
この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。
運送会社が毎年提出する事業報告書と事業実績報告書は、同じ資料から作成するものではありません。
事業報告書には決算書、株主・役員情報、賃金台帳などが必要です。一方、事業実績報告書では、車両台帳、運転日報、輸送記録、事故記録などから1年間の実績を集計します。
提出直前になって資料を探し始めると、走行距離や輸送トン数を集計できない、運送事業以外の売上と区分できないといった問題が起こります。
この記事では、一般貨物自動車運送事業者が二つの報告書を作成するときに準備する書類と、提出前の確認事項を整理します。
運送会社の決算後に必要な手続きと準備
一般貨物自動車運送事業者が毎年提出する報告書は、次の二つです。
| 報告書 | 報告する期間 | 提出期限 | 主に使用する社内資料 |
|---|---|---|---|
| 事業報告書 | 各社の事業年度 | 事業年度終了後100日以内 | 決算書、株主・役員情報、会計資料、賃金台帳 |
| 事業実績報告書 | 前年4月1日から当年3月31日まで | 毎年7月10日まで | 車両台帳、運転日報、輸送記録、売上資料、事故記録 |
事業報告書は、税務申告のために決算書を作成しただけでは完了しません。
事業概況報告書、一般貨物自動車運送事業損益明細表、一般貨物自動車運送事業人件費明細表を作成し、貸借対照表と損益計算書を添付します。
事業実績報告書は、会社の決算月とは関係なく、4月1日から翌年3月31日までの輸送実績をまとめます。決算資料だけでは、走行キロ、実車キロ、延実働車両数などを確認できないため、運行管理部門からも資料を集めなければなりません。
3月決算の会社は二つの報告書の対象期間が一致することがありますが、使用する様式と記載内容は異なります。
運送会社が事業報告書を提出するときに準備する書類
事業報告書として提出する書類は、次のとおりです。
- 事業概況報告書(第1号様式)
- 一般貨物自動車運送事業損益明細表(第2号様式)
- 一般貨物自動車運送事業人件費明細表(第3号様式)
- 貸借対照表
- 損益計算書
これらを作成するため、社内では次の資料を準備します。
| 準備する資料 | 主に確認する内容 |
|---|---|
| 前年度の事業報告書控え | 前年の記載方法、事業者番号、事業内容 |
| 貸借対照表・損益計算書 | 会社全体の資産、負債、収益、費用 |
| 総勘定元帳・試算表 | 売上や経費の内訳、各勘定科目の金額 |
| 売上台帳 | 運送収入、利用運送収入、兼営事業の売上 |
| 固定資産台帳 | 車両などの減価償却費 |
| リース契約・支払明細 | 自動車リース料、施設使用料 |
| 燃料・修繕・保険の資料 | 軽油費、修繕費、保険料など |
| 賃金台帳・給与明細 | 給料、手当、賞与、役員報酬 |
| 社会保険料の資料 | 法定福利費 |
| 臨時雇用者の勤務記録 | 臨時雇賃金、雇用延人員 |
| 株主名簿 | 主な株主と持株割合 |
| 登記事項証明書・役員名簿 | 役員の役職、氏名、代表者 |
| 従業員名簿 | 事業別の従業員数 |
特に確認が必要なのが、運送事業と兼営事業の区分です。
倉庫業、自動車整備業、物品販売業などを同じ会社で行っている場合、会社全体の売上や費用をそのまま運送事業の金額として記載できるとは限りません。
売上台帳や部門別会計を確認し、運送収入、運送雑収、兼営事業の収入を分けます。共通経費を配分する場合は、どの基準で振り分けたかを説明できるよう、計算表も残しておきます。
人件費についても、運転者、荷扱手・助手、事務員などで記載する欄が異なります。給与の総額だけでなく、誰がどの業務に従事しているかを確認しなければなりません。
運送会社が事業実績報告書を提出するときに確認したい走行距離・輸送実績
事業実績報告書では、3月31日時点の事業概況と、前年4月1日から当年3月31日までの輸送実績を記載します。
作成前に準備したい資料は次のとおりです。
| 準備する資料 | 主に確認する内容 |
|---|---|
| 前年度の事業実績報告書控え | 前年の記載方法、集計単位、事業者番号 |
| 車両台帳・車両一覧 | 3月31日時点の事業用自動車数 |
| 増車・減車届の控え | 年度途中の車両数の変動 |
| 運転日報・運行記録 | 走行キロ、実車キロ、稼働状況 |
