親族以外の世話になった人は相続人になれる?財産を残すための準備

この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。

一人暮らしの方の中には、親族よりも、長年付き合いのある友人や近所の方に支えてもらっている方もいます。

「自分に何かあったら、世話になった人へ財産を渡したい」と考えることもあるでしょう。

しかし、どれほど親しい関係であっても、親族以外の友人や知人が、自動的に相続人になることはありません。

財産を残したい場合は、法律上有効な遺言書を作り、誰に何を渡すのかを具体的に決めておく必要があります。

この記事では、親族以外の人が相続人になれるのか、世話になった人へ財産を残すには、どのような準備が必要なのかを解説します。

親族以外の人は原則として相続人になりません

亡くなった人の財産を法律上相続する人を、法定相続人といいます。

法定相続人になる可能性があるのは、主に次の人です。

  • 法律上の配偶者
  • 子どもや孫
  • 両親や祖父母
  • 兄弟姉妹
  • 兄弟姉妹が先に亡くなっている場合の甥や姪

友人、知人、近所の方、介護や生活を支えてくれた人などは、この中に含まれません。

長年同居していた場合や、日常生活を支えてもらっていた場合でも、法律上の親族関係がなければ、原則として法定相続人にはなりません。

また、婚姻届を提出していない内縁関係や事実婚の相手も、法律上の配偶者ではないため、原則として法定相続人にはなりません。

親しい関係や実際に世話をした事実だけで、相続する権利が発生するわけではない点に注意が必要です。

遺言書がなければ法律上の相続人が財産を引き継ぎます

遺言書を作らずに亡くなった場合は、法律で決められた相続人が財産を引き継ぎます。

たとえば、独身で子どもがおらず、両親や祖父母も亡くなっている場合は、兄弟姉妹が相続人になる可能性があります。

兄弟姉妹が先に亡くなっていれば、その子どもである甥や姪が相続人になることもあります。

本人が生前に、

「親族とは疎遠なので財産を渡したくない」
「友人に長年世話になったので、その人に渡したい」

と周囲へ話していても、法律上有効な遺言書がなければ、その希望がそのまま実現するとは限りません。

終活ノートや通常のメモに名前を書いていても、遺言書としての要件を満たしていなければ、財産を渡す法的な根拠にはならない場合があります。

気持ちを伝えるメモと、財産の行き先を決める遺言書は、役割が異なります。

相続人がいない場合も自動的に世話になった人へ渡るわけではない

法律上の相続人が一人もいない場合でも、世話になった人が自動的に財産を受け取れるわけではありません。

相続人の不存在を確認し、債務の支払いや財産の整理など、家庭裁判所を通じた手続きが必要になります。

亡くなった人と特別な関係があった人が、特別縁故者として財産の分与を申し立てられる場合はあります。

しかし、分与が認められるか、どの財産を受け取れるかは確実ではありません。

「相続人がいないから、世話になった人へ渡るだろう」と考えるのではなく、生前に遺言書を作る方が、本人の意思を明確に残せます。

世話になった人へ財産を残すには遺言書で「遺贈」する

親族以外の人へ遺言書によって財産を渡すことを、一般に「遺贈」といいます。

財産を受け取る人は、相続人ではなく「受遺者」と呼ばれます。

親族以外の人へ財産を残す遺言書では、通常、「相続させる」ではなく、**「遺贈する」**という表現を使います。

たとえば、次のような財産を遺贈できます。

  • 預貯金
  • 自宅や土地
  • 自動車
  • 株式や投資信託
  • 貴金属や美術品
  • 財産の一部または全部

ただし、「友人の○○さんに財産を渡す」とだけ書くと、誰を指すのか、どの財産を渡すのかが分からなくなる可能性があります。

遺言書には、受け取る人の氏名や生年月日、住所など、本人を特定できる情報を記載します。

自宅や土地を残す場合は、普段使用している住所だけでなく、登記事項証明書の記載に沿って不動産を特定する必要があります。

預貯金を残す場合も、金融機関名、支店名、預金の種類などを整理しておきます。

誰に、どの財産を、どの割合で渡すのかが分かる内容にすることが重要です。

財産を残す前に相手の意思と負担を確認する

本人にとっては感謝の気持ちから財産を残す場合でも、受け取る側にとって負担になることがあります。

特に、自宅や土地を残す場合は注意が必要です。

自宅を受け取った人には、次のような対応が生じます。

  • 所有権移転登記
  • 固定資産税の支払い
  • 建物の修繕や管理
  • 庭木や雑草の手入れ
  • 家財の片付け
  • 売却や賃貸の手続き
  • マンション管理費や修繕積立金の支払い

