運送業の法改正で会社が確認すべきこと|許可後管理・帳票・点呼の見直し

この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。

「法改正があったらしいが、自社に何が関係するのか分からない」

運送会社にとって難しいのは、改正内容を知ることより、現在の契約書面・配車表・点呼記録簿・許可関係書類のどこを直すべきか判断することです。

2025年4月には、運送契約の書面交付、実運送体制管理簿、荷待時間・荷役作業等の記録対象拡大などが施行されました。

2026年4月には、貨物利用運送事業者への規制拡大、委託次数を原則2次までに抑える努力義務、違法な白トラ利用への規制強化などが施行されています。

法改正への対応は、ニュースを読むだけでは終わりません。自社の取引と管理方法に当てはめ、担当者・書式・保存場所まで決める必要があります。

結論|法改正は施行日だけでなく自社の業務への影響を確認する

2026年8月時点で、運送会社が優先して確認したい項目は次のとおりです。

確認項目主な確認内容
運送契約運送内容、運賃、附帯業務料、燃料サーチャージなどを書面に記載しているか
委託関係誰から受注し、どの会社へ委託し、最終的に誰が運んだか把握できるか
実運送体制管理簿作成対象となる運送について、必要事項を記録・保存しているか
委託次数真荷主から数えて、委託段階を原則2次までに抑える体制になっているか
荷待ち・荷役記録記録対象となる運行を把握し、乗務記録へ反映しているか
許可後の変更営業所、車庫、役員、車両などの変更が届出済みか
点呼実施方法と点呼記録簿の内容が一致しているか
アルコール検知器営業所への備付け、毎日の作動確認、週1回以上の検知確認ができているか
遠隔・自動点呼国の要件を満たす機器・方法を使い、必要な届出をしているか
今後の改正許可更新制と適正原価制度の施行情報を継続確認しているか

すべての項目が全社に同じように当てはまるわけではありません。

自社便だけで運ぶ会社、他社へ運送を委託する会社、利用運送を行う会社では、必要な対応が異なります。まず、自社がどの立場で取引しているかを整理することが出発点です。

運送業の法改正で会社が確認すべきこと

2025年4月に施行された改正貨物自動車運送事業法では、取引の書面化と実運送事業者の把握が重視されました。

運送会社が真荷主から運送を引き受ける場合や、引き受けた運送を他社へ委託する場合には、運送の役務、運賃・料金、附帯業務の内容と対価などを記載した書面の交付が必要です。

書面は必ずしも「運送契約書」という名称である必要はありません。必要事項を満たしていれば、運送申込書、発注書、メールなどを組み合わせて対応できる場合があります。

ただし、基本契約書だけを作り、日ごとの運送区間、貨物、運賃・料金などが分からない状態では足りない可能性があります。

次のような取引は見直しが必要です。

  • 電話だけで運送依頼を受けている
  • 運賃は書いているが、積込み・取卸しなどの料金を分けていない
  • 燃料サーチャージや有料道路利用料の扱いが曖昧
  • 配車担当者の個人メールやメッセージだけに依頼内容が残っている
  • 変更後の運賃や作業内容が書面へ反映されていない
  • 書面を誰が、どこへ保存するか決めていない

法改正に合わせて新しい帳票を増やすだけでなく、現在使っている配車表や運送依頼書へ必要項目を追加できないか確認すると、現場の入力負担を抑えられます。

トラック運送業の制度改正で中小運送会社に影響すること

中小運送会社では、社長、配車担当者、運行管理者が複数の仕事を兼ねていることがあります。

そのため、制度改正への対応を一人の担当者だけに任せると、受注時の書面交付と配車後の記録がつながらないことがあります。

例えば、営業担当者は荷主との運賃を把握していても、配車担当者が附帯業務の内容を知らなければ、実際の作業と書面に食い違いが生じます。

他社へ運送を委託するときも、委託先の会社名だけではなく、再委託の有無や最終的な実運送事業者を確認できる流れが必要です。

中小運送会社では、次のように担当を分けておくと整理しやすくなります。

場面主な担当確認すること
受注時営業・配車担当者運送内容、運賃、附帯業務、料金
委託時配車担当者委託先、請負階層、実運送事業者
運行時運行管理者点呼、乗務記録、荷待ち・荷役記録
変更発生時社長・許可管理担当者変更認可・届出の要否
月次確認社長・管理責任者記録漏れ、未届、保存状況

人数が少ない会社でも、担当者を増やす必要はありません。「誰が最後に確認するか」を一つ決めておくことが大切です。

運送業の法改正ニュースをどう見る?

