
この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。
おひとりさま終活を始めようと思っても、遺言書、任意後見契約、死後事務委任契約、自宅の売却など、考えることが多くあります。
何から手を付ければよいか分からず、結局そのままになっている方も少なくありません。
しかし、最初から契約書を作ったり、自宅を処分したりする必要はありません。
最初に行うのは、現在の状況と、将来困りそうなことを確認することです。
この記事では、おひとりさま終活の最初の一歩として確認したい5つのことを解説します。
おひとりさま終活は5つの確認から始める
最初に確認したいのは、次の5つです。
- 緊急時に連絡してほしい人
- 自宅・預金・借金などの財産
- 自分が亡くなった場合の相続人
- 入院や認知症になった後の生活
- 亡くなった後の手続きと希望
この段階では、すべての結論を出す必要はありません。
分かることと、まだ決められないことを分けるだけでも、今後必要な準備が見えてきます。
1.緊急時に連絡してほしい人を確認する
最初に考えたいのは、病気や事故で自分から連絡できなくなったときに、誰へ知らせるかです。
親族がいる場合でも、長年連絡を取っていない人や、遠方に住んでいる人では、すぐに対応できないことがあります。
次の内容を書き出します。
- 氏名
- 自分との関係
- 電話番号
- 住所
- どのような場合に連絡してほしいか
- 自宅の鍵や書類について知っているか
- 実際に対応を頼めるか
親族以外の友人や知人を連絡先にすることも考えられます。
ただし、名前を書くだけではなく、本人へ事前に話し、緊急連絡先として登録してよいか確認しておくことが大切です。
連絡先が一人だけでは、その人と連絡が取れない可能性もあります。
可能であれば、第1連絡先と第2連絡先を決めておきます。
緊急連絡先になってもらうことと、入院手続き、財産管理、死後の手続きまですべて任せることは別です。
相手にどこまで頼めるのかを分けて考えます。
2.自宅・預金・借金などの財産を確認する
次に、自分が持っている財産と、支払っている契約を一覧にします。
正確な金額まで調べる必要はありません。
まずは、何を持っているか、どこに関係書類があるかを確認します。
- 自宅や土地
- 預金口座
- 株式や投資信託
- 生命保険
- 自動車
- 貴金属や高価な家財
- 住宅ローン
- カードローンや借入金
- クレジットカード
- スマートフォンやインターネット契約
- 定期的に支払っているサービス
自宅を所有している場合は、固定資産税の通知書だけでなく、土地と建物の登記名義も確認します。
自分が住んでいても、土地や建物に亡くなった親の名義が残っている場合があります。
預金口座は、銀行名、支店名、通帳やキャッシュカードの保管場所を一覧にします。
ただし、暗証番号やインターネットバンキングのパスワードを、誰でも見られる一覧へそのまま記載することは避けます。
財産の一覧は、残高を正確に記録するものではなく、亡くなった後に財産や契約を見つけてもらうための案内図です。
借金や未払金も相続に関係するため、プラスの財産だけでなく、支払いも確認しておきます。
3.自分が亡くなった場合の相続人を確認する
「おひとりさまだから相続人はいない」とは限りません。
配偶者や子どもがいない場合でも、両親、祖父母、兄弟姉妹、甥や姪が相続人になる可能性があります。
まずは、次の親族を書き出します。
- 法律上の配偶者
- 子どもや養子
- 両親
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 先に亡くなった兄弟姉妹の子ども
長年連絡を取っていない親族や、会ったことのない甥や姪であっても、法律上の相続人になる場合があります。
自分が財産を残したい人と、法律上の相続人が同じとは限りません。
親族以外の世話になった人へ財産を残したい場合や、特定の甥や姪へ自宅を残したい場合は、遺言書を検討します。
家族関係を自分の記憶だけで判断できない場合は、戸籍をたどって確認します。
この段階では、遺言書をすぐに作るのではなく、遺言書がない場合に誰が相続人になるのかを把握することが先です。
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4.入院や認知症になった後の生活を考える
終活というと、亡くなった後の準備を思い浮かべがちです。
しかし、おひとりさまにとっては、亡くなる前に自分で手続きや財産管理ができなくなった場合への備えも重要です。
次のような場面を考えます。
- 入院したとき、誰へ連絡するか
- 自宅の鍵を誰に預けるか
- 郵便物や宅配を誰が確認するか
- ペットを誰に預けるか
- 長期入院中の支払いをどうするか
- 施設へ入った後、自宅をどうするか
- 判断能力が低下した後、預金や契約を誰が管理するか
親族へ頼める場合でも、その人が遠方に住んでいたり、高齢だったりすると、すべての対応を任せることは難しい場合があります。
一人の人に全部頼むのではなく、役割ごとに分ける方法もあります。
たとえば、自宅の管理は不動産管理会社、財産管理は契約した人、法律手続きは専門家へ依頼する形です。
認知症などで判断能力が低下した後は、自宅の売却や預金の管理を本人の希望だけで進められないことがあります。
必要に応じて、任意後見契約や財産管理委任契約などを検討します。
