
この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。
「親の車を相続したが、いつまでに名義変更すればいい?」
「相続人が何人かいる場合は遺産分割協議書が必要?」
「古い車なので、もっと簡単な手続きはない?」
亡くなった方が普通車の所有者だった場合、相続によって新しい所有者へ変更するには「相続による移転登録」を行います。
道路運送車両法では、所有者の変更があった場合、新所有者はその事由があった日から15日以内に移転登録を申請することとされています。
ただし、相続では、
- 誰が相続人なのか
- 遺言書があるか
- 誰が車を取得するのか
- 相続人が1人か複数か
- 車の価格が100万円以下か
- そのまま使用するか、売却・廃車するか
によって必要書類が変わります。
特に相続人が複数いる場合は、遺産分割協議書が必要になるケースがあります。
一方、車の価格が100万円以下で一定の条件を満たせば、「遺産分割協議成立申立書」を利用できる場合もあります。
この記事では、相続した普通車の名義変更はいつまでに必要なのか、遺産分割協議書が必要になるケース、100万円以下の車の簡略手続きについて整理します。
相続した車の名義変更は15日以内が原則
道路運送車両法第13条では、
所有者の変更があったときは、新所有者はその事由があった日から15日以内に移転登録を申請しなければならない
とされています。
相続によって車の所有者が変わる場合も、普通車では移転登録の対象になります。
そのため、相続手続きが終わった後も何年も亡くなった方の名義のままにしておくことは避けた方がよいでしょう。
ただし、相続では相続人の確定や遺産分割協議に時間がかかることがあります。
まずは、
誰が相続人か
↓
誰が車を取得するか
↓
必要書類を準備
↓
移転登録
という順番で速やかに進めます。
15日を過ぎたら名義変更できなくなるわけではない
15日を過ぎたからといって、相続による名義変更ができなくなるわけではありません。
期限を過ぎている場合でも、現在の相続関係と車検証を確認し、必要な移転登録を行います。
むしろ放置すると、
- 次に車を売却するとき
- 廃車するとき
- ナンバーを変更するとき
- 相続人がさらに亡くなったとき
などに、相続関係が複雑になる可能性があります。
特に、相続した人が名義変更しないまま亡くなると、いわゆる二次相続となり、確認しなければならない相続人が増えることがあります。
相続した車を今後使う・売る予定があるなら、早めに名義を整理する方が手続きは進めやすくなります。
まず車検証の所有者を確認する
相続手続きを始める前に、車検証上の所有者を確認します。
例えば、
所有者
→ 亡くなった父
使用者
→ 亡くなった父
であれば、父の相続財産として相続による移転登録を確認します。
一方、
所有者
→ 信販会社・販売店
使用者
→ 亡くなった父
となっている場合は、父自身が登録上の所有者ではありません。
この場合は、通常の相続移転登録だけではなく、
- ローン残債
- 所有権留保
- 信販会社・販売店の手続き
を先に確認する必要があります。
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相続人が複数いる場合は誰が車を取得するか決める
例えば父が亡くなり、
- 母
- 長男
- 長女
の3人が相続人だったとします。
この場合、
「長男が普段乗っているから、そのまま長男名義にする」
だけではなく、相続関係を確認したうえで誰が車を取得するか決めます。
遺言書がない場合は、相続人間の遺産分割協議で車を取得する人を決めることがあります。
例えば、
相続人
母・長男・長女
↓
遺産分割協議
↓
長男が車を取得
という場合です。
このように、複数の相続人のうち1人が車を取得するケースでは、遺産分割協議書が必要になることがあります。
遺産分割協議書が必要になる代表的なケース
国土交通省の運輸局では、相続人のうち1人が普通車を相続する場合について、遺産分割協議書を使用する手続きを案内しています。
遺産分割協議書を使用する場合は、原則として相続人全員が実印を押印します。
例えば、
父が死亡
↓
相続人は母・子2人
↓
子1人が車を相続
というケースです。
