
この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。
「受注が増えて塗料の在庫を多めに持つようになった」
「工場で使う油類が増えたが、消防署への届出は必要?」
工場では、事業拡大や生産量の増加によって、
- 塗料
- シンナー
- 洗浄剤
- 切削油
- 潤滑油
- 灯油
- ガソリン
などの保管量・使用量が増えることがあります。
ここで注意したいのが、少量危険物の届出です。
これまで消防署への届出が不要だったとしても、危険物の数量が増え、
指定数量の5分の1以上
かつ
指定数量未満
になれば、少量危険物として届出が必要になる場合があります。
また、すでに少量危険物として届け出ている工場でも、
- 危険物の種類を増やす
- 最大数量を増やす
- 保管場所を変更する
- 設備を変更する
場合は、変更届を確認します。
この記事では、工場で塗料・油類の保管量・使用量が増えた場合に、少量危険物の届出が必要になるかを確認する方法を整理します。
まず増えた塗料・油類が消防法上の危険物か確認する
最初に確認するのは、数量ではなく製品の分類です。
工場で使われる、
- 塗料
- シンナー
- 洗浄剤
- 接着剤
- 切削油
- 潤滑油
などは、商品名だけでは消防法上の危険物に該当するか分からないことがあります。
そこで、製品のSDS(安全データシート)などから、
- 消防法上の危険物に該当するか
- 類
- 品名
- 指定数量
を確認します。
例えば同じ「油」と呼ばれていても、消防法上の品名や指定数量が異なることがあります。
まず製品ごとの危険物分類を一覧にすることが出発点です。
指定数量の5分の1以上になったか確認する
碧南市・刈谷市・安城市・知立市・高浜市を管轄する衣浦東部広域連合消防局では、
指定数量の5分の1以上
指定数量未満
の危険物を少量危険物として扱っています。
例えば代表的な第4類危険物では、
| 危険物の例 | 指定数量 | 5分の1 |
|---|---|---|
| ガソリン | 200L | 40L |
| 灯油 | 1,000L | 200L |
| 第4石油類の潤滑油など | 6,000L | 1,200L |
となります。
例えば、これまでガソリンを20Lしか保管していなかった工場が、業務拡大によって60L保管するようになった場合、
60L ÷ 200L
=0.3
となります。
0.2以上1未満なので、少量危険物として届出を確認する範囲に入ります。
塗料や油類は1種類ずつではなく合算して判定する
工場では、1種類だけでなく複数の危険物を扱うことが一般的です。
例えば、
- 塗料
- シンナー
- 洗浄剤
- 潤滑油
- 灯油
を同じ建物内で保管しているケースです。
この場合、
「どれも単独では指定数量の5分の1未満だから大丈夫」
とは限りません。
危険物ごとに、
危険物数量 ÷ 指定数量
を計算し、それぞれの数値を合算します。
例えば、
ガソリン20L
→ 20÷200=0.10
灯油80L
→ 80÷1,000=0.08
別の危険物
→ 指定数量に対して0.05
なら、
0.10+0.08+0.05
=0.23
となります。
それぞれ単独では0.2未満でも、合算すると0.2以上になります。
そのため、塗料・油類が増えた場合は、
「増えた製品だけ」
を見るのではなく、その場所にある危険物全体を再計算する必要があります。
衣浦東部広域連合消防局公式:少量危険物貯蔵取扱所設置指導基準を確認する
在庫量だけでなく1日の取扱量が増えていないか確認する
工場では、保管している危険物だけでなく、製造工程で危険物を使用することがあります。
例えば、
- 塗装工程でシンナーを使用する
- 洗浄工程で溶剤を使用する
- 工作機械で切削油を使用する
- ボイラーで灯油を消費する
- 設備へ油を充填する
といったケースです。
このような場合は、棚や倉庫に置いている在庫量だけでなく、
- 1日最大取扱量
- 設備内の最大数量
- 最大消費量
- 最大詰替量
などを確認する必要があります。
衣浦東部広域連合消防局の少量危険物基準でも、貯蔵方法・取扱方法に応じた数量算定方法が示されています。
「在庫は増えていないが、生産量が増えて1日の使用量が増えた」
という場合も再計算した方がよいでしょう。
保管量と取扱量を同じ場所で行う場合は合算を確認する
例えば工場建物内で、
倉庫スペースに塗料を保管
+
隣の製造ラインで同じ塗料を使用
している場合です。
このようなケースでは、
貯蔵数量
と
取扱数量
をそれぞれ算出し、同一場所として合算する必要がある場合があります。
したがって、
「倉庫にある在庫は指定数量の5分の1未満」
という確認だけでは足りません。
同じ建物・区画で実際にどの程度危険物を貯蔵・取り扱っているのかを整理します。
危険物を置く場所を分けても必ず別計算になるわけではない
保管量が増えてくると、
「工場の別の場所へ分ければ少量危険物にならないのでは?」
と考えることがあります。
しかし、単純に棚や部屋を分けただけで別々に計算できるとは限りません。
衣浦東部広域連合消防局の基準では、同一場所について原則として、
屋外
→ 敷地ごと
屋内
→ 建築物ごと
とする考え方が示されています。
ただし、防火上有効に区画され独立性が認められる場合などは、場所ごとに算定できる場合があります。
そのため、
保管量が増えた
↓
倉庫内で場所を2か所に分ける
↓
それぞれ0.2未満にする
という判断を自己判断で行わず、管轄消防署へ確認します。
これまで届出していなかった工場が0.2以上になった場合
例えば、これまで指定数量に対する倍数が0.15だった工場で、塗料や油類の保管量が増え、
0.25
になったとします。
この場合は、
これまで
→ 少量危険物の届出ライン未満
増加後
→ 指定数量の5分の1以上