法改正のニュースを見るときは、公布日と施行日を分けて確認してください。

法律が成立・公布されても、すべての内容が同じ日に始まるとは限りません。

2025年4月施行の改正、2026年4月施行の改正、公布後3年以内に施行される制度が同時に報道されているため、見出しだけでは現在の義務か、将来の制度か判断できないことがあります。

2026年8月時点では、主な改正状況を次のように整理できます。

時期主な内容現在の扱い
2025年4月1日運送契約の書面交付、実運送体制管理簿、健全化措置など施行済み
2026年4月1日利用運送事業者への規制拡大、委託次数制限の努力義務、違法白トラ規制など施行済み
2026年4月1日一定規模以上の荷主・物流事業者に対する中長期計画・定期報告など対象事業者について施行済み
公布後3年以内一般貨物自動車運送事業許可の更新制、適正原価を下回る運賃・料金の制限施行日などを継続確認

許可更新制については、導入が決まったことと、具体的な更新申請を今すぐ行うことは別です。

国土交通省から施行日、更新期間、審査方法、経過措置などが示された段階で、自社の許可取得時期と管理状況を照らして準備します。

運送会社が法改正に備えて見直したい許可・車両・帳票管理

法改正への対応を始めるときは、新制度だけでなく、既存の許可後管理も一緒に点検します。

法改正に対応した帳票を整えても、営業所や車庫の変更届が出ていない、増車後の収容能力が不足しているといった状態では、会社全体の管理が整ったことにはなりません。

確認する資料は、次の4グループに分けると見落としを探しやすくなります。

1.許可と届出の資料

  • 許可書
  • 事業計画
  • 変更認可申請書・変更届の控え
  • 役員変更などの届出控え
  • 運行管理者・整備管理者の選任届
  • 事業報告書・事業実績報告書の控え

2.車両と車庫の資料

  • 事業用自動車等連絡書
  • 車検証
  • 増車・減車・代替に関する届出控え
  • 車庫の賃貸借契約書
  • 車両配置図
  • 車庫変更・追加に関する手続きの控え

3.運行・安全管理の帳票

  • 点呼記録簿
  • 乗務記録・運転日報
  • 運行指示書
  • 乗務員台帳
  • 運転者教育の記録
  • 適性診断・健康診断の記録
  • 事故記録
  • 日常点検・定期点検の記録

4.取引と委託関係の資料

  • 荷主との基本契約書
  • 個別の運送依頼書・発注書
  • 運賃・料金表
  • 附帯業務の内容と料金が分かる書面
  • 委託先との契約書・発注書
  • 実運送体制管理簿
  • 委託先から受けた実運送事業者情報

資料が存在するかだけでなく、現在の会社情報と一致しているか、記載が途中で止まっていないか、保存場所を担当者以外も分かるかまで確認してください。

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運送業の規制強化で確認すべき手続きとは?

2026年4月からは、真荷主から引き受けた貨物を他の事業者へ委託する場合、委託段階を2次までに抑える努力義務が設けられています。

自社が直接運ばず、協力会社へ依頼する場合は、委託先がさらに別の会社へ再委託していないかを把握する仕組みが必要です。

また、貨物利用運送事業者にも、書面交付や実運送体制管理簿などの規定が広く適用されました。

一般貨物自動車運送事業と第一種貨物利用運送事業の両方を行っている会社は、どちらの立場で受注・委託した取引なのかを分けて確認します。

実運送体制管理簿は、元請事業者が真荷主から1回の運送依頼で引き受けた貨物の重量が1.5トン以上であり、その全部または一部を他社に委託する場合などに作成対象となります。

管理簿には、実運送事業者の商号または名称、貨物の内容、運送区間、請負階層などを記録します。決められた様式に限られず、必要事項を満たせば既存の配車表などを活用できる場合があります。

