
この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。
海外転勤・海外赴任が決まったとき、
「日本に残す車は売った方がいい?」
「数年後に帰国するので、そのまま保管した方がいい?」
「家族に使ってもらうなら名義変更した方がいい?」
と迷うことがあります。
海外転勤時の車の扱いには、大きく分けて、
- 売却する
- 登録したまま日本で保管する
- 一時抹消して保管する
- 家族などへ名義変更する
という選択肢があります。
どれが正解かは、単に「赴任期間が長いか短いか」だけでは決まりません。
確認したいのは、
- 海外赴任はどのくらい続く予定か
- 帰国後も現在の車に乗りたいか
- 日本に車を使う家族が残るか
- 保管場所を確保できるか
- 自動車税・保険・車検などの維持費を負担してもよいか
- 出国前に売却・名義変更等を完了できるか
です。
特に注意したいのが、住民票を海外へ移した後の手続きです。
海外転出によって日本の住民登録を抹消すると、印鑑登録も抹消されます。外務省は、海外在住の日本人が自動車の名義変更などで印鑑証明書を求められる場合、在外公館が発給する署名証明を印鑑証明の代わりとして利用するケースがあると案内しています。
そのため、売却や名義変更を考えているのであれば、できるだけ出国前に手続きを整理しておく方が手間を減らしやすくなります。
海外転勤時の車は4つの方法から考える
海外転勤時の車の扱いは、まず次の4つに分けると整理しやすくなります。
| 選択肢 | 向いているケース |
|---|---|
| 売却 | 長期赴任・帰国後に買い替える予定 |
| 登録したまま保管 | 比較的短期・帰国後すぐ乗りたい |
| 一時抹消して保管 | 長期保管するが車自体は残したい |
| 家族へ名義変更 | 日本に残る家族が継続して使う |
重要なのは、
「売るか残すか」
だけではありません。
車を残す場合でも、
登録を維持したまま残すのか
↓
一時抹消して公道を走れない状態で残すのか
で、税金や帰国後の手続きが変わります。
また、家族が継続して使用するのであれば、単に鍵を渡して終わりではなく、所有者・使用者・保険・車庫などの登録状態も確認する必要があります。
長期間の海外転勤なら売却を検討しやすい
数年間の海外赴任で、
- 帰国時期が決まっていない
- 帰国後は新しい車を購入する予定
- 日本で車を使う家族がいない
- 保管場所にも費用がかかる
という場合は、売却を検討しやすくなります。
車を登録したまま保有していると、乗っていなくても自動車税などの維持費が発生します。
愛知県は、車検が切れて使用していない場合でも、抹消登録をするまでは自動車税が課税されると案内しています。
さらに、
- 駐車場代
- 任意保険
- 車検
- バッテリーやタイヤなどの劣化
- 定期的な管理
も考える必要があります。
例えば3年間海外赴任する場合、
「帰国後も今の車に乗りたい」
という明確な理由がなければ、保管費用と車両価値の低下を比較して売却を検討する余地があります。
公式資料
売却するなら出国前に手続きを進める方が分かりやすい
海外転勤前に車を売却する場合は、できるだけ日本に住民登録があるうちに進める方が手続きしやすくなります。
普通自動車の売却では、一般に移転登録が行われます。
売却手続きでは、
- 車検証
- 印鑑証明書
- 譲渡証明書
- 委任状
などが関係します。
出国して海外転出届を出すと、日本の住民登録が抹消され、印鑑登録も抹消されます。
外務省は、日本に住民登録がない海外在住の日本人に対し、日本国内で印鑑証明が必要となる手続きのため「署名証明」を発給しており、自動車の名義変更も利用例として明記しています。
そのため、
「車は日本に置いておき、海外へ行ってから売ればいい」
と考えると、出国後に在外公館で署名証明等を取得する必要が生じる場合があります。
赴任日が決まっているのであれば、
出国日
↓
車が必要な最終日
↓
売却日
↓
必要書類の取得日
という順番で逆算して準備してください。
公式資料
売却しただけでは自動車税の還付が出るとは限らない
車を売却するとき、自動車税についても確認しておきます。
愛知県では、自動車を年度途中で譲渡して移転登録しただけの場合、その年度の自動車税は4月1日時点の旧所有者に課税され、県から月割還付は行われません。
