
この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。
「トラック5台と運転者は確保できそうだが、運行管理者と整備管理者を誰にするか決まっていない」
運送業許可では、この状態のまま申請準備を進めると、人員計画を組み直すことがあります。
運行管理者と整備管理者は、名前が似ていますが、担当する業務も資格要件も異なります。一定の条件を満たせば同じ人が兼任できる可能性はありますが、資格を持っているだけで自動的に認められるものではありません。
先に結論を整理すると、一般貨物自動車運送事業を5台で始める場合は、通常、営業所ごとに運行管理者1名、使用の本拠ごとに整備管理者1名を確保します。
同じ人が両方を兼任する場合は、双方の資格要件を満たし、点呼や運行判断、日常点検の確認、整備計画などを実際に行える勤務体制が必要です。
運行管理者と整備管理者の違い
運行管理者は、主に運転者と運行の安全を管理します。
整備管理者は、主に車両の点検・整備と車庫を管理します。
| 比較項目 | 運行管理者 | 整備管理者 |
|---|---|---|
| 主な管理対象 | 運転者・運行・点呼 | 車両・点検整備・車庫 |
| 主な根拠 | 貨物自動車運送事業法、貨物自動車運送事業輸送安全規則 | 道路運送車両法、道路運送車両法施行規則 |
| 選任単位 | 原則として営業所ごと | 原則として使用の本拠ごと |
| 一般貨物の基本人数 | 被けん引車を除き29台まで1名 | 事業用トラック5台以上なら原則1名以上 |
| 主な資格 | 貨物の運行管理者資格者証 | 自動車整備士、または実務経験と選任前研修 |
| 外部委託 | 原則不可 | 事業用自動車は原則不可。一部のグループ企業内に例外あり |
| 主な届出期限 | 選任・解任から1週間以内 | 選任・変更等から15日以内 |
運行管理者が「運行できるか」を運転者や労働時間、健康状態などから判断するのに対し、整備管理者は「車両を運行させてよいか」を点検・整備の状態から判断します。
両者を選任しても、運送事業者自身の安全管理責任がなくなるわけではありません。事業者は、それぞれの管理者に必要な権限を与え、業務を行える体制を整える必要があります。
運送業許可の運行管理者とは?必要人数と資格
運行管理者は、事業用トラックの安全な運行を管理する責任者です。
主な業務には、次のようなものがあります。
- 乗務前・乗務後・中間点呼の実施
- 酒気帯び、疾病、疲労、睡眠不足などの確認
- 運転者への指示
- 乗務記録や点呼記録の管理
- 運転者に対する指導・監督
- 過労運転を防ぐための乗務割の作成
- 事故発生時の記録や対応
- 適性診断や健康診断の受診管理
運行管理者は、名義だけ置けばよい役職ではありません。
早朝・深夜の点呼がある会社で、運行管理者がその時間に対応できない場合は、補助者の配置や点呼体制まで含めて設計する必要があります。
運行管理者は何人必要か
一般貨物自動車運送事業では、営業所が管理する事業用自動車の台数に応じて、次の人数を選任します。
| 事業用自動車の台数 | 必要な運行管理者数 |
|---|---|
| 29台まで | 1名 |
| 30台から59台まで | 2名 |
| 60台から89台まで | 3名 |
| 90台から119台まで | 4名 |
以後も30台増えるごとに、必要人数が1名ずつ増えます。
この車両数には、原則として被けん引自動車であるトレーラを含めません。
例えば、トラック4台、トラクタ1台、トレーラ1台で開業する場合、運行管理者の人数を計算するときの車両数は、被けん引車を除いた5台です。そのため、通常は運行管理者1名が必要です。
複数の運行管理者を選任する営業所では、その業務を統括する統括運行管理者も定めます。
運行管理者になるための資格
貨物の運行管理者に選任できるのは、貨物の運行管理者資格者証の交付を受けている人です。
資格者証の主な取得方法は、次の2つです。
- 運行管理者試験に合格して、資格者証の交付を受ける
- 5年以上の運行管理に関する実務経験があり、その期間中に所定の講習を5回以上受講する
2の方法では、少なくとも1回は基礎講習を修了している必要があります。
運行管理者試験に合格しただけではなく、資格者証の交付まで受けているかを確認してください。
補助者は運行管理者の代わりになるのか
基礎講習を修了した人や運行管理者資格者証を持つ人は、運行管理者の補助者として選任できる場合があります。
ただし、補助者は運行管理者そのものではありません。
補助者を置いても、法定人数の運行管理者を選任しなくてよいことにはならず、運行の可否に関する最終的な判断など、運行管理者自身が行うべき業務があります。
補助者を置く場合は、補助者の職務、選任方法、運行管理者への報告方法などを運行管理規程に定めます。