| メーター記録・整備記録 | 走行距離の照合 |
| 配車表 | 車両ごとの稼働日、運行内容 |
| 運送状・送り状・受領書 | 輸送した貨物と数量 |
| 請求書・売上台帳 | 運送収入、利用運送収入 |
| 傭車・利用運送の記録 | 利用運送として取り扱った輸送トン数 |
| 従業員名簿・勤務表 | 従業員数、運転者数 |
| 交通事故記録 | 交通事故件数、死者数、負傷者数 |
| 自動車事故報告書の控え | 重大事故件数 |
走行キロと実車キロを集計するときは、車両ごとの運転日報や運行記録を基礎にします。
走行キロは車両が走行した距離の合計であり、実車キロは貨物を積載して走行した距離です。帰り荷がなく空車で戻った距離などは、走行キロには含まれても実車キロには含まれません。
運転日報に実車・空車の区分が記録されていない場合、年度末にまとめて正確な実車キロを算出することが難しくなります。年度の途中からでも、配車表や運送状と照合できる記録方法へ見直す必要があります。
延実在車両数と延実働車両数も、3月31日時点の車両数を記載するだけではありません。年度途中の増車・減車、休車、実際の稼働日を反映して集計するため、車両ごとの配置期間と稼働記録を用意します。
中部運輸局以外にも営業所がある会社では、地方運輸局の管轄区域ごとに輸送実績を整理します。どの営業所・車両の実績をどの欄へ含めたか分かる集計表を作っておくと、重複や計上漏れを防げます。
報告書を提出する前に確認すること
提出書類が完成したら、報告書ごとに数字を見るだけでなく、社内資料と二つの報告書の間で矛盾がないか確認します。
事業報告書の確認事項
- 報告期間が会社の事業年度と一致しているか
- 事業者名、住所、代表者名が現在の内容と一致しているか
- 主な株主と持株割合を株主名簿から確認したか
- 役員の役職、氏名、常勤・非常勤の別が正しいか
- 経営している事業を漏れなく記載したか
- 運送事業と兼営事業の売上を区分したか
- 損益明細表の合計と損益計算書の数字を照合したか
- 人件費明細表と賃金台帳・会計資料を照合したか
- 貸借対照表と損益計算書を添付したか
- 使用している様式が現在のものか
事業実績報告書の確認事項
- 対象期間が前年4月1日から当年3月31日までになっているか
- 3月31日時点の車両数を車両台帳と照合したか
- 年度途中の増車・減車を集計へ反映したか
- 従業員数に運転者数が含まれているか
- 走行キロと実車キロを分けて集計したか
- 実運送と利用運送の輸送トン数を分けたか
- 営業収入の対象期間と対象事業が一致しているか
- 交通事故と重大事故を分けて確認したか
- 複数の地方運輸局に営業所がある場合、管轄区域ごとに集計したか
- 集計の根拠となる資料を保存しているか
営業収入については、事業実績報告書と事業報告書で対象期間が一致しない会社もあります。その場合、二つの金額が異なることだけを理由に誤りとはいえません。
対象期間が同じであるにもかかわらず金額が大きく異なる場合は、消費税の扱い、利用運送収入、兼営事業の売上、計上時期などを確認します。
社内の誰から何を集めるか決めておく
報告書の作成を一人の担当者だけで完結させようとすると、必要な資料が集まらないことがあります。
| 社内・社外の担当 | 依頼する主な資料 |
|---|---|
| 経営者・総務 | 株主、役員、事業内容、組織の変更情報 |
| 経理担当者 | 決算書、試算表、総勘定元帳、売上台帳 |
| 税理士 | 確定した決算書、勘定科目の内訳 |
| 運行管理者・配車担当者 | 運転日報、配車表、走行距離、輸送実績 |
| 車両管理担当者 | 車両台帳、増車・減車、稼働期間 |
| 人事・給与担当者 | 従業員名簿、賃金台帳、勤務記録 |
| 安全管理担当者 | 交通事故記録、自動車事故報告書の控え |
税理士が会社の決算書を作成していても、事業実績報告書の走行キロや輸送トン数まで把握しているとは限りません。
反対に、運行管理者が車両の稼働状況を把握していても、運送事業と兼営事業の収入区分や人件費の内訳までは確認できないことがあります。
誰がどの資料を用意するかを決め、提出期限から逆算して集めることが必要です。前年の報告書控えと集計表も同じ場所に保管しておけば、担当者が交代したときの確認にも使えます。
よくある質問
- Q決算書を税理士から受け取れば、事業報告書を作成できますか?
