
この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。
「軽バンで配送の仕事を始めたい」
「個人で軽貨物ドライバーとして開業したい」
「黒ナンバーはどこで取ればいい?」
軽自動車を使って、荷主から運賃を受け取り荷物を運ぶ事業を始める場合は、貨物軽自動車運送事業の手続きを確認します。
一般に「軽貨物」「黒ナンバー」と呼ばれる事業です。
軽貨物は、一般貨物自動車運送事業のような経営許可ではなく、営業所の所在地を管轄する運輸支局へあらかじめ経営届出を行う仕組みです。
ただし、
「軽自動車を買って黒いナンバーへ交換すれば開業できる」
というわけではありません。
まず、
- 営業所・車庫などを決める
- 使用する軽自動車を準備する
- 運賃・料金などを決める
- 運輸支局へ貨物軽自動車運送事業の経営届出をする
- 事業用自動車等連絡書の交付を受ける
- 軽自動車検査協会で事業用へ変更する
- 黒ナンバーを受け取る
- 開業後の安全管理体制を整える
という順番で考えると分かりやすくなります。
軽貨物運送事業とは?
貨物軽自動車運送事業は、軽自動車などを使用して、荷主の荷物を有償で運送する事業です。
例えば、
- 宅配
- 企業間配送
- ネット通販商品の配送
- 食品配送
- スポット配送
などが考えられます。
一般に、事業用の軽自動車には黒地に黄色文字のナンバープレートが取り付けられるため「黒ナンバー」と呼ばれています。
愛知県で初めて貨物軽自動車運送事業を始める場合は、貨物自動車運送事業法36条に基づき、あらかじめ愛知運輸支局へ経営届出を行います。
その後、運輸支局から交付された「事業用自動車等連絡書」を使い、軽自動車検査協会で事業用への変更手続きを行います。
公式資料
軽貨物は「許可」ではなく届出で始める
軽貨物運送事業は、一般貨物自動車運送事業とは手続きの仕組みが異なります。
一般貨物自動車運送事業
→ 経営許可
貨物軽自動車運送事業
→ 経営届出
という違いがあります。
そのため比較的参入しやすい事業ですが、届出書を出せばどのような計画でもよいわけではありません。
営業所、車庫、休憩施設、使用する車両、運送約款、管理体制などについて基準を満たす計画を作る必要があります。
また、貨物の運送に関して発生する可能性のある損害について、十分な損害賠償能力を確保することも求められています。
「許可ではない」
=
「何の条件もない」
ではありません。
公式資料
軽貨物を始める前に決めること
経営届出書を書く前に、事業計画を決めます。
主に確認するのは、
- 営業所
- 車庫
- 休憩・睡眠施設
- 事業用自動車
- 運送約款
- 運行管理体制
- 運賃・料金
です。
営業所
営業活動や運転者の管理を行う拠点です。
愛知運輸支局は、自宅を営業所にすることも可能と案内しています。
個人で軽貨物を始める場合、
自宅
=
営業所
とすることも考えられます。
車庫
愛知県では、原則として営業所に併設します。
営業所に併設できない場合は、原則として営業所から2km以内に確保します。
また、すべての車両を容易に収容できる広さが必要で、愛知運輸支局は1両あたり8㎡以上を目安としています。
車庫については、
- 使用する権利がある
- 他の用途部分と明確に区分されている
- 都市計画法など関係法令に抵触しない
ことも確認します。
「自宅近くに空き地があるから車庫にする」
と自己判断せず、土地利用上問題がないかも確認してください。
休憩・睡眠施設
乗務員が適切に利用できる施設を確保します。
こちらも愛知県では自宅を休憩施設として設定できます。
公式資料
軽貨物は1台から始められる
貨物軽自動車運送事業は、大規模な運送会社のように複数台のトラックを用意しなければ始められない制度ではありません。
個人が軽自動車1台から事業を始めることもできます。
例えば、
本人1人
+
軽バン1台
+
自宅営業所
+
自宅車庫
という形も考えられます。
ただし、1人で事業を行う場合でも、運行の安全に関する義務がなくなるわけではありません。
2025年4月以降は安全規制も強化されているため、
「1台だけだから簡単な副業」
という感覚だけで始めないことが重要です。
軽バンだけでなく軽乗用車も使える
以前は、軽貨物運送事業に使用する車両について、最大積載量の記載がある軽貨物車を使用する運用が基本でした。
しかし2022年10月27日からは、軽乗用車も貨物軽自動車運送事業へ使用できるようになっています。
例えば、
- 軽バン
- 軽トラック
- 一定の軽乗用車
などが候補になります。
ただし、軽乗用車だから自由に大量の荷物を積めるわけではありません。
乗車人数との関係で運搬可能な貨物重量に制限があります。
また、貨物軽自動車運送事業はあくまで「荷物」を運送する事業です。
軽乗用車を黒ナンバーにしたからといって、有償で人を運ぶことができるようになるわけではありません。
公式資料
軽自動車検査協会|貨物軽自動車運送事業における軽乗用車の使用について
運輸支局へ提出する主な書類
初めて軽貨物運送事業を始める場合は、営業所を管轄する運輸支局へ経営届出を行います。
