遺言書を書かないと財産はどうなる?子どもがいない人の注意点

この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。

子どもがいない方の中には、「遺言書を書かなくても、兄弟や甥姪が手続きをしてくれるだろう」と考えている方もいるでしょう。

遺言書がなくても、財産がなくなるわけではありません。

法律で決められた相続人が財産を引き継ぎ、相続人全員で、自宅や預金を誰が取得するか話し合うことになります。

ただし、本人の希望が分からなければ、親族以外の世話になった人へ財産を渡したり、特定の甥や姪へ自宅を残したりすることはできません。

遺言書を書かない場合、財産の行き先は本人ではなく、法律上の相続関係と相続人同士の話合いによって決まります。

この記事では、子どもがいない人が遺言書を書かずに亡くなった場合、財産がどうなるのかを解説します。

遺言書がない場合は法律上の相続人が財産を引き継ぐ

遺言書がない場合、亡くなった人の財産は、法律上の相続人が引き継ぎます。

ただし、法律で定められた相続割合どおりに、預金や自宅が自動的に分けられるわけではありません。

複数の相続人がいる場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産を取得するか決めるのが一般的です。

たとえば、相続財産が次の内容だったとします。

  • 自宅と土地
  • 預金500万円
  • 自動車
  • 家財

相続人が兄弟姉妹3人であれば、3人で財産の分け方を話し合います。

自宅を長男が取得し、預金をほかの2人が取得することもできます。自宅を売却し、売却代金を3人で分けることも可能です。

一方、話合いがまとまらなければ、自宅の名義変更や売却が進まないことがあります。

遺言書がないということは、法律上の相続人に財産の分け方を任せるということです。

本人が生前に口頭で希望を伝えていても、相続人全員がその希望に従うとは限りません。

子どもがいない人は誰が相続人になるのか

子どもがいない場合でも、相続人がいないとは限りません。

配偶者の有無や両親、兄弟姉妹の状況によって、相続人が変わります。

独身で両親が存命の場合

本人に配偶者や子どもがおらず、両親が存命であれば、両親が相続人になります。

両親のうち一人だけが存命であれば、その一人が相続人になります。

兄弟姉妹がいても、両親や祖父母などの直系尊属が相続人になる場合、兄弟姉妹は相続人になりません。

両親や祖父母が亡くなり、兄弟姉妹がいる場合

両親や祖父母が全員亡くなっていれば、兄弟姉妹が相続人になります。

兄弟姉妹が複数いる場合は、原則として全員が相続手続きに関係します。

長年連絡を取っていない兄弟姉妹であっても、相続権がなくなるわけではありません。

兄弟姉妹が先に亡くなっている場合

相続人になるはずだった兄弟姉妹が本人より先に亡くなっている場合、その兄弟姉妹の子どもである甥や姪が、代わりに相続人になることがあります。

これを代襲相続といいます。

先に亡くなった兄弟姉妹が複数いて、それぞれに子どもがいれば、相続人となる甥や姪の人数が多くなることがあります。

本人が会ったことのない甥や姪が相続人になる可能性もあります。

配偶者がいる場合

配偶者は常に相続人になります。

子どもがいない場合は、配偶者と両親、または配偶者と兄弟姉妹が一緒に相続人になることがあります。

主な法定相続分は次のとおりです。

  • 配偶者と両親などが相続人
    配偶者が3分の2、両親などが全体で3分の1
  • 配偶者と兄弟姉妹が相続人
    配偶者が4分の3、兄弟姉妹が全体で4分の1