違法な白トラについては、無許可で有償運送を行う者だけでなく、その事実を知りながら委託した荷主等も処罰対象となり得ます。

協力会社を新たに使うときは、口頭の紹介だけで決めず、事業者名、許可・届出の状況、使用車両、再委託の有無を確認してください。

点呼・安全管理の制度変更に備えて運送会社が確認したいこと

点呼は、法改正の記事を読んだときだけ見直すものではありません。

今回の取引関係の法改正によって、従来の点呼記録簿が一律に別様式へ変わったわけではありませんが、許可更新制など今後の制度を見据えると、日常の安全管理を今のうちに確認しておく必要があります。

点呼では、記録簿があるだけでなく、実際の実施方法と記録内容が一致しているかを確認します。

  • 点呼執行者を記載しているか
  • 点呼日時を実際の時刻で記録しているか
  • 対面、電話、遠隔点呼、自動点呼などの方法を記録しているか
  • 酒気帯び、疾病、疲労、睡眠不足などを確認しているか
  • アルコール検知器を使用したことを記録しているか
  • 日常点検の結果を確認しているか
  • 車両番号を記録しているか
  • 運行に必要な指示と報告を残しているか
  • 点呼記録を1年間保存しているか

遠隔点呼や自動点呼は、市販のウェブ会議システムやアルコール検知器を用意するだけで自由に実施できる制度ではありません。

国土交通大臣が定める機器・施設・運用上の要件を満たし、原則として実施予定日の10日前までに管轄運輸支局へ届け出る必要があります。

導入時は、機器の認定状況だけでなく、通信障害時の対応、本人確認、記録保存、異常が確認された場合の運行管理者への連絡方法まで決めます。

アルコール検知器は故障していない状態を保つ

一般貨物自動車運送事業者は、営業所ごとにアルコール検知器を備え、点呼時の酒気帯び確認に使用します。

運行管理者は、少なくとも次の確認を行います。

  • 毎日、電源が入ることと損傷がないことを確認する
  • 少なくとも週1回、酒気を帯びていない者へ反応しないことを確認する
  • 少なくとも週1回、アルコールを含む液体などに反応することを確認する
  • メーカーの取扱説明書に従って使用・保守する

機器が故障したときに確認を省略して出庫させないよう、予備機の保管、故障時の連絡先、交換手順も社内で決めておくと安心です。

2024年問題後の運送会社が見直したい手続き・管理体制とは?

2024年4月からトラックドライバーへ時間外労働の上限規制が適用されました。

その後の法改正では、運送会社だけに負担を求めるのではなく、荷主との取引、附帯業務の対価、荷待時間、委託構造を見直す方向が強まっています。

運行管理者だけが労働時間を調整しても、荷主からの依頼内容や積込み時間が配車担当者へ正確に伝わっていなければ、拘束時間を減らせません。

次の情報を一つの流れで管理できるか確認してください。

  1. 荷主から受けた運送条件
  2. 積込み・取卸し・待機などの附帯業務
  3. 運賃・料金と燃料サーチャージ
  4. 配車計画と委託先
  5. 実際に運送した事業者
  6. 点呼と乗務記録
  7. 荷待時間・荷役作業の記録
  8. 請求内容

法改正対応を法務担当者だけの仕事にせず、営業、配車、運行管理、請求の流れをつなぐことが必要です。

運送業の法改正で行政書士に相談できること

行政書士へ相談できる主な内容は、許可・届出と書類管理に関する部分です。

  • 営業所・車庫・役員・車両などの変更手続き
  • 事業報告書・事業実績報告書の作成
  • 許可書・届出控え・事業計画の整理
  • 運送契約に関する書面の確認・作成
  • 実運送体制管理簿の書式整理
  • 運送利用管理規程の作成や届出
  • 許可後管理のチェックリスト作成
  • 巡回指導前の帳票確認

一方、点呼や運転者教育は、書類を用意するだけでは足りません。運行管理者が実際に点呼・指導を行い、その内容を記録する必要があります。

行政書士へ帳票の整理を依頼しても、実施していない点呼や教育を後から行ったように記録することはできません。

書類作成と現場での実施を分け、誰が何を担当するかを整理してください。

よくある質問

Q
2025年4月より前の基本契約書もすべて作り直す必要がありますか?
A

施行日前に締結した契約を、改正に合わせるため一律に締結し直す必要があるとは限りません。ただし、施行日以降に個別の運送契約を締結する場合や、契約内容を変更する場合は、書面交付義務の対象となるか確認が必要です。