愛知県であれば、愛知運輸支局の輸送担当へ提出します。
主に準備するのは、
- 貨物軽自動車運送事業経営届出書
- 運賃及び料金設定届出書
- 運賃料金表
- 事業用自動車等連絡書
- 使用する車両の車検証等
です。
経営届出書では、
- 営業所
- 車両数
- 車庫
- 休憩施設
- 運送約款
- 運行管理体制
などを記載します。
愛知県の様式では、車庫について使用権原があること、都市計画法などの関係法令に抵触しないこと、貨物運送に関する損害賠償能力を有することについて宣誓する欄も設けられています。
公式資料
運賃・料金も決めて届け出る
軽貨物を始めるときは、経営届出だけでなく、運賃・料金についても設定して届け出ます。
例えば、
- 距離制
- 時間制
- 貸切
- 待機料金
- 荷役料金
など、実際の事業に応じて料金体系を整理します。
愛知運輸支局は、運賃・料金について、荷主に対して不当とならないよう設定するよう案内しています。
特定の荷主との契約で仕事を始める場合には、その荷主との契約内容も確認したうえで料金体系を整理します。
「配送会社から提示された報酬で仕事をするから、自分の運賃設定は必要ない」
と考えず、届出上の運賃・料金も確認してください。
公式資料
運輸支局で事業用自動車等連絡書を受け取る
経営届出などを運輸支局へ提出し、内容に問題がなければ「事業用自動車等連絡書」の交付を受けます。
愛知運輸支局では、届出内容に不備がなければ、窓口提出の場合は即日で事業用自動車等連絡書を発行すると案内しています。
ここで重要なのは、
運輸支局へ経営届出をした
=
黒ナンバー取得完了
ではないことです。
事業用自動車等連絡書を受け取ったあと、軽自動車検査協会で自家用から事業用へ車検証の記録変更などを行います。
流れは、
愛知運輸支局
↓
経営届出
↓
事業用自動車等連絡書
↓
軽自動車検査協会
↓
黒ナンバー
です。
公式資料
軽自動車検査協会で黒ナンバーへ変更する
事業用自動車等連絡書を受け取ったら、次に軽自動車検査協会で手続きを行います。
自家用の軽自動車を事業用へ変更する場合には、主に、
- 車検証原本
- 現在のナンバープレート
- 事業用自動車等連絡書
- 自動車検査証変更記録申請書
- 必要な場合は申請依頼書
などを準備します。
現在の所有者と使用者が異なる場合は、所有者である販売店・ローン会社などの同意が必要になる場合があります。
手続きが完了すると、自家用の黄色ナンバーから事業用の黒ナンバーへ変更されます。
公式資料
三河・岡崎・豊田ナンバーは軽自動車検査協会三河支所
愛知県内では、使用の本拠によって黒ナンバーの手続きをする軽自動車検査協会の窓口が異なります。
愛知運輸支局の案内では、
- 名古屋ナンバー → 愛知主管事務所
- 尾張小牧・一宮・春日井 → 小牧支所
- 三河・豊田・岡崎 → 三河支所
- 豊橋 → 豊橋支所
となっています。
碧南市・西尾市・高浜市・安城市・刈谷市・岡崎市などで軽貨物事業を始める場合は、車両の管轄に応じて軽自動車検査協会愛知主管事務所三河支所などで黒ナンバーへの変更を行います。
公式資料
黒ナンバーでは希望ナンバーを選べない
自家用の軽自動車では希望ナンバー制度があります。
しかし、軽自動車検査協会は、
- 事業用自動車
- レンタカー
- 一部の特殊なナンバー
について希望ナンバー制度の対象外としています。
そのため、黒ナンバーにするときに、
「358にしたい」
「1122にしたい」
といった希望番号を選ぶことはできません。
図柄入りナンバーや字光式についても、事業用軽自動車では対象外となるものがあります。
黒ナンバー取得時に番号へこだわりたい場合は、希望番号制度を利用できないことを先に確認してください。
公式資料
黒ナンバーを取っただけでは開業準備は終わらない
ここは2026年現在、特に重要です。
貨物軽自動車運送事業では、2025年4月から安全対策が強化されました。
新たな主な義務には、
- 貨物軽自動車安全管理者の講習受講
- 貨物軽自動車安全管理者の選任・届出
- 初任運転者等への特別な指導
- 対象運転者への適性診断
- 運転者等台帳の作成
- 業務記録
- 事故記録
- 一定事故の国土交通大臣への報告
などがあります。
さらに従来から、
- 点呼
- アルコール検知器による確認
- 健康状態の把握
- 日常点検
- 勤務時間の管理
- 運転者への指導監督
なども必要です。
2025年4月以降に新たに貨物軽自動車運送事業の経営届出をした事業者については、貨物軽自動車安全管理者の選任等について従来事業者に設けられた猶予期間はありません。
1人で事業を行う場合でも、安全対策の義務がなくなるわけではありません。
そのため現在は、
黒ナンバー取得
↓
仕事開始
だけでなく、
黒ナンバー取得
↓
安全管理体制を整える
↓
運行開始
までを開業準備として考える必要があります。
公式資料
国土交通省|貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するための制度改正について
貨物軽自動車安全管理者とは?
