
この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。
おひとりさま終活で大きな不安になりやすいのが、認知症になったときの手続きです。
「認知症になったら、銀行の手続きは誰がするのか」
「施設入所の契約は誰がするのか」
「親族と疎遠な場合、誰が動いてくれるのか」
「緊急連絡先がいない場合はどうなるのか」
「元気なうちに何を準備しておけばよいのか」
このような不安を感じる方は少なくありません。
結論からいうと、認知症になって判断能力が低下すると、自分だけで財産管理や契約手続きを進めることが難しくなる可能性があります。
おひとりさまの場合、配偶者や子どもが手続きしてくれるとは限りません。
そのため、元気なうちに、誰に何を頼むのかを整理しておくことが大切です。
この記事では、認知症になったら誰が手続きするのか、おひとりさまが生前に準備しておきたいことを解説します。
認知症になると自分でできない手続きが増える
認知症になると、すべての手続きがすぐにできなくなるわけではありません。
ただし、判断能力が低下すると、契約内容を理解したり、財産を管理したり、重要な手続きを判断したりすることが難しくなる場合があります。
特に、次のような手続きで問題になりやすいです。
| 手続き | 認知症になると困りやすい理由 |
|---|---|
| 預貯金の管理 | 本人確認や意思確認が難しくなることがある |
| 施設入所契約 | 契約内容を理解して判断する必要がある |
| 介護サービス契約 | 利用内容や費用の確認が必要になる |
| 不動産の売却・管理 | 本人の意思確認が重要になる |
| 医療費・施設費の支払い | 継続的な支払い管理が必要になる |
| 役所手続き | 介護保険、福祉、年金などの手続きが必要になる |
| スマホ・公共料金 | 契約や支払いの管理が必要になる |
おひとりさまの場合、これらの手続きを誰が支援するのかが問題になります。
配偶者や子どもがいれば、家族が動くこともあります。
しかし、未婚の方、子どもがいない方、親族と疎遠な方は、いざというときに頼れる人がいないことがあります。
また、親族がいる場合でも、遠方に住んでいる、高齢で動けない、長年連絡を取っていないなどの事情があると、実際に手続きしてもらうのは難しいことがあります。
大切なのは、**「親族がいるか」ではなく、「実際に手続きできる人がいるか」**です。
【関連記事】
任意後見契約とは?おひとりさまが認知症に備える方法を解説
【関連記事】
緊急連絡先がいない人はどうする?おひとりさま終活で準備したいこと
何も準備していない場合はどうなるか
認知症になった後に、何も準備していなかった場合、周囲の人がすぐに自由に手続きできるわけではありません。
たとえ親族であっても、本人の財産を当然に管理できるとは限りません。
預金の引き出し、不動産の売却、施設入所契約などでは、本人の意思確認や正式な権限が問題になります。
親族がいても自由に財産管理できるわけではない
兄弟姉妹や甥姪がいても、本人の預金を自由に使えるわけではありません。
本人の生活費、医療費、施設費を支払う必要があっても、金融機関や施設で手続きが止まることがあります。
「家族だから大丈夫」とは限らない点に注意が必要です。
成年後見制度が必要になることがある
判断能力が低下した後に、財産管理や契約手続きが必要になった場合、成年後見制度の利用を検討することがあります。
成年後見制度には、大きく分けて、元気なうちに準備する任意後見と、判断能力が低下した後に家庭裁判所で選ばれる法定後見があります。
何も準備していない場合は、法定後見の利用が問題になることがあります。
法定後見では、家庭裁判所が本人の状況を確認し、後見人などを選任します。
本人が「この人に頼みたい」と思っていても、必ずその人が選ばれるとは限りません。
市区町村長の申立てが関係する場合もある
身寄りがない方や、親族がいても支援が難しい方の場合、状況によっては市区町村長による成年後見の申立てが関係することがあります。
ただし、これは本人が望むタイミングで自由に使える制度というより、必要に迫られて動くことが多いものです。
そのため、できるだけ元気なうちに、自分の希望を形にしておくことが大切です。
親族と疎遠な場合は手続きが遅れやすい
認知症になってから親族を探すことになると、連絡先の確認や意思確認に時間がかかります。
親族側も、突然連絡を受けても、財産状況や本人の希望が分からず困ることがあります。
おひとりさまの場合は、認知症になる前に、頼れる人、財産、契約、希望する支援内容を整理しておくことが重要です。
