遺言執行者は誰に頼む?身寄りが少ない人が決めておきたいこと

この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。

遺言書を作成するときに迷いやすいのが、「遺言書の内容を、亡くなった後に誰が実行するのか」という点です。

兄弟姉妹や甥・姪と疎遠になっている方、親族以外の人へ財産を残したい方は、相続人へ手続きを任せることに不安を感じる場合があります。

このようなときに、遺言書の内容を実現するための手続きを行うのが遺言執行者です。

遺言執行者は、単に信頼できる人ではなく、相続人への連絡、預金や不動産の手続き、財産の引渡しを実際に進められる人を選ぶことが重要です。

この記事では、身寄りが少ない方が遺言執行者を誰に頼むか、候補者ごとの違いと、決める前に確認したいことを解説します。

遺言執行者は遺言書の内容を実現する人です

遺言執行者とは、遺言書に書かれた内容を実現するために、必要な相続手続きを行う人です。

遺言書を作成しても、自宅の名義変更や預金の払戻しが自動的に行われるわけではありません。

遺言内容によって異なりますが、遺言執行者には次のような対応が必要になります。

  • 法律上の相続人を確認する
  • 相続人へ遺言書の内容を知らせる
  • 相続財産を調査する
  • 財産目録を作成する
  • 預金の解約や払戻しを進める
  • 不動産の名義変更に必要な手配をする
  • 受遺者へ財産を引き渡す
  • 必要に応じて司法書士や税理士などへ依頼する

遺言執行者を指定していないからといって、遺言書が直ちに無効になるわけではありません。

遺言内容によっては、相続人や財産を受け取る人が手続きを進めることもできます。

しかし、次のような場合は、遺言執行者を決めておく必要性が高くなります。

  • 親族以外の人へ財産を遺贈する
  • 特定の甥や姪へ自宅を残す
  • 兄弟姉妹には相続させたくない
  • 自宅を売却して代金を渡してほしい
  • 財産を複数の人や団体へ分けて渡す
  • 相続人同士が疎遠である
  • 相続人と財産を受け取る人に接点がない
  • 預金、不動産、株式など複数の財産がある

本人の希望を遺言書へ書くだけでなく、その希望を誰が手続きにつなげるかまで決めることで、遺言書を実行しやすくなります。

遺言執行者は親族・友人・専門家から選べます

遺言執行者は、法律上なれない人を除き、親族、友人、財産を受け取る人、専門家などから選べます。

一人だけでなく、複数の遺言執行者を指定することも可能です。

ただし、法律上なれることと、実際に任せるのに適していることは別です。

候補者ごとの特徴を確認します。

候補者向いているケース主な注意点
兄弟姉妹・甥姪などの親族関係が良好で、財産や親族関係を把握している高齢、遠方、相続人同士の対立に注意
友人・知人本人の希望を理解し、長く信頼関係がある相続手続きの経験や時間的負担を確認
財産を受け取る人遺言内容が比較的単純で、自分の手続きを進めるほかの相続人から中立性を疑われる場合がある
行政書士・司法書士・弁護士など親族以外への遺贈、不動産、疎遠な相続人がいる報酬、対応範囲、死亡・廃業時の体制を確認
信託銀行など財産額が大きく、金融資産や不動産が複数ある受任条件、最低財産額、手数料などを確認

親族へ頼む場合

親族は、本人の家族関係や財産を把握していることがあり、相談しやすい候補です。

ただし、兄弟姉妹や甥・姪が本人と同年代または高齢である場合は、遺言者より先に亡くなる可能性や、遺言執行時に体調を崩している可能性があります。

また、遺言内容によって特定の親族だけが多く財産を受け取る場合、その人を遺言執行者にすると、ほかの相続人から不公平だと思われることがあります。

親族へ頼む場合は、次の内容を確認します。

  • 相続手続きを進める時間があるか
  • 相続人全員へ連絡できるか
  • 預金や不動産の手続きに対応できるか
  • 遠方の役所や金融機関とのやり取りが可能か
  • ほかの相続人との関係に問題がないか