子どものいない夫婦では、配偶者がすべての財産を自動的に相続するとは限りません。

亡くなった人の兄弟姉妹も相続人となり、自宅の名義変更などに関係する可能性があります。

なお、離婚した元配偶者は相続人になりませんが、元配偶者との間に子どもがいれば、その子どもは相続人です。

婚姻届を提出していない内縁の相手や事実婚の相手は、原則として法定相続人にはなりません。

遺言書がないと自宅・預金・借金はどうなるのか

遺言書がない場合でも、財産の種類によって必要な手続きは異なります。

自宅や土地

自宅や土地は、本人が亡くなった後、相続人全員の相続財産となります。

誰が自宅を取得するか決まるまでは、相続人全員が関係する状態になります。

相続人の一人が勝手に自宅全体を売却したり、特定の人へ譲ったりすることはできません。

遺産分割協議で、主に次のいずれかを決めます。

  • 相続人の一人が自宅を取得する
  • 自宅を売却して代金を分ける
  • 複数の相続人で共有する
  • 自宅を取得した人がほかの相続人へ金銭を支払う

自宅を複数人の共有名義にすると、その後の売却や賃貸、大きな修繕などについて、共有者間の調整が必要になります。

相続人が遠方に住んでいたり、互いに疎遠だったりすると、自宅の管理や売却が進まず、空き家になる可能性があります。

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預金

銀行が本人の死亡を知ると、預金口座の取引が停止されることがあります。

相続人は、戸籍、本人確認書類、遺産分割協議書など、金融機関が指定する書類を提出して手続きを行います。

遺言書がなく、相続人が複数いる場合は、原則として相続人全員の関与が必要になることがあります。

親族と連絡が取れない場合や、遺産分割の内容で意見が合わない場合は、預金の解約や分配に時間がかかります。

一定の要件のもとで、遺産分割前に預金の一部を払い戻せる制度もありますが、預金全額を自由に引き出せるわけではありません。

自動車・株式・保険など

自動車や株式、投資信託なども相続財産になります。

誰が取得するかを決めたうえで、それぞれ名義変更、売却、解約などの手続きを行います。

生命保険金は、受取人が指定されている場合、通常の相続財産とは異なる扱いになることがあります。

保険証券や保険会社が分からなければ、残された人が契約の存在を見つけられない可能性があります。

借金やローン

相続の対象になるのは、預金や不動産などのプラスの財産だけではありません。

借金、未払金、保証債務なども相続の対象になる可能性があります。

相続人が借金を引き継ぎたくない場合は、相続放棄などを検討します。

相続放棄は、原則として、自分のために相続が始まったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所で手続きを行う必要があります。

