
この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。
「工場で使う油や溶剤をまとめて保管したい」
「倉庫の一角を塗料や危険物の保管場所にしたい」
このような場合に確認したいのが、消防法上の危険物規制です。
危険物を工場や倉庫に置くからといって、すべて消防署の許可が必要になるわけではありません。
まず確認するのは、
- 保管・使用する物が消防法上の危険物に当たるか
- 危険物の類・品名は何か
- それぞれの指定数量はいくらか
- 最大でどの程度保管・取り扱うのか
- 複数種類の危険物を同じ場所で扱うか
- 危険物を保管するだけか、製造工程などで使用するのか
です。
特に重要なのが「指定数量」です。
指定数量以上の危険物は、原則として許可を受けた製造所・貯蔵所・取扱所以外の場所で貯蔵・取扱いすることはできません。
一方、指定数量未満でも一定量以上になると、火災予防条例に基づく「少量危険物」の届出が必要になる場合があります。
この記事では、愛知県三河の工場・倉庫で危険物を保管・使用するとき、消防署の許可や届出が必要になるケースを整理します。
危険物の許可は「指定数量」から確認する
消防法では、危険物の種類ごとに「指定数量」が定められています。
指定数量以上の危険物を貯蔵・取扱いする場合は、原則として消防法上の危険物施設として許可を受ける必要があります。
例えば代表的な第4類危険物では、
| 危険物の例 | 指定数量 |
|---|---|
| ガソリン | 200L |
| 灯油 | 1,000L |
| 第4石油類の潤滑油など | 6,000L |
などがあります。
重要なのは、容器の数ではなく、
危険物の数量 ÷ 指定数量
によって、指定数量に対してどの程度の量を保管・取扱いするのかを確認することです。
指定数量以上なら製造所・貯蔵所・取扱所の許可を確認する
指定数量以上の危険物を工場・倉庫で扱う場合は、
- 製造所
- 貯蔵所
- 取扱所
のどの施設に当たるかを確認します。
例えば、危険物を主に保管する施設には、
- 屋内貯蔵所
- 屋外貯蔵所
- 屋外タンク貯蔵所
- 屋内タンク貯蔵所
- 地下タンク貯蔵所
などがあります。
一方、工場内で危険物を製造工程に使用する場合には、一般取扱所などに該当することがあります。
つまり、
「危険物を何L置くか」
だけでなく、
「何のために、どこで、どのように扱うか」
まで整理しなければ、どの許可を申請するかは決まりません。
衣浦東部広域連合消防局では、製造所・一般取扱所・屋内貯蔵所・各種タンク貯蔵所など、施設区分ごとの審査基準を公開しています。
複数種類の危険物は指定数量の倍数を合算する
工場では、ガソリン・灯油・潤滑油・塗料・溶剤など、複数の危険物を使用していることがあります。
この場合、
「どれも単独では指定数量未満だから大丈夫」
とは限りません。
危険物ごとに、
危険物数量 ÷ その危険物の指定数量
を計算し、その数値を合計して判定します。
衣浦東部広域連合消防局の少量危険物基準でも、ガソリン・灯油・潤滑油など複数の危険物について、指定数量に対する割合を合算する具体例が示されています。
例えば、
ガソリン30L ÷ 200L
+
灯油120L ÷ 1,000L
+
潤滑油200L ÷ 6,000L
というように計算します。
そのため、工場内に複数の油・溶剤・塗料がある場合は、品目ごとに数量を一覧化してから判定します。
衣浦東部広域連合消防局公式:少量危険物の設置指導基準を確認する
指定数量未満でも少量危険物の届出が必要になる
指定数量未満なら何の手続きも不要、というわけではありません。
碧南市・刈谷市・安城市・知立市・高浜市を管轄する衣浦東部広域連合消防局では、
指定数量の5分の1以上
かつ
指定数量未満
の危険物を少量危険物として扱っています。
例えばガソリンの場合、指定数量は200Lなので、その5分の1は40Lです。
そのため、一定の場合には、
40L以上200L未満
の範囲で火災予防条例に基づく届出を確認します。
衣浦東部広域連合消防局では、「少量危険物・指定可燃物貯蔵取扱い届出書」などの様式を公開しています。
衣浦東部広域連合消防局公式:危険物・少量危険物の申請・届出様式を確認する
岡崎市でも指定数量の5分の1以上は少量危険物
岡崎市でも、
指定数量の5分の1以上