亡くなった後の準備だけでなく、判断できなくなった後の期間を誰が支えるかも確認しておきます。
5.亡くなった後の手続きと希望を整理する
最後に、自分が亡くなった後に必要となる手続きを書き出します。
主なものには、次のような内容があります。
- 親族や知人への連絡
- 葬儀や火葬
- 納骨やお墓
- 自宅の鍵の管理
- 家財の片付け
- 電気・ガス・水道の解約
- 賃貸住宅の明渡し
- 自宅や土地の管理・売却
- スマートフォンやインターネット契約の解約
- ペットの引渡し
- 遺品の処分
- 行政機関などへの届出
遺言書は、主に財産を誰へ引き継ぐかを決めるためのものです。
一方、葬儀、納骨、家財整理、公共料金の解約などは、遺言書だけですべてを任せられるとは限りません。
死後の事務を頼む場合は、死後事務委任契約などを検討します。
ただし、契約書を作るだけではなく、実際に誰が手続きを行うのか、費用をどこから支払うのかも決める必要があります。
葬儀や納骨について強い希望がない場合は、「家族葬にしてほしい」「特定の寺院へ納骨してほしい」と無理に決める必要はありません。
「大きな葬儀は不要」「この人へ連絡してほしい」など、現在決められる範囲から整理します。
最初はA4用紙1枚のメモで十分です
おひとりさま終活を始めるために、高価なエンディングノートや専用ファイルを用意する必要はありません。
最初はA4用紙や普通のノートに、次の見出しを書くだけでも十分です。
- 緊急連絡先
- 自宅と財産
- 親族と相続人
- 入院・認知症への備え
- 亡くなった後の希望
各項目について、分かることだけを書きます。
まだ決められないことには、「未定」「相談が必要」と記載します。
最初からきれいに完成させようとすると、確認することが多くなり、途中で止まりやすくなります。
終活の最初の目的は、完成した書類を作ることではなく、自分に足りない準備を見つけることです。
作成したメモは、半年または1年に一度見直します。
連絡先、預金口座、保険、自宅の状況、本人の希望は変わるため、一度作って終わりにはしません。
よくある失敗は最初から全部決めようとすること
おひとりさま終活では、次のような進め方で止まってしまうことがあります。
最初から遺言書を書こうとする
財産や相続人を確認しないまま遺言書を書こうとしても、誰に何を残すか決められません。
まずは財産と家族関係を整理します。
エンディングノートを全項目埋めようとする
市販のエンディングノートには、医療、介護、葬儀、財産、デジタル情報など、多くの項目があります。
空欄があることを気にせず、緊急連絡先と財産の所在から始めます。
親族へ相談せず、名前だけを書いておく
終活ノートに「兄に頼む」「姪に家を残す」と書いても、本人が引き受けてくれるとは限りません。
管理や手続きを頼みたい相手には、内容を説明して意思を確認します。
財産のことだけを整理する
預金や自宅の一覧があっても、入院時の連絡先や自宅の鍵を確認する人が決まっていなければ、緊急時に困ります。
生前の生活と死後の手続きを分けて考えます。
パスワードをすべて一か所に書く
見つけてもらいやすくすることは重要ですが、通帳、印鑑、暗証番号、パスワードを誰でも確認できる状態にすると危険です。
財産や契約の存在を示す一覧と、重要情報の保管方法を分けます。
どこまで準備すればよいか迷った場合
5つの項目を確認すると、遺言書、任意後見契約、死後事務委任契約など、さまざまな準備が必要に見えることがあります。
しかし、すべての人にすべての契約が必要なわけではありません。
たとえば、次のように分けて考えます。
- 希望する人へ財産を残したい
→ 遺言書を検討する - 判断能力が低下した後の財産管理が不安
→ 任意後見契約などを検討する - 葬儀や家財整理を頼める人がいない
→ 死後事務委任契約などを検討する - 自宅を引き継ぐ人が決まっていない
→ 相続人、自宅の名義、売却や管理方法を確認する - 何が必要か分からない
→ 現在の状況を専門家と整理する
大切なのは、契約の名前から選ぶことではありません。
自分が困る場面を先に確認し、その場面に必要な準備だけを選びます。
まとめ
おひとりさま終活は、遺言書や契約書を作ることから始める必要はありません。
最初に、次の5つを確認します。
- 緊急時に連絡してほしい人
- 自宅・預金・借金などの財産
- 自分が亡くなった場合の相続人
- 入院や認知症になった後の生活
- 亡くなった後の手続きと希望
分からない項目や、まだ決められない項目があっても問題ありません。
A4用紙や普通のノートへ、分かることと未定のことを書き分けるだけでも、終活の第一歩になります。
最初からすべてを決めるのではなく、まずは緊急連絡先、財産の所在、相続人の3点から確認してみましょう。
おひとりさま終活のご相談について
いしかわ行政書士事務所では、愛知県三河地域(碧南市・西尾市・高浜市・安城市・刈谷市・岡崎市など)を中心に、おひとりさま終活に関するご相談に対応しています。
自宅や土地、預金、相続人、遺言書、認知症への備え、亡くなった後に必要となる手続きなど、現在の状況を一つずつ整理します。
遺言書や契約書の作成を行い、登記、不動産売却、税金、実際の死後事務などが必要な場合は、それぞれを担当する専門家や事業者と連携して進めます。
「何を依頼すればよいか決まっていない」という段階でも、今やることと後でよいことを整理できます。