【関連記事】
親族と疎遠な人の相続はどうなる?おひとりさまが準備すべきことを解説
【関連記事】
身寄りが少ない人が相続で困りやすいこと|生前にできる対策を解説
元気なうちに任意後見契約を検討する
認知症への備えとして代表的なものが、任意後見契約です。
任意後見契約とは、将来、認知症などで判断能力が低下したときに備えて、元気なうちに支援してくれる人を決めておく契約です。
おひとりさまにとっては、将来の財産管理や契約手続きを誰に頼むのかを決める重要な準備になります。
任意後見契約で備えられること
任意後見契約では、将来の財産管理や契約手続きの支援を想定します。
たとえば、次のような内容です。
- 預貯金の管理
- 生活費や施設費の支払い
- 介護サービス契約
- 施設入所契約
- 役所手続き
- 不動産管理
- 医療費や公共料金の支払い
任意後見契約を結んでおくことで、将来、判断能力が低下したときに、誰が支援するのかをあらかじめ決めておくことができます。
契約しただけですぐ始まるわけではない
任意後見契約は、契約しただけですぐに任意後見人として活動できるわけではありません。
将来、本人の判断能力が不十分になったときに、家庭裁判所で任意後見監督人が選ばれてから本格的に始まります。
そのため、元気なうちから今すぐ銀行や役所の手続きを手伝ってほしい場合は、任意後見契約だけでは足りないことがあります。
その場合は、財産管理委任契約をあわせて検討することがあります。
誰に頼むかが重要
任意後見契約では、将来の財産管理や契約手続きを任せる相手を決めます。
親族、知人、専門職などが候補になります。
ただし、財産を扱うことになるため、信頼できる人か、長期的に対応できる人か、本人の希望を理解してくれる人かを慎重に考える必要があります。
公正証書で作成する
任意後見契約は、公証役場で公正証書として作成します。
自分でメモを書いただけでは、任意後見契約として使うことはできません。
契約内容、支援してもらう範囲、報酬、財産管理の方法などを整理したうえで準備することが大切です。
【関連記事】
財産管理委任契約とは?判断能力があるうちにできる準備を解説
【関連記事】
任意後見と財産管理委任契約の違い|おひとりさま向けに解説
入院・施設入所・生活費の支払いも整理する
認知症への備えでは、任意後見契約だけでなく、生活の具体的な手続きも整理しておく必要があります。
特に、おひとりさまの場合は、入院、施設入所、生活費の支払いが問題になりやすいです。
入院したときの連絡先
急な入院では、病院から緊急連絡先を求められることがあります。
親族、友人、知人、専門職、支援団体など、誰に連絡できるのかを整理しておきましょう。
ただし、緊急連絡先になってもらうことと、財産管理や身元保証を頼むことは別です。
どこまで頼めるのかを分けて考える必要があります。
施設入所の契約
認知症が進み、一人暮らしが難しくなると、施設入所を検討することがあります。
施設入所では、契約、費用の支払い、緊急連絡先、身元保証などが問題になります。
任意後見契約があれば、契約手続きや財産管理の面で備えやすくなる場合があります。
ただし、施設が求める身元保証そのものを、任意後見契約だけで必ず解決できるわけではありません。
施設ごとの条件を確認することも大切です。
生活費・医療費・介護費の支払い
認知症になった後も、家賃、施設費、医療費、介護費、公共料金、税金などの支払いは続きます。
誰が支払いを管理するのか。
どの口座から支払うのか。
年金や保険金はどう使うのか。
これらを整理しておくと、将来の支援者が動きやすくなります。
財産や契約の一覧を作る
任意後見人や支援者が将来困らないように、財産や契約の一覧を作っておくことも大切です。
預貯金、不動産、生命保険、年金、株式、投資信託、借金、ローン、スマホ契約、サブスク、ネット銀行、ネット証券などを整理します。
金額まで細かく書けなくても、どこに何があるか分かるだけで、手続きは進めやすくなります。
【関連記事】
入院や施設入所の手続きが不安な方へ|任意後見と終活を解説
【関連記事】
おひとりさまが財産を整理する方法|預金・保険・不動産の確認ポイント
亡くなった後の手続きとは分けて考える
認知症への備えを考えるとき、亡くなった後の手続きまで一緒に不安になる方も多いです。
しかし、認知症になった後の手続きと、亡くなった後の手続きは、分けて考える必要があります。
任意後見は生きている間の備え
任意後見契約は、本人が生きている間に、判断能力が低下した場合の財産管理や契約手続きに備えるものです。