指定数量未満
の危険物を「少量危険物」として扱っています。
少量危険物を貯蔵・取扱いするときは、「危険物等貯蔵(取扱い)開始届」を提出します。
岡崎市の現在の案内では、開始届に、
- 危険物の類・品名
- 最大数量
- 1日最大数量
- 作業概要
- 消火設備
などを記載し、必要な図面・資料を添付します。
工場では「保管している量」だけでなく取扱量も確認する
工場では、危険物を倉庫へ保管するだけではなく、
- 洗浄
- 塗装
- 切削
- 燃焼
- 発電
- 製造設備
などで使用することがあります。
この場合、単純に在庫量だけを確認すればよいとは限りません。
危険物の取扱方法によって、
- 1日最大取扱量
- 設備内の最大数量
- 最大消費量
- 最大詰替量
などを確認します。
さらに、同じ場所で危険物の貯蔵と取扱いの両方を行う場合には、数量を合算して判定する場合があります。
そのため、
倉庫に置いている量は少ない
↓
だから指定数量未満
とは限りません。
製造工程で使用する危険物まで含めて確認することが重要です。
どこまでを「同じ場所」として計算するかも確認する
危険物を工場内の複数箇所へ分けて保管している場合、
「置き場所を分ければ、それぞれ指定数量未満として扱えるのでは?」
と考えるかもしれません。
しかし、自由に分割して計算できるわけではありません。
衣浦東部広域連合消防局の少量危険物基準では、同一場所の考え方として、原則、
屋外
→ 敷地ごと
屋内
→ 建築物ごと
という考え方を示しています。
一方、防火上有効に区画され、独立性が認められる場合などには、別の場所として扱われる場合があります。
そのため、
倉庫の東側に100L
西側に100L
と分けただけで、必ず別計算になるわけではありません。
保管場所の配置を決める前に、管轄消防署へ確認することが重要です。
危険物の設置許可では図面・構造設備資料が必要
指定数量以上となり、危険物製造所・貯蔵所・取扱所を設置する場合には、設置許可申請を行います。
衣浦東部広域連合消防局では、危険物関係の申請様式として、
- 危険物製造所等設置許可申請書
- 構造設備明細書
- 完成検査申請書
- 仮使用承認申請書
- 品名・数量等変更届
などを公開しています。
実際の申請では、
- 案内図
- 配置図
- 平面図
- 構造・設備に関する図面
- 設備仕様書
などを計画内容に応じて準備します。
衣浦東部広域連合消防局公式:危険物の設置許可・変更許可・完成検査の様式を確認する
岡崎市では設置許可申請を許可希望日の21日前までに提出する
岡崎市では、危険物製造所・貯蔵所・取扱所の設置許可申請について、
許可を受けようとする日の21日前まで
に提出するよう案内しています。
現在の岡崎市公式ページでは、提出部数は2部、受付窓口は消防本部予防課危険物係です。
危険物施設の設置計画がある場合は、
設備を先に設置
↓
後から許可申請
という順番ではなく、設計段階から消防署へ相談します。
設置許可を受けただけでは使用開始できない
危険物施設は、設置許可を受けた段階で自由に使用開始できるわけではありません。
基本的には、
設置許可
↓
施設工事
↓
完成検査
↓
完成検査済証
↓
使用開始
という流れになります。
岡崎市の完成検査申請でも、「使用開始予定期日」は完成検査済証交付後と記載するよう案内されています。
タンクなどについては、施設・工事内容によって完成検査前検査が必要になる場合もあります。
危険物施設では保安監督者が必要になる場合もある
危険物施設によっては、危険物保安監督者の選任も必要です。
例えば岡崎市では、
- 製造所
- 給油取扱所
- 移送取扱所
などでは原則として選任が必要と案内しています。
屋内貯蔵所や地下タンク貯蔵所などは、危険物の種類・指定数量の倍数によって要否が変わる場合があります。
そのため、
施設の許可を取れば設備面だけ整えればよい
とは限りません。
施設区分によって、危険物取扱者等の人的体制も確認します。
塗料・洗浄剤などはSDSから危険物分類を確認する
工場では、
- 塗料
- シンナー
- 接着剤
- 洗浄剤
- 切削油
- 潤滑油
など、商品名だけでは危険物の分類が分かりにくいものがあります。
この場合は、製品のSDS(安全データシート)などから、
- 消防法上の危険物に該当するか
- 類・品名
- 危険等級