となります。
衣浦東部広域連合消防局では、「少量危険物・指定可燃物貯蔵・取扱い届出書」を用意しています。
届出時には、
- 案内図
- 配置図
- 平面図
- 設置設備の仕様書
などを添付するよう案内されています。
保管量を増やしてから届出するのではなく、増量前に消防署へ相談する方が安全です。
衣浦東部広域連合消防局公式:少量危険物の申請・届出様式を確認する
岡崎市でも0.2以上1未満は少量危険物
岡崎市でも、
指定数量の5分の1以上
指定数量未満
を少量危険物として、貯蔵・取扱い開始届を設けています。
現在の岡崎市公式案内では、開始届は2部提出で、電子申請にも対応しています。
すでに少量危険物として貯蔵・取扱いしている施設で内容を変更する場合は、別に「危険物等貯蔵(取扱い)変更届」が用意されています。
すでに少量危険物を届け出ている場合は変更届を確認する
すでに少量危険物として消防署へ届け出ている工場でも、保管量が増えた場合には確認が必要です。
例えば、
届出時
塗料100L
↓
現在
塗料200L
という変更です。
数量だけでなく、
- 危険物の種類を追加する
- 最大数量を変更する
- 保管場所を変更する
- 設備を変更する
- タンクを変更する
場合にも、変更届を確認します。
岡崎市では、「危険物等貯蔵(取扱い)変更届」を設けており、
変更前
と
変更後
の内容を整理して届け出る仕組みになっています。
危険物の量が指定数量以上になる場合は少量危険物ではなくなる
さらに保管・取扱量が増え、
指定数量に対する倍数が1以上
になる場合は注意が必要です。
例えば、
当初
0.15
↓
増加後
0.6
↓
さらに増加
1.2
となったケースです。
0.6の段階では少量危険物ですが、1.2になれば指定数量以上です。
この場合は、
少量危険物の変更届
ではなく、消防法上の製造所・貯蔵所・取扱所として設置許可等が必要になる可能性があります。
数量を増やすたびに、
0.2を超えたか
だけではなく、
1を超えたか
まで確認します。
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塗料の種類を変えただけでも再計算した方がよい
保管する容器の本数や総リットル数が変わっていなくても、製品を変更すると指定数量が変わる場合があります。
例えば、
以前使用していた塗料
↓
別メーカー・別製品へ変更
した場合です。
同じ「塗料」という呼び方でも、危険物の品名・性状が同じとは限りません。
そのため、
在庫量は同じ
=
指定数量の倍数も同じ
とは限りません。
新しい塗料・溶剤へ変更するときは、SDSを確認して危険物分類から再計算します。
保管場所を広げる前に設備基準も確認する
少量危険物として届出対象になる場合は、数量だけでなく保管・取扱場所の基準も確認します。
例えば、
- 標識・掲示板
- 容器
- 火気管理
- 漏えい・流出防止
- 床
- 換気
- タンク
- 消火設備
などです。
「保管量が増えたので空いている倉庫へ追加で置く」
という場合、その場所が少量危険物の保管場所として適しているかも確認します。
単に保管スペースを増やせばよいわけではありません。
保管量が増えたときはこの順番で確認する
工場で塗料・油類の量が増えた場合は、次の順番で整理すると分かりやすくなります。
- 現在保管・使用している製品を一覧にする
- SDSから危険物の類・品名を確認する
- 各製品の指定数量を確認する
- 最大貯蔵量を確認する
- 1日最大取扱量も確認する
- 各危険物について指定数量の倍数を計算する
- 複数の危険物があれば合算する
- 同一場所として計算する範囲を確認する
- 0.2以上になっていないか確認する
- すでに届出済みなら変更内容を確認する
- 1以上になる場合は危険物施設の許可を確認する
- 保管・取扱場所の設備基準を確認する
- 増量・変更前に管轄消防署へ相談する
「以前は届出不要だった」
という事実だけで、現在も不要とは判断できません。
生産量が増えたときは危険物の手続きも一緒に見直す
危険物の届出漏れは、
新しく危険物を使い始めたとき
だけに起こるとは限りません。
実際には、
受注増
↓
生産量増加
↓
塗料・油類の使用量増加
↓
まとめ買い・在庫増加
↓
いつの間にか0.2以上
という流れでも起こり得ます。
そのため、
- 生産ラインを増やす
- 大口の仕事を受注する
- 在庫量を増やす
- 倉庫を拡張する
- 使用する塗料・溶剤を変更する
場合には、危険物数量もあわせて見直すことが重要です。
「新しい設備を設置していないから消防署への手続きはない」とは限りません。
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「以前は少量危険物ではなかったが、現在の数量で届出が必要か確認したい」
「複数種類の危険物を合算すると0.2を超えるか分からない」
「すでに少量危険物を届け出ているが数量を増やしたい」
「このまま増やすと危険物施設の許可が必要になるか確認したい」
という場合は、危険物の品名、SDS、現在と変更後の最大貯蔵量・取扱量、保管場所などを確認しながら必要な手続きを整理します。
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出典
総務省消防庁公式:指定数量未満の危険物に関する火災予防条例の運用、衣浦東部広域連合消防局公式:危険物関係、衣浦東部広域連合消防局公式:少量危険物貯蔵取扱所設置指導基準、衣浦東部広域連合消防局公式:危険物・少量危険物の申請届出様式、岡崎市公式:少量危険物・指定可燃物、岡崎市公式:危険物等貯蔵(取扱い)開始届、岡崎市公式:危険物等貯蔵(取扱い)変更届
この記事は、2026年8月時点の法令・公的機関の情報をもとに作成しています。