- A
貸借対照表と損益計算書だけでは完成しません。株主・役員情報、事業別の売上、従業員数、人件費の内訳なども必要です。運送事業以外を兼営している場合は、収益と費用を区分するための会計資料も確認します。
- Q運転日報がそろっていない場合、事業実績報告書は作成できませんか?
- A
車両台帳、配車表、メーター記録、運送状、請求書など、残っている資料から確認できる場合があります。ただし、根拠のない推計で数字を埋めることは避け、どこまで正確に集計できるかを確認する必要があります。
- Q事業報告書に登記事項証明書も添付しますか?
- A
貨物自動車運送事業報告規則で定められた事業報告書の構成は、事業概況報告書、損益明細表、人件費明細表、貸借対照表、損益計算書です。登記事項証明書は、代表者や役員などの情報を確認する資料として使用します。個別の提出で追加資料を求められた場合は、その案内に従います。
- Q走行距離は車検証の記録だけで確認できますか?
- A
車検証などに記録された距離だけでは、年度内の走行キロや実車キロ、車両ごとの稼働日を十分に確認できません。運転日報、運行記録、配車表などを併せて確認します。
- Q利用運送の実績も記載する必要がありますか?
- A
貨物自動車利用運送を行っている場合は、事業実績報告書の利用運送欄へ該当する輸送トン数を記載します。自社車両による実運送と混ぜず、傭車記録や請求資料から分けて集計してください。
- Q前年度の報告書控えがなくても作成できますか?
- A
現在の様式と社内資料から作成することは可能です。ただし、前年から数字が大きく変わった理由や過去の記載方法を確認できないため、提出済みの報告書は受付記録や集計資料と一緒に保管しておくことをおすすめします。
まとめ
事業報告書を作成するには、決算書だけでなく、株主・役員情報、売上や経費の内訳、賃金台帳などが必要です。
事業実績報告書では、車両台帳、運転日報、配車表、輸送記録、売上資料、事故記録などから、1年間の輸送実績を集計します。
提出前には、それぞれの報告期間を確認し、決算資料、会計資料、車両資料、運行資料の数字が一致しているかを照合します。
毎年同じ時期に慌てないためには、報告書の控えだけでなく、使用した集計表と根拠資料も整理して保管することが有効です。
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毎年の報告書作成に必要な資料を整理します
決算資料は経理担当者、走行距離や輸送実績は運行管理者というように、必要な情報が社内の複数部署に分かれていることがあります。
いしかわ行政書士事務所では、事業報告書と事業実績報告書のどちらを作成するのかを確認し、必要な資料、集計期間、記載する数字を整理したうえで、報告書の作成・提出を承ります。
碧南市・西尾市・高浜市・安城市・刈谷市・岡崎市を中心に、三河地域・愛知県内の運送会社からのご依頼に対応しています。
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出典
国土交通省中部運輸局「様式(申請・届出・報告)|貨物自動車運送事業(緑ナンバー)」
国土交通省関東運輸局「事業報告書、事業実績報告書の提出について」
e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業報告規則」
この記事は、2026年8月時点の法令・公的機関の様式をもとに作成しています。会社の事業内容、兼営事業、営業所の配置、会計処理、保存している運行資料によって必要な確認事項が異なる場合があります。