友人や知人へ頼む場合

法律上の親族でなくても、遺言執行者に指定できます。

親族よりも本人の希望を理解している友人や、長年生活を支えてくれた人へ頼むことも考えられます。

ただし、友人にとって相続手続きは、想像以上に大きな負担になる可能性があります。

本人の死後、会ったことのない相続人へ連絡し、戸籍や財産を確認し、金融機関や専門家とやり取りしなければならない場合もあります。

「信頼しているから」という理由だけで決めず、具体的な仕事内容を説明して、引き受けられるか確認します。

財産を受け取る人へ頼む場合

自宅や預金を受け取る人を、遺言執行者に指定することも考えられます。

遺言内容が単純で、相続人との関係も良好であれば、手続きをまとめて進めやすい場合があります。

一方、兄弟姉妹には相続させず、友人へ全財産を遺贈するようなケースでは、財産を受け取る友人が相続人へ連絡することになります。

法律上は可能でも、心理的な負担や相続人との対立が予想される場合は、第三者である専門家を選ぶ方法も検討します。

身寄りが少ない人は5つの基準で選ぶ

遺言執行者を選ぶときは、肩書きや親しさだけでなく、次の5つを確認します。

1.本人より先に亡くなる可能性が低いか

遺言執行者として指定した人が、遺言者より先に亡くなることがあります。

特に同年代の兄弟姉妹や友人を指定する場合は、年齢や健康状態も考えます。

第1候補が遺言執行者になれない場合に備え、予備の候補者を遺言書へ記載する方法もあります。

専門家へ頼む場合も、個人だけを指定するのか、事務所や法人として継続的な対応体制があるのかを確認します。

2.相続人と連絡を取れるか

遺言執行者は、本人の希望を知っているだけでは足りません。

相続人を確認し、必要な連絡や書類のやり取りを進める必要があります。

次のような相続関係では、負担が大きくなる可能性があります。

  • 兄弟姉妹が複数いる
  • 先に亡くなった兄弟姉妹がおり、甥姪が相続人になる
  • 異父・異母の兄弟姉妹がいる
  • 相続人の住所が分からない
  • 海外や遠方に相続人がいる
  • 長年親族と連絡を取っていない

親族関係が複雑な場合は、戸籍収集や相続人への連絡を含めて対応できる人を選びます。

3.預金や不動産の手続きを進められるか

預金だけの相続と、自宅や土地がある相続では、必要な対応が異なります。

自宅や土地がある場合は、登記を担当する司法書士、不動産を売却する場合は不動産会社、税金が生じる場合は税理士との連携が必要になることがあります。

候補者本人がすべての専門知識を持っている必要はありません。

ただし、必要な専門家へ依頼し、費用や進行状況を管理できることが必要です。

4.中立的に手続きを進められるか

遺言書の内容によっては、相続人が不満を持つ場合があります。

たとえば、兄弟姉妹には財産を残さず、友人や団体へ全財産を遺贈するケースです。

このような場合に、財産を受け取る本人が遺言執行者になると、相続人との連絡で精神的な負担を感じることがあります。

対立が予想される場合や、遺言内容が複雑な場合は、中立的な立場で説明と手続きを進められる専門家を検討します。

5.報酬と必要経費を準備できるか

親族や友人へ依頼する場合でも、交通費、郵送費、戸籍取得費、登記費用などの実費がかかります。

長期間の手続きになる場合は、遺言執行者へ報酬を支払うことも考えます。

専門家へ依頼する場合は、事前に次の内容を確認します。

  • 遺言執行者の報酬
  • 財産額に応じて報酬が変わるか
  • 不動産売却や相続税申告は別料金か
  • 戸籍取得や郵送などの実費
  • 途中で追加業務が必要になった場合の費用
  • 報酬をどの財産から支払うか

遺言書で遺言執行者の報酬を定める方法もあります。

報酬を定めていない場合でも、状況に応じて報酬が必要になることがあるため、無償で当然に対応してもらえると考えないことが大切です。

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遺言執行者を決める前に本人へ説明しておく

遺言書へ名前を書けば、その人が必ず遺言執行者になってくれるとは限りません。

指定された人が、就任を断ることもあります。

本人が亡くなった後に初めて遺言執行者へ指定されていたと知り、仕事量や相続関係を見て辞退する可能性もあります。

そのため、生前に候補者へ次の内容を説明します。

  • どのような財産があるか
  • 法律上の相続人は誰か
  • 誰に何を残す遺言なのか
  • 自宅や土地があるか
  • 自宅を残すのか売却するのか
  • 親族以外への遺贈があるか
  • どの程度の手続きが必要になりそうか
  • 専門家へ依頼できる費用を準備しているか
  • 遺言書や財産資料をどこに保管するか