Q
電話で受けた運送依頼は違法になりますか?
A

電話を使うこと自体が一律に禁止されているわけではありません。ただし、原則として運送を開始する前に、法定事項を記載した書面を交付する必要があります。緊急時の例外が認められる場合でも、後から書面を交付する対応が必要です。

Q
メールも運送契約の書面として使えますか?
A

必要事項が記載され、相手方が内容を確認できる形であれば、電子メールなどの電磁的方法を利用できます。情報が複数のメールや添付書類に分かれる場合は、後から一連の契約内容を確認できる状態で保存してください。

Q
自社ですべて運送する場合も実運送体制管理簿が必要ですか?
A

真荷主から引き受けた貨物をすべて自社で実運送し、他社の運送を利用しない場合は、原則として実運送体制管理簿の作成対象ではありません。他社へ一部でも委託するときは、貨物重量などの対象要件を確認します。

Q
委託次数は必ず2次までにしなければなりませんか?
A

2026年4月から、真荷主から引き受けた貨物について、委託段階を2次までに制限することは努力義務です。ただし、努力義務だから何もしなくてよいという意味ではありません。現在の委託構造を把握し、再々委託を抑える取引条件を検討します。

Q
法改正があるたびに帳票を新しく作る必要がありますか?
A

新しい帳票が必須とは限りません。既存の契約書、発注書、配車表、点呼記録簿などへ必要項目を追加して対応できる場合があります。ただし、必要事項を検索・確認・保存できる状態にしておく必要があります。

Q
運送業許可の更新申請はすでに始まっていますか?
A

許可更新制の導入は決まっていますが、2026年8月時点では、公布日である2025年6月11日から3年以内の政令で定める日に施行される制度です。具体的な施行日や経過措置について、国土交通省の最新情報を継続して確認してください。

まとめ

運送業の法改正へ対応するときは、改正内容を読むだけでなく、現在の業務へ落とし込む必要があります。

まず、次の順番で確認してください。

  1. 自社が元請・下請・利用運送のどの立場になるか整理する
  2. 施行済みの制度と今後施行される制度を分ける
  3. 運送契約書面と委託関係を確認する
  4. 実運送体制管理簿の作成対象を確認する
  5. 許可・車両・車庫・報告書の未届や未提出を確認する
  6. 点呼と実際の運用が一致しているか確認する
  7. 担当者、確認時期、保存場所を決める

特に、2025年4月と2026年4月に施行された改正は、運送会社の受注、配車、委託、請求まで影響します。

一度にすべて作り直すのではなく、現在の書類と業務の流れを確認し、足りない項目から順番に直すと負担を抑えられます。

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許可後管理と法改正対応をまとめて確認します

法改正のたびに別々の担当者が書式を追加すると、同じ情報を複数の帳票へ入力したり、古い書式が残ったりすることがあります。

いしかわ行政書士事務所では、許可書、変更届、報告書、契約書面、実運送体制管理簿などを確認し、現在の会社情報と合っていない箇所や、法改正への対応が必要な項目を整理します。

碧南市・西尾市・高浜市・安城市・刈谷市・岡崎市を中心に、三河地域・愛知県内の運送会社からのご相談に対応しています。

書類がすべてそろっていない場合でも、現在保管している許可関係書類と、普段使用している運送依頼書・配車表などから確認を始められます。

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出典

国土交通省「改正貨物自動車運送事業法(令和7年4月1日施行)について」
国土交通省「改正貨物自動車運送事業法Q&A(令和8年3月31日時点)」
国土交通省「トラック適正化二法について」
国土交通省「物流効率化法について」
国土交通省「運行管理高度化ワーキンググループ|遠隔点呼・自動点呼」
国土交通省「自動車運送事業におけるアルコール検知器の使用について」
e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業輸送安全規則」

この記事は、2026年8月時点で施行済みの制度と公表済みの改正内容をもとに作成しています。許可更新制、適正原価制度、遠隔点呼・自動点呼の要件などが更新された場合は、記事内容を見直してください。

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