
この記事は行政書士が監修しています。
いしかわ行政書士事務所の行政書士が、法令や公的機関の情報、実務をもとに、制度や手続きのポイントを分かりやすく解説します。
「工場を新しく建てたい」
「現在の工場に建屋や生産設備を増設したい」
このような場合に確認したいのが工場立地法です。
ただし、工場を新設・増設すれば、すべて工場立地法の届出が必要になるわけではありません。
まず確認するのは、
- どの業種の工場・事業場か
- 敷地面積は何㎡か
- 建築物の建築面積の合計は何㎡か
- すでに工場立地法の届出をしている工場か
- 増設によって特定工場の規模に達するか
です。
工場立地法では、一定の業種で、
敷地面積9,000㎡以上
または
建築物の建築面積の合計3,000㎡以上
となる工場・事業場を「特定工場」として、一定の新設・変更について事前届出を求めています。
この記事では、愛知県で工場を新設・増設するときに、工場立地法の届出が必要になる規模と確認順を整理します。
工場立地法の届出が必要になる「特定工場」とは
工場立地法の届出対象となるのは、すべての工場ではありません。
対象となる業種と規模の両方を確認します。
対象となる主な業種は、
- 製造業(物品の加工修理業を含む)
- 電気供給業
- ガス供給業
- 熱供給業
です。
ただし、電気供給業のうち、水力発電所・地熱発電所・太陽光発電所は対象から除かれています。
さらに、工場・事業場の規模が次のいずれかに該当すると「特定工場」になります。
| 判定項目 | 特定工場となる規模 |
|---|---|
| 敷地面積 | 9,000㎡以上 |
| 建築物の建築面積の合計 | 3,000㎡以上 |
重要なのは「両方を超える必要はない」ということです。
敷地面積が9,000㎡未満でも、建築面積の合計が3,000㎡以上なら対象になります。
反対に、建築面積が3,000㎡未満でも、敷地面積が9,000㎡以上なら対象です。
敷地面積9,000㎡以上なら届出対象になる可能性がある
例えば、製造業の工場を新設する計画で、
敷地面積10,000㎡
建築面積2,000㎡
だったとします。
建築面積は3,000㎡未満ですが、敷地面積が9,000㎡以上なので特定工場の規模に該当します。
一方、
敷地面積8,000㎡
建築面積2,500㎡
であれば、規模だけを見るとどちらの基準にも達していません。
したがって、
「工場だから届出」
ではなく、
業種
+
敷地面積
+
建築面積
の順番で確認します。
建築面積3,000㎡以上でも対象になる
もう一つの基準が、建築物の建築面積の合計3,000㎡以上です。
例えば、
敷地面積8,000㎡
建築面積3,500㎡
の製造工場であれば、敷地面積は9,000㎡未満でも、建築面積が3,000㎡以上なので特定工場に該当します。
ここで見るのは、延べ床面積ではなく「建築面積」です。
複数の建築物がある場合には、その建築面積の合計で確認します。
「工場建屋1棟だけなら3,000㎡未満だから大丈夫」と考えず、敷地内の対象となる建築物を整理します。
増設によって初めて特定工場になる場合も届出が必要
現在は特定工場の規模に達していなくても、増設によって基準を超える場合があります。
愛知県の手引では、
- 用途の変更
- 敷地面積の増加
- 建築物の建築面積の増加
によって新たに特定工場となる場合も届出が必要とされています。
例えば、
現在
敷地面積8,500㎡
隣接地1,000㎡を取得
↓
敷地面積9,500㎡
となれば、特定工場の規模に達する可能性があります。
同様に、
現在の建築面積2,700㎡
↓
500㎡の工場建屋を増設
↓
合計3,200㎡
となる場合も確認が必要です。
「今まで届出していなかったから今回も不要」とは限りません。
増設後の工場全体で判定します。
すでに特定工場なら増設・変更でも届出を確認する
すでに工場立地法の届出をしている特定工場では、新設時だけでなく、その後の変更についても届出が必要になることがあります。
愛知県の手引では、主に、
- 製品
- 敷地面積
- 建築面積
- 生産施設面積
- 緑地・環境施設の面積や配置
などを変更する場合に届出を確認することとされています。
例えば、
- 工場建屋を増設する
- 新しい生産設備を設置する
- 敷地を拡張する
- 緑地を削減する
- 緑地や環境施設の配置を変更する
場合です。
したがって、増設工事では、
「増設部分が何㎡か」
だけではなく、
「現在の工場が特定工場としてどの届出内容になっているか」
も確認する必要があります。
建築面積が変わっても届出不要になる変更がある
特定工場の変更であっても、すべて届出が必要になるわけではありません。
愛知県の手引では、届出を要しない軽微な変更として、例えば、
- 生産施設・緑地・環境施設の面積や環境施設の配置を変更しない建築面積の変更
- 生産施設の修繕で、増加する生産施設面積の合計が30㎡未満
- 生産施設の撤去
- 緑地・環境施設の増加
- 一定条件を満たす緑地・環境施設の移設
などを挙げています。
そのため、
「建物を増築するから必ず変更届」
とも限りません。
増設する建物が生産施設に当たるのか、緑地や環境施設に影響するのかなど、変更内容を確認します。
工場立地法では工場の面積だけでなく緑地も確認される