一方、年度途中で一時抹消・永久抹消などの抹消登録が行われた場合は、抹消した翌月以降分について月割で減額・還付されます。
つまり、
売却
↓
移転登録のみ
と、
売却
↓
一時抹消・永久抹消
では自動車税の扱いが異なります。
買取店へ売却した場合は、その車が実際に移転登録されたのか、抹消登録されたのかによって税金の扱いも変わります。
愛知県も、車を手放しただけではなく、運輸支局で抹消登録が行われたことを確認するよう案内しています。
公式資料
短期間の海外転勤なら登録したまま保管する方法もある
数か月から1年程度など、比較的短期間の海外転勤で、
- 帰国後すぐに現在の車を使いたい
- 車を手放したくない
- 自宅や実家などに保管場所がある
という場合は、登録を維持したまま保管する方法があります。
この場合、名義変更や抹消登録を行わないので、帰国後にそのまま使用しやすい点がメリットです。
ただし、車を使わなくても、
- 自動車税
- 保管場所
- 任意保険
- 車検
- 車両管理
の問題は残ります。
特に自動車税は、
「海外にいるから」
「車に乗っていないから」
「車検が切れたから」
という理由だけでは課税が止まりません。
愛知県は、車検切れで自動車を使用していなくても、抹消登録が行われるまでは自動車税が課税されると明記しています。
したがって、短期赴任でそのまま保管する場合は、
税金や維持費を払い続けてでも、帰国後すぐ使える状態を残したいか
で判断します。
公式資料
海外転出後も車を所有するなら自動車税の納税管理人を確認する
普通自動車を日本に残したまま海外へ転出する場合、自動車税の納付方法も整理しておく必要があります。
愛知県では、自動車税などの納税義務者が日本国外等に住所を有する場合、納税管理人を定める必要があると案内しています。
納税管理人は、本人に代わって税に関する書類を受け取ったり、納税に関する手続きを行ったりするために選定します。
つまり、
本人は海外
+
車は日本で登録したまま
という状態にするのであれば、
「自動車税の通知を誰が受け取るか」
まで決めておく必要があります。
また、自動車税については口座振替制度もあります。
海外赴任中に税金の納付を忘れないよう、
- 納税管理人
- 口座振替
- 郵便物の送付先
を出国前に確認しておくと安心です。
公式資料
長期間乗らないなら一時抹消して保管する方法もある
車を手放したくはないものの、
「数年間、日本では誰も乗らない」
という場合は、一時抹消登録を検討できます。
国土交通省のOSSでは、一時抹消登録について、
「長期出張や海外渡航等、なんらかの理由により自動車の利用を一時的に中止する場合に必要となる手続」
と明記しています。
つまり、海外転勤は一時抹消を検討する典型的なケースの一つです。
一時抹消すると、
- ナンバープレートを返納する
- 公道を走れなくなる
- 自動車税の課税を止められる
- 帰国後に再登録が必要になる
という違いがあります。
車自体は日本に残しておきたいものの、長期間使用しない場合には、
登録したまま保管
と
一時抹消して保管
を比較してください。
公式資料
一時抹消すると帰国後そのまま乗ることはできない
一時抹消には維持費を抑えられるメリットがあります。
しかし、一時抹消後はナンバープレートを返納しているため、帰国した日にそのまま公道を走ることはできません。
再び使用するには、
- 中古車新規登録
- 車検
- ナンバープレート取得
- 自賠責保険
- 必要に応じて車庫証明
などを確認する必要があります。
したがって、
「帰国した翌日から通勤に使いたい」
のであれば、一時抹消が必ずしも便利とは限りません。
反対に、
「3年間は確実に誰も使わない」
という場合には、登録を維持したまま税金等を負担するより、一時抹消を検討する余地があります。
車検が切れるだけでは一時抹消にならない
海外赴任中に車検が切れる予定だから、
「放っておけば税金も止まる」
とは考えないようにしてください。
愛知県は、検査有効期限が経過して車を使用していない場合でも、抹消登録が行われるまで自動車税は課税されると案内しています。
つまり、
車検切れ
≠
一時抹消
です。
車検は「公道を走るための検査」の問題であり、自動車の登録が残っているかとは別です。
数年間保管する予定なら、
- 車検切れのまま登録を維持する
- 一時抹消する
のどちらが適しているかを考えてください。