遠方の家や老朽化した建物、売却しにくい土地は、預金を受け取る場合とは負担が大きく異なります。

財産を残したい相手には、少なくとも次の内容を伝えておきます。

  • どのような財産を残したいか
  • 自宅や土地の所在地と状態
  • 住宅ローンや借金の有無
  • 固定資産税などの維持費
  • 家財がどの程度残っているか
  • 死後にどのような手続きが必要か

遺贈を受ける人は、必ず財産を受け取らなければならないわけではありません。

本人が亡くなった後に受取りを断られれば、遺言書で考えていた財産の行き先が実現しない可能性があります。

遺言書へ名前を書く前に、相手へ意思を確認しておくことが大切です。

相手が本人より先に亡くなる場合も考え、別の受取人や、その場合の財産の扱いを決めておく方法もあります。

遺言書を作るときに一緒に決めておきたいこと

世話になった人へ財産を残す場合は、受取人だけでなく、実際に手続きを進める人も決めておきます。

遺言執行者を決める

遺言執行者は、遺言書の内容を実現するために必要な手続きを進める人です。

預貯金の解約や不動産の名義変更などがある場合は、遺言執行者を指定しておくと、受遺者がすべてを自分で調べる負担を減らせます。

親族以外へ財産を残すケースでは、法律上の相続人が遺言書の内容を快く思わない可能性もあります。

そのため、相続人や受遺者とは別に、手続きを進められる専門家などを遺言執行者に指定する方法も検討します。

法律上の相続人と遺留分を確認する

法律上の相続人が誰かによっては、遺留分を考慮する必要があります。

遺留分とは、配偶者、子ども、両親など一定の相続人に保障される最低限の取り分です。

遺言書で全財産を友人へ遺贈すると書いても、遺留分を持つ相続人から金銭を請求される可能性があります。

一方、兄弟姉妹や甥、姪には、原則として遺留分がありません。

そのため、兄弟姉妹や甥姪だけが相続人となるケースでは、遺言書によって親族以外の人へ財産を残せる可能性があります。

ただし、まず自分の相続人が誰なのかを、戸籍などで正確に確認する必要があります。

財産だけでなく借金も確認する

財産を一覧にするときは、預金や自宅などのプラスの財産だけでなく、借金や未払金も確認します。

遺言書を作った時点から財産状況が変わり、亡くなったときには預金が減っていることもあります。

自宅を残すつもりでも、住宅ローン、管理費、税金などの支払いが残っている可能性があります。

受け取る人へ思わぬ負担を残さないよう、遺言書の作成後も定期的に財産状況を見直します。

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よくある失敗は気持ちだけを残して手続方法を決めていないこと

親族以外の人へ財産を残す場合、次のような準備不足が起こりやすくなります。

終活ノートに名前を書いただけ

終活ノートは本人の希望を伝えるためには役立ちます。

しかし、法律上有効な遺言書でなければ、指定された人が預金や自宅を受け取れるとは限りません。

財産の行き先を決める場合は、遺言書として作成します。

「全部あげる」とだけ書いている

財産の範囲や受取人が十分に特定されていないと、解釈をめぐって問題になる可能性があります。

自宅、預金、車などを整理し、誰に何を渡すのかを明確にします。

自宅を残すことを相手へ伝えていない

相手がすでに持ち家を所有していたり、遠方に住んでいたりすれば、自宅の取得を負担に感じることがあります。

建物の状態や維持費を説明し、受け取る意思を確認します。

遺言執行者を決めていない

財産を受け取る人が遺言書を見つけても、預金の手続きや不動産の名義変更を一人で進められるとは限りません。

手続きを誰が進めるかまで決めておきます。

財産を残せば死後の手続きもしてもらえると思っている

財産を遺贈することと、葬儀、納骨、公共料金の解約、家財の片付けなどを依頼することは別です。

死後の生活上の手続きを頼みたい場合は、遺言書だけでなく、死後事務委任契約などを別に検討します。

「財産を渡す代わりに、すべての死後手続きをしてもらう」と一方的に考えず、依頼内容と相手の承諾を明確にする必要があります。

まとめ

親族以外の友人、知人、近所の方、世話になった人は、どれほど親しい関係であっても、原則として法定相続人にはなりません。

遺言書がなければ、本人の希望とは関係なく、法律上の相続人が財産を引き継ぎます。

親族以外の人へ財産を残したい場合は、法律上有効な遺言書を作成し、「遺贈する」財産と受け取る人を具体的に記載します。

そのうえで、次の内容を確認しておくことが大切です。

  • 自分の法律上の相続人は誰か
  • 遺留分を持つ相続人がいるか
  • 誰にどの財産を残したいか
  • 相手に受け取る意思があるか
  • 自宅や土地を残す場合の管理負担
  • 遺言執行者を誰にするか
  • 葬儀や片付けなどの死後事務を誰に頼むか

感謝の気持ちだけをメモに残すのではなく、実際に財産を受け取れる形まで準備することで、本人の希望を実現しやすくなります。

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