候補者の了承を得たら、氏名、住所、生年月日など、遺言書で本人を特定するための情報を確認します。

また、候補者が転居した場合や、関係が変わった場合に備え、定期的に連絡先を見直します。

遺言執行者を決めることは、名前を借りることではありません。実際の仕事内容を説明し、引き受ける意思を確認することが必要です。

よくある失敗は「信頼できる人」だけで決めること

遺言執行者を決める際には、次のような準備不足が起こりやすくなります。

高齢の兄弟姉妹を指定したままにしている

遺言書を作った時点では元気でも、実際に相続が始まるのは10年、20年後かもしれません。

遺言者より先に亡くなる場合や、病気や介護で対応できなくなる場合があります。

予備の候補者を決めるか、定期的に遺言書を見直します。

友人へ仕事内容を説明していない

友人は、葬儀や荷物の片付けだけを頼まれると思っているかもしれません。

実際には、相続人への連絡、戸籍や財産の確認、金融機関とのやり取りが必要になることがあります。

仕事内容と費用負担を説明せずに指定すると、就任を断られる可能性があります。

財産を受け取る人へすべて任せている

受遺者が遺言執行者になること自体は可能ですが、相続人との対立が予想される場合は大きな負担になります。

本人の死後、受遺者が一人で疎遠な兄弟姉妹へ説明する状況にならないよう、中立的な専門家を検討します。

報酬や実費を決めていない

「友人だから無償でやってくれる」と考えると、長期間の手続きによって相手へ負担をかけます。

交通費や郵送費だけでなく、仕事を休んで手続きをする時間も必要です。

無償で依頼する場合でも、実費をどの財産から支払うかは決めておきます。

遺言執行者に死後の手続きをすべて頼めると思っている

遺言執行者の中心的な役割は、遺言書に書かれた財産承継を実現することです。

次のような手続きまで、当然に行ってくれるとは限りません。

  • 葬儀や火葬
  • 納骨やお墓
  • 電気・ガス・水道の解約
  • スマートフォンの解約
  • 自宅の鍵の管理
  • 家財や遺品の片付け
  • ペットの引渡し

これらを依頼したい場合は、遺言執行者とは別に、死後事務を行う人や実行先を決めます。

同じ人へ両方を依頼する場合でも、遺言執行と死後事務の内容、費用、預ける財産を分けて契約する必要があります。

遺言書を作った後に候補者を見直していない

遺言執行者が亡くなった、連絡が取れなくなった、専門家が廃業したといった場合は、遺言書の見直しが必要です。

指定した遺言執行者が就任できない場合、利害関係人が家庭裁判所へ選任を申し立てる方法もあります。

ただし、本人が希望する人を確実に選べるとは限りません。

元気なうちに候補者と連絡を取り、変更があれば遺言書を作り直します。

まとめ

遺言執行者は、遺言書の内容を実現するために、相続人への連絡、財産調査、預金や不動産の手続き、財産の引渡しなどを進める人です。

親族、友人、財産を受け取る人、専門家などから選べますが、単に信頼できるという理由だけで決めるのは十分ではありません。

身寄りが少ない方は、次の点を確認して選びます。

  • 本人より先に亡くなる可能性が低いか
  • 相続人全員へ連絡できるか
  • 預金や不動産の手続きを進められるか
  • 中立的な立場で対応できるか
  • 必要な専門家と連携できるか
  • 報酬や実費を準備できるか
  • 本人が仕事内容を理解し、引き受ける意思があるか
  • 候補者が対応できない場合の予備を決めているか

特に、親族以外の人へ財産を残す場合、兄弟姉妹には相続させたくない場合、自宅の売却を希望する場合は、専門家を含めて遺言執行者を検討する必要性が高くなります。

遺言書へ名前を書くだけではなく、財産、相続人、具体的な仕事内容、費用まで説明し、実際に手続きを進められる体制を作っておきましょう。

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戸籍による相続人の確認、自宅・土地・預金などの財産整理、誰に何を残すかの確認、遺言執行者の候補整理、遺言書原案の作成、公正証書遺言の作成準備などを行います。

不動産の登記、売却、税金、実際の遺言執行や死後事務などが必要な場合は、内容に応じて担当する専門家や事業者と連携して進めます。

「遺言執行者を頼める親族がいない」「友人へ頼んでよいか分からない」という段階でもご相談いただけます。

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