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家族が日本で使うなら名義変更を検討する
海外赴任する本人は車を使わなくても、
- 配偶者
- 親
- 子
- その他の家族
が日本で継続して使うことがあります。
例えば、
夫名義の車
↓
夫は海外赴任
↓
妻が日本で3年間使用
というケースです。
一時的に家族が運転するだけであれば、必ず所有者を変更しなければならないとは限りません。
一方、
- 数年間家族が管理・使用する
- 売却や買い替えの判断も家族へ任せたい
- 車検・保険・税金等の管理を家族中心にしたい
という場合は、出国前に家族へ名義変更することも選択肢になります。
国土交通省は、自動車の所有者の名義が変わった場合は移転登録を行うよう案内しています。
名義変更をする場合には、新所有者側の車庫証明が必要になるケースもあります。
「海外にいる本人名義のまま家族へ全部任せる」のか、
「出国前に家族名義へ整理する」のか、
その後の管理まで考えて選んでください。
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名義はそのままで家族が乗る場合は保険も確認する
所有者を変更せず家族が車を使い続ける場合は、登録だけでなく任意保険の契約内容を確認してください。
例えば、
- 記名被保険者
- 運転者限定
- 年齢条件
- 使用目的
- 主に運転する人
などが、海外転勤後の実際の使用状況と合っているかを確認する必要があります。
「家族だから今の保険で当然に補償される」
とは限りません。
海外赴任が決まった段階で、加入している保険会社・代理店へ、
「契約者本人は海外へ行くが、家族が日本で継続して使用する」
と伝えて契約内容を確認してください。
出国してから名義変更すると書類準備が増えることがある
海外転勤後に、
「やっぱり車を売りたい」
「家族名義へ変更したい」
となる場合もあります。
ここで問題になるのが印鑑証明書です。
外務省によると、日本から海外へ転出して住民登録を抹消すると、印鑑登録も同時に抹消されます。
そのため、海外在住の日本人が自動車の名義変更などで印鑑証明に代わる証明を求められる場合、在外公館の署名証明を利用することがあります。
また、海外での住所を証明する必要があれば、在留証明が関係する場合もあります。
つまり、
日本にいる間
→ 市区町村で印鑑証明書を取得できる
海外転出後
→ 在外公館で署名証明等を準備するケースがある
という違いがあります。
売却・名義変更する可能性が高いのであれば、出国前に処理しておく方が書類面では単純になりやすいでしょう。
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ローン中の車は所有者を先に確認する
海外転勤を機に車を売却・家族へ名義変更しようとしても、車検証上の所有者が本人ではない場合があります。
例えば、
所有者:自動車販売店・信販会社
使用者:本人
という所有権留保です。
この場合、使用者本人だけの判断で所有権を移すことはできません。
売却・名義変更・抹消などを行う前に、所有者となっている販売店・信販会社へ連絡し、必要な手続きを確認します。
まず電子車検証または自動車検査証記録事項を確認し、
誰が所有者として登録されているか
を確認してください。
車を海外へ持っていく方法は一般的な海外赴任では別に考える
海外赴任だから、
「日本の車をそのまま赴任先へ持っていけばよい」
と考える人もいるかもしれません。
ただし、車両の海外持込みには、
- 輸出手続
- 現地の輸入規制
- 現地登録
- 税金
- 輸送費
- 車両基準
などが関係します。
JAFの自動車カルネは、日本登録の車を一定期間海外へ一時持込みする制度ですが、JAFは現在、
- 1か国に1年以上滞在する場合
- 駐在など仕事で海外へ行く場合
- 外国へ住民登録を移す場合
などをカルネ利用不可として案内しています。
JAFは、仕事で海外赴任する際に車を持っていく場合について、日本で抹消登録を行い、通常の輸入手続きを取って現地で登録する方法を案内しています。
そのため、一般的な海外転勤では、
「売却」
「日本で保管」
「家族へ引き継ぐ」
とは別の大きな手続きになると考えた方がよいでしょう。
公式資料
判断基準|売却・保管・名義変更のどれを選ぶ?
