
この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。
「会社を設立しなければ運送業許可は取れないのか」
「個人で許可を取った後、売上が増えてから法人化すればよいのか」
「トラック運転手や運送会社で働いた経験がなくても申請できるのか」
一般貨物自動車運送事業の許可は、個人事業主でも取得できます。運送業の経験年数や、申請者自身が大型免許を持っていることも許可要件ではありません。
ただし、個人で申請しても、車両、車庫、運転者、管理者、資金などの許可基準が軽くなるわけではありません。
また、個人で許可を取った後に法人化する場合、単なる名称変更では済みません。近いうちに会社を設立する予定があるなら、個人と法人のどちらで申請するかを最初に決める必要があります。
個人事業主でも運送業許可は取得できる
一般貨物自動車運送事業の許可は、法人だけを対象とした制度ではありません。個人も申請できます。
個人で申請する場合、許可を受けるのは屋号ではなく申請者本人です。
例えば「三河運送」という屋号を使用していても、許可の名義人は個人事業主本人になります。車両、営業所、車庫、預貯金、契約書類についても、申請者との関係を説明できなければなりません。
個人事業主でも、原則として次の要件をすべて満たす必要があります。
- 営業所ごとに5台以上の事業用自動車を確保する
- 計画車両の使用権原を証明する
- 営業所と休憩・睡眠施設を確保する
- 計画車両をすべて収容できる車庫を確保する
- 車庫の前面道路や営業所からの距離などの基準を満たす
- 事業計画を実行できる人数の運転者を確保する
- 常勤の運行管理者と整備管理者を確保する
- 事業開始に必要な自己資金を確保する
- 申請者本人が法令試験に合格する
- 欠格事由や法令遵守要件に問題がない
「個人なら小規模なため、トラック1台から一般貨物を始められる」というわけではありません。
1台から軽自動車で始める場合は、一般貨物自動車運送事業ではなく、貨物軽自動車運送事業に該当する可能性があります。
法人で運送業を始めるメリットと個人事業との違い
個人と法人で、一般貨物自動車運送事業の基本的な許可要件に大きな違いはありません。
法人だから許可が取りやすくなるわけではなく、個人だから審査が簡単になるわけでもありません。
異なるのは、誰が許可を持ち、契約や事業を継続するかという点です。
| 比較項目 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 許可を受ける者 | 申請者本人 | 株式会社・合同会社などの法人 |
| 法令試験の受験者 | 申請者本人 | 許可後に事業へ専従する常勤役員 |
| 車両・施設の契約名義 | 原則として申請者との関係を確認 | 原則として法人との関係を確認 |
| 代表者が変わった場合 | 本人が変われば別人になる | 法人は存続し、代表者変更の手続きを行う |
| 後から法人化する場合 | 譲渡譲受の認可などが必要 | 代表者変更だけなら法人自体は変わらない |
| 事業上の責任 | 原則として本人が負う | 原則として法人が契約主体になる |
| 事業承継 | 本人の死亡・引退の影響を受けやすい | 株式や役員構成なども含めて承継を検討できる |
法人には、事業と個人の財産・契約を分けやすいことや、代表者が変わっても法人自体は存続するという特徴があります。
ただし、法人化すれば必ず融資を受けやすい、荷主から必ず選ばれる、税金が必ず安くなるとは限りません。金融機関や取引先の判断、利益、人件費、社会保険などによって結論が変わります。
税務や社会保険を含む法人化の損得については、税理士や社会保険労務士などへ確認する必要があります。
運送会社を設立するには許可申請より先に法人を作る
法人名義で運送業許可を申請する場合は、原則として会社の設立登記を済ませてから許可申請へ進みます。
まだ存在していない会社を申請者として許可申請することはできないためです。
法人で始める場合は、次の順番で準備します。
- 個人と法人のどちらで許可を取るか決める
- 会社の商号、本店所在地、事業目的、役員、資本金などを決める
- 定款を作成し、会社設立登記を行う
- 法人の登記事項証明書や定款を準備する
- 車両、営業所、車庫などの契約名義を整える
- 運転者、運行管理者、整備管理者を確保する
- 法人名義の資金計画と預貯金を準備する
- 一般貨物自動車運送事業の許可を申請する
- 専従する常勤役員が法令試験を受験する
- 許可後に車両登録や運行管理者等の選任を行い、運輸を開始する
会社の本店所在地と運送業の営業所は、必ずしも同じ場所である必要はありません。
ただし、運送業の営業所として使用する場所は、使用権原、用途地域、建築基準法などの許可基準を別に満たす必要があります。
自宅を会社の本店にしたからといって、その自宅を運送業の営業所として使用できるとは限りません。
また、会社設立後に代表者個人名義で車両や車庫を契約した場合は、法人が使用できる権原を契約書などで説明できるようにします。申請者と契約名義が食い違ったままでは、追加書類や契約のやり直しが必要になる可能性があります。
未経験でも運送業を始められるが体制づくりは必要
一般貨物自動車運送事業の許可には、申請者が運送会社で何年以上働いていなければならないという実務経験要件はありません。
申請者自身がトラックを運転しない場合、申請者が中型免許や大型免許を持っていることも許可取得の条件ではありません。実際に運転する人には、使用する車両に対応した運転免許が必要です。
そのため、未経験者でも次の条件を満たせば許可申請は可能です。
- 運送業務を担当できる運転者がいる
- 資格要件を満たす運行管理者がいる
- 資格要件を満たす整備管理者がいる
- 運送業に関する法令や管理方法を理解している
- 車両故障、事故、欠勤などが起きた場合の対応を決めている
- 運賃と経費を計算し、事業として継続できる見通しがある
未経験者が注意したいのは、許可が取れることと、事業を安定して運営できることは別だという点です。