運送業許可の整備管理者とは?必要人数と資格
整備管理者は、事業用トラックの点検・整備と車庫の管理を担当します。
主な業務は次のとおりです。
- 日常点検の実施方法を定める
- 日常点検結果を確認する
- 点検結果に基づいて運行の可否を決定する
- 定期点検や必要な整備の実施計画を作る
- 点検・整備の記録を管理する
- 車庫を適切に管理する
- 運転者や整備担当者へ点検・整備に関する指導を行う
整備工場へ点検や修理を依頼していても、整備管理者が不要になるわけではありません。
整備作業そのものを外部の整備工場が行う場合でも、点検時期の管理や、日常点検結果に基づく運行可否の判断は、運送会社側の整備管理体制で行います。
整備管理者は何人必要か
一般貨物自動車運送事業で使用するトラックは、通常、使用の本拠に5台以上配置する場合に整備管理者の選任が必要です。
一般貨物自動車運送事業は原則5台以上の車両を用意するため、新規許可では通常、整備管理者も必要になります。
運行管理者のように「29台まで1名、30台から2名」という一律の人数表はありません。ただし、車両数、車種、稼働状況、営業所間の距離などから、1名では適切な整備管理が難しい場合は、補助者の配置や複数選任を検討する必要があります。
整備管理者になるための資格
整備管理者の主な資格要件は、次のいずれかです。
- 一級・二級・三級の自動車整備士資格を持っている
- 整備管理の対象となる種類の自動車について、点検・整備または整備管理に関する2年以上の実務経験があり、整備管理者選任前研修を修了している
- 国土交通大臣がこれらと同等と認めた技能を持っている
「トラック運転者として2年以上働いた」という事実だけでは、整備管理者の実務経験になるとは限りません。
実務経験で選任する場合は、どの会社で、どの車種について、どのような点検・整備または整備管理を行っていたかを証明できるようにします。
選任前研修は常時開催されているとは限らないため、開業予定日から逆算して受講時期を確認する必要があります。
運行管理者と整備管理者は兼任できるのか
同じ人が運行管理者と整備管理者を兼任することについて、一律の禁止規定があるわけではありません。
次の条件を満たせば、兼任できる可能性があります。
- 貨物の運行管理者資格者証を持っている
- 整備管理者の資格要件も満たしている
- 運行管理と整備管理の双方を実際に行える
- 点呼時間に対応できる
- 日常点検結果を確認して運行可否を判断できる
- 他の仕事を含めても管理業務に支障がない
- 必要な権限を事業者から与えられている
一方、資格だけを見て兼任を決めると、開業後に管理が回らなくなることがあります。
兼任を慎重に判断したいケース
例えば、社長が運行管理者資格者証を持ち、整備管理者の資格要件も満たしているとします。
社長が主に営業所内で勤務し、点呼、運行指示、日常点検の確認、整備計画を行えるなら、兼任できる可能性があります。
しかし、社長自身が毎日長距離運行へ出て、早朝から翌日まで営業所を離れる場合はどうでしょうか。
資格上は両方の要件を満たしていても、次の業務に支障が出る可能性があります。
- 他の運転者の乗務前点呼
- 帰庫時刻に合わせた乗務後点呼
- 日常点検で異常があった車両の運行判断
- 故障時の整備手配
- 点呼記録や整備記録の管理
この場合は、別の管理者を確保する、補助者を置く、社長の乗務を限定するなどの体制変更を検討します。
他の営業所との兼任
運行管理者は、原則として他の営業所の運行管理者や、同じ営業所の運行管理補助者を兼務できません。
複数営業所を設ける場合に、「本社の運行管理者が支店もまとめて担当する」と単純に考えることはできないため、営業所ごとに必要な人員を確認します。
整備管理者も、原則として使用の本拠ごとに選任します。他の本拠や他業務との兼職が直ちに禁止されるわけではありませんが、距離、車両数、勤務状況などから、整備管理業務を確実に行えるかが判断されます。
運行管理者・整備管理者を外部へ依頼できるのか
運行管理者は、運送会社の安全管理体制の中心となるため、名義だけ外部から借りることはできません。
「資格者証を持つ知人に名前だけ貸してもらう」「運行管理を行わない外部の人を選任する」といった対応は認められません。
整備管理者についても、事業用自動車の場合は外部委託が原則として禁止されています。
一定の条件を満たすグループ企業内では例外的に外部委託できる場合がありますが、一般的な整備工場、行政書士、知人などへ自由に委託できる制度ではありません。
自社に資格者がいない場合は、次のいずれかを検討します。
| 現在の状況 | 検討する対応 |
|---|---|
| 運行管理者試験の受験資格がある | 試験日と開業予定日を確認して受験する |