迷った場合は、次のように整理できます。
売却を検討しやすい
- 赴任期間が長い
- 帰国時期が未定
- 帰国後は買い替える可能性が高い
- 日本で誰も使わない
- 保管費用を負担したくない
登録したまま保管を検討しやすい
- 赴任期間が比較的短い
- 帰国後すぐ同じ車へ乗りたい
- 保管場所を確保できる
- 税金・保険等の維持費を許容できる
一時抹消を検討しやすい
- 数年間誰も使わない
- 車自体は手放したくない
- 自動車税等を抑えたい
- 帰国後に再登録する手間を許容できる
家族への名義変更を検討しやすい
- 日本に残る家族が長期間使う
- 車の管理も家族へ任せたい
- 売却や買い替えを家族が判断する可能性がある
- 海外在住本人の書類を後から用意する手間を避けたい
重要なのは、
赴任期間だけで決めないこと
です。
「帰国後にその車を必要とするか」と「日本で誰が管理するか」まで考えると判断しやすくなります。
具体例|3年間の海外赴任で日本に車を使う人がいない場合
3年間の海外赴任が決まり、本人・家族とも海外へ移るとします。
日本には自家用車が1台残ります。
この場合、
登録したまま3年間保管
→ 自動車税・保管費等が継続
一時抹消して3年間保管
→ 自動車税を止められるが、帰国後に再登録
売却
→ 維持費はなくなるが、帰国後に車を買い直す
という比較になります。
車の価値、保管料、帰国後の使用予定を考えて、
「3年間維持する価値がある車か」
を判断します。
一般的な車で帰国後に買い替える可能性が高いのであれば、売却が選択肢になります。
愛着がある車や希少車などで手放したくない場合は、一時抹消して保管する方法も考えられます。
具体例|夫だけ海外赴任して妻が日本で車を使う場合
夫名義の普通自動車があり、夫だけ3年間海外赴任し、妻は日本に残るとします。
妻が日常的に車を使い続けるのであれば、
- 夫名義のまま使用する
- 妻へ名義変更する
という選択肢があります。
夫名義のままにする場合は、
- 自動車税の管理
- 任意保険
- 車検
- 将来売却する場合の書類
を確認します。
妻名義へ変更する場合は、出国前に移転登録を行っておけば、その後の売却・買い替えなどを妻側で進めやすくなります。
どちらがよいかは、
「海外赴任中に車を誰が管理・処分する可能性があるか」
で判断してください。
海外転勤前に確認したい8項目
海外転勤が決まり、自動車を所有している場合は次の8項目を確認してください。
- 海外赴任の予定期間
- 帰国後も現在の車へ乗りたいか
- 日本で車を使用する家族がいるか
- 車検証上の所有者は誰か
- 日本で保管場所を確保できるか
- 自動車税・保険・車検等を維持するか
- 売却・一時抹消・名義変更のどれを選ぶか
- 出国前に手続きを完了できるか
特に、
「とりあえず日本に置いてから考える」
という選択は、出国後に印鑑証明書が取得できなくなるなど、後の手続きを複雑にする可能性があります。
車をどうするかは、海外転出届を出す前から検討しておくとよいでしょう。
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海外転勤時の車は、
- 売却する
- 登録したまま保管する
- 一時抹消して保管する
- 家族へ名義変更する
など複数の選択肢があります。
どの方法が適しているかは、
- 赴任期間
- 帰国後の使用予定
- 日本に残る家族
- 車両の価値
- 維持費
- 車検証上の所有者
によって変わります。
また、海外転出後は印鑑登録が抹消されるため、その後の売却・名義変更で署名証明等が必要になるケースがあります。
いしかわ行政書士事務所では、碧南市・西尾市・高浜市・安城市・刈谷市・岡崎市を中心に、自動車の名義変更・抹消登録などの手続きをサポートしています。
海外転勤前に現在の車検証と今後の予定を確認しながら、売却・保管・名義変更のどの方法が適しているか、必要な登録手続きから整理します。
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出典
この記事は、2026年8月時点の法令・公的機関の情報をもとに作成しています。
国土交通省「引越をした時、名義変更した時の手続について」、国土交通省「車を売買等により名義変更するためには」、国土交通省「自動車保有関係手続のワンストップサービス・申請が行える手続の種類」、国土交通省「一時抹消登録に必要な書類」、愛知県「自動車税Q&A 2」、愛知県「自動車税Q&A 8・9・10」、愛知県「納税管理人選定(変更)申請書及び申告書」、外務省「在外公館における証明」、JAF「自動車カルネのご案内」