例えば、荷主から「毎日2台を動かしてほしい」と依頼されているのに、運転者の休日や欠勤時の交代要員を考えていなければ、契約した運行を続けられない可能性があります。
車両費だけで収支を計算し、運転者の賃金、社会保険、任意保険、燃料、修繕、タイヤ、車検、事故時の代替車両などを入れていなければ、売上があっても資金が残りません。
反対に、申請者本人に運送経験がなくても、経験のある運転者や有資格者を確保し、運行計画と収支計画を具体的に作っている場合は、経験不足を体制で補えます。
運送業許可は誰でも取れるわけではない
個人・法人を問わず、必要な設備と人員をそろえれば必ず許可が出るわけではありません。
申請者には、貨物自動車運送事業法上の欠格事由に該当しないことや、一定期間の法令遵守状況に問題がないことも求められます。
また、個人申請では申請者本人、法人申請では許可後に事業へ専従する常勤役員が法令試験を受験します。
中部運輸局の法令試験は30問で、合格基準は8割以上です。初回の試験で合格できない場合は、翌々月に1回だけ再受験できます。再試験でも合格点に達しない場合は却下処分となります。
次のような考え方では、許可準備が途中で止まりやすくなります。
- 運送経験があるから法令試験の勉強は必要ない
- 自分が運転者、運行管理者、整備管理者をすべて担当すればよい
- 5台あるため人員が少なくても申請できる
- 自宅を営業所にすれば立地条件は確認しなくてよい
- 車庫を借りれば前面道路や農地法は関係ない
- 車両を購入すれば使用権原の説明は不要
- 許可が出た後に必要な資金を集めればよい
申請者が複数の役割を兼ねられるかは、資格要件だけでなく、常勤性、勤務時間、指揮命令系統、実際に業務を遂行できるかによって判断されます。
「資格を持っているから兼任できる」と先に決めず、勤務予定と担当業務を並べて確認する必要があります。
運送業で失敗しやすいのは法人化の時期を後回しにするケース
個人と法人のどちらで申請するかを判断するときは、現在の費用だけでなく、許可取得後の事業計画まで確認します。
例えば、トラック運転手として独立する人が、次のように考えていたとします。
- まず個人名義で一般貨物の許可を取る
- 半年後に売上が安定したら株式会社を設立する
- 車両と運送業許可は、そのまま会社名義へ変更する
この計画では、個人と法人が別の申請主体である点が抜けています。
個人で取得した許可を法人がそのまま使うことはできません。個人から法人へ事業を移す場合は、一般貨物自動車運送事業の譲渡し・譲受けの認可などが必要です。
さらに、次の項目も整理し直します。
- 車両の所有者・使用者
- 営業所と車庫の契約者
- 荷主との運送契約
- 運行管理者・整備管理者の選任
- 運転者の雇用関係
- 保険の契約者・被保険者
- 預貯金と資金計画
- 緑ナンバー車両の所属
- 運賃・料金や各種報告
中部運輸局の法令試験では、事業の譲渡譲受の認可申請も対象になる場合があります。
近いうちに法人化することが決まっているなら、先に会社を設立し、法人名義で新規許可を申請した方が、許可や契約の組み替えを減らせる可能性があります。
一方、法人化の予定がなく、個人名義で長く事業を続ける計画であり、必要な施設・人員・資金も個人で確保できるなら、個人申請を選ぶことに問題はありません。
次の基準で判断すると整理しやすくなります。
| 現在の計画 | 検討しやすい申請形態 |
|---|---|
| 法人化の予定がなく、個人で継続する | 個人申請 |
| 許可取得後すぐに法人化する予定がある | 法人設立後の申請を優先して検討 |
| 共同経営者や出資者がいる | 法人申請を検討 |
| 荷主から法人契約を求められている | 法人設立後の申請を検討 |
| 事業承継や将来の代表者交代を想定している | 法人申請を検討 |
| まず1台で本人だけが軽自動車を運転する | 一般貨物ではなく軽貨物を検討 |
| 個人で許可取得済みだが法人化したい | 譲渡譲受認可などを確認 |
個人か法人かを決めたら、車両や車庫を契約する前に、申請名義、営業所、車庫、人員、資金を一覧にします。
判断できない項目が残っている場合は、法人設立や高額な車両購入を先に進めず、許可申請までの順番を確認することが手戻り防止につながります。
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個人と法人のどちらで申請するか最初に整理します
個人で申請するか、先に会社を設立するかによって、車両、車庫、預貯金、契約書類の名義が変わります。
いしかわ行政書士事務所では、次の内容を確認したうえで、運送業許可までの順番を整理します。
- 現在の事業形態
- 法人化の予定時期
- 予定している荷主と運行内容
- 車両の台数と取得方法
- 営業所・車庫の候補地
- 運転者の人数
- 運行管理者・整備管理者の候補者
- 現在の資金と開業までの支出
- 希望する事業開始日
当事務所の行政書士は、大型トラック運転手として約7年間勤務した経験があります。書類上の要件だけでなく、車両を動かすための人員や車庫、許可後の運行を見据えて確認します。
碧南市・西尾市・高浜市・安城市・刈谷市・岡崎市を中心に、愛知県内の一般貨物自動車運送事業の許可申請に対応しています。
「個人で申請してよいか」「法人を設立してから申請すべきか」と迷っている方は、車両や車庫を契約する前にご相談ください。
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出典
国土交通省「一般貨物自動車運送事業」、中部運輸局「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の申請事案の処理方針」、中部運輸局「一般貨物自動車運送事業の許可等の申請に係る法令試験の実施について」、法務局「商業・法人登記申請手続」、e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業法」
情報確認日:2026年8月
許可基準、法令試験、欠格事由、法人設立手続などが変更された場合は、公式情報を確認して更新します。