| 運行管理の実務経験がある | 実務経験と講習回数で資格者証を取得できるか確認する |
| 整備士資格を持つ従業員がいる | 資格の種類と選任予定の車種を確認する |
| 点検・整備等の実務経験が2年以上ある | 実務経験証明と選任前研修を準備する |
| 社内に該当者がいない | 有資格者の採用または開業時期の見直しを行う |
資格取得や採用に時間がかかる場合、営業所や車庫、車両を確保できても運輸開始が遅れることがあります。
5台で開業する場合の具体例
次のような会社を例に考えます。
- 事業用トラック5台
- 常勤運転者5名
- 社長は貨物の運行管理者資格者証を保有
- 従業員1名は三級自動車整備士資格を保有
- 社長は営業と配車を担当し、通常は営業所内にいる
この場合は、次の体制が考えられます。
- 社長を運行管理者に選任する
- 整備士資格を持つ従業員を整備管理者に選任する
- 点呼の時間帯や休日を考慮し、必要に応じて運行管理補助者を置く
- 運転者5名は別に確保する
ただし、社長も毎日トラックへ乗務する場合や、整備管理者になる従業員も長距離運行で不在が多い場合は、同じ人員構成でも管理体制を見直す必要があります。
運転者、運行管理者、整備管理者は、単純に人数欄を埋めればよいものではありません。誰が、何時に、どこで、どの業務を行うかまで確認することで、自社の人員計画が実際に機能するか判断できます。
自社の人員計画を判断する基準
次の項目を順番に確認してください。
- 営業所ごとの事業用自動車数を数える
- 被けん引車を除いて必要な運行管理者数を計算する
- 使用の本拠ごとに整備管理者が必要か確認する
- 候補者がそれぞれの資格要件を満たしているか確認する
- 運行管理者資格者証や整備士合格証書などを確認する
- 実務経験で整備管理者になる場合は、経験内容と証明者を確認する
- 点呼時刻、配車、日常点検、整備手配を誰が担当するか決める
- 休日や欠勤時に管理業務が止まらない体制を作る
- 必要な運転者数を管理者とは別に検討する
- 人員の見通しが立ってから開業日、車両契約、採用計画を固める
特に次のいずれかに該当する場合は、資格の有無だけで兼任を決めない方が安全です。
- 管理者候補が日常的に長距離運行へ出る
- 早朝・深夜にも点呼が必要
- 複数の営業所や車庫を使用する
- トレーラや特殊な車両を使用する
- 休日時の代替体制がない
- 整備管理者の実務経験を証明できるか分からない
- 開業予定日までに試験や研修が間に合わない
運行管理者・整備管理者を確保してから申請準備を進める
運送業許可の申請時には、運行管理者と整備管理者の候補者、資格、勤務体制を具体化しておく必要があります。
許可を受けた後は、運輸開始までに正式な選任や届出などを進めます。
運行管理者を選任または解任した場合は、貨物運送事業では原則として1週間以内に管轄運輸支局へ届け出ます。
整備管理者を選任・変更した場合などは、原則として15日以内の届出が必要です。
また、運行管理者は原則として2年に1回の一般講習、整備管理者も選任後研修を一定の時期に受講する必要があります。選任届を提出して終わりではなく、研修、記録、運行管理規程・整備管理規程まで継続して管理します。
人員の確保がまだの場合は、まず次の資料を集めてください。
- 運行管理者資格者証
- 自動車整備士の合格証書や整備士手帳
- 整備管理者選任前研修の修了証明書
- 点検・整備等の実務経験を証明できる資料
- 営業所ごとの車両一覧
- 運転者・管理者の勤務予定表
- 予定する運行時間と点呼時間
この段階で不足している資格や人員が分かれば、採用、試験、研修、開業時期を現実的な順番に組み直せます。
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運行管理者と整備管理者の兼任を予定している場合は、資格の有無だけでなく、予定する運行時間、点呼方法、乗務の有無、車両の点検体制まで確認することが大切です。
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出典
国土交通省「運行管理者について」、e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業法」、e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業輸送安全規則」、e-Gov法令検索「道路運送車両法」、e-Gov法令検索「道路運送車両法施行規則」、中部運輸局「運送事業者の事故防止と自動車の環境対策」、国土交通省「整備管理者制度が改正されました―外部委託の禁止」
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