この場合は、
「この車は長男が取得する」
という相続人全員の合意を確認するため、遺産分割協議書を使用します。
国土交通省 関東運輸局公式:相続人のうち1人が車を相続する場合の必要書類を確認する
遺産分割協議書が必ず必要とは限らない
相続による名義変更だからといって、必ず遺産分割協議書を作るわけではありません。
国土交通省の案内では、相続による移転登録について、
- 遺産分割協議書
- 遺産分割協議成立申立書
- 遺言書
- 遺言書情報証明書
- 遺産分割に関する調停調書
- 遺産分割に関する審判書
- 判決謄本
など、相続の状況に応じた書類が認められています。
つまり、
遺言書によって車を取得する人が決まっている
場合などは、通常の遺産分割協議書とは別の書類を使用することがあります。
まず、
遺言書があるか
↓
なければ遺産分割協議が必要か
という順番で確認します。
車の価格が100万円以下なら「遺産分割協議成立申立書」を使える場合がある
普通車の相続には、車の価格が低い場合の簡略的な取扱いがあります。
国土交通省の運輸局では、
相続する自動車の価格が100万円以下であることを確認できる査定証書
または
査定価格を確認できる資料
を添付した場合に限り、「遺産分割協議成立申立書」を使用できると案内しています。
この場合、相続する人が相続人であることを確認できれば、他の相続人について通常の遺産分割協議書と同じ確認をしない取扱いがあります。
つまり、
車が古い
↓
おそらく100万円以下
だけでは利用できません。
100万円以下であることを確認できる査定資料等が必要です。
100万円以下でも相続人本人の判断だけでは使えない
例えば、
「10年以上前の軽自動車だから安い」
「古い普通車だから価値はない」
という感覚だけでは、100万円以下の特例を使う根拠にはなりません。
国土交通省の案内では、
- 査定証書
- 査定価格を確認できる資料
などを添付することが条件です。
そのため、
車両価格
↓
確認資料
↓
100万円以下
↓
申立書を利用できるか確認
という順番で判断します。
遺産分割協議書を使う場合の主な必要書類
相続人のうち1人が普通車を取得する一般的なケースでは、主に次の書類を確認します。
| 書類 | 主な役割 |
|---|---|
| 自動車検査証 | 現在の所有者等を確認 |
| 戸籍謄本等 | 被相続人の死亡・相続人を確認 |
| 法定相続情報一覧図 | 戸籍類に代えて利用できる場合あり |
| 遺産分割協議書 | 車を取得する相続人を決めたことを確認 |
| 新所有者の印鑑証明書 | 原則、発行後3か月以内 |
| 委任状 | 代理申請の場合 |
| 車庫証明 | 使用の本拠が変わる場合等 |
| 申請書 | 移転登録に使用 |
必要書類は、
- 遺言書の有無
- 相続人の人数
- 車の価格
- 新しい所有者・使用者
- 使用の本拠
によって変わります。
国土交通省 北陸信越運輸局公式:自動車相続の必要書類を確認する
戸籍の代わりに法定相続情報一覧図を使える場合がある
相続手続きでは、多数の戸籍を取得することがあります。
自動車の相続登録でも、相続人を確認するため戸籍謄本等を使用します。
一方、国土交通省の相続手続案内では、「法定相続情報一覧図」を利用できる場合があります。
不動産・預金など他の相続手続きでも法定相続情報一覧図を取得している場合は、自動車相続にも利用できるか確認すると書類整理がしやすくなります。
遺言書があるなら遺産分割協議を始める前に確認する
亡くなった方が遺言書を残している場合は、その内容を先に確認します。
例えば、
「自動車は長男に相続させる」
と遺言されている場合です。
この場合、遺言書を根拠に相続登録を進められることがあります。
公正証書遺言以外では、遺言書の種類によって家庭裁判所の検認が関係する場合もあるため、使用できる状態かを確認します。
遺言書があるのに先に通常の遺産分割協議書を作るのではなく、まず遺言内容を確認します。
車を相続後すぐ売却する場合も相続書類が必要
親の車を引き継いでも、
「自分では乗らないのでそのまま売りたい」
という場合があります。
国土交通省の運輸局では、
相続
+
第三者への名義変更
を同時に行うケースについても手続きを案内しています。
つまり、
