おひとりさまの自宅は死後どうなる?空き家になる前に考えたいこと

この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。

「自分が亡くなった後、この家はどうなるのだろう」
「誰も住まなければ、空き家になってしまうのではないか」

おひとりさまの自宅は、亡くなった後に自動的に処分されるわけではありません。相続する人、自宅を管理する人、家財を片付ける人などを確認しないままにしておくと、親族に対応を任せることになります。

この記事では、おひとりさまの自宅が死後どうなるのか、空き家になる前に何を決めておけばよいのかを分かりやすく解説します。

結論|自宅は相続人に引き継がれ、誰も住まなければ空き家になる

人が亡くなると、その人が所有していた自宅や土地は相続財産になります。相続は死亡によって開始するため、遺言書がない場合は、原則として法律で定められた相続人が自宅を引き継ぎます。

相続人が複数いる場合、遺産分割が終わるまで、自宅は相続人全員が関係する財産になります。

ただし、自宅を相続する人が決まったからといって、すぐに誰かが住むとは限りません。

相続人が遠方に住んでいる、すでに自宅を所有している、家が古くて利用しにくいといった事情があると、誰も住まないまま空き家になることがあります。

おひとりさまの自宅について大切なのは、「誰が相続するか」だけでなく、「亡くなった後、誰が管理し、最終的にどうするか」まで考えることです。

おひとりさまの自宅は誰が相続する?

遺言書がない場合、自宅は法定相続人が相続します。

相続人になる可能性がある人は、家族構成によって異なります。

  • 配偶者がいる場合は、配偶者
  • 子どもがいる場合は、子ども
  • 子どもがいない場合は、父母や祖父母
  • 父母や祖父母も亡くなっている場合は、兄弟姉妹
  • 兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は、その子である甥や姪

独身で子どもがいない方の場合、兄弟姉妹や甥姪が相続人になることがあります。

長年連絡を取っていない親族や、ほとんど会ったことのない甥姪が相続人になる可能性もあります。その場合でも、自宅の名義変更、管理、売却、家財整理などへの対応が必要になることがあります。

遺言書があれば、自宅を相続させる人や遺贈する相手を指定できます。ただし、遺言書の内容や家族関係によっては、遺留分などへの配慮も必要です。

相続人が本当にいない場合には、家庭裁判所で相続財産清算人を選任し、債務の清算などを行った後、残った財産が国庫に帰属する手続きへ進むことがあります。

「身寄りが少ないから、死後は国が自宅を片付けてくれる」と簡単に考えることはできません。

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自宅が空き家になると何が問題になる?

自宅に誰も住まなくなっても、家の管理が不要になるわけではありません。

建物の管理

人が住まない家は換気や清掃が行われなくなり、湿気、雨漏り、害虫、設備の故障などが進みやすくなります。

屋根や外壁の一部が落下したり、庭木や雑草が隣地へ伸びたりすれば、近隣との問題につながることもあります。

固定資産税や管理費

自宅を利用していなくても、固定資産税などの負担はなくなりません。

マンションの場合は、管理費や修繕積立金も継続します。相続や売却の手続きが進まなければ、支払いだけが続くことがあります。

家財や貴重品の整理

自宅の中には、家具、衣類、通帳、印鑑、権利証、契約書、写真などが残ります。

相続人は、必要な書類や貴重品を確認しながら、残すものと処分するものを分けなければなりません。家財が多いほど、時間と費用がかかります。

電気・ガス・水道などの解約

電気、ガス、水道、電話、インターネット、新聞、サブスクリプションなども、自動的にすべて解約されるわけではありません。

契約先が分からないと、相続人や死後の手続きを行う人が、郵便物や通帳の履歴から一つずつ確認することになります。

売却や解体がすぐにできない

自宅を売却するには、相続人の確定や相続登記などが必要です。

相続人が複数いる場合、売却するか、誰かが取得するか、解体するかについて意見がまとまらないこともあります。

その間も建物の老朽化や維持費の負担は続きます。

空き家になる前に決めておきたいこと

自宅の終活では、いきなり売却したり遺言書を書いたりする必要はありません。まずは現在の状態を整理し、死後の方向性を決めることが大切です。

1.自宅と土地の名義を確認する

自宅に住んでいても、土地や建物が自分だけの名義とは限りません。

亡くなった親の名義が残っている、土地と建物の名義が違う、兄弟姉妹との共有になっている、古い建物が登記されていないといったケースもあります。

固定資産税の通知書、登記事項証明書、権利証や登記識別情報などで確認しておきましょう。

2.自分の相続人を確認する

「兄弟がいるから大丈夫」と思っていても、その兄弟が先に亡くなれば、甥姪が相続人になる場合があります。

異父兄弟や異母兄弟など、普段は意識していない親族が相続人になることもあります。

戸籍を確認し、自分が亡くなった場合に誰が相続人になる可能性があるのかを整理します。

3.自宅をどうしてほしいか決める

主な選択肢は、次のとおりです。

  • 特定の親族や知人に残す
  • 相続人に売却してもらう
  • 生前に売却する
  • 施設へ入所した段階で処分を検討する
  • 貸すことを検討する
  • 建物を解体して土地を処分する