- 指定数量
などを確認します。
商品名や「油」「塗料」という呼び方だけで判断せず、実際の製品ごとに確認することが重要です。
一時的に指定数量以上を置く場合は仮貯蔵・仮取扱いも確認する
工事や設備入替えなどで、一時的に指定数量以上の危険物を保管・取扱いするケースがあります。
消防法には、所轄消防長または消防署長の承認を受けることで、指定数量以上の危険物を一定期間仮に貯蔵・取扱いできる制度があります。
ただし、
「一時的だから許可不要」
という意味ではありません。
事前に仮貯蔵・仮取扱いの承認を受ける必要があります。
衣浦東部広域連合消防局の危険物審査基準でも、仮貯蔵・仮取扱いの承認について独立した審査基準を設けています。
衣浦東部広域連合消防局公式:危険物の仮貯蔵・仮取扱い等の審査基準を確認する
工場・倉庫で危険物を置く前に確認する順番
危険物の保管・使用を計画したら、次の順番で整理すると分かりやすくなります。
- 保管・使用する製品を一覧にする
- SDS等から消防法上の危険物か確認する
- 危険物の類・品名・指定数量を確認する
- 最大貯蔵量を確認する
- 製造工程などでの最大取扱量を確認する
- 複数種類なら指定数量の倍数を合算する
- 同一場所として計算する範囲を確認する
- 指定数量未満・少量危険物・指定数量以上のどこになるか判定する
- 少量危険物なら条例上の届出を確認する
- 指定数量以上なら製造所・貯蔵所・取扱所の区分を確認する
- 配置図・平面図・設備資料を整理する
- 管轄消防本部・消防署へ事前相談する
- 必要な許可・届出を行う
- 設置工事・完成検査等を経て使用を開始する
危険物規制では、
「何Lあるか」
だけではなく、
「何を、どこで、どのように保管・使用するのか」
まで確認することが重要です。
保管場所を決定する前に消防署へ相談する
危険物施設では、
- 保安距離
- 保有空地
- 建物構造
- 防火設備
- 流出防止
- 換気
- 電気設備
- 消火設備
など、位置・構造・設備について基準があります。
そのため、
倉庫の一角を危険物置場に決定
↓
棚やタンクを設置
↓
最後に消防署へ相談
という順番では、設備や配置をやり直す可能性があります。
まず危険物と数量を整理し、
候補場所
↓
消防署への事前相談
↓
施設区分・必要基準の確認
↓
設計・許可申請
という順番で進める方が手戻りを減らしやすくなります。
「指定数量未満だから大丈夫」で終わらせない
工場・倉庫で危険物を保管するときは、
指定数量以上
→ 危険物製造所・貯蔵所・取扱所の許可を確認
指定数量の5分の1以上・指定数量未満
→ 衣浦東部広域連合消防局や岡崎市では少量危険物の届出を確認
という段階で考えます。
さらに、複数種類の危険物を扱う場合は指定数量の倍数を合算します。
工場で使用する油・溶剤・塗料等が増えた場合や、新しい倉庫へ危険物をまとめて移す場合は、実際に保管を始める前に消防署へ相談することが重要です。
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少量危険物でも届出が必要?指定数量未満の保管で確認すること
愛知県三河の危険物許可・届出についてご相談ください
いしかわ行政書士事務所では、碧南市・西尾市・高浜市・安城市・刈谷市・岡崎市を中心に、危険物に関する許可・届出のご相談を受けています。
「工場で油・溶剤・塗料をまとめて保管したい」
「倉庫の一部を危険物置場として使いたい」
「指定数量を超えるか確認したい」
「少量危険物の届出か危険物施設の許可か分からない」
「消防署へ相談する前に現在の計画を整理したい」
という場合は、危険物の品名、SDS、最大保管量・取扱量、保管場所、現在の図面などを確認しながら必要な手続きを整理します。
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出典
総務省消防庁公式:危険物規制の概要、衣浦東部広域連合消防局公式:危険物関係の基準、衣浦東部広域連合消防局公式:危険物審査基準、衣浦東部広域連合消防局公式:危険物申請・届出様式、岡崎市公式:危険物・少量危険物に関する様式、岡崎市公式:危険物製造所等設置許可申請、岡崎市公式:少量危険物の貯蔵・取扱い開始届
この記事は、2026年8月時点の法令・公的機関の情報をもとに作成しています。