2025年4月から、貨物軽自動車運送事業者は営業所ごとに「貨物軽自動車安全管理者」を選任する制度が始まりました。
安全管理者になる人は、国土交通大臣の登録を受けた講習機関で貨物軽自動車安全管理者講習を受講する必要があります。
また、選任後も2年ごとに定期講習を受講します。
安全管理者を選任した場合は、運輸支局等を通じて国土交通大臣へ届出を行います。
「個人で1台だけだから関係ない」
とは考えないようにしてください。
1人で運営する軽貨物事業者も安全対策の対象です。
公式資料
国土交通省|貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するための制度改正について
軽貨物開業までの流れ
愛知県で個人が軽バン1台から始める場合を例にすると、次のように整理できます。
STEP1 事業内容を決める
まず、
- どのような荷物を運ぶか
- どこを営業エリアにするか
- 個人で始めるか法人で始めるか
- どの車を使用するか
を決めます。
STEP2 営業所・車庫・休憩施設を確保する
自宅を営業所・休憩施設とすることもできます。
車庫は原則として営業所に併設し、難しい場合は愛知県では原則営業所から2km以内で確保します。
STEP3 車両を準備する
軽バン・軽トラックなどを準備します。
一定の軽乗用車も使用可能です。
STEP4 運賃・運送約款・管理体制を決める
運賃料金、運送約款、運行管理体制などを整理します。
STEP5 愛知運輸支局へ経営届出
貨物軽自動車運送事業経営届出書、運賃料金設定届出書等を提出します。
STEP6 事業用自動車等連絡書を受け取る
届出内容に問題がなければ、事業用自動車等連絡書の交付を受けます。
STEP7 軽自動車検査協会で黒ナンバー取得
現在の車検証等と事業用自動車等連絡書を持って、事業用への変更手続きを行います。
STEP8 安全管理体制を整える
貨物軽自動車安全管理者の講習・選任・届出など、現在必要となっている安全対策を整えます。
STEP9 運送事業を開始する
必要な届出・車両・安全体制が整ったところで事業を開始します。
軽貨物を始める前に確認したい8項目
軽貨物を始めようとしている場合は、次の8項目を確認してください。
- 営業所をどこにするか
- 車庫は営業所に併設できるか
- 使用する車両を準備できているか
- 車両の所有者・使用者は誰か
- 運賃・料金を決めているか
- 運送約款・管理体制を整理しているか
- 黒ナンバー取得後の安全管理義務を確認しているか
- 実際に仕事を始める日から逆算して手続きを進めているか
黒ナンバー自体の取得手順は、
運輸支局
↓
事業用自動車等連絡書
↓
軽自動車検査協会
と比較的明確です。
一方、実際の開業では、
「車庫の条件を満たしていなかった」
「車両の所有者がローン会社だった」
「安全管理者制度を知らなかった」
といったところで手戻りが起きる可能性があります。
黒ナンバーだけを見るのではなく、事業開始までを一つの流れとして準備してください。
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貨物軽自動車運送事業は、一般貨物自動車運送事業と比べると参入しやすい事業です。
しかし、
- 営業所
- 車庫
- 休憩施設
- 車両
- 運賃・料金
- 運送約款
- 経営届出
- 黒ナンバーへの変更
- 安全管理体制
まで確認する必要があります。
特に2025年4月から貨物軽自動車運送事業者の安全対策が強化されているため、現在は「黒ナンバーを取得したらすぐ終わり」という制度ではありません。
いしかわ行政書士事務所では、碧南市・西尾市・高浜市・安城市・刈谷市・岡崎市を中心に、貨物軽自動車運送事業の経営届出・黒ナンバー取得に関する手続きをサポートしています。
使用する車両、営業所、車庫などを確認しながら、経営届出から黒ナンバー取得まで必要な手続きを整理します。
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出典
この記事は、2026年8月時点の法令・公的機関の情報をもとに作成しています。
中部運輸局「貨物軽自動車運送事業(黒ナンバー)」、愛知運輸支局「愛知県内における貨物軽自動車運送事業のご案内」、国土交通省「貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するための制度改正について」、中部運輸局「運送事業者の事故防止・貨物軽自動車運送事業の安全対策」、軽自動車検査協会「番号変更」、軽自動車検査協会「貨物軽自動車運送事業における軽乗用車の使用について」、軽自動車検査協会「希望ナンバーに関する手続き」