実際に売却できるか、貸せるか、解体費用がどの程度かかるかは、自宅の状態や地域によって異なります。

そのため、希望だけでなく、不動産会社などに相談して現実的な選択肢を確認することも大切です。

4.死後の管理を頼む人を考える

自宅を最終的に相続する人と、亡くなった直後の手続きを行う人は、必ずしも同じである必要はありません。

死後には、次のような対応が発生します。

  • 自宅の鍵の確保
  • 郵便物の確認
  • 電気・ガス・水道などの解約
  • 家財や貴重品の確認
  • ペットの引き取り
  • 庭木や建物の一時的な管理
  • 相続人や専門家への連絡

親族に頼む場合は、事前に自分の希望を伝え、引き受けてもらえるか確認しておく必要があります。

親族に頼めない場合は、死後事務委任契約などを利用して、亡くなった後の事務を第三者へ依頼する方法もあります。

5.手続きに必要な費用を準備する

家財整理、清掃、建物管理、解体、専門家への依頼などには費用がかかります。

遺言書や契約書だけを作っても、実際に手続きを行うための資金がなければ、予定どおり進められない可能性があります。

預金、保険、預託金などを含め、死後の手続きに使う費用をどのように確保するかも考えておきましょう。

遺言書だけを作れば自宅の問題は解決する?

遺言書は、自宅を誰に引き継がせるかを決めるために重要です。

しかし、遺言書だけで、自宅に関するすべての手続きが完了するわけではありません。

例えば、遺言書に「自宅を甥に相続させる」と書いても、次のことが自動的に行われるわけではありません。

  • 自宅の鍵を甥へ渡す
  • 電気やガスを解約する
  • 家財を片付ける
  • 郵便物を整理する
  • ペットを引き取る
  • 相続登記や売却の手続きを進める

遺言書を作成する場合は、遺言内容を実現する遺言執行者を指定することも検討します。

一方、死後事務委任契約は、葬儀、納骨、公共料金の解約、家財整理の手配など、亡くなった後の実務を依頼するための契約です。

ただし、死後事務委任契約を結んだだけで、自宅の所有者や相続先を自由に決められるわけではありません。

自宅の相続先を決める遺言書と、死後の実務を頼む死後事務委任契約は役割が異なります。必要に応じて、両方を組み合わせて考えることが大切です。

よくある失敗は「希望だけをメモして終わること」

エンディングノートなどに「自宅は売ってほしい」と書いておくことは、自分の希望を伝えるうえで役立ちます。

ただし、エンディングノートには、通常、遺言書と同じ法的効力はありません。

次のような状態では、希望どおりに進まない可能性があります。

  • 自宅を誰が相続するか決めていない
  • 相続人が複数いる
  • 売却を担当する人が決まっていない
  • 自宅が親や親族との共有名義になっている
  • 依頼する相手に何も伝えていない
  • 家財整理や解体の費用を準備していない
  • 権利証や契約書の保管場所が分からない

希望をメモするだけでなく、その希望を実行できる人・書類・費用まで整理しておくことが重要です。

まとめ|自宅の終活は「誰に残すか」と「誰が動くか」を分けて考える

おひとりさまの自宅は、亡くなった後に相続財産となり、原則として相続人に引き継がれます。

しかし、相続人が自宅に住むとは限りません。誰も住まず、管理や売却の手続きが進まなければ、空き家として残る可能性があります。

自宅の終活では、次の点を整理しておきましょう。

  • 自宅と土地の名義
  • 自分の相続人
  • 自宅を残す・売る・貸すなどの希望
  • 自宅を相続させる人
  • 亡くなった直後の管理を行う人
  • 家財整理や各種解約を行う人
  • 遺言書や死後事務委任契約の必要性
  • 手続きに必要な費用

すべてを一度に決める必要はありません。

まずは、自宅の名義と相続人を確認し、「この家を最終的にどうしたいか」をメモするところから始めることが、不安を安心に変える第一歩です。

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