本人が亡くなると、任意後見の役割は基本的に終了します。
そのため、葬儀や納骨、死後の解約手続きまで任意後見契約だけで対応できるわけではありません。
亡くなった後は死後事務委任契約を検討する
亡くなった後には、葬儀、火葬、納骨、病院や施設への支払い、賃貸住宅の解約、家財整理、公共料金やスマホの解約などが必要になることがあります。
これらを誰に頼むかを決めるために、死後事務委任契約を検討することがあります。
おひとりさまの場合、任意後見契約と死後事務委任契約をあわせて考えることで、生前と死後の空白を減らしやすくなります。
財産の行き先は遺言書で整理する
認知症への備えをしても、亡くなった後に財産を誰へ引き継ぐかは別問題です。
財産の行き先は、遺言書で整理することがあります。
世話になった人に財産を残したい、団体に寄付したい、兄弟姉妹に相続させたくないなどの希望がある場合は、遺言書も検討しましょう。
ペットがいる場合は特に注意する
犬や猫などのペットを飼っている場合、認知症になったときや施設に入るとき、誰が世話をするのかを考える必要があります。
亡くなった後だけでなく、生きている間に入院・施設入所する場面でもペットの世話が問題になります。
一時的な預け先、引き取り先、飼育費用、かかりつけ動物病院、フード、持病などを整理しておくと安心です。
【関連記事】
死後事務委任契約とは?おひとりさまが知っておきたい手続きを解説
【関連記事】
おひとりさまに遺言書は必要?未婚の方が確認すべき相続の注意点
【関連記事】
おひとりさまがペットを飼っている場合の終活|万一の備えを解説
よくある失敗例
認知症への備えでよくある失敗は、「そのときになれば誰かがやってくれる」と考えてしまうことです。
親族がいるから大丈夫と思っている
兄弟姉妹や甥姪がいても、実際に財産管理や施設入所の手続きをしてくれるとは限りません。
遠方、高齢、疎遠などの事情があると、動いてもらうのが難しいことがあります。
親族がいることと、手続きを任せられることは別です。
任意後見契約を知らないまま後回しにする
任意後見契約は、元気なうちに準備する制度です。
認知症が進んで判断能力が低下してからでは、任意後見契約を結ぶことが難しくなる可能性があります。
不安がある場合は、早めに検討することが大切です。
財産管理委任契約との違いを知らない
任意後見契約は、判断能力が低下した後に本格的に始まる制度です。
判断能力はあるけれど、体力的に銀行や役所に行けない場合は、財産管理委任契約を検討することがあります。
どちらか一方だけで足りるのか、両方必要なのかを整理しましょう。
死後事務まで任意後見で済むと思っている
任意後見契約は、生きている間の支援です。
亡くなった後の葬儀、納骨、解約、家財整理などは、死後事務委任契約で準備することがあります。
任意後見と死後事務は、役割を分けて考える必要があります。
財産や契約を整理していない
任意後見人や支援者がいても、本人の財産や契約が分からなければ手続きが進みにくくなります。
預貯金、不動産、保険、年金、スマホ、サブスク、ネット銀行、ネット証券などを一覧にしておくことが大切です。
まとめ
認知症になって判断能力が低下すると、預貯金の管理、施設入所契約、介護サービス契約、役所手続き、不動産管理などを自分だけで進めることが難しくなる可能性があります。
おひとりさまの場合、配偶者や子どもが代わりに動いてくれるとは限りません。
親族がいても、疎遠、遠方、高齢などの事情で、実際に手続きできないことがあります。
何も準備していない場合、必要に応じて法定後見の利用が問題になることがありますが、自分で支援者を選べるとは限りません。
元気なうちに備える方法として、任意後見契約があります。
任意後見契約は、将来、認知症などで判断能力が低下したときに備えて、誰に財産管理や契約手続きを支援してもらうかを決めておく契約です。
ただし、任意後見契約だけで、今すぐの手続き、身元保証、医療判断、亡くなった後の手続きまで全部対応できるわけではありません。
判断能力があるうちの支援は財産管理委任契約、亡くなった後の手続きは死後事務委任契約、財産の行き先は遺言書というように、役割を分けて整理することが大切です。
碧南市、西尾市、高浜市、安城市周辺で、認知症への備えやおひとりさま終活に不安がある方は、いしかわ行政書士事務所へご相談ください。
任意後見、財産管理委任、死後事務委任、遺言書、相続人や財産の整理など、状況に合わせて分かりやすくサポートいたします。
【記事末関連記事】
任意後見契約とは?おひとりさまが認知症に備える方法を解説
任意後見と財産管理委任契約の違い|おひとりさま向けに解説