預金だけ受け取り、不要な土地や借金だけを放棄することはできません。

財産を整理するときは、預金や自宅だけでなく、借金や継続中の支払いも一緒に確認する必要があります。

遺言書がないことで起こりやすい問題

遺言書がない相続では、本人の財産がなくなるわけではありません。

問題になるのは、本人の希望が分からず、相続人全員で分け方を決めなければならないことです。

世話になった人へ財産を渡せない

友人、知人、近所の方、内縁の相手などは、原則として法定相続人にはなりません。

本人が「長年世話になった人へ預金を渡したい」と考えていても、遺言書がなければ、その人が財産を受け取れるとは限りません。

通常のメモや終活ノートに名前を書いただけでは、法律上有効な遺言書として扱われない場合があります。

特定の甥や姪だけに自宅を残せない

甥や姪が複数いる場合、遺言書がなければ、そのうち一人だけが当然に自宅を取得するわけではありません。

相続人全員で話し合う必要があります。

また、残したい甥や姪の親である兄弟姉妹が存命であれば、その甥や姪は法定相続人になりません。

特定の甥や姪へ自宅を残したい場合は、遺言書による準備を検討します。

疎遠な親族も手続きに関係する

長年連絡を取っていない兄弟姉妹や、会ったことのない甥や姪であっても、法律上の相続人であれば手続きに関係します。

住所が分からない相続人を除外して、遺産分割協議を進めることはできません。

戸籍や戸籍の附票などから住所を確認し、連絡を取る必要があります。

自宅が共有名義になる

誰も自宅を取得しないまま、複数の相続人で共有することがあります。

その場では平等に見えても、将来売却したい人と残したい人に意見が分かれ、処分が難しくなる可能性があります。

共有者の一人が亡くなると、その持分がさらに次の相続人へ引き継がれ、関係者が増えることもあります。

相続人がいなくても世話になった人へ自動的に渡らない

法律上の相続人が一人もいない場合でも、財産が世話になった人へ自動的に渡るわけではありません。

家庭裁判所で選任された相続財産清算人によって、債務の支払いや財産の整理などが行われます。

特別縁故者として財産分与を申し立てられる場合もありますが、必ず認められるわけではありません。

一定の手続きを経ても残った財産は、最終的に国庫へ帰属します。

親族以外の人や団体へ確実に財産を残したい場合は、生前に遺言書を作成する方が本人の意思を明確にできます。

遺言書を書かないままでよいかを確認する順番

遺言書を書かないこと自体が、直ちに問題になるわけではありません。

法律上の相続人へ財産を引き継いでもらうことに問題がなく、財産の分け方も相続人へ任せたい場合は、遺言書を作らない選択も考えられます。

ただし、その判断をする前に、次の内容を確認します。

1.自分の相続人を確認する

両親、祖父母、兄弟姉妹、甥姪を書き出します。

異父・異母の兄弟姉妹や、先に亡くなった兄弟姉妹の子どもがいないかも確認します。

家族関係が分からない場合は、戸籍をたどって確認します。

2.財産と借金を一覧にする

自宅、土地、預金、保険、車、株式などを書き出します。

住宅ローン、カードローン、未払金なども一緒に確認します。

正確な金額よりも、財産や契約の存在と、関係書類の保管場所を分かるようにすることが先です。

3.自宅や土地の名義を確認する

自分が住んでいる自宅でも、亡くなった親の名義が残っていることがあります。

土地と建物の名義が違う場合や、兄弟姉妹との共有名義になっている場合もあります。

現在の名義が整理されていなければ、自分の死後、相続人が過去の相続手続きから始めなければならない可能性があります。

4.財産を渡したい人を確認する

法律上の相続人と、実際に財産を渡したい人が同じかを確認します。

次の希望がある場合は、遺言書を検討する必要性が高くなります。

  • 特定の兄弟姉妹や甥姪へ自宅を残したい
  • 親族以外の人へ財産を残したい
  • 兄弟姉妹には相続させたくない
  • 自宅を共有名義にしたくない
  • 自宅を売却して代金を渡してほしい
  • 財産を団体などへ寄付したい

兄弟姉妹や甥姪には、原則として遺留分がありません。

そのため、兄弟姉妹や甥姪だけが相続人になる場合は、遺言書によって別の人へ財産を残せる可能性があります。

5.手続きを進める人を決める

遺言書を作成する場合は、遺言内容を実現する遺言執行者を指定する方法があります。

親族以外への遺贈、自宅の売却、複数の財産の引渡しがある場合は、誰が手続きを進めるかも重要です。

ただし、遺言執行者を指定しても、葬儀、納骨、公共料金の解約、家財整理などをすべて任せられるとは限りません。

これらの死後の手続きは、死後事務委任契約などを別に検討します。

まとめ

遺言書を書かずに亡くなった場合、財産は法律上の相続人が引き継ぎます。

子どもがいない方の場合は、配偶者、両親や祖父母、兄弟姉妹、甥や姪が相続人になる可能性があります。

相続人が複数いる場合は、相続人全員で自宅や預金の分け方を話し合います。

遺言書がないことで特に問題になりやすいのは、次のようなケースです。

  • 親族以外の世話になった人へ財産を残したい
  • 特定の甥や姪へ自宅を残したい
  • 疎遠な兄弟姉妹や甥姪が相続人になる
  • 自宅を複数人の共有名義にしたくない
  • 自宅を売却して代金を分けてほしい
  • 財産を寄付したい

法律上の相続人へ財産を渡し、分け方も相続人へ任せるのであれば、遺言書を作らない選択もあります。

一方、自分の希望と法律上の相続が違う場合は、元気なうちに遺言書を検討することが大切です。

まずは、自分の相続人、所有している財産、財産を渡したい相手の3点を書き出し、遺言書がない場合でも希望どおりになるか確認してみましょう。

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戸籍による相続人の確認、自宅・土地・預金・借金などの整理、誰に何を残すかの確認、遺言書原案の作成、公正証書遺言の作成準備などを行います。

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