工場立地法は、単に大きな工場を届け出る制度ではありません。
周辺地域の生活環境との調和を図るため、
- 生産施設
- 緑地
- 緑地以外の環境施設
について、敷地面積に対する割合等の基準があります。
国の準則では、新設工場について、原則として緑地面積20%以上、緑地を含む環境施設面積25%以上などの基準があります。
ただし、自治体によって地域準則等が定められ、割合が異なる場合があります。
そのため愛知県内で具体的な工場計画を進める場合は、工場所在地の市町村が定める現在の基準を確認する必要があります。
「9,000㎡を超えたから届出を出す」というだけではなく、敷地の中で生産施設・緑地・環境施設をどう配置するかまで計画します。
工場新設では工事着手前に届出する
工場立地法の届出は、工場が完成してから行う手続きではありません。
特定工場を新設・変更する場合、原則として届出が受理された日から90日を経過した後でなければ、工事に着手できません。
対象となる工事には、
- 埋立工事
- 造成工事
- 施設建設工事
など、変更に必要となる最初の工事が含まれます。
ただし、届出内容が相当であると認められる場合には、この実施制限期間が短縮されることがあります。
工場の建築工事開始日だけを見て届出時期を考えるのではなく、造成工事等から逆算して確認することが重要です。
愛知県では届出先は工場所在地の市町村
愛知県では、工場立地法の届出先は特定工場が所在する各市町村です。
愛知県の2026年6月更新ページでも、県内の届出先は工場所在地の各市町村であり、詳細は各市町村へ相談するよう案内されています。
そのため三河地域でも、
- 碧南市
- 西尾市
- 高浜市
- 安城市
- 刈谷市
- 岡崎市
など、工場所在地の自治体へ確認します。
自治体によって提出方法や地域準則等が異なる場合があるため、工場の所在地が決まった段階で窓口を確認しておく方がよいでしょう。
具体例で届出対象を確認する
例1 敷地10,000㎡に製造工場を新設する
製造業で敷地面積が9,000㎡以上なので、特定工場の規模に該当します。
工場立地法の新設届を確認します。
例2 敷地8,000㎡だが建築面積3,200㎡
敷地は9,000㎡未満ですが、建築面積の合計が3,000㎡以上です。
この場合も特定工場の規模に該当します。
例3 現在8,500㎡の工場で隣接地1,000㎡を追加する
増設後の敷地面積が9,500㎡となります。
増加によって新たに特定工場となる場合は届出を確認します。
例4 既存の特定工場で生産棟を増築する
すでに特定工場として届出済みの場合は、新設届ではなく変更届の要否を確認します。
増築によって、
- 生産施設面積
- 緑地面積
- 環境施設
- 建築面積
などがどう変わるのかを整理します。
工場を新設・増設するときはこの順番で確認する
工場立地法の確認は、次の順番で行うと整理しやすくなります。
- 工場・事業場の業種を確認する
- 敷地面積を確認する
- 建築物の建築面積の合計を確認する
- 特定工場に該当するか確認する
- 新設か、既存工場の変更かを確認する
- 生産施設・緑地・環境施設の変更内容を整理する
- 工場所在地の市町村の地域準則等を確認する
- 届出が必要か市町村へ事前相談する
- 届出書・配置図・面積計算資料等を準備する
- 工事工程から届出時期を確認する
工場立地法では、敷地面積だけを確認するのではなく、建築面積と業種もセットで見ることが重要です。
工場立地法以外の手続きも確認する
工場の新設・増設では、工場立地法だけで工事を進められるとは限りません。
計画内容によっては、
- 都市計画法の開発許可
- 建築確認
- 盛土規制法
- 雨水浸透阻害行為許可
- 土壌汚染対策法
- 危険物関係の許可・届出
- 道路関係の手続き
などが関係することがあります。
特に大規模な工場新設・増設では、複数制度の届出・許可時期が工事工程に影響します。
工場立地法の届出だけを単独で進めるのではなく、工場計画全体について必要な行政手続きを整理することが重要です。
「工場を建てる」ではなく業種・9,000㎡・3,000㎡から確認する
工場立地法の届出要否で最初に見るのは、工場の名称ではありません。
まず、
対象業種か
↓
敷地面積9,000㎡以上か
↓
建築物の建築面積合計3,000㎡以上か
を確認します。
さらに、既存工場の増設では、
現在の届出内容
↓
今回変更する施設
↓
生産施設・緑地・環境施設への影響
まで確認します。
工場用地の取得や増設計画が固まってから初めて確認するのではなく、配置計画や工事工程を決める段階で工場立地法の対象になるか確認しておくと、手戻りを防ぎやすくなります。
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「工場を増設するが変更届が必要か分からない」
「敷地・建築面積から届出要否を確認したい」
「工場新設に必要な他の許認可も整理したい」
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出典
愛知県公式:工場立地法について、愛知県公式:工場立地法届出の手引き(概要版)、経済産業省公式:工場立地法
この記事は、2026年8月時点の法令・公的機関の情報をもとに作成しています。
