく、当時どのような対応をしたのかを見ることが重要です。

事故・苦情・アルコール記録を一度につなげてみる

事故や苦情があった場合、その一件だけを見るのではなく、その日の運行記録までさかのぼると管理上の問題が見つかることがあります。

たとえば事故があった日について、

  1. 点呼記録を確認する
  2. アルコール確認を確認する
  3. 健康・疲労・睡眠不足の確認を見る
  4. 運転日報を見る
  5. 運行記録計を見る
  6. 勤務時間を見る
  7. 事故記録を見る
  8. 事故後の指導記録を見る

という順番です。

事故記録だけでは「事故が発生した」という事実しか分からなくても、他の帳票までつなげると、再発防止のために確認すべき点が見えてくることがあります。

苦情についても同じです。

危険運転に関する苦情であれば、その日の運行、点呼、勤務時間などを確認することで、単なる苦情として処理するべきか、安全管理上の問題まで確認するべきか判断しやすくなります。

巡回指導前に確認するチェックリスト

最後に、事故・苦情・アルコール関係だけを確認します。

  • □ 過去に事故がなかったか確認した
  • □ 事故があった場合、事故記録が残っている
  • □ 必要な事故について事故報告をしている
  • □ 事故後の再発防止や指導内容を確認できる
  • □ 過去の苦情・トラブルを把握している
  • □ 安全に関わる苦情を放置していない
  • □ 点呼時にアルコール検知器を使用している
  • □ 点呼簿に検知器使用の有無を記録している
  • □ 酒気帯びの有無を記録している
  • □ 検知器を使用できる状態に管理している
  • □ 点呼簿と運転日報・勤怠等を照合した
  • □ 過去の記録を巡回指導のために作り直していない

全部にチェックを付けること自体が目的ではありません。

チェックできない項目があれば、「記録が見つからない」「実施していない」「確認方法が分からない」のどれなのかを特定します。

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まとめ

巡回指導前に事故・苦情・アルコール関係を見直すときは、帳票の有無だけではなく、実際に起きたことと記録が一致しているかを確認します。

事故があった場合は、必要な事故記録が作成・保存され、必要な事故報告が行われているかを確認します。

アルコール確認では、測定値を並べることより、実際に検知器を使用し、酒気帯びの有無など必要な事項を点呼記録へ残しているかが重要です。

苦情については、一般貨物の法定帳票として一律に「苦情処理簿」を作るという整理ではなく、安全に関わる苦情やトラブルがあった場合に、その内容と会社がどのように対応したかを確認できる状態にしておきます。

最後は、事故や苦情があった日の点呼、運転日報、勤怠、運行記録まで横につなげて確認すると、記録上の食い違いや今後直すべき点を見つけやすくなります。

巡回指導前に届出・報告の漏れも確認したい方へ

記録を見直していると、

「事故以外にも提出していない報告がある」

「運行管理者や車両を変更した後の届出が分からない」

「巡回指導までに行政手続きの漏れを確認したい」

という問題が見つかることがあります。

いしかわ行政書士事務所では、碧南市・西尾市・高浜市・安城市・刈谷市・岡崎市を中心に、一般貨物自動車運送事業の許可後手続きに対応しています。

巡回指導前の帳票そのものの管理と、変更届・事業報告書など行政書士が対応できる手続きを分け、現在の状況を整理します。

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出典

国土交通省|自動車運送事業におけるアルコール検知器の使用について

国土交通省|事業用自動車の安全対策・運行管理者の業務

国土交通省 関東運輸局|貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について

国土交通省 近畿運輸局|貨物自動車運送事業者が備え置くべき帳票類等一覧

一般社団法人 愛知県トラック協会|各種帳票類ダウンロード

一般社団法人 愛知県トラック協会|適正化事業実施機関

この記事は、2026年9月時点の法令・公的機関の情報をもとに作成しています。

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