亡くなった親
↓
相続人
↓
中古車店・買主
という流れを整理して登録できます。
ただし、死亡した親本人から通常の譲渡を受ける形にはできません。
相続人・相続関係を証明する書類が必要です。
国土交通省 関東運輸局公式:相続と第三者への名義変更を確認する
車を廃車するだけなら相続移転登録を省略できる場合がある
相続した車を今後使用せず、解体して永久抹消する場合には、相続による移転登録をしないで手続きできる場合があります。
国土交通省の自動車登録業務等実施要領では、所有者が死亡している車を永久抹消する場合について、相続人のうち1人による申請を受理し、その際は相続による移転登録を行わない取扱いが示されています。
ただし、
被相続人が死亡していること
と
申請者が相続人であること
を戸籍等で確認する必要があります。
「廃車だから何の相続資料もいらない」という意味ではありません。
軽自動車は普通車と相続書類の扱いが違う
軽自動車については、軽自動車検査協会が所有者死亡時の名義変更を案内しています。
必要になるのは、
亡くなった所有者の死亡
と
新しい所有者が相続人であること
を確認できる戸籍謄本等または法定相続情報一覧図です。
普通車のように、
相続人全員が実印を押した遺産分割協議書
を基本として扱う仕組みとは異なります。
そのため、普通車の相続必要書類をそのまま軽自動車へ当てはめないようにします。
軽自動車検査協会公式:所有者が死亡した軽自動車の名義変更を確認する
相続した普通車の名義変更はこの順番で確認する
相続した車の登録は、次の順番で整理すると分かりやすくなります。
- 車検証上の所有者を確認する
- ローン会社・販売店等の所有権留保がないか確認する
- 相続人を確認する
- 遺言書の有無を確認する
- 車を誰が取得するか決める
- 遺産分割協議書が必要か確認する
- 車両価格が100万円以下なら申立書を利用できるか確認する
- 戸籍または法定相続情報一覧図を準備する
- 新所有者の印鑑証明書等を準備する
- 新しい使用の本拠・保管場所を確認する
- 必要なら車庫証明を取得する
- ナンバー変更の有無を確認する
- 相続による移転登録を行う
- 売却・廃車する場合はその後の手続きを行う
15日という期限だけに目を向けるのではなく、
相続人
↓
取得者
↓
必要な相続書類
↓
移転登録
を整理することが重要です。
期限を過ぎていても、そのまま放置しない
親が亡くなってから何か月・何年も車の名義を変えていないケースもあります。
その場合でも、
「今さら変更できない」
ということではありません。
まず現在の車検証と相続関係を確認し、必要な登録手続きを整理します。
時間が経つほど、
- 相続人の住所が変わる
- 相続人自身が亡くなる
- 車の売却・廃車が必要になる
- 戸籍等の確認範囲が増える
可能性があります。
今後使用する車であれば、相続関係が比較的単純なうちに名義を整理しておく方がよいでしょう。
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いしかわ行政書士事務所では、碧南市・西尾市・高浜市・安城市・刈谷市・岡崎市を中心に、自動車の相続・移転登録に関するご相談を受けています。
「親の車を相続したが名義変更していない」
「相続人が複数いるので遺産分割協議書が必要か確認したい」
「車の価格が100万円以下なので申立書を使えるか確認したい」
「相続した車をすぐ売却したい」
「何年も亡くなった親の名義のままになっている」
という場合は、現在の車検証、相続人、遺言書の有無、車両価格、今後の使用・売却予定などを確認しながら必要な手続きを整理します。
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出典
e-Gov法令検索公式:道路運送車両法、国土交通省 関東運輸局公式:単独相続(相続人のうち1人が相続する場合)、国土交通省公式:遺産分割協議成立申立書、国土交通省 北陸信越運輸局公式:相続に関する必要書類、国土交通省 関東運輸局公式:相続と第三者への名義変更、国土交通省公式:抹消登録、軽自動車検査協会公式:名義変更(売買・譲渡・その他)
この記事は、2026年8月時点の法令・公的機関の情報をもとに